投稿日:2025年12月20日

スクリーン装置内部部材の摩耗が起こす異物混入

スクリーン装置内部部材の摩耗が起こす異物混入 —— 製造現場視点の対策と業界動向

ものづくりの現場では、“異物混入”という言葉は非常に重い意味を持っています。
とくに食品や薬品、半導体など高い品質管理が求められる業界においては致命的なクレームや社会的な信用失墜につながる恐れもあります。
多くの工場や製造ラインで活躍しているスクリーン装置の内部部材の摩耗は、そうした異物混入リスクを常に伴う重要課題のひとつです。
この記事では、20年以上実際の現場で調達、品質、生産管理を経験した筆者が、「なぜ摩耗による異物混入が生じるのか」「現場で何ができるのか」「業界の常識や変化」「調達・バイヤー視点でのポイント」などをラテラルに、深堀りしてご紹介します。

スクリーン装置とは何か?摩耗が問題となる理由

異物の“侵入”でなく、“発生”——内部部材の見落としがちなリスク

スクリーン装置とは、原材料や製品から微細な異物や粒子をより分けるために、多くの生産現場で導入されています。
ふるい分けや選別のための装置ともいえるでしょう。
食品、生薬、プラスチック成形、化学材料、銅線、半導体といった多様な業界に不可欠な機械です。

多くの現場担当者やバイヤーは、外部からの虫や埃、作業者の髪の毛などの“侵入”に目が行きがちです。
しかし意外な盲点は、スクリーン装置内部自体の部品が“摩耗”し、その微小な破片が自ら生産物に入り込んでしまう点です。
特に、以下のようなパーツに注目が必要です。

– 振動ふるいのメッシュや枠
– ジョイント部、シール部材
– 固定具やガイドの金属部
– 内部で接触するゴム、樹脂パーツ

摩耗は一朝一夕で目に見えるものばかりではありません。
むしろ長期使用による“経時的な微細摩耗”こそ見逃しやすく、大きなリスクです。
定期点検だけでは検知が難しいこともあり、異物混入事故の引き金となります。

“昭和メンタル”とデジタル移行の狭間——現場定着の難しさ

現場の経験豊富な担当者ほど、“聞いて覚えろ”“見て覚えろ”の暗黙知でノウハウを継承しがちです。
スクリーン装置の保全・管理も、しばしば「これくらい大丈夫」「音や振動がおかしくなったら交換」といった、勘や経験則に依存しすぎる傾向が昭和から色濃く残っています。
これが部材の摩耗管理を“なんとなく後回し”にする背景です。
一方、近年はAI・IoT・センシングなどデジタル化の波が押し寄せ、摩耗の“見える化”や予兆保全も進みつつあります。

どんな異物が、なぜ発生するのか

金属片、ゴム屑、樹脂の粉末— 原材料別・異物の特徴

スクリーン装置内部部材の摩耗により主に発生する異物は、大きく3種に分けられます。

1. 金属微粉末、金属片
高周波振動や過負荷が繰り返されることで、メッシュや枠部分の摩耗・微細な剥離が進み、金属の粉末や小片となって混入します。
とくにステンレス・鉄系の金属は、磁性検知装置でも検知可能ですが、微細なものほど完全捕捉は困難です。

2. ゴム屑、パッキンの断片
密閉性向上や振動吸収を担うゴム製のパッキン・シールもまた、経時的に劣化や摩耗が生じやすく、芯材ごと細かな粒として付着・混入することがあります。

3. 樹脂片、プラスチックの粉
導電性対策や除電用・滑走用などで樹脂パーツが使われている場合、金属同様に磨耗し細かなパウダーや薄片となり、ラインに流出します。

ここで重要なのは“どんな原材料・製品でも、全く異物混入リスクがゼロにはならない”という事実です。
異物ゼロを目指して多層防御しても、予期しない摩耗や老化、部材の素材選定ミスなどで“内部からの発生”が避けられない構造的課題があります。

アナログ的な“隙間”こそ危ない

たとえば古いタイプのスクリュー式や機械的なバイブレーター付きスクリーン装置は、構造自体が複雑で抜けや磨耗部位が多めです。
アナログ業界の機械器具や、共用パーツの流用機械では、こうした“油断”が異物混入トラブルを長年引き起こしてきました。

内部摩耗が引き起こす異物混入事件——現場リアルストーリー

実際にあったケーススタディ

実際に筆者が工場長・品質責任者として関わった事例も交えつつ、典型的なシナリオを紹介します。

— あるパウダー食品工場
月例の品質検査で鉄粉異物の検出報告。
ライン全体を調査するも外部持込ではなかった。
最終的に判明したのは、原材料ふるい分け用スクリーンメッシュの継ぎ手からの微細な摩耗片だった。

— 精密電子部品の工場
従来型のバイブレータースクリーンのゴムパッキン部分が経年劣化。
わずかな剥離が生じ、原材料ロット単位で樹脂粉の混入。
検査エスケープから最終品顧客流出が発覚し、多額の返品費用発生。

このように、“誰もが目視で気付きにくい”、“定期保守項目には入っていなかった”など、見落としから大きな事故に至ることも少なくありません。
現場担当者・資材バイヤー・生産管理、その全員が“摩耗そのもの”を前提に「何が、どこで、どれくらい削れるか」を理解し、計画的に管理する力が求められます。

製造業バイヤー・資材調達担当が知るべきポイント

“価格”だけで選ぶな —— 部材品質と摩耗サイクルの見極めが命

コスト低減が半ば至上命題となる中、どうしても見えにくい“摩耗耐久性・異物混入リスク”を軽視しがちです。
バイヤー・購買担当者には下記ポイントが極めて重要です。

– 摩耗耐久性素材の知識(例: SUS304/316L、超高分子量ポリエチレン、特殊ゴムなど)
– 納入・購入先サプライヤーの管理レベル(異物混入を起こした履歴、トレーサビリティ)
– スクリーン装置メーカーの保守・部品交換サイクルへの提案力
– 過去の異物混入事故情報や、PL法・顧客クレーム発生時の対応事例

「本当に安さだけで決めて良いのか?」「“同じ部品”でも品質と寿命は桁違いなのでは?」——
この視点は、令和時代のサプライヤー・バイヤーにこそ強く求められています。

現場提案型サプライヤーこそ重宝される

現場実態を想定した摩耗シミュレーションや、予備部品納入頻度・IoT監視パックなどをセットで提案できるサプライヤーは、単純な“商流”から一歩抜け出せます。
バイヤーは「顧客現場に入り込んで提案できるメーカー/部品商」かどうかを選定基準にすると、摩耗起因異物混入のリスクが大幅に減らせます。

現場視点で行うべき摩耗対策・未然予防

AI・IoTを活用した摩耗“見える化”の最前線

これまで「勘と経験」の頼みだった部材摩耗管理は、今、センサーでリアルタイムに監視する時代に移行しつつあります。
摩耗度を振動、熱、超音波、画像など多角的に検知し、異常波形や閾値を自動警報。
数値で“磨耗しすぎライン”の予防保全が可能です。
自社でそこまでできなくても、“IoT連携の部品パック”を選定するだけでも異物混入防止には大きな一歩になります。

既存アナログ現場で実効性のある対策とは

デジタル武装が難しい現場・古い機械更新が遅れる中小工場では、きめ細かな下記アナログ施策がポイントです。

– 定期交換時期の“短縮”設定(メーカー基準より早めを目安に運用)
– 摩耗部位のマスキング・二重化(こすれ/漏れ部へ保護材や追加カバー設置)
– 現場“匂い嗅ぎ”の可視化(日報・週報で異音・振動・粉塵の記録徹底)
– エリア・ラインごとの摩耗履歴見える化(紙でも十分、摩耗カレンダーの掲示)

昭和の現場力と令和の技術が“ハイブリッド”する形で、地に足のついた予防策が理想です。

まとめ —— アナログ業界こそデジタル発想を

スクリーン装置内部部材の摩耗が起こす異物混入は、製造現場における“慢性的な潜在リスク”です。
古くから継承されてきたノウハウや現場勘を活かしつつ、新素材の活用、IoTセンサー管理、保全の仕組化といったデジタル的な発想が不可欠です。
調達バイヤー・生産管理・現場管理者それぞれが部材摩耗の本質的リスクを丁寧に捉えることで、クレームゼロ、ひいては生産性向上にもつながります。

既存の“風習”や“当たり前”に疑問を持ち、現場最適につなげる新しい視点こそ、アナログ業界に根付いた課題解決の決め手です。

現場で働く皆さま、これからバイヤーを目指す方、そしてサプライヤーとして顧客支援を志す皆さまに、この知見が少しでも役立つことを心から願っています。

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