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飲食店向け備品のOEM開発と製品化を成功させる協業の進め方

目次
はじめに:製造業の現場から見るOEM開発のリアル
OEM(Original Equipment Manufacturer)とは、他社ブランド製品の製造を請け負うビジネスモデルです。
特に飲食店向け備品の分野では、既存品だけでは叶えられないニーズや、競合との差別化を目指してOEM開発が盛んにおこなわれています。
しかし現場感覚で言えば、OEMは決して“発注すれば自動的に完成品ができあがる魔法”などではありません。
昭和から続く業界特有のアナログな風土や、現場と企画の温度差、コミュニケーションの壁、そして生産・品質管理ならではの制約。
これらを超え、発注側(バイヤー)と供給側(メーカー・サプライヤー)が本当に満足できる製品開発を実現するためには、工夫と信頼に基づいた「協業」が不可欠です。
本記事では、20年以上の製造業経験、現場管理者と協業の視点から、飲食店向け備品のOEM開発を成功に導くためのリアルで実践的な協業の進め方をお伝えします。
なぜ飲食店備品でOEMが求められるのか?
従来品にはない現場ニーズへの対応
飲食店備品の多くは、カタログ品や汎用品では現場業務の「痒いところに手が届かない」ことがしばしばです。
たとえば、清掃効率を高めるためにサイズや素材にこだわった什器、独自ブランドをアピールしたいオリジナル食器、ロゴ入りユニフォーム、衛生管理基準に合致した収納ツールなど、現場特有の要望が強く表れます。
これら現場の声こそが差別化の源泉であり、その実現のためにOEM開発が選択されるのです。
小ロット多品種への対応力
飲食業界では出店形態、客層、ブランドイメージなど多種多様な事情が絡みます。
必然的に「小ロット多品種」のニーズが生まれやすく、標準品でカバーしきれない特注案件が発生しやすい傾向にあります。
この場合、製造側とのきめ細かな協業がなければ、リードタイムの遅延や品質問題、コスト増加などリスクが高まります。
環境への配慮と規制対応
近年、プラスチック削減、食品安全、衛生管理など法規制やSDGsの観点からも、既存備品の刷新を促されるケースが増えています。
これに対応するには、OEM先と共に開発や認証取得までを並走する姿勢が求められます。
成功するOEM協業のための7つの鉄則
製造現場から見た、飲食店向け備品のOEM開発を成功させる具体的な進め方・注意点を7つの鉄則としてまとめます。
1.現場起点で本質的なニーズを掘り下げる
OEM開発の大前提は、「何のために開発するのか」を徹底的に明確化することです。
現場バイヤーが製品仕様やコストに意識を向けるのは当然ですが、メーカー側も形式的に「今のものにロゴを入れるだけ」など表層的な提案に終始しがちです。
ですが、現場利用者へのヒアリングや問題点の共有を通じて、「どこが本当に困っているのか」「理想と現実のギャップは何か」を掘り下げます。
また、サプライヤー側でも「その要件はなぜ必要なのか?」「量産時にどのプロセスでネックになりそうか?」といった本質アプローチを提示できることが協業を成功に導く第一歩となります。
2.信頼関係とオープンコミュニケーションを築く
昭和から抜け出せない日本の製造業にありがちな光景が、サプライヤーに対して完全発注—指示型のトップダウン関係です。
しかしOEMの成功には、企業間・担当者間の信頼構築と、率直でタイムリーな情報共有が不可欠です。
お互いの技術的限界や品質方針を包み隠さず相談できる関係を築きましょう。
「小さな問題も早期に伝える」「困難な要求は率直に相談する」ことが、思わぬトラブルや納期遅延を防ぐ最大の武器となります。
3.開発・生産体制を”見える化”する
購買側が工場見学やラインチェックを行い、生産現場の実態を把握することは極めて重要です。
逆に、メーカー側からも設計工程や材料調達の進捗、試作時の問題点などをオープンに開示することで、お互いの理解度が飛躍的に高まります。
昭和的な“現場からの情報隠し文化”に囚われず、互いに現実解を模索する姿勢が協業の質を押し上げます。
4.明確なスペック・品質基準を初期段階で合意する
OEM失敗の多くは、納品直前になって「こんなはずじゃなかった」「思っていたより違う」という“設計—期待ギャップ”から生まれます。
それを回避するには、初期段階で図面、製品サンプル、スペックシート、品質規格(JISや独自基準等)を具体化し、両者で明確にすり合わせることが不可欠です。
「使い方」「耐久性」「クリーニング頻度」「安全規制」など、現場利用のリアルを反映させた基準設定が重要です。
5.生産リスクを想定した柔軟なスケジュール管理
備品OEMの現場では、部材の想定外の遅延、小ロット多品種に伴う段取り替え、法規制の追加対応など、計画通りに進まない事態が頻発します。
「理想納期」を設定するだけでなく、生産現場視点で“バッファ(余裕期間)”や“想定トラブル時の代替策”を事前に組み込むことが大切です。
また、進捗のマイルストーンを可視化し、遅延発生時には早期連絡・協議を徹底しましょう。
6.コストと付加価値の“バランス設計”
OEMでありがちなのが、コストダウン一辺倒か、逆に理想を追いすぎて高止まりしてしまうケースです。
購買側は徹底したコスト管理を求める一方で、独自のブランド価値や機能性も譲れません。
メーカー側からは「量産時にここを変えるとコストが大きく減らせます」「この工程を省略せず品質を優先したい」といった現場提案を積極的に投げかけましょう。
また、不要な機能・付加価値は潔くカットし、両社が納得できる“丁度よい設計とコスト”を探る姿勢が不可欠です。
7.納品・アフターサポート体制も協議する
完成品を納品して終わりではありません。
想定外の不具合時対応、追加生産・改良リクエストへの柔軟なサポート体制が、長期的な信頼構築につながります。
メーカー側はアフターサポートの窓口や品質保証期間、パーツ再生産体制を明確化。
バイヤー側も現場フィードバックやトラブル発生時の連絡体制を組織内外で整えることが肝要です。
昭和的アナログ文化とモダン協業の両立がカギ
変わらぬ現場感覚の重要性
製造業の現場は今なお、ベテラン職人による感覚的ノウハウ、清掃や安全面でのアナログなPDCA管理が根強く残っています。
この「現場力」を否定せず活かしつつ、DXやクラウド、デジタルツールの導入による情報共有も推進しましょう。
たとえば、仕様変更や生産進捗をクラウドでリアルタイム共有しつつ、QC(品質管理)現場では現物検品や現場立会いも怠らない。
“昭和と令和”、アナログとデジタルの良いとこどりの協業スキームが求められます。
現場の“圧倒的当事者意識”を持った人材育成
協業で最も大事なのは個々人の「当事者意識」です。
バイヤーもサプライヤーも、自分ごととして現場の負担や困りごとをイメージし、それに対して現場起点の提案やフォローを惜しまない。
その姿勢が真のパートナーシップと品質競争力を生み出します。
会社間の垣根を超えて“自分たちの製品”として関わること、それが昭和も令和も貫く協業の本質だと確信しています。
協業の先にある、製造業・飲食業界の未来
パートナーシップこそ競争力
品質やコストだけでなく、スピード・柔軟性・付加価値を高めるためには、バイヤーとサプライヤーが深く連携し、新たな挑戦の場を共に切り拓く姿勢が最重要です。
昨今は外食産業や小売店においてQCD(Quality, Cost, Delivery)はもちろん、「顧客価値」「持続可能性」への意識がますます問われています。
ステークホルダー全体で“価値づくり”に取り組む協業、それがこれからの製造業をリードする原動力となるのです。
まとめ
飲食店向け備品のOEM開発と製品化は、単なる受発注関係でなく、現場を起点とした”協業”でこそ最大の成果が得られます。
現場ニーズと技術限界のすり合わせ、昭和の現場流アナログ文化と現代的な情報共有の共存。
そして、バイヤー・メーカー双方が圧倒的に”当事者意識”を持つこと。
現場から生まれる知恵、協業による新たな価値が、次世代の製造業と飲食業界の発展を牽引していくことでしょう。
製造業に勤める方、バイヤーとなる方、サプライヤーとしてOEM事業拡大を目指す方々。
お互いの視点に立ち、協業を磨き、令和の新しいものづくりにぜひ挑戦してください。
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