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プレスパートで使われるフェルトの基本構造と課題

目次
はじめに ─ プレスパートにおけるフェルトの意義
製造業、とりわけ自動車や家電などの量産工場において、プレスパートは欠かせない工程です。
その中で重要な脇役となっているのが「フェルト」。
金型と素材の間に敷かれるこの素材は、製品の品質を左右する要所でもあります。
昭和から続くアナログな現場でも、フェルトの使い勝手や性能に対する要求は年々高まっています。
本記事では、プレスパートで用いられるフェルトの基礎的な構造や、その現場ならではの課題、時代の変化とともに見えてきた新たな要請など、複数の角度から掘り下げていきます。
これから調達・購買をめざす方や、サプライヤーとして現場の「当事者の目線」を知りたい方にもきっと役立つ内容です。
フェルトの基本構造 ─ プレス現場でフェルトが担う役割
フェルトの構造と特徴
フェルトとは、繊維(主にウール、ポリエステル、アクリル等)を機械的・化学的に絡み合わせて一枚のシートにした素材です。
織物と異なり「編む」「織る」という工程を持たず、多方向にランダムな繊維配列を持ちます。
この構造が生むのはクッション性と柔軟性、そして優れた吸音・耐熱・絶縁といった機能です。
プレスパートで必要とされる主用途には、金型と素材の間での当たり止め、ワークの滑り止め、傷防止、油分吸着、さらには微小なばらつきの吸収などがあります。
こうした用途からも、単なる「詰め物」や「養生材」ではなく、工程品質や歩留まり率に直結するキープレイヤーであることがわかります。
フェルトの種類と主な選定ポイント
プレス用フェルトにもさまざまな種類があり、繊維の原料や密度、呼び厚み、寸法安定性、耐熱性能など用途に応じた選択が求められます。
たとえば高精度な自動車外装部品では密度が高く、比較的硬めのウール系フェルトが選ばれることが多いです。
逆にショック吸収や保護が主体となる場合は、膨らみやすいポリエステル系、あるいは耐熱性に優れるアクリルブレンドなど、部位ごとの最適化が必要となります。
また寸法安定性や分割加工性、再利用性も重要な選定基準です。
加工ロス削減のためサプライヤー側でも十分な在庫と多様性の対応力が求められ、「これしかない」という一択ではなく、多品種少量への柔軟な切り口も重要になってきています。
現場が直面するフェルト使用上の課題
1. フェルトの経時劣化 ─ 見逃しがちな品質リスク
フェルトの主な課題の一つに「経時劣化」があります。
プレス環境下で繊維が潰れたり割れたりすることで、最初は規定の厚みが保持されていても数百または数千ショット後にはクッション性が著しく低下することがあります。
これが原因となり、完成品に微細なへこみや擦り傷が発生したり、プレス後の歪み・段差など不良の原因になります。
とくに昭和的な「現場力」でノウハウ管理されている工程では、「感覚的な交換時期の見極め」や「消耗品管理の場当たり的運用」といった展開が多いのも現実です。
2. 調達・購買・コストの問題
工場現場のバイヤーや購買担当にとって、消耗品であるフェルトの調達は「コスト管理」と直結したミッションです。
一方で機能・耐久性よりも安価品への置換という圧力が強くなりがちですが、低価格路線が行き過ぎると、品質不良⇒工程停止⇒総コスト増といった逆転現象を引き起こします。
現場経験が長い管理職視点で言えば、「使ってみないと本当の性能はわからない」ものこそ、試作やサンプル検証→現場ヒアリング→小ロットテスト導入→本採用と段階的にリスクを抑えつつ導入する知恵が必要です。
3. 安全衛生・廃棄物管理の見落とし
近年、ISO14001やSDGs対応要請から、フェルトの廃棄・リサイクル問題も無視できません。
とくにオイルミストや切削液を大量に吸着したフェルトは産業廃棄物として厳しく管理され、現場での仕分け・収集コストや保管・リサイクルの体制整備が課題です。
「ただの布切れ」では済まされない背景には、業界全体での意識変革が迫られている実情があります。
昭和型現場と最新デジタル化の狭間にあるフェルト事情
アナログ管理から脱却するために必要なこと
製造現場は独自の文化や職人技が色濃く残る反面、「勘」や「経験」を重視する昭和的体質が根強く残っています。
フェルトの管理や選定もその一例。
交換タイミングは「なんとなく」「毎週金曜日」など暗黙運用となっており、不良発生時は「うちは昔からこのやり方だ」で済まされてしまうケースが多く見られます。
しかしデジタルデータ活用やIoT、AIなど「工場の見える化」がもたらす変革は既に始まっています。
たとえばフェルトの劣化度合いを圧力センサーや距離センサーで数値化し、交換タイミングを自動アラートするなど、「勘」から「定量化」への転換が可能です。
こうしたアップデートは単なるハイテク導入というよりも、現場品質とコスト競争力を両立するための“地に足ついた”戦略であるといえます。
バイヤーや調達担当が知るべきフェルト豆知識
「サプライヤーが現場に感謝され、バイヤーが頼られる仕組み」づくりには、下記のような観点も重要です。
– フェルトのサンプル提供と現場検証データの一体提案(総合サポート型営業)
– 消耗品費のみならず不良率減少によるトータルコスト提案(LCC提案)
– 工程ごとのフェルト適正化で最適規格を指導・サポート(現場ポテンシャルの引き出し)
– 廃棄・リサイクルサービスや環境対応オプションの提供(SDGsとCSR)
これらは一見あたりまえのようにみえて、実は多くの現場でなお意識されていません。
調達担当者自身が現場に入り、現物・現場・現実の“三現主義”を体現することで、フェルトが「消耗品」から「工程価値創出ツール」へと位置付けられはじめます。
今後求められるフェルト進化と業界への期待
高機能化・スマートマテリアルの開発
近年フェルトにも、高分子材料のブレンドや耐熱繊維、スマートマテリアル技術の導入が進みつつあります。
例を挙げると、自己修復機能を持つフェルト、通電で摩耗度合いを計測できるフェルト、特定の有害成分を吸着分解する高機能フェルトなどがあります。
こうした最先端の技術が身近な現場で活用されることは、今後の日本ものづくり産業の大きな差別化要因となるでしょう。
現場主体の改革の重要性
ただし重要なのは、どんなに新しい素材や技術が登場しても、それを「どう使いこなすか」「どこに価値を見出すか」という現場の声に耳を傾け続けることです。
最良のフェルトとは、「理論上優れているだけ」ではなく、「その現場、その用途、その製品」にフィットしてこそ真価を発揮します。
サプライヤーやバイヤーも、製品カタログに頼るのではなく、工程実態や改善ターゲットを深く理解し共に考える姿勢が問われています。
まとめ ─ フェルトが変えるプレスパートの未来
プレスパートで使われるフェルトは、決して単なる「脇役」ではありません。
その基本的な構造には多様な工夫が込められ、現場ごとに多くの課題と向き合っています。
アナログな昭和型現場から最新スマートファクトリーへの進化のなかで、今後ますます重要度を増していくことでしょう。
「消耗品=コストカット対象」の常識を超え、お客様仕様・現場適正・品質貢献など多様な視点から、新たな付加価値を見出すことが、これからのバイヤー・サプライヤー・現場技術者全てに求められています。
この記事が、現場実践を重ねる皆さまの新しいヒントになれば幸いです。
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