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熟練技術者の暗黙知の見える化とその技能伝承・共有の仕組み構築

目次
はじめに:熟練技術者の暗黙知をなぜ見える化するのか
製造業の現場では、「熟練者の技」と呼ばれるノウハウが長年受け継がれてきました。
しかし、一見するとささいな動作や、ちょっとした機械の調整方法が実は製造現場の品質や効率を大きく左右しています。
これらの知識や技術はドキュメント化されず、本人の経験や感覚、「昔からこうやってきた」という言葉に集約されることも多いのが現実です。
いわゆる「暗黙知」と呼ばれるこの技能を見える化し、次世代へしっかりと伝承・共有していく仕組みは、今や各社にとって喫緊の課題となっています。
その背景には、熟練工の高齢化や人手不足、そしてますます高まるQCD(品質・コスト・納期)への要求があり、まさに業界全体として「昭和の職人芸」から、現代のシステマチックなものづくりへ舵を切ろうとしています。
本記事では、長年の現場経験と管理職視点から、熟練者の暗黙知をどう見える化し、伝承・共有の仕組みをどう作り上げるか。
その実践的な方法から、変わりつつある業界の動き、導入時の失敗例や新しいアイデアまで、深掘りして解説します。
暗黙知とは何か?形式知との違いと現場に残る課題
暗黙知とは、言葉やマニュアルでは明確に伝えにくい、本人の経験や勘・コツに根ざした知識や技能のことです。
一方、形式知は「誰がやっても同じ結果になる再現性のある知識」であり、手順書や標準作業、教育マニュアルとして文書化されているものを指します。
製造現場では、例えば「このバリを削るときはこんな角度に刃を当てるときれいに取れる」「この音がしたら機械のネジを増し締めする」「温度計じゃなくて、表面の手触りで硬化状態を見る」など、すぐに数値やマニュアルに落とし込みにくいノウハウが多々存在します。
こうした暗黙知が見えないままベテランの退職や異動が起きれば、現場の品質や生産安定性は大きく揺らぐことになります。
現場管理者にとっては「ベテランの神業がなぜ再現できないのか」と頭を抱える一大課題なのです。
昭和型“見て盗め”文化の限界
日本の製造業、とりわけ昭和から続く企業では、「先輩のやり方を見て盗め」という教育方針がいまだ根強く残っています。
ですが、人材の流動化が進み、“技能伝承に10年”という悠長な時代ではありません。
多能工化や即戦力化が叫ばれる中、徹底した暗黙知の見える化が不可欠となっているのです。
“熟練”の本質を見極める:まず何から着手すべきか
暗黙知を見える化する前に、一つ注意したいのは「技能の本質を見極めること」です。
熟練者のすべての行動をマニュアル化するのが正解ではありません。
なぜなら、やみくもに全てを記録しても、再現性の低いものや時代遅れの手法まで引き継いでしまう恐れがあります。
現場の隠れた課題や、無駄な作業も「これが正しい」と伝承されてしまうことも多いのです。
そうならないために、暗黙知の見える化を始める際には現場作業の棚卸しが不可欠です。
まずは以下の観点で整理してみましょう。
誰の、どの技能が現場で最大の価値を生んでいるか?
・高品質・高効率の源となっているコアスキル
・“事故ゼロ”“不良ゼロ”を実現してきたプロの観察点
・ちょっとした調整・工夫で能率や歩留まりを大幅に改善してきた裏ワザ
こうした本質的なノウハウを、現場の作業員・リーダー・現場管理職が一緒になって洗い出します。
ここが最初のスタートラインです。
「なぜその技が必要なのか」を明らかにする
単なる手順の記述に終わらせず、「それがなぜ重要なのか」「その技能がなければどうなるか」を必ず添えることで、伝承されるべき技能の意義がぶれなくなります。
暗黙知の見える化の実践手法
では、実際にどのような方法で暗黙知を見える化していけばよいのでしょうか。
既存の現場や他社事例を踏まえ、代表的かつ有効な方法を紹介します。
1. 動画・映像記録による技能保存
ベテラン作業員の手技・勘所を、現場でそのまま撮影する。
このときにポイントになるのは「現場で問いかけながら撮る」ことです。
・その動きはなぜ行うのか
・どこに着目して作業しているのか
・トラブルが起こりそうな兆候をどのように察知しているか
など、本人へのインタビューを随時挟むことで、単なる記録ではなく“思考の流れごと”記録できます。
2. ヒヤリングと観察で作業分析を行う
熟練者の作業を新人・外部者(時にはバイヤーやサプライヤーも巻き込んで)に説明してもらい、受け手が分からなかったこと・不明点・「なぜそうするのか?」を都度フィードバックします。
これにより「本人には当たり前でも、他者にとっては未知の技」が可視化できます。
また、工程の前後や不良発生時の対処もセットで確認することで、“異常時対応力”といった暗黙知も伝承可能です。
3. 技能マップ・スキルチャートによる技能分解
一つの製造工程を分解して、どのポジション・どの技能がどのレベルまで習熟しているかをマッピングする方法です。
・「ネジ締めは10段階評価でレベル7」
・「この旋盤加工作業はまだレベル4」など
個人別の到達度や要教育ポイントを見える化し、人材育成計画にも役立てることができます。
技能伝承・共有の仕組み構築:本当に機能する仕掛けとは
「記録するだけで技能が伝わる」というのは幻想です。
現場にしっかり根付く仕組みを作るには、いくつかの運用ポイントがあります。
OJT&リバース・メンタリングを組み合わせる
従来の1対1のOJTだけでなく、「リバース・メンタリング」も活用しましょう。
若手がベテランに最新のITツールの使い方や、新しい作業改善アイデアを教える。
逆にベテランは技能やコツを若手に伝授する。
世代を超えた相互学習こそ、持続可能な技能共有の新しい形です。
“できるだけ正解は一つにしない”
様々な作業手順や工夫が生まれるのも現場のダイナミズムです。
「昔ながらのやり方」「新しいやり方」双方のノウハウと効果を明確に記録し、「なぜこちらを選ぶのか」まで議論する仕組みを設けましょう。
これにより、現場が絶えず改善志向を持ち続ける土壌が醸成されます。
サプライヤーやバイヤーにも技能伝承を開く
今後、企業間の壁を越えて技能伝承を議論するべき時代です。
サプライヤーがどんな品質管理・製造技能を持っているか、バイヤーがどの工程で何を期待しているか。
定期的な現場見学・トレーニングを合同で実施し、お互いの暗黙知を共有する機会を設ければ、サプライチェーン全体の底上げにつながります。
昭和から令和へ:アナログ業界の変革をどう乗り越えるか
いまだに「紙の作業指示」「習うより慣れろ」が残るアナログ体質をいかに変え、見える化・技能伝承を推し進めるか。
現場保守派と変革派、よくある軋轢は避けられません。
ここで重要なのは「ベテランをリスペクトしつつ、若手にも主役を与える」運用です。
短期間での全面切り替えではなく、小さな成功体験を積み上げ「この仕組みで現場が本当に楽になった」「新人が即戦力になった」と当事者実感が広がれば、大きな潮流が生まれます。
さらに、DX(デジタルトランスフォーメーション)による自動記録やAI分析、IoTを活用した作業データの蓄積も、これまで暗黙知だった部分を“データで語る”時代の到来です。
アナログとデジタルの融合が、日本の製造業を次のステージへと押し上げる鍵となります。
まとめ:これからの技能伝承戦略
暗黙知の見える化と技能伝承の仕組みづくりは、単なるマニュアル化ではなく「現場の知恵と誇りを未来につなぐこと」です。
そのためには、
・技能の本質を見極める
・現場目線のやり方で記録・共有し
・若手もベテランも互いに学び合う仕組みを根付かせる
・アナログとデジタル両輪で底上げする
これらが不可欠です。
今こそ、製造業関係者それぞれが“現場発イノベーション”の担い手となる好機。
共に未来のものづくりを再構築していきましょう。
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