投稿日:2025年12月29日

兼任業務が属人化し誰も引き継げない状態

製造業現場で蔓延する「兼任業務」——なぜ属人化し、誰も引き継げなくなるのか

製造業において、複数の業務を兼任することは日常茶飯事です。
特に人員リソースが限られる企業や部門では、調達購買、生産管理、品質管理といった異なる職能を一人の担当者が背負う場面がよく見られます。
「なんとかあの人が頑張ってやってくれている」。
周囲は感謝しながらも、実のところ、その担当者しかできない属人化状態が静かに進行しています。

昭和から続くアナログ的な現場体質もあいまって、こういった兼任業務は今なお業界の深層に根強く残っています。
そして、ある日突然担当者が退職・異動・休職……「誰も引き継げない!」という危機が現場を急襲するのです。

本記事では、実際の現場経験を踏まえて、兼任業務がなぜ属人化しやすいのか、その弊害と解決のための視点や具体策をじっくり考察します。
バイヤー志望の方や現場担当・管理職、サプライヤーでバイヤー心理を知りたい方にも役立つ内容を目指します。

なぜ兼任業務は属人化しやすいのか

1. 「できる人」に業務が集まる現場の構造

製造業の現場では、「あいつに任せておけば安心」という空気が発生しやすいです。
本来は業務を標準化し、共有体制を築くべきですが、日々の納期や生産対応に追われる現場では“今楽になる”ことが優先されます。
「この資料まとめておいて」、「購買システム、トラブルは全部任せた」など、業務ができる人に自然と積み上がっていくのです。

2. 異動や休職が突然発生する人材リスク

属人化の恐怖は、対象者が突然いなくなることで顕在化します。
メーカー特有の人事ローテーション、病気・介護による長期休職や、昨今増えた「働き方改革」による離職など、現場の“匠”が消えた瞬間に、日々の運用が立ち行かなくなってしまう事態が発生します。

3. アナログ作業とデータ・ノウハウのブラックボックス化

帳票の記入、FAXでの注文、工程日報の手書きなど、昭和的な手法が根強く残る理由も属人化を促進します。
データがシステム化・共有化されていれば新担当者でも履歴を追えますが、ブラックボックス化された“紙のノウハウ”や“口伝”は誰も簡単に再現できません。
これが「誰も引き継げない状態」を生み出す真因です。

兼任業務の属人化が与える深刻な影響

1. 事業継続リスクが高まる

キー担当者に依存した状態では、業務が停止する、最悪の場合は客先トラブルや納品遅延など、信用問題に発展するリスクもあります。

2. 業務効率・品質のボトルネックになる

「この人にしかできない」状態では、他の社員が業務手順を学ぶ機会を逸し、業務全体の効率や品質が改善されません。
また、現場改善のアイディアや生産性向上策が属人的な知見の中に埋もれる恐れもあります。

3. 担当者本人の過負荷・モチベーション低下

できる人に仕事が集中する状態が常態化すると、担当者に多大な負荷がかかります。
評価される半面で「いつまで続くのか」「自分が辞めたら…」という不安や疲弊も積み重なるでしょう。
結果として、モチベーションの低下、離職リスクの増大、新たなブラックボックスの形成という負の連鎖が始まります。

昭和的アナログ業界の根強い属人化構造

文化としての職人依存

多くの製造業は、「職人技」「現場判断」に価値を置いて成長してきました。
細やかな調整やトラブル回避は現場のベテランが体得したノウハウであり、人から人への直接伝承が基本でした。
この文化が「属人化=現場力」と無意識に結びついています。

システム導入や業務フロー可視化の遅れ

情報システムの導入はコストも手間もかかります。
一方で、「今のやり方で困っていない」「パソコンは苦手」という現場のリアルな声が、業務手順の電子化やフロー共有を遅らせています。
また、現場担当者へのヒアリングを十分にせず、上層部主導で進められるシステム設計も“現場の本音”とズレが生じがちです。

ラテラルシンキングで捉え直す属人化の課題と解法

“標準化”の前に“見える化”を徹底する

業務標準化を一足飛びに目指す前に、まず日々の業務がどこまで、誰に、どのように属人化しているのか「見える化」することが極めて重要です。
この際、担当者には“たたき台”として自分の手順を書き出してもらいましょう。
決して「これが絶対」と考えるのではなく、現場で日々変化する手順がどんな多様性を持っているかを整理します。
さらに、その業務が「なぜ必要なのか?」という目的も問い直しましょう。
不要な手順や重複作業が実は多いものです。

多能工化トレーニングと“お試し引き継ぎ”会議

一人のベテランから、周囲のメンバーに段階的に業務を分散していく仕組み「多能工化」を推進しましょう。
ただし、年1回の引き継ぎ資料作成ではなく、例えば「お試し引き継ぎ会議」を設定し、実際に“他人が手順通りにやってみる”ことで、本当の引き継ぎの難所・ブラックボックスポイントが明らかになります。
ここでの気づきが、日常業務の標準化のキーになります。

現場視点の“DX”(デジタル・トランスフォーメーション)推進

システム導入や業務のデジタル化は、経営層だけでなく現場の目線からのボトムアップ型で進めることが肝要です。
現場担当者が「これなら使える」と納得・活用できる仕組みでなければ、紙帳票のままダブル管理が生じてしまい逆に混乱します。
エクセルマクロや簡易なウェブアプリ、RPAの活用など、小さなスケールから始める“身近なDX”の実践が現場の属人化解消に直結します。

バイヤー・サプライヤー視点で見る属人化の問題点と対策

バイヤーの立場でのリスク認識

調達・購買部門のバイヤーには、自社内の業務は勿論、サプライヤー側の業務が属人化していないかどうかのチェックも欠かせません。
なぜなら「交渉も納期管理もAさん1人頼み」「急な生産変動にサプライヤーがついてこれない」といった場合、自社の供給リスクとなるからです。
サプライヤーとも“担当者の複数化”“業務標準化”を協調して推進する意識を持つ必要があります。

サプライヤーから見たバイヤーの課題感

バイヤーが属人的な運用をしている場合、取引条件や納期回答が担当者の経験や個別判断に依存するため、サプライヤー側も業務の安定性に大きな不安を感じます。
「メールの返事は早いが、担当者が休みになると途端にストップ」「決裁基準が毎回変わる」といった現場の声はよく聞かれます。
サプライヤーもしっかり担当替えや、過去情報へのアクセス体制を持ち「バイヤーの属人化リスク」を見抜き、備えておくことが求められます。

まとめ:兼任業務の属人化から脱却するために

製造業界では、人材リソースの制約や、長年の現場文化、アナログ作業の連鎖など、属人化が根付いている理由が複雑に絡み合っています。
しかし、気づかないまま「引き継げない危機」に沈むことは、現場で働く人全員のキャリアにも、企業の永続性にも大きな脅威となります。

日々の業務を“見える化”し、小さな単位からの“お試し引き継ぎ”、ボトムアップ型DX推進を着実に重ねましょう。
バイヤー・サプライヤー双方が自分ごととして属人化リスクを認識し、相互に“持続可能な共創体制”を築くことが重要です。

現場目線で地道に取り組むこと、それが製造業界全体の前進につながっていくと信じます。
属人化の根を断ち切り、皆が安心して強みを発揮できる現場を共につくりましょう。

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