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不具合対策が“設備投資回避”で中途半端に終わる現場

目次
不具合対策が“設備投資回避”で中途半端に終わる現場とは
製造業の現場では、不具合やトラブル対応は日常茶飯事です。
しかし、不具合原因が十分に解消されず、場当たり的な対策で終わってしまう事例が後を絶ちません。
特に、「これ以上の設備投資は難しい」という経営判断や組織慣習が壁になることが多く、不具合が再発する温床となっています。
本記事では、20年以上にわたり製造現場を見続けてきた筆者の視点から、なぜ設備投資回避の判断が不具合対策を中途半端にしてしまうのか、その根底にある課題、そしてそこから抜け出すための現実的なヒントについて深掘りします。
なぜ“設備投資回避”が不具合対策の足かせになるのか
予算制約が優先される現場
製造業の多くは、特に景気の波が激しい昭和の時代から「コスト意識」「無駄の削減」が強く根付いています。
部門の目標はコスト低減であり、「不具合が出ても今ある設備でなんとかしなさい」という無言の圧力が現場にのしかかっています。
予算要求は「それって本当に必要か?」と何重ものハードルを課されがちです。
投資回収年数が短期間で示せなければ、設備導入案は却下されます。
そのため、現場担当者は一時しのぎの応急処置に終始しがちです。
リソースの配分バランスに問題
経営層や管理職の多くは、「投資」=「すぐに業績改善につながるか」に関心を向けます。
不具合対応設備への投資よりも、増産設備や新商品設備のほうが優先されがちです。
不具合撲滅の“見えない価値”は、短期的な数字になりにくいため軽視されるのです。
設備投資を回避し続ければ、いつまでもスタッフの手間や作業指導、検査追加というアナログ対策しか残らなくなります。
この結果、本質的な改善は進まず、「どうせ一時しのぎで…」と現場の士気も下がっていきます。
昭和的マインドの影響
「カイゼン」と「ガマン」の混同も、根深い課題です。
本来の改善は、原理原則に立ち返り、構造的な問題にメスを入れるものです。
ところが、「みんな知恵と汗でカバーしろ」「昔はこれでやってきた」という声が、いまだ現場に残っています。
この古い価値観が“設備に頼るな”を正義にしてしまい、組織的な進化を妨げています。
設備投資を避けた末の現場に起こること
属人化が加速する
投資が認められず現状設備でやりくりを続けると、最終的には“人依存”が強まり、ベテラン頼み・勘やコツによる運転に逆戻りします。
人の入れ替わりや生産工程の変更が難しくなり、生産変動時のリスクが高まります。
万一のトラブル時、「○○さんがいないと直せない」「△△さんのやり方でないと通らない」というブラックボックスが増えるのです。
品質問題の温床化
不具合を“直せないけど発見できたらよし”とする場面が増えるため、検査項目・手間が増大します。
本来的には発生させない設計や改善が必要なはずですが、検出強化でごまかしてしまいがちです。
しかも検査コストや手作業が増すと、積み上げ式で新たなコスト・工数が増え続け、工場全体の生産性は確実に低下します。
“ゆでガエル現象”による悪循環
設備投資回避が続くと、現場は「できる範囲でやるしかない」状態に慣れてしまいます。
本質的な問題解決を諦めて、“応急処置”や“人海戦術”が当たり前になります。
時間が経過するほど現場の危機感は薄れ、いつか致命的トラブルに至る“ゆでガエル現象”に陥るのです。
現場から経営層へ、真に訴えるべき“価値”の伝え方
ROI(投資対効果)の“見える化”を徹底する
設備投資によるメリットは、単に不具合回避だけではありません。
品質安定・工数削減・安全向上・属人化解消・標準化推進など、長期的な経営インパクトも含めて数値化することが重要です。
例えば、「1件の不具合が出るたびに追加検査X人時、廃棄・逸失利益Y万円」など現実的なコストを明示し、5年後・10年後までの損得シミュレーションを示しましょう。
人的コストや“時間価値”を可視化する
「今ある戦力でカバーできる」は一見正論に見えますが、現場スタッフの“労働時間コスト”は無視できません。
付加価値を生まないムダ作業・チェック工数に使う時間は、会社にとっての“損失”です。
また、ベテラン退職による技術継承コストも設備投資に置き換えることで、長期的なリスク低減につながることも伝えましょう。
現場の声とエビデンスを積極的に上げる
単に「この設備がほしい」だけでなく、「これまでの苦労・工夫」や「限界に達した証拠(不具合発生回数、作業者の負担度)」を整理し、経営層に訴えることが重要です。
「“現場はがんばっている”→“現場はすでに限界”」というメッセージを、具体的なエビデンス(数値や写真・作業記録など)とともに提出しましょう。
サプライヤー・バイヤー視点での対策と工夫
バイヤーは“長期リスク”を読み解く目が重要
サプライヤーとして納品先から「投資はしない、現場で何とかして」と言われても、従うだけでは取引先として信頼は築けません。
本当の信頼は、「なぜ設備投資が必要になるのか」「どんなリスクが想定されるのか」を客観的・論理的に示せるパートナーであることです。
投資を回避し続けた結果、品質トラブルや納入遅延が発生すれば、最終的に大きな損失や信用喪失が降りかかります。
そのリスクを“長期視点”で伝え、さらに「最小投資で最大効果」を狙う提案力も大切です。
現場を知り抜いた“現実的な改善提案”
「全自動設備がなければ何もできない」ではなく、「僅かな改造で不具合発生源を断つ」「人の作業を補完する部分的自動化で属人化を避ける」など、負担や金額の大きさに応じて段階的な提案を実施するのもポイントです。
また、投資以外の改善(工程レイアウト工夫や測定方法変更など)も含め、課題をあらゆる角度から解決する姿勢が評価されます。
“アナログ脱却”は小さな一歩から:ラテラルに考え抜く大切さ
小さなツール導入から変化が生まれる
昭和から続くアナログ現場をいきなりデジタル化・自動化するのは困難ですが、「検査用タブレットの導入」「既存設備用の事故防止センサー追加」など小さな投資は変革の第一歩です。
現場が実感できる“分かりやすい成果”を積み上げることで、組織全体の投資マインドを徐々に変えていけます。
横断的な知恵と異業種の発想で突破口を探る
業界内だけの常識や暗黙知にとらわれず、異業種の現場改善事例や最新IoT機器の取り組みを柔軟に取り入れる姿勢が重要です。
例えば、食品工場の品質管理方法や自動化ノウハウを部品製造に応用する、など“外の知恵”を意図的に吸収しましょう。
「このやり方は無理」「うちの現場では定着しない」と最初から諦めては、本質的改善は決して生まれません。
既存の作業や仕組みに対して“なぜこうなっているのか?”とラテラルに問い続けることから、次の地平線が見えてくるのです。
まとめ:設備投資を恐れず、“現場本位”の対策を追求しよう
不具合対策が設備投資回避で中途半端に終わる現場には、その奥に日本の製造業が抱える“昭和型慣習”と“コスト圧力”の構造問題が潜んでいます。
「現場力」や「工夫の精神」はもちろん大切ですが、本質的な問題解決には時に“投資”も欠かせません。
未来の現場が、属人化や応急処置に頼らず、次世代のモノづくりの誇りを持てるように——。
現場目線での本音と事実、そして新しい視点での説得・提案力を、今こそ磨くべき時代です。
「今、この一歩を踏み出せるかどうか」が、会社と自分自身の未来を大きく左右すると私は確信しています。
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