投稿日:2025年11月2日

アンダーウェアの通気性を高めるメッシュ編みと立体裁断の技術

はじめに

アンダーウェアは、私たちが毎日身につける衣服の中でも素材や作りに最も敏感であるべき存在です。
特に、夏場の蒸し暑さやスポーツ時のアクティブな場面では、通気性の高さが快適さの決定的な差となります。
本記事では、現場の製造経験を活かし「通気性」を高めるためのメッシュ編みと立体裁断の技術について解説します。

また、昭和から続くアナログ的な工程から抜け切れない現場が多い中で、現代の製造現場やサプライチェーンではどのような技術革新やバイヤーの要望変化が起きているのか、現場視点で掘り下げます。
製造業の技術者、バイヤー志望者、そしてサプライヤーの立場でバイヤーの考え方を知りたい方にとっても必見の内容です。

アンダーウェアの通気性が重視される背景

アンダーウェアの本質的な役割は、肌をやさしく覆い汗を吸収し、衣服の摩擦や外部刺激から体を保護することです。
もっとも、近年の気温上昇やライフスタイルの多様化、テレワークやアウトドアアクティビティの隆盛などによって、アンダーウェアに求める通気性や快適性は年々高まっています。

一方で、アンダーウェアの設計は一見単純そうに見えて、実は緻密な技術と素材選定が重要です。
なぜなら、体を包む面積が広く、発汗や摩擦、締め付けによる快適性への影響が大きいからです。
バイヤー視点でも、消費者クレームやリピート率に直結する重要な評価ポイントとなっています。

メッシュ編みの技術とは

メッシュ編みの仕組み

メッシュ編みとは、生地の構造を編み目の大きいネット状にしたもので、空気や湿気が通り抜けやすいのが特徴です。
メッシュには「丸編み(ラッセル)」や「タテ編み」などの種類があり、編み方や糸の選び方次第で強度・ストレッチ性・肌触りなどをコントロールできます。

現場では、特に汗をかきやすい脇や背中など、局所的にメッシュを配することで、必要な部分に通気性を集中的に持たせる設計思想が強くなっています。
これにより、美観やフィット性を損なわずに快適性を最大化することができます。

素材選定と編み機の進化

従来のコットン素材のメッシュから、近年は、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維、それに吸湿速乾性や消臭性を付加した機能糸によるメッシュ生地が一般化しています。
特筆すべきは「マルチフィラメント糸」と呼ばれる極細繊維を撚った糸の進化です。
これにより、肌触りが滑らかで毛玉も出にくく、かつしっかりと通気層を確保できる複合メッシュ生地の開発が加速しています。

現場サイドとしては、編み機の自動制御化による「部分メッシュ編み」「配色メッシュ」「立体メッシュ」などの開発も進み、バイヤーとの製品企画段階で「どの部位にどのレベルの通気性を設けるか」という極めて細かい仕様打ち合わせが求められるようになりました。

立体裁断の技術が生む快適性

立体裁断の基本とメリット

立体裁断とは、平面のパターンではなく人体の曲線に合わせて複数のパーツを立体的に設計・裁断・縫製する技術です。
アンダーウェアは、体を包みつつも突っ張りやシワ、無理な締め付けを抑える必要があるため、立体裁断の有効性が年々高まっています。

立体裁断によってアンダーウェアは、体のカーブに合わせて最小限の圧迫感でしっかりフィットし、運動時のズレや擦れを防ぎます。
また、体と生地の間に適度な空間が生まれるため、通気層が確保され、メッシュとの併用で抜群の快適さをもたらします。

CAD/CAM導入と現場の変化

現場では、従来は職人のカンと経験に頼っていた立体裁断パターン作りが、近年はCAD(コンピュータ支援設計)とCAM(コンピュータ支援製造)によって劇的な進化を遂げつつあります。
ボディスキャナーを使った三次元体型データの取得も一般化し、年齢や性別、高身長・細身体型など幅広いターゲットに合ったパターン設計が可能となっています。

これはバイヤーにとっても魅力的なアピールポイントで、「自社だけの専用フィット」「ターゲット別の立体仕様」といった差別化提案がしやすくなります。
サプライヤーから見れば、いかに顧客の生活シーンや体型特性に合わせた独自立体パターンを提案できるかが、受注獲得の鍵となる時代です。

昭和的アナログ工程とのギャップと課題

なぜ未だにアナログ工程が根強いのか

メーカー現場のリアルを語ると、いまだに手作業中心のパターン出しやサンプル縫製、現物評価に頼る工程が残っているのが現実です。
その背景には「現場の職人技術は数値化しづらくデジタル化が難しい」「小ロット対応・コスト削減要求とのバランス」といった構造的課題があります。

また、「アンダーウェアは直接肌に触れるため生地感覚や縫製精度は最後は人の手・感覚で見るべきだ」という昭和マインドも根強く、技術導入のハードルとなっている部分も見逃せません。
バイヤーからの発注時にも「過去実績でOKだったから」「値段が最優先」とされると、新技術投資が後回しにされがちです。

そのギャップをどう埋めるか

一方で、競争力強化やESG要求(環境・社会・ガバナンス)、労働人口減少による自動化推進の潮流を考えると、もはや現場もアナログ思考から脱却するしかありません。
成功しているメーカーでは、職人のパターン設計にAI提案を組み合わせたり、CAD-CAMの標準パターンをベースに微調整だけ熟練者が担当する、といったハイブリッド手法が進んでいます。

また、バイヤー側の「商品仕様を分解し論理化する力」「どの技術がどんな市場価値をもたらすかを見極める力」が問われる時代へと変わっています。
現場・バイヤー・サプライヤーが共通認識を持ちやすい「技術〔仕様書〕の見える化」が急務です。

バイヤーがサプライヤーに求めること

バイヤーは何を重視しているか?

バイヤー視点でアンダーウェアの通気性や快適性を評価する際、単なる生地スペックやパンフレットだけでなく、「着用シーンでの体感」「エンドユーザーの声」まで見据えた企画力が重要です。
「どんなメッシュ編み技術を使い、どの部位に配置し、その結果どんな着心地になるか」を具体的に示せるサプライヤーが重宝されます。

近年は、小ロット・多品種に伴い「3D立体画像」「動画」「VR」などでの仕様・フィット感確認を希望するバイヤーも急増しており、現場側にも技術的アピール力が問われるでしょう。

サプライヤーが価値を提案するには

サプライヤーとしては、自社の技術を単なる「生地」や「裁断方法」ではなく、「エンドユーザーの課題をどう解決するか」「アップデートされた昭和からの進化ポイントは何か」といったストーリーを、現場エピソードや製造実績とともに伝えることが必要です。

たとえば、「素材×立体裁断×AI設計×アナログ最終検品」という多層的な製造プロセスを、具体的な工程写真やデータとともに説明し、現場の改善・工夫・高評価事例を盛り込むことで、「よくあるアンダーウェア」との違いを実証すべきです。

今後の技術動向と製造現場の地平線

メッシュ編みや立体裁断の更なる進化として、今後はAIによる着用シミュレーション、バイオ由来繊維・リサイクル素材の高機能化、さらにはスマートウェア(温度調整・発汗モニタリング)との融合も加速していきます。

現場では、消費者の体型・利用シーン・嗜好性をパーソナライズ化する動きが本格化し、「着心地の数値化(HEATMAP評価)」「オンライン3D採寸」「オンデマンド生産」など、バイヤーにも高度な技術リテラシーが求められる時代になりました。

サプライヤーもしっかりと最新技術や市場要求をキャッチアップし、積極的に「現場目線」「エビデンス重視」の技術提案を行うことが差別化・生き残りへの決定打となります。

まとめ

アンダーウェア市場は、表面的なデザイン競争から、深化した快適性・機能性の技術競争の時代へと移りつつあります。

メッシュ編みや立体裁断技術の進化は、確かな現場力と継続的な革新で生まれます。
昭和的な感覚も大切にしつつ、現代のデジタル技術や市場要求に柔軟に応えることが、ものづくり現場・バイヤー・サプライヤーすべての成長に不可欠です。

これからの製造業に携わるみなさんが、ぜひ現場目線の実践的な行動と、ラテラルシンキングで新たな地平線を開拓していかれることを願っています。

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