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木製文具の印刷でエッジ部分にムラを出さないための版圧調整

目次
はじめに:木製文具の印刷におけるエッジ部分の課題
木製文具は、その温もりある質感とナチュラルな魅力から、長く愛されているアイテムの一つです。
昨今はSDGsや環境配慮の流れもあり、企業ノベルティやギフト用途で脚光を浴びています。
しかし、木製という素材特性から、印刷現場では「エッジ部分のムラ」という特有のトラブルに直面しがちです。
特に、角や縁にインクがのりにくくなる、あるいは逆に滲んでしまうという問題は、仕上がりの品質に直結します。
本記事では、これらの課題を現場目線で深掘りし、昭和から続くアナログ業界の知恵と、最新の版圧調整ノウハウの両面から、解決策を提案します。
調達購買担当、生産現場の方、さらにはバイヤーやサプライヤーにも役立つ内容です。
木製文具の印刷とは―素材特性の把握が肝心
木製文具の印刷方式と一般的なトラブル
木製文具には主にシルクスクリーン印刷、パッド印刷、インクジェット印刷などが用いられます。
しかし、紙やプラスチックとは異なり、木は「柔らかく不均一」「吸湿性が高い」「木目の凹凸が目立つ」といった素材特性を持っています。
こうした背景から、
– 印刷時に版がエッジ部で浮きやすい
– インクがエッジ部に溜まりやすい、もしくは乗りにくい
– 木目による色ムラやにじみが発生しやすい
といったトラブルが頻出します。
この“エッジムラ”対策には、現場でのきめ細やかな版圧コントロールが不可欠となります。
昭和から続くアナログ現場の工夫
印刷現場では、長年培った「経験則」「手触り感覚」に基づいて、職人がその都度、圧力やインクの質・量を微調整してきました。
たとえばブランケット下に紙一枚分のスペーサーを抜き差ししたり、印刷順を工夫したり、本当に細かな工夫が昭和から令和の今も脈々と息づいています。
しかし、その多くは「勘と経験」に頼りがちで、属人化しやすい業務にもなっています。
次章で、その「技術の言語化」と「再現性アップ」を目指した版圧調整メソッドをご紹介します。
エッジ部分のムラを出さないための版圧調整ノウハウ
なぜ「版圧」が重要なのか
「版圧(はんあつ)」とは、印刷版が製品に当たる時の圧力のことです。
この調整は、印刷品質を大きく左右するカギであり、特にエッジ部分のムラ防止には繊細なコントロールが求められます。
正しい版圧が決まっていないと、エッジだけ「押しすぎて滲む」「浮いてインクがのらない」といった現象が起きやすくなります。
具体的なステップ:現場目線の版圧調整方法
1. 素材ごとの個体差チェック
木製品は同じロットでも固さや厚みが微妙に異なります。
まずはランダムサンプルをピックアップし、素材・形状ごとの“潜在的な差”を見極めましょう。
2. 印刷台と治具の安定化
治具や台の“ガタつき”があると版圧の再現性が大きく損なわれます。
治具面は必ず平滑にし、固定を徹底するのがファーストステップです。
3. エッジ部の圧力分布の見える化
1円玉など薄い金属片や専用の圧力感知紙(プレスチェックフィルム)を木製品のエッジ部分、中央部分、斜め部分に挟み、版を仮当てします。
圧痕や変形、発色の度合いで均一性を客観的に評価できます。
4. 低圧〜高圧印刷の試し刷り
インクの設定粘度を一定にし、版圧だけを少しずつ段階的に強めていきましょう。
都度、乾燥後に仕上がりをチェックし、「エッジがにじまないが、かすれもない」」ベストポイントを探ります。
5. ベスト値の定量化と作業標準化
ベストポイントのインク厚・にじみ量、プレス荷重は必ず記録・数値化しましょう。
これをマニュアル化し、誰でも再現できる体制を作ることが“属人化”脱却、業務の省力化にも繋がります。
オートメーション化の可能性と限界
近年は、印刷機自体に圧力測定やフィードバック制御を搭載した“スマート印刷機”も増えています。
ただし、木製のような自然素材は自動化にも限界があり、最終的な微調整は現場の手作業が肝要です。
一方で「圧力の見える化データ」は、誰がやっても同じ仕上がりレベルを保つための有益な武器となります。
版圧調整ノウハウを“事前要求”へ展開しよう
バイヤー/購買が知っておくべきこと
木製文具の印刷加工を外部発注する際、調達/購買サイドで「エッジ部の品質要求水準」を明確にしておくことが極めて重要です。
– どの程度のエッジ濃度ムラまでなら許容できるか?
– サンプルチェック時に「版圧再現値」を併記させることは可能か?
– 製造サプライヤー側での“作業標準化”(担当者が変わっても仕上がる)体制はあるか?
こうした項目をRFPや発注条件に盛りえれば、「後工程での手直し」や「納品トラブル」の大幅減少に繋がります。
サプライヤーの立場から見たバイヤーへのアプローチ
サプライヤー側からも、「従来のアナログ職人技」から「科学的な見える化・技術文書化」へと、管理レベルの一歩進化を目指しましょう。
納品時には「○○版圧にて加工」「エッジ部のインク厚××μm」などの測定データを品質保証書や出荷記録に添付することで、バイヤーとの信頼も高まります。
また、生産管理・工程改善に積極的な姿勢は、競争優位となるでしょう。
現場・調達・サプライヤー連携で業界全体の進化へ
エッジ部分のムラ対策は、単に印刷現場だけの課題ではありません。
サプライチェーン全体で「どこまで求めるのか」「どう標準化するのか」「どのデータを残すのか」といった、工程設計から品質保証までをトータルで見直す好機です。
歴史あるアナログ現場の知恵、“勘”を整理し、新たなテクノロジーやデータ活用と融合させることで、木製文具の新しい価値創出が可能となります。
まとめ:アナログとデジタルの融合が“ムラなき未来”をつくる
木製文具の印刷でエッジ部分にムラを出さないためには、“感覚”に頼るだけでなく、版圧の定量化・作業標準化と、現場目線の小さな工夫の積み重ねが何より重要です。
– 1個ずつ異なる木製素材の特性を見極める
– 版圧調整を科学的に見える化・記録化する
– 現場だけでなく、調達・バイヤーも仕様要求と品質基準を事前共有する
– サプライヤーはデータ提出や技術標準化で差別化する
このようなアプローチこそが、昭和から令和、そしてその先の製造業の「現場知」が産業を底上げし、“ムラなき未来”を切り拓くのです。
木製文具の印刷に関わる皆様の参考になれば幸いです。
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