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鍛造プレスで使われるスライド部材の役割と摩耗が進む原因

目次
はじめに
製造業に携わる方にとって、鍛造プレスは金属加工の現場で日常的に目にする非常に重要な設備です。
その中でも、プレス機のスライド部材は、鍛造品質や生産効率、現場の安全に直結するキーパーツでありながら、その実態や摩耗のメカニズムまで深く理解できている方は意外と多くありません。
長く昭和流のアナログ管理が根強い現場では、部材の傷みが指摘されながらも、「まだ使えるだろう」と軽視されがちです。
本記事では、鍛造プレス機におけるスライド部材の基本的役割から、なぜ摩耗が避けられないのか、その原因を現場目線で分かりやすく解説します。
また、バイヤーやサプライヤーの視点も盛り込み、鋭い現実認識と実践的なノウハウの蓄積を目指します。
鍛造プレスとスライド部材の概要
鍛造プレスとは何か
鍛造プレスは金属素材を上下から大きな力で圧縮し、所定の形状へと成型する機械です。
製造現場では「パワープレス」とも呼ばれ、自動車部品、産業機械、家電パーツなど幅広い業界で活躍しています。
プレス機の種類としては、メカニカルプレス、油圧プレス、サーボプレスなどがあり、中でもメカニカルプレスが大量生産向けとして主流です。
スライド部材の位置づけと役割
スライド部材は、プレスのラム(スライド)が上下運動する際に、安定した動きをガイドしながら摩擦を低減し、プレスの精度と安全性を確保する部品です。
具体的にはガイドポストやスライドシュー、スライドブッシュなどが該当します。
これらは鍛造時の高い加圧力と、繰り返しの荷重、パーツ同士の摩擦から、非常に過酷な環境に晒されています。
スライド部材が健全でなければ、鍛造品の寸法精度が悪化するだけではなく、最悪の場合は金型やプレス本体の故障、重大な労災リスクにもなりかねません。
現場の管理者、調達担当者、そしてサプライヤーも、あらためてスライド部材の存在価値と重要性を認識する必要があります。
スライド部材が摩耗する原因とは
1. 摺動摩擦と表面疲労
スライド部材の最大の敵は摩擦です。
上下運動や往復運動のたびに、部材表面には相手部材との金属同士の擦れが発生します。
この連続した摺動摩擦によって、表面がわずかずつ削られたり、微細なクラック(亀裂)が発生します。
特に油切れや潤滑の不備が生じると、摩擦熱と同時に“かじり(焼付き)現象”が起こりやすくなり、一気に摩耗が進行します。
また、長時間使用により表面の金属組織自体が疲労して剥離し始めるため、表面のスムーズさが失われてガタつきやすくなります。
このため「静かだけどピタッと止まる」理想の動きに対して、「動作が重い」「妙にガタガタする」といった不具合予兆も、摩耗サインとして敏感に察知したいポイントです。
2. 再現性と精度を脅かす衝撃荷重
衝撃荷重、つまり鍛造プレス工程特有の急激な力の立ち上がりやバウンドは、スライド部材にとって甚大なストレス源です。
強い過負荷が何度もかかると、潤滑油が一時的に飛び散ったり、金属と金属が直接ぶつかって「微細塑性変形」「マイクロクラック」が走ります。
特に、オペレーションのクセや不定期なメンテナンスによって、荷重バランスが偏ると、頻繁に特定箇所だけが早期摩耗しやすくなります。
3. 潤滑不良や異物混入によるダメージ
昭和型工場にありがちな“油だまり”や定期的メンテの遅れは、重大な摩耗要因です。
計画潤滑が徹底されなかったり、適切な油種選定がなされていないと、部材表面の油膜が切れて摩耗し始めます。
また、プレス現場は「油煙」「金属粉塵」「金型の切粉」など、異物混入リスクが常に存在します。
これらの微粒子がスライド表面に付着し、潤滑油と一緒に移動すると、「研磨紙」のような役割で表面を削ってしまうのです。
4. 部材素材・表面処理の選択ミス
安価な部材を調達した結果、耐摩耗性の低い素材や表面処理レベルの弱い部材を使用してしまうことは、コスト削減のつもりがトータルコスト増に繋がる典型例です。
材質選定の際には、荷重・速度・温度特性、さらには工場の作業環境まで踏まえたトータルバランスが大切です。
部材の調達や内製化を検討するバイヤーは、「本当に安物買いの銭失いにならないか」を数字をもとに見極めたいところです。
摩耗を早期発見するための管理ポイント
定性・定量の両面から状態を把握する
現場では、「昔からこうやってきたから」と定性的な経験値だけに頼りがちですが、本質的なトラブルの予防には定量データとの組み合わせが不可欠です。
具体的には
・運転時の異音や振動(聴診・触診)
・スライド部材のクリアランス測定
・潤滑油の消費量や鉄粉含有量のモニタリング
など、現場の「肌感覚」と「数値」の両立が重要です。
最近ではIoTセンサーによる振動・温度・表面状態の常時監視もコストダウンが進んでいるため、レガシーな工場でも十分導入できます。
摩耗に強い部材調達のためのアドバイス
調達・バイヤー目線では、カタログスペックや価格だけで部材を選ぶのではなく、
・耐摩耗素材(例えば高硬度合金や特殊鋼)の実績や評価
・表面処理(窒化処理、硬質クロムめっき等)の種類と実績
・メーカーの納入サポート力やアフターケア
などのトータルバランスを指標としましょう。
現場の作業者やメンテ担当者との意見交換を重ね、現実に“何が傷みやすいか”“どこがコスト増になりやすいか”の現場ファクトを吸い上げることが、自然と摩耗リスクの低減に結び付いていきます。
実際の現場で摩耗トラブルが起きるとどうなるか
品質トラブル・納期遅延・コスト増という三重苦
スライド部材の摩耗を見逃した場合、最初に現れるのは成形品の寸法精度不良やヤレ品(不良品)の急増です。
型ズレや「バリ品」と呼ばれる成形不良が相次ぎ、納品先からのクレームも頻発します。
取引先への納期遅延、追加納品による余計なコスト発生、現場の再作業の増加。
三重苦状態に陥ってはじめて対策を練るのでは、経営的にも社会的にもブランド価値を大きく損ないかねません。
さらに、スライド部材の重大摩耗が放置されれば、最終的には金型やプレス本体自体の大規模修理や工事停止を余儀なくされるため、「安物調達で一時しのぎ」は本当に危険です。
摩耗トラブルを未然に防ぐための現場とサプライヤーの連携
製造現場の“生きた声”をバイヤーはどう生かすか
バイヤーや調達担当者は現場作業者の声を日ごろから透明に聞く姿勢が不可欠です。
「最近、スライドが重い」という一言の裏には重大な摩耗が隠れているかもしれません。
逆に「このメーカーの部材だけは安心して使える」という下回り目線の意見もヒアリングしたいところです。
現場での摩耗実績をサプライヤーと共有し、累積稼働時間や故障率のデータベースを作ることで、より現場密着型の調達が実現します。
サプライヤーはバイヤーの“コスト意識・品質志向”を読み取れ
サプライヤー側は、単なる納品・受注に終始せず、摩耗や潤滑に関する技術資料、成功事例を積極的にバイヤーや現場担当に提供すべきです。
また、「コスト競争」に走りたくなる心理は十分理解できますが、「ライフサイクルコスト」や「予防保全のトータル提案」といった上位概念で、一歩踏み込んだ提案力が、今後の差別化ポイントとなります。
ラテラルシンキングで考える“これからのスライド部材管理”
IT・AI活用の自動化やスマートファクトリー化が進む時代ですが、それでも始まりは「アナログ現場の小さな違和感」の積み重ねです。
摩耗に強い新素材や3Dプリンティングによるカスタム部材も今後の選択肢です。
しかし、最も重要なのは「摩耗しにくい運用ロジック(工程設計)」と「現場とバイヤー・サプライヤーが垣根なく連携する姿勢」です。
例えば、従来とは全く異なる潤滑方式や、IoTデバイスで「予兆保全」を仕組み化するのも有効です。
古い常識から脱却し、スライド部材ひとつにも“新たな地平線”を見つけていくこと。
それが今後、全ての製造業従事者、調達担当、サプライヤーにとっての勝ち筋となるのではないでしょうか。
まとめ
鍛造プレスのスライド部材の役割は見えにくいながらも、製品品質や現場の安全性、コスト競争力に密接に関わっています。
なぜ摩耗が不可避なのか、その本質的な理由を現場目線で捉えることが、真の業務改善・価値向上には不可欠です。
これからはアナログ現場の声と、データドリブンな意思決定、そしてバイヤー―サプライヤーの深い連携が、製造業DX時代における新たな地平線を切り拓いていくでしょう。
製造業で働く皆さん、部材選定・購買を担うバイヤー志望の方、そしてサプライヤーの皆様。
ぜひ「スライド部材の摩耗」という小さな現象から、現場の“未来”を一緒に考えていきましょう。
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