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投稿日:2025年9月14日

輸出契約で発生する多言語契約書のリスクと翻訳精度確保方法

はじめに:製造業における多言語契約書の重要性

グローバル化が進む現代の製造業では、輸出入の取引が一般化しています。
それと同時に、多種多様な言語でやりとりされる契約書が不可欠となっています。
日本の製造業が世界のマーケットと取引をする際、言語の壁は想像以上に高いものです。

契約書は単なる「約束の証」以上の意味を持ちます。
調達・購買や生産管理、品質管理の各現場で、取引条件の明確化やトラブル回避の要となるためです。
一方、昭和から続くアナログ的な風土が根強い工場や企業では、契約書の扱いに関して旧態依然とした運用が残っています。
このことが、新しいリスクを生み出す原因になる場合も少なくありません。

そこで今回は、多言語契約書が引き起こすリスク、そして翻訳精度を高く保つための実践的方法論について、現場目線で深く解説します。

多言語契約書にまつわる主なリスク

日本企業の多くが、輸出契約の際に英語、中国語、韓国語、ドイツ語など複数の言語で契約書を取り交わしています。
ここで「翻訳された契約書も原契約と同じ意味が伝わっているはず」と考えるのは、大きな落とし穴です。

1. 意図のズレやあいまい表現によるリスク

日本語で使われる独特の表現や慣習を直訳すると、英語や他言語では意味が通じなかったり、誤解を招く場合があります。
特に、数量、納期、品質保証、ペナルティ条項などの根幹部分であいまいな表現があれば、後々大きなトラブルに発展します。

2. 法律・慣習の違いが及ぼす影響

国ごとに法律や商習慣が大きく異なるため、双方の立場で契約書を解釈したときに「そんなつもりではなかった」という合意不成立が生じがちです。
たとえば「Force Majeure(不可抗力)」に関する理解、検収合格判定の基準など、日本内でしか通用しない前提が知らず知らず入り込むこともあります。

3. 一文が長い、難解な契約書の翻訳ミス

昭和的な日本の契約書は、一文が長く、複文構文で難解です。
これを翻訳者が適切に区切って訳さないと、意味が大きく歪む恐れがあります。
また、機械翻訳の濫用も、業界では残念ながら散見されます。

4. バイヤー・サプライヤー間での「無自覚な受け入れ」

取引先の言いなりになって契約書を受け入れてしまうケースや、「英語は得意な若手に任せれば大丈夫」と責任転嫁する風潮もリスク要因です。
特にグローバル調達現場では、サプライヤー側がバイヤーの用意した英文契約書を十分読み込まずに署名してしまう問題が絶えません。

翻訳精度向上のために現場がとるべき具体的な対策

では、これらのリスクを最小化するには、どのような手順・構えが必要でしょうか。
現場目線で見落としがちなポイントと、実践で成果の出た策をまとめます。

1. 最初から「英文ベース」で契約を作成する

輸出契約書は、「日本語で文案を作成し→英訳する」のが一般的です。
しかしこの方法は「日本発のローカルルール」を押し付けやすく、訳しきれないニュアンスも発生しやすいです。

近年進んだ企業では、最初から英語(もしくは相手国の言語)でドラフトを作り上げ、その後日本語訳を添付する形が増えています。
実はこのほうがグローバルスタンダードに沿いやすく、最終的な合意形成もスムーズです。

2. バイリンガル専門弁護士の活用

深刻なビジネストラブルは「リーガルチェック不足」から起こります。
現場のスタッフ任せでは、法律リスクを十分に捉えきれません。
必ず、国際契約に精通したバイリンガル弁護士や公認翻訳者にチェックを依頼しましょう。

この時「地域特有の商慣習」まで熟知しているかどうかもキーになります。
例えば中国華南エリアとの取引では、納入遅延の扱いや契約解除の要件が独特です。

3. 用語集・逐語訳リストを現場で共有する

量産品の長期取引では、契約書だけでなく日常的な注文書や変更通知も多言語で飛び交います。
現場メンバーで「一般的な用語」「固有の業界表現」「あいまいな(要注意)表現」をまとめた用語集を整備し、逐語訳リストとして共有してください。

例〉”Warranty”の訳を「保証」とするのか「保守」とするのか、誤認しやすい単語は必ず整理する。

4. 契約相手先との「同席レビュー」を徹底する

契約書ドラフトをメールや紙でやりとりするだけでは、誤解は避けられません。
必ずWeb会議や現地会議を設定し、「この文言・表現で双方合意しているか」を逐条審査しましょう。

文化的な違いから「イエス」と言いつつ納得していない場合もあるため、具体例や想定Q&Aを交えつつ確認することが大切です。
特にサプライヤーや新規バイヤーとの初回契約は丁寧に行いましょう。

5. AI翻訳・翻訳チェックツールの併用

近年のAI翻訳は格段に精度が上がっていますが、業界・専門用語やニュアンスまでは補えません。
しかし、「日本語原文→AI翻訳→人によるダブルチェック」という組み合わせで、スピードと精度を両立できます。

公開されているAI翻訳ツールは翻訳履歴の流出リスクもあるので、社内のセキュリティ環境で必ず追加確認しましょう。

サプライヤー/バイヤーそれぞれの立場から注意すべきポイント

立場の違いによって、多言語契約書への期待や不安は異なります。
バイヤー・サプライヤー両方の観点でリスクと対策を見ておきましょう。

バイヤーの落とし穴

・細かすぎる条項を盛り込んでサプライヤー側が理解・運用しきれない
・「英語で書かれていれば大丈夫」と内容精査せずに署名する
・曖昧な表現で、後日あっさり契約不履行になってしまう 

サプライヤーの誤算

・慣れない言語だからと「よく分からないまま」受諾してしまう
・現場スタッフが契約書を軽視し、必要条項を漏らしてしまう
・日本語版・多言語版で条件が異なっていたことに後から気づく

製造業の昭和的体質から脱却するために

現場でありがちなのが、「上司や他部門任せ」「慣例だから大丈夫」という思い込みです。
しかし、グローバル取引においては、言語や契約条項のひとつ一つが将来的なリスクをはらみます。
「自分の目で確かめる責任感」を持ちましょう。

また、契約書そのものだけに頼るのではなく、【現場同士が日常的に情報共有しあう文化】づくりも重要です。
多言語環境での契約実務・トラブル事例を定期的に共有し、現場からの改善案を吸い上げて下さい。

これからバイヤーを目指す方へのアドバイス

バイヤーはサプライチェーンの「盾」であり「触媒」でもあります。
多言語契約書の扱いスキルが、ひいては自身の評価や立場向上に直結します。

・言語能力を磨きつつ、現場業務や法律にも興味を持つ
・現地取引先の文化・背景まで学習し、あるべき契約形態を考える
・新しいツールや手法を果敢に取り入れ、昭和的な慣習から一歩前へ出る

まとめ:新しい製造業の標準を自分たちの手で作る

多言語契約書の適切な運用と翻訳精度の確保は、グローバルで戦う製造業にとって最優先課題の一つです。
昭和的なアナログ体質を打破し、現場が自律的に進化し続けることがこれからの時代を生き抜くカギとなります。

現場が主役の「トラブルゼロ」の輸出契約運用、その起点は一人ひとりの意識改革から始まります。
今日からぜひ、あなたの現場でも見直しを始めて下さい。

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