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スマホ充電ケーブルの断線を防ぐ編組強度と圧着検査工程

目次
はじめに:製造業現場から見るスマホ充電ケーブル品質管理の重要性
スマートフォンの普及とともに、充電ケーブルは私たちの生活に欠かせない必需品となりました。
しかし、よく聞くのは「買って間もない充電ケーブルがすぐに断線した」「純正品以外は怖い」という消費者の声です。
家庭用・ビジネス用問わず、充電ケーブルの断線や不良は小さなトラブルに見えて、生産現場や信頼性に直結する大きな問題です。
実は、断線しづらいケーブルを製造するには、“編組強度”と“圧着工程”が肝です。
昭和時代から続くアナログなワークフローと、新しい自動化技術が混在する中で、現場の知見と工夫が求められます。
本記事では、長年の現場経験を踏まえて、製造現場の目線から「断線しにくいケーブルをどう作るか」、また「バイヤーが重視すべきポイント」「サプライヤーが注意すべき工程管理」について、実践的かつラテラル(多角的)に深堀りしていきます。
充電ケーブル断線の主原因と現場における課題
なぜケーブルは断線するのか
ケーブルの断線は大きく分けて「機械的ストレス」と「構造的弱点」に起因します。
コネクタ付近の根元が最も断線しやすいと言われているのは、曲げ・引っ張り・捻りの負荷が集中するためです。
特に現代のスマホユーザーは持ち歩きや頻繁な抜き差しが多く、想定以上の力がかかっています。
現場としては「部材コストを抑えたい」、「手数を省きたい」という要望と、「信頼性の高い製品にしたい」という要請が綱引き状態になりがちです。
アナログから脱却できない現場の実情
実際の現場では、目視検査や手作業による工程がいまだ多く残っています。
圧着作業に熟練の手技が必要だったり、最終的な検査も作業員の経験と勘に頼ってしまうこともしばしばです。
この“昭和的なアナログ文化”が根強く残る一方、グローバル競争や品質保証の観点から、工程自動化やデータ重視の姿勢も急速に求められています。
断線を防ぐための「編組構造」の技術と工夫
編組構造とは何か
編組(へんそ:braid)は、ケーブルの外装やシールドに使われる“編み込み”の構造です。ナイロンやステンレス線などを三つ編みやケーブル編みで交差させており、柔軟性と耐久性のバランスを高める目的があります。
編組構造を加えることで、外側からの引っ張りや曲げに対して耐性が向上し、断線リスクを格段に減らすことができます。
実践的な編組設計のポイント
どうやって強度と生産性を両立するかが現場の腕の見せどころです。
・編み込み密度:密度を高くすれば引張強度が増しますが、柔軟性が損なわれます。
・素材の選定:ナイロンはコストパフォーマンスが良く、ポリエステルやステンレスを混紡することで更に耐摩耗性・耐引裂性をアップできます。
・接合部のシームレス化:編み終わり・つなぎ目の処理が甘いとそこからほつれや断線の元になります。
また近年は自動編組機の導入も進み、一定品質の製品を比較的安定して量産できるようになってきました。
一方で、不良品率ゼロへの管理体制や、細部仕上げの“ひと手間”をかける現場力はアナログ時代からの財産です。
圧着工程の重要性と現場での管理手法
圧着とは何か?コネクタ部の肝
スマホ充電ケーブルの断線発生箇所の約7割は“コネクタ根元”と言われています。
ここには芯線とコネクタ金具を機械で圧着する「圧着工程」が不可欠です。
圧着作業の不良(芯線が抜ける、接触抵抗が増える、ハンダの浮き・漏れ)があると電気信号の損失だけでなく、そこから断線や過熱事故に繋がります。
圧着検査のアナログとデジタルの融合
現場では圧着状態の良否を確認するため、各種検査を組み合わせます。
・引張試験:圧着端子と芯線を一定荷重で引っ張り、抜け強度が規格に達しているかを測定
・外観検査:圧着カシメ部の形状、割れや歪みを目視や顕微鏡で確認
・導通試験:圧着後の電気抵抗値を測定し規定値内かを判定
これらを自動化するため、引張試験器とIoTデータロガーを連動させたり、不良があれば現場へフィードバックが自動通知されるシステムも普及し始めています。
一方、微細なトラブル(微小な断線予備軍や微妙な圧着ズレ)は、熟練工の“違和感を察知する目”が最後の砦となっています。
QC工程表の充実や現場教育による技能伝承も、現場力として依然重要です。
スマホケーブルの品質向上と現代製造現場の進化
アナログ現場力の継承とデジタル化の融合
変化が早く厳しい製造現場で生き残るため、“伝統的な目利き力”と“最新設備・データ”の両輪が求められています。
事実、現場の機械にAIや機械学習を応用し「編組の編みムラ」「圧着ズレ」を即座にフィードバックする試みが始まっています。
異常が検出されたら自動的にアラームが鳴り、現場担当者がすぐに対応できるなど、属人的なリスクを下げる仕組みが進んでいます。
しかし、最終的な“仕上がり感の良し悪し”の判断やトラブル発生時の現場対応は、長年のノウハウを持つ作業員の判断力がものを言います。
多能工化や現場力育成といったアナログ技術の維持も、今後さらに重視されます。
バイヤー・サプライヤーが押さえるべきポイント
バイヤーの立場としては、価格だけでなく「工程品質」や「現場の技能力」がどう担保されているかに注目する必要があります。
例えば下記項目は、サプライヤー選定基準として徐々に増えています。
・工程ごとにどのような検査を実施しているか
・不良発生時のトレーサビリティ体制
・技能員の資格/経験値
・社内教育や改善活動の頻度
一方サプライヤーは「圧着工程力」「検査の厳密さ」「現場教育」といった“売り”を定量的に打ち出すことで差別化につなげられます。
また、現場発信のカイゼン活動や自社ノウハウも積極的に公開し、信頼構築に役立てることが望まれます。
まとめ:現場の知恵と新技術の相乗効果が未来を築く
スマホ充電ケーブルは、単なる消耗品ではなく“ユーザー体験を左右する重要な部品”へと進化しています。
断線を防ぐためには、編組構造の強さと柔らかさ、圧着工程の確実さ、そして両者を支える現場スタッフの技能とデジタル技術の両立が不可欠です。
昭和から令和へと移り変わる現在、古き良きアナログ現場力と、先端的な自動化・品質保証体制の融合がますます重要になります。
バイヤーやサプライヤーの皆様には、こうした現場のリアルな「工夫」と「品質維持」への取り組みに目を向けていただき、業界全体で“より強い製造業”を目指して共に歩めれば幸いです。
どうぞ現場の声を大切に、新しい地平を切り拓いていきましょう。
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