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原材料の急激な高騰で価格改定が追いつかない現場の混乱

目次
はじめに:原材料高騰という現場のリアル
昨今、製造業の現場を揺るがす「原材料の急激な高騰」。
鉄鋼、樹脂、電子部品などあらゆる原材料が数カ月単位で大幅に値上がりしており、企業としては価格改定を進めたいところですが、取引先への交渉や社内調整が追いつかず、現場には混乱が広がっています。
私自身、20年超にわたり大手製造業の調達購買から生産管理、そして工場運営まで携わってきた経験から、今ほど「価格決定の難しさ」と「現場と経営のあつれき」を肌で感じる時代はありません。
この記事では、製造業のリアルな現場目線で、原材料高騰がなぜここまで混乱を招いているのか。
また現状から脱却するための新たな視点や業界の動向、現場発の具体的な工夫について深掘りしていきます。
過去にない価格高騰、その背景は何か
供給網の混乱と世界的な需要変化
コロナ禍で世界中のサプライチェーンが大きく分断されました。
原材料や部品の輸送遅延、供給不足、そして世界各地での経済政策や需要の急増。
たとえば半導体需要の急拡大では、僅かな生産遅延や工場火災が世界の工場で数か月単位の納期遅れ・価格高騰に直結しました。
鉄鋼、銅、樹脂、紙、段ボールなど、普段は価格が安定している基礎資材ですら、2倍、3倍の水準に跳ね上がるケースも珍しくありません。
アナログな業界慣習と「価格転嫁」の難しさ
昭和時代から変わらぬ「長期固定価格」に根差す商習慣。
大手完成品メーカーからサプライヤーへ、「簡単には値上げを認めない」という空気感、値上げの度重なる申請書や経営会議の承認プロセス。
こうした文化が、急激な価格変化にとにかく弱い、という弱点を露呈しています。
現場では「仕入値は上がっているのに納品価格は据え置き」「赤字覚悟の納品が増える」など、深刻な収益悪化につながっています。
現場で何が起きているのか? 混乱の実態
見積もりや注文書がすぐ“死蔵データ”に
出した見積書の有効期限が1週間たらず、発注が決まったときには新価格に再見積もり。
注文確定後も「この価格はあと5日まで」……という具合に、帳票管理が目まぐるしくなり、見積価格の二重三重管理やミスが多発します。
生産計画と調達計画が毎日修正
材料が高すぎて「今発注すべきか」「在庫でしのぐか」悩み続ける生産管理。
少しでも安い仕入先を探して突然の取引先入れ替えが発生するケースも。
これにより生産ラインの段取り替えや品質保証フローも再調整を余儀なくされ、全体最適がどんどん崩れていきます。
現場と経営層のギャップが拡大
経営陣は「値上げ交渉をしっかりやって、利益を確保しろ」と一言。
しかし現場の購買担当者は「得意先が値上げを拒んでいる」「下請けや協力会社も限界」と板挟みに。
どちらの立場も理解できるだけに、現場リーダーや工場長は大きなプレッシャーを感じています。
なぜ価格改定が追いつかない? 構造的な課題
IT化の遅れ、変化に弱い基幹システム
見積・受発注・出荷・請求管理のプロセスが紙やExcelのまま、原価データは年に1回手動で更新――。
このため現実の市況とのズレが生じやすく、価格交渉や改定が後手に回るのです。
クラウド型ERPや自動価格連動の仕組みはまだ一部の大手のみ。
多くの中小企業は、昭和時代からあまり進化しない業務フローのまま戦っています。
価格転嫁交渉力の差
元請けと下請け取引の力関係が固定されている場合、「値上げしてほしいが強く言えない」。
サプライヤー側から見れば、「価格交渉は御法度」と思い込み、損失覚悟で納品を続ける負のスパイラル。
バイヤー側も「今値上げに応じたら社内が大騒ぎだ」と板挟みです。
市場価格に連動しない長期契約リスク
材料価格は毎月大幅に変動する状況下で、長期固定価格や年1回の単価更改ルールが通用しなくなっています。
「仕入れは2倍、売値は前年据え置き」では、赤字を垂れ流すだけです。
現場発・新たな対応策とは
“価格連動型”契約へのシフト
調達の現場で、今後ますます必要となるのが「価格連動型」の契約や自動改定ルール。
たとえば鉄鋼や樹脂のように市況連動価格を仕入単価・納入単価に反映することで、バイヤー・サプライヤーともにリスクを適切に分担するかたちです。
サプライヤー側も、「急ピッチな原価変動は素直にバイヤーと話し合う」「必要な資料(市況グラフや相場推移)を見せる」等、データに基づいた交渉が重要となります。
デジタルシフトと情報の一元化
つねに最新の仕入情報・見積履歴を共有するクラウドERPやEDI(電子データ交換)の活用。
経理・調達・営業が同じデータで議論できることは、意思決定のスピードと正確性を格段に高めます。
特にリスキーな材料分野は自動改定アラートや、相場変動のシナリオ分析機能を活用し、短サイクルでの原価見直しや価格提示が主流になりつつあります。
“納得感のある”価格転嫁とパートナーシップ再構築
「値上げありき」ではなく、「なぜこの原価なのか」「価格転嫁なしでは何が起こるのか」という納得度の高い説明や、現場同士の直接対話が鍵です。
製造現場や品質部門が参加する原価説明会を設け、バイヤーにも現物を見てもらう。
これにより、「協力会社も苦しい」「共に乗り切る姿勢」が伝わりやすくなります。
近年は経産省も「価格転嫁ガイドライン」を打ち出し、サプライヤーの交渉力向上を後押ししています。
昭和のムリ・ムダ・ムラな値引き交渉ルールを見直し、公正な商慣行が広がっています。
バイヤー・サプライヤー 立場別の視点
バイヤーを目指す方へ:決して価格だけに目を奪われない
購買のプロは単なるコストカットだけでなく、「継続的な調達安定」「サプライヤーとの信頼関係」を築くことがミッションです。
今後は「材料市況のインテリジェンス収集」「未来シナリオに基づく複数調達」「サプライヤーを守ることが自社品質保持につながる」ことも意識する必要があります。
交渉のコツは、まず相手の苦労を知ること、サプライヤー現場に足を運ぶこと、データに基づき“共通の敵=市況変動”に立ち向かう姿勢を忘れないことです。
サプライヤーの方へ:バイヤーの苦悩を知る
バイヤーも社内利益のプレッシャーや、時に経営陣から理不尽な要求を突きつけられています。
「原価が上がったから値上げして」だけでは絶対に通りません。
市況推移グラフや仕入先証明、材料の浪費削減努力など、データと現場改善を説明しながら、短期間での小刻みな値上げ調整を打診するほうが、Win-Winの関係に近づきます。
また、競合他社の頑張りや他のサプライヤーの状況も理解し、単なる“売り手優位”ではなく、「協調による難局突破」へと意識転換しましょう。
今後の業界動向と現場が生き残るために
材料高騰や市況不安定は今後も繰り返される可能性が高いです。
だからこそ、価格交渉力や調達レジリエンス(しなやかさ)が新時代の競争力の源泉となります。
AIやIoTを活用したサプライチェーンの自動化、リアルタイムな原価見える化、そして“現場の声”を反映する意思決定サイクルを進化させていく必要があります。
現場ができることは、日々のムリ・ムダ・ムラ排除、新たな取引先・材料情報の積極収集、小ロット化や共同購買など、創意工夫によるコスト適応力。
経営やバイヤーも「これまでの常識」を捨て去る勇気が問われる時代です。
まとめ:混乱の先にある“新しい調達・購買のかたち”
原材料の急激な高騰は、現場にかつてない混乱をもたらしています。
しかし、それは「古い慣習」や「思考停止型の値決め」を変える大きなチャンスでもあります。
バイヤーもサプライヤーも、互いに現場の苦悩と努力を知り合い、“共通の敵”に立ち向かうパートナーシップを築くこと。
ITやデータを活用し、公正で納得感ある価格決定・契約ルールを早期に導入していくこと。
そして現場こそが、最も現実的な知恵と改善力を持っていることを忘れないでください。
製造業という“ものづくり”の現場に、新しい調達と購買の時代を共に切り拓きましょう。
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