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投稿日:2026年1月25日

シーリングファン導入で期待した省エネ効果が出ない理由

はじめに:シーリングファン導入が思うように省エネに繋がらない理由とは

近年、製造業の現場や物流倉庫、さらにはオフィスや店舗でも、「シーリングファンを導入して省エネ・節電をしよう」という動きが活発化しています。

電力コストの高騰やカーボンニュートラルの要請が強まるなか、空調効率を改善してエネルギー消費を抑える──
この発想自体は理にかなったものです。

しかし、導入した現場からは「想定ほど効果が出ない」という声が意外なほど多く聞かれます。

なぜ本来期待された省エネ効果が発揮されないのでしょうか。

本記事では、現場目線でその原因を深掘りしつつ、製造業に強く根付く業界動向やアナログ文化、そして改善のヒントまで、実践的な視点から詳しくご紹介します。

シーリングファンの基本原理と省エネへの期待

空調効率化への期待

シーリングファンは、天井に取り付けた羽根によってゆるやかに空気を循環させ、冷暖房の効率を高める設備です。

冬場は上昇する暖気を撹拌して足元の冷えを防ぎ、夏は冷房空気をムラなく分散して清涼感を高める。
こうした「空間内の温度ムラをなくす」ことで、エアコンの設定温度を抑えられ、省エネにつながるとされています。

導入時の一般的な計画例

多くの現場では、以下のような計画によって導入が進められています。

– シーリングファンを適切な位置と台数で設置
– 冷暖房設定温度を一律で見直し
– ファン稼働による年間電力消費削減を事前にシミュレーション

書類上、このモデルケースで15〜25%の省エネ効果が見込めるという試算がよく示されます。

なぜ省エネ効果が思ったほど出ないのか?現場目線の7つの現実

1. 空調機器とファンの適合性ミス

現場によって設備や建築様式がまったく異なります。

天井高や梁、配管、ラック配置、壁面開口部など、物理的な障害物が空気流路を大きく変えてしまうのです。

本来は空調機種とファンの配置・向き・回転数を現場に合わせて緻密に検証すべきですが、現実は「計算通り」の設置が行われがちです。

例えば、天井の高い工場で小型ファンを多用しても、空気層の分厚さにより効果が大きく薄まります。

逆に低天井で強力なファンを回しすぎると、体感温度が下がりすぎたり、埃や細かいゴミを舞い上げてしまい逆効果です。

2. 風量設定・運転タイミングの最適化不足

昭和時代からの「設備は付けたら終わり」という文化が根強く、導入後の運転パラメータは実際にはほとんど見直されません。

時間帯と連動した回転数調整や空調の連動制御をせず、「とにかく常時ON」が通例になっている現場も多いのが現状です。

ファンの回転設定が強すぎて無駄な消費電力を生んでしまったり、そもそも空調との同時運転が最適化できていないケースが目立ちます。

3. 作業員側・運用側の誤解と運用の属人化

現場作業者の「快適」と、省エネのバランスが取れていないこともよくあります。

夏場、シーリングファンの風を強く感じようとファンの回転数を引き上げてしまい、体感的には涼しいが実は冷房消費量は変わらない、あるいは増えている、といった例が山ほどあります。

特に属人的な運転(「あの班長の時はファンを止めてしまう」など)が慢性化しやすいのも製造業の特徴です。

4. 省エネ効果の「見える化」ができていない

効果測定の仕組み作りが不十分な点も、現場アナログ文化から抜け出せていない要因です。

メーターやBEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)による詳細な比較をしないまま「体感」で判断されてしまうため、まず効果を正しく検証できません。

見える化がないと、設備投資回収の根拠(ROI)も不明確なままとなり、改善活動を推進できないのです。

5. メンテナンス不足による性能低下

埃やオイルミストまみれのファンで風量が落ち、もはや「ただ電気を食っているだけ」の設備になることは珍しくありません。

回転部分のグリス切れやバランス悪化で異音を発するようになり、現場から随時停止されてしまうケースも見受けられます。

維持管理が定期的に行われて初めて最大の効果を発揮できる──当たり前のことですが、現場の人手不足や業務過多を原因に「メンテ待ち設備」が年単位で放置されることも多いのです。

6. 省エネ投資の心理的バイアスと本音

現場担当者や管理職レベルで「ファン導入=省エネ」という幻想だけが独り歩きしている場合があります。

その結果、検証プロセス自体が形骸化します。

加えて、製造現場特有の「とりあえず何か新しいことを始めたら実績になる」というバイアスが意思決定者に働き、効果の追求よりも投資自体が目的化する例も多いです。

7. 工場レイアウト・物流動線との連携設計欠如

実際の生産現場では、「レイアウト変更」や「大型搬入出のためのシャッター開閉」が頻繁に発生します。

こうした運用の柔軟性にシーリングファンの設計が追い付かず、想定した空気循環パターンが日々、大きく変化してしまうのです。

導入計画時と実運用時でファンの効果が乖離しやすく、結果として期待ほどの省エネが実現できなくなります。

シーリングファンと製造業のアナログ文化

「変える」ことのハードルが高い業界体質

製造業の現場では、何かを「新しく変える」ためには膨大な根回しや事前調整が求められます。

調達部門での承認プロセス、現場リーダーや品質保証部の納得感、さらには、万一の不良発生リスクなど多くのリスクマネジメントを内包しています。

このため、「現状維持バイアス」が強く働き、新しい省エネ施策を試行錯誤しながら最適解を見つけるというカルチャーにどうしてもなりにくい現状があります。

「現場適合型」の投資評価軸を持てているか

シーリングファンに限った話ではありません。

工場では、紙の伝票やExcel台帳、口頭伝承などアナログな情報管理が根強く残っています。

投資評価や設備効果の検証も「ベテランの勘と経験」「去年と同じ」で進むケースもしばしばです。

本来は現場のリアルな温度・気流・機器稼働状況をIoTやセンサーで「見える化」し、数値で投資効果を比較検証すべきです。

業務効率化や省エネの道筋にも、デジタル化への課題が色濃く横たわっています。

省エネ効果を正しく出すための実践的ポイント

1. 現場実態に即したシミュレーションが鍵

シーリングファンの導入検討時には、机上の数値ではなく現場の建屋構造・レイアウト・作業動線を徹底的に洗い出しましょう。

CADや3Dレイアウトによるシミュレーションに加え、気流解析や温湿度センサー配置による実測データ収集がおすすめです。

それにより、「どの場所で、どの時間帯に、どの程度の空気循環が起きるのか」を、より現実的に予想できます。

2. 空調との連動運転と自動化の推進

シーリングファン自体の回転数制御を、空調設備や外気温、室温と連動させて自動化するシステム化が効果的です。

たとえば、猛暑日や作業が集中する時間帯だけファンの風量を高め、それ以外は低速または停止、といったメリハリ運転が省エネ直結につながります。

IoT・工場自動化の技術を活用し、属人的な運用からの脱却を進めましょう。

3. 見える化(データ活用)&定量評価の徹底

エネルギーメーターやBEMS、IoTセンサーを活用し、シーリングファン導入前後での電力使用量や現場温度、作業者アンケートなどを数値で見える化します。

「どのエリアでどれだけ省エネが達成できたか」「結果としてROIはどの程度か」という定量評価を習慣化し、改善のPDCAサイクルを回しましょう。

4. 現場コミュニケーションと人材育成

作業員や現場リーダー層が納得感を持ち、シーリングファンの省エネ効果や快適性への理解が高まるほど、運用定着率は上がります。

「なぜ導入するのか」、「どう使えば最も効果的なのか」を、定期的な教育やミーティングで共有していくことも成功の秘訣です。

属人的ドリフトを防ぎ、省エネ文化の定着を目指しましょう。

まとめ:本当の省エネには「仕組み」と「現場力」の両取りが必要

シーリングファン導入で得られる省エネ効果は、間違いなく現場に貢献しうる“可能性”を持っています。

ですが、「設置したら終わり」「理論効果だけで満足」といった浅い運用では、期待値に届きません。

むしろ現実の現場では、建屋やレイアウト・作業体系といった個別要素ごとに最適な運用設計と、導入後のデータ分析・改善サイクルが不可欠です。

アナログ文化が残る製造業の現場こそ、「仕組み」と「現場力」のかけ合わせで、新たな省エネ地平線を創出していくことが求められています。

バイヤー志望の方、サプライヤー視点でのご参考にもなれば幸いです。

新しい価値を一緒に“創る”製造業へ──その一歩をシーリングファンの「本質的な活用」から、踏み出していただければと思います。

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