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ビッグシルエットTシャツ印刷で中央ズレを防ぐための固定ポイントと張力制御

目次
ビッグシルエットTシャツ印刷における中央ズレとは
ビッグシルエットTシャツの人気が高まる中、アパレルの現場では大きなボディへのプリント工程でさまざまな課題が浮上しています。
その中でも最も多いトラブルが「中央ズレ」です。
この中央ズレとは、Tシャツの正面の中心線からプリントデザインが左右どちらかに寄ってしまい、着用した際にバランスが悪くなる現象です。
特にビッグシルエットは着用時に身幅が大きく広がり、一般的なTシャツに比べてズレが際立ちやすくなります。
この問題を放置すると、せっかくのデザインやブランディングが台無しになるだけでなく、B品の増加や追加生産によるコスト損失につながります。
ズレの原因を現場目線で解説
1. ボディの「型」が揃っていない問題
ビッグシルエットTシャツはその名の通り身幅・着丈ともに余裕があります。
このため、生地裁断や縫製の過程で個体差が出やすく、仕上がり寸法が一定にならないことが多々あります。
「工場の標準型がぶれていると、正しい中央が何か分からなくなり、現場でセンター合わせの基準がバラつきます。」
ここが、従来型のTシャツよりもズレトラブルが増える背景です。
2. セッティング基準の「認識違い」問題
製造現場では、「襟ぐりの中央に対してプリントを合わせる派」と「身頃の両脇寸法の中央に合わせる派」に分かれがちです。
ビッグシルエットTシャツは肩幅や袖周りも広いため、襟中心・身頃中心・肩線中心など、どこを基準にするかで大きく見栄えが変わります。
特に織り目(バイアス地)が斜めに入るTシャツは、伸縮する方向もまちまちなので、「現場では固定ポイントの取り違い」がとても起きやすいのです。
3. プレスや張力制御不足の問題
生地をプリント台にセットする際、多くの現場はアナログな手作業です。
経験則に頼った感覚的な張力調整しかできておらず、生地がわずかに引っ張られたり、緩んだりしてプリント範囲が歪むことがよくあります。
ビッグシルエットは特に、プリント範囲とTシャツのゆとり部分のバランスが難しく、微妙なシワや斜行がそのままプリントのズレに直結します。
中央ズレ防止のための固定ポイント設定術
1. 「物差し」でなく「治具」ベースの中央位置決定
従来はTシャツの脇と襟をメジャーで測って中央を出す工程が一般的でしたが、ビッグシルエットの場合、その方法では個体差を吸収できません。
そこでオリジナル冶具(型板)を活用した、非接触型のセンターガイドが有効です。
具体的には、主なサイズごとに「身幅の平均ライン」と「襟ぐり中央」に切り欠きを持つプレートを作成します。
これをTシャツの上に重ねることで、毎回どのTシャツに対しても決まった位置と角度で基準点を出せるため、どんな地の目やパターンでも安定してズレのないセッティングが可能となります。
2. サンプル基準点の可視化(見える化)
複数ロットや多品種少量で生産する際は、工場内で「基準点が見える標本」を用意しておくのが鍵です。
プリント台の脇やレイアウト台に、実際にプリントされた「合格見本Tシャツ」を吊るしておく仕組みです。
手順としては、
1. 標準体型のボディに標準デザインで一度プリントし完成品を作る
2. その完成品で、襟−身幅−袖幅の各中央ポジションをチェック
3. 完成品を治具と一緒に現場に常設
この流れで、新しい作業者でもブレのない中央出しが可能になります。
3. デジタル計測装置の活用
昨今進む工場自動化の波に乗り、ロット統一を目的とした「テンプレート投影機」や「レーザーガイド」といったデジタル治具が活用されてきています。
パターンCADやカメラ認識によって自動的に中央線を提示する仕組みも登場し、ヒューマンエラーの削減が進んでいます。
まずは「基準を全員で統一し、それをITで再現する」ことがずれ防止にはもっとも有効といえるでしょう。
張力制御の現場的ポイント
1. 生地引っ張り癖の認識・帳消し
ビッグシルエットTシャツの多くは、やや柔らかく伸縮性のある生地を使います。
そのため、台に乗せる際の「引っ張りすぎ」や「片側だけのテンション掛け」に注意が必要です。
理想は「上下左右対象に、必要最小限の張力でセット」することです。
このため、現場では
・目盛り付きのテンション治具で均一張力かを随時チェック
・生地下に紙などの型枠を敷き、基準点を視覚的に合わせる
・毎回の作業前、作業後にテンションの値をロギングし、ブレを数値で可視化する
こういった「データにもとづく張力管理」を推進するべきです。
2. 張力コントロールの自動化
昭和時代の「経験と勘」だけに頼った手作業テンションから、今は自動テンションコントローラーや吸引台などの自働設備も導入が進んでいます。
たとえばプリント台自体に微細な吸盤や真空ポンプがついていると、Tシャツを乗せるだけで上下左右から均等に吸引され、生地の偏り・シワ・たるみのリスクを大きく削減できます。
また、一部アパレル大手ではロボットアームによる自動生地セットも始まっており、ヒューマンエラーの排除が加速しています。
3. 張力「管理表」の運用で標準化
最も重要なのは、「どのTシャツのどの工程で」「誰がどの張力数値を設定したか」を製品ごとに記録し、見える化することです。
たとえば
・品番/サイズごとにテンション設定値を一覧表化
・毎ロットでサンプリングし、張力値のズレ推移をグラフ化
・不良が発生した場合は即座に張力履歴をさかのぼって原因究明
こういった取り組みは、生産現場の属人化排除と継続的な品質向上に直結します。
バイヤー・サプライヤーの視点で得るべき知見
バイヤーは「工程標準化」と「現場改善力」を重視
バイヤーの視点からは、高品質なTシャツを安定して納入できるサプライヤーこそが信頼に値します。
単に「プリント可否」だけを見るのではなく、
・冶具管理、テンション管理の手順や履歴が標準化されているか
・現場の改善サイクル(PDCA)が定期的に回っているか
・トラブル時に可視化された記録から速やかに原因究明できる体制か
こういった現場改善力の有無を取引判断の軸にすべきです。
サプライヤーも「見える化」への投資は必須
サプライヤー側は、「うちの現場は昭和スタイルで…」ではなく、目に見える品質データや治具整備、見本基準管理を強化しましょう。
そしてバイヤーとのコミュニケーションで
・「このテンション値・この冶具で毎回同一基準で生産」
・「ズレトラブル時は〇〇記録をバイヤーにも共有」
といった現場の透明性を信頼に変える戦略が重要です。
まとめ:アナログ業界こそ基準化と管理で突破せよ
ビッグシルエットTシャツ印刷の中央ズレ防止は、「感覚と勘」から「基準化と見える化」へのシフトで大きく改善します。
治具やデジタルガイドなど小さな投資でも、現場に具体的な基準をもたらせば、工程トラブル・ロス品・クレームの大幅削減に直結します。
アナログ文化が強い業界だからこそ、考え方ひとつで競争力を持ったサプライヤーに変わることができます。
まずは「全員が同じ基準で、正しいやり方を見て、記録できる」体制づくりから始めてみてはいかがでしょうか。
これがバイヤー、サプライヤー、現場作業者すべてにとって価値ある改善となることを、私は長年の経験から強く実感しています。
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