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投稿日:2026年1月15日

制御盤筐体部材の防塵防水加工で注意すべき点

はじめに:なぜ制御盤筐体に防塵防水加工が必要なのか

製造業の現場を長年見てきた経験から、制御盤の筐体部材における防塵防水加工の重要性は、年々高まっていると実感しています。

昭和の時代は、多くの現場でアナログな管理や工夫だけで乗り切る場面も多く見られました。

しかし、近年では製造ラインの自動化やIoT活用が進み、制御盤の内部機器の精密化・高額化が著しくなっています。

導通不良や腐食、漏電といったトラブルによる損失は、企業にとってますます深刻なリスクです。

このため、制御盤の筐体にはIP規格等に従う高度な防塵防水性が求められているのです。

本記事では、実務経験に基づいて、制御盤筐体部材における防塵防水加工のポイント、現場で見落とされやすい落とし穴、最新の業界動向まで、現場目線で詳しく解説します。

防塵防水の基準:IP規格とその現場への影響

IP規格とは何か

IP(Ingress Protection)規格は、IEC(国際電気標準会議)で定められた、外来固形物や水の侵入に対する保護等級を示すものです。

「IP54」「IP65」などの形で表示され、数字が大きくなるほど防塵・防水性が高くなります。

製造現場では、導入する設備・環境条件に応じて、このIP等級の選定が防災・品質確保の第一歩となります。

現場でのIP等級の決め方ポイント

現場では、単に上位等級(例:IP67)のスペックを満たせば安心、というわけではありません。

なぜなら高等級ほどコストアップやメンテナンス性低下のデメリットもあるためです。

例えば屋外用制御盤ならIP65〜67、屋内でも油煙や粉塵が舞う現場ならIP54〜55が求められますが、メンテ頻度や設置場所も加味して最適な等級設定が重要となります。

防塵防水加工で注意すべき筐体部材の選定ポイント

材質別の特性と注意点

制御盤筐体の主な材質には、スチール、ステンレス、樹脂(ABS、ポリカーボネート等)があります。

スチールはコストパフォーマンスに優れる反面、防錆処理が不完全だと長期で腐食リスクが高くなります。

ステンレスは耐食性が高いですが、コストも高く、内部温度が上昇しやすい傾向にあります。

樹脂製は軽量ですが熱や衝撃に弱い点がネックです。

さらに、防塵防水パッキンの材料(EPDM、シリコン等)も筐体材質との相性が重要です。

材質の選定段階で、最終的な設置環境・想定稼働年数・保守性を多面的に評価することが不可欠となります。

加工時のパッキン取り付けと圧着管理

パッキンの取付不良や圧着のムラは、実際の現場でも漏水・侵入事故の主な原因となっています。

とくに製造・組立工程が外注化・多階層化すると、「パッキン端部の未圧着」「扉歪み」「締付トルク不均一」など、品質管理のバラツキが起こりやすくなります。

ライン現場では、必ずパッキンの連続性・硬度・圧着状態を数値管理し、耐久試験(IPX試験や粉塵テスト)も平行実施することが、事故防止の観点から欠かせません。

現場で見落とされがちな落とし穴と実際のトラブル事例

端子台、配線グランド部の防水の盲点

いくら筐体そのものが高等級の防塵防水仕様であっても、ケーブルグランドや端子台まわりの小さな隙間が「水の道」となる例は後を絶ちません。

実際、多くの現場では配線孔・ケーブル挿入口へのグランドパッキンの忘れや老朽化パッキンの見落としにより、数年後に漏水事故が発生しています。

これらのポイントには、設計段階でケーブル径より適正な内径と圧着力のグロメット選定、メンテ時の定期点検手順への組み込みが極めて重要です。

現場の「楽をしたいためのDIY加工」のリスク

昭和時代の名残として「現場で少し削って穴を広げる」「ガスケットを適当に継ぎ足す」など応急的なDIY修正で凌ぐ工場も多く見られます。

一時的には便利ですが、このような加工部分こそ、絶縁不良や想定外の侵入事故のもととなります。

防塵防水要求が厳しい現場ほど、「現場で都度の加工をしない」というルールと、バイヤー側での厳格な調達仕様管理が求められています。

バイヤー目線で見る防塵防水仕様の妥当な要求水準

過剰スペック要求が招くデメリット

価格競争が激しい昨今、バイヤーが業界内の「横並び意識」や「リスク回避志向」から本来不要な高IP等級をサプライヤーへ要求しがちです。

しかしIP需要は現場の状況と費用対効果で最適化すべきであり、無闇な高等級追求は納期遅延や部品調達トラブル、ひいては全体コスト上昇の要因となります。

バイヤーは、機能・運用面で本当に必要なレベルと根拠を論理的に吟味し、現場の声も吸い上げる調整力が不可欠です。

サプライヤー側が知るべきバイヤーの本音と提案姿勢

一方、サプライヤー側もバイヤーが「なぜそれほど高等級を求めてくるのか?」の背景心理や、現場ヒアリング・顧客訪問の積極的な実施が差別化に直結します。

たとえば「メンテナンス性を失わずにIP等級を上げる改良案」「老朽筐体リフォームサービス」など、伴走提案できるパートナーこそ、長期的な取引と信頼を築くためには重要です。

最新トレンドとこれから求められる視点

スマートファクトリー時代の防塵防水ニーズ拡大

IoT化が加速する近年は、制御盤に収める機器構成が多様化し、センサー類やカメラ・通信ユニットも筐体内に組み込まれる流れが強くなっています。

この場合、従来の「一律スペック」では不十分となり、「局所的な開口部」「電子機器集中部分」ごとに、異なる防塵防水設計が求められます。

また、外部異常のリモート検知や漏水センサーなどの補助機能も積極的導入されつつあります。

現場のIoT担当者・設計者・バイヤーは、今後ますます「見えないリスク」への先回り思考が必要となります。

規格・認証動向とグローバル展開への課題

グローバル生産体制で日本の工場設備が世界市場へ流通する場合、欧州CEマークや北米UL規格など、各国の法規・規格への対応も避けられません。

日本国内だけで通用した既存設計・仕様では、輸出時に追加認証対応や再設計が発生し、想定外のコスト・手戻りリスクも表面化しています。

このため、防塵防水仕様においても初期段階から「海外展開を見据えた汎用設計」「部材の国際調達ソーシング」意識が必須です。

まとめ:現場で真に活きる防塵防水設計の極意

はじめにも述べたように、制御盤筐体の防塵防水加工は、単なる「規格通り」や「高等級の追求」では現場の最大価値が生まれません。

最重要なのは、現場の実態把握と運用に寄り添った設計・選定・加工・保守です。

そして、バイヤー・サプライヤー・現場担当者が「見落としている盲点・本音・将来リスク」を意識的に議論し合うラテラルシンキングこそ、時代がアナログからデジタルへと大きく転換するいまの製造業には不可欠です。

そもそも”完全”な密閉構造など現実には存在せず、「いつか必ず水や埃が侵入する可能性」があるという謙虚な視点を、ユーザーもメーカーも持ち続けることが大切です。

防塵防水は“スペックのため”ではなく、“現場を守るため”の加工や運用だという原点を忘れず、これからも進化し続けていきましょう。

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