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地方企業が首都圏の発注を獲得するための営業メールと提案戦略

目次
はじめに:地方企業にとっての営業課題と可能性
地方に拠点を置く製造業企業が、首都圏の有力メーカーや商社から発注を獲得することは、ビジネス拡大や成長のきっかけとして非常に大きな意味を持ちます。
一方で、「東京の案件は東京の会社同士で回している」「地方はコストだけ買いたたかれる」といったイメージが現場にも根強く残っているのではないでしょうか。
昭和、平成と続いてきた保守的な発注慣習や、“顔つなぎ”による信頼関係の重視が色濃く残る中、いかにして自社の技術や強みを首都圏のバイヤーに知ってもらい、選定リストへの仲間入りを果たすか。
本記事では、20年以上製造業で調達・バイヤー・工場長を経験した視点から、現実的かつ、今だからこそ取るべき営業メールと提案戦略を解説します。
首都圏バイヤーの本音を知る──見られているポイントとは
単なるコスト競争では選ばれない理由
首都圏のバイヤーが地方企業からの営業メールを受け取った時、まず「自社の調達パートナーとして信頼できそうか」「長期にわたる協力体制が組めそうか」という観点が軸になります。
いくら低コストの提案でも、安定した納期や品質保証、イレギュラー時のレスポンスが弱い会社には、継続した発注は出しません。
ここには「遠方なので顔が見えにくい」「何かあったときの対応は?」という昭和からの発注者心理が色濃く残っています。
品質・納期・現場力──“できる企業”の条件
製品や部品、素材はどれも似通って見える現代。
しかし、バイヤーが真に欲しがるのは「品質のブレがない」「急なトラブルにも的確に動ける」「技術者同士の会話が通じる」地方企業です。
この点が曖昧な営業メールや、実態不明な提案は、決して選ばれません。
営業メールの構造──「読まれる」ためのポイント
定型文+現場感覚の差別化がカギ
多くの営業メールが決まったパターン文言、「低価格で提供できます」「短納期に対応します」といった表現で溢れかえっています。
しかし、バイヤーの心に響くのは、その一歩先。
すなわち「なぜ御社向けに弊社が最適なのか」「現場でどのような問題を解決できるのか」を端的に伝える構成です。
3ステップで構築する伝わるメール
1. なぜ連絡したのか──バイヤーが抱えていそうな業界共通課題を簡潔に示します。例:「装置部品の異常停止、即日対応にお困りではありませんか?」
2. 具体的な解決事例──自社の現場で起きたエピソードを交えて具体的に説明。例:「昨年、関東エリアのA社様で発生した突発トラブルにも、〇時間以内で駆け付け、現場復旧をサポートしました」
3. 行動喚起(CTA)──オンライン面談やカタログ送付など、次のアクションを具体的に提案します。「一度ZOOMでお話しさせていただけませんか?」
このように“現場”の温度感と“自分ゴト化”を促すメールこそ、バイヤーの反応率が大きく上がります。
提案内容で差をつける──地方企業ならではの強みとは
独自の技術・柔軟な小ロット対応
地方企業は大手工場と異なり、“ワンストップで臨機応変”に動ける体制を持つ所が強みです。
例えば「小ロット試作→短納期量産」や「設計段階からの技術相談」、工事・据付現場への直接出張対応力など。
これらは首都圏同士の“系列取引”にはない柔軟性としてバイヤーに響きます。
中間コストの削減提案
商社・仲介業者を経由しない直取引の場合、中間コストを圧縮でき、価格面でも差別化できます。
この際、「なぜそのコストで実現可能なのか(搬送ルートや生産設備等)」という根拠を明確に示すことで、単なる値下げ交渉にならずビジネスパートナーとして選ばれやすくなります。
昭和の商慣習から脱却する提案型営業の実践
脱“御用聞き”営業、課題解決型営業へ
これまで地方企業の営業は、「図面をください」「試作もやります」といった受け身提案に留まりがちでした。
しかし、現代においては「貴社の生産プロセスでどの部分を自動化できるか」「歩留まり率向上のノウハウ蓄積」など、能動的かつ技術者視点での“課題解決型”を前面に出すことが、東京の敏腕バイヤーや工場長とのテーブルに着く条件です。
“昭和世代”レガシーバイヤーへの配慮
一方で、首都圏といえども調達現場は昭和・平成からのベテラン担当者が多いことも事実です。
メールやオンラインだけでなく、「現場で顔を合わせる」「納品や故障対応時に歴史雑談も交える」など、泥臭い誠実さも失ってはいけません。
これにより、「この会社なら何かあった時でも逃げずに対応してくれる」という信頼が築け、発注現場で絶大なアドバンテージとなります。
営業メールのNG例──“昭和型アプローチ”のままでは刺さらない
単なる価格アピールや、“押し付け営業”は逆効果
「どこよりも安くします!」「御社は弊社の〇〇製品に最適です!」といった自社目線のアピールは、むしろ敬遠されます。
バイヤーの業務フローや社内調整プロセスを無視した即決提案や、何度も電話・メールをするのは、逆にブラックリスト入りするリスクすらあります。
“コピペ感”が強い文面は即ゴミ箱行き
営業メールでよくある“御社のご発展をお祈りしつつ…”といった定型的な丁寧語や、各社一括配信と丸わかりの内容は、バイヤーから即座にスルーされます。
リサーチ不足(受けたことのない業務、合わない材料提案など)も、信頼失墜の原因です。
成功する地方企業の特徴──実例から学ぶ
事例1:福井県の小規模メーカーが電子部品大手の認定サプライヤーに
同社は地元中堅の板金加工企業でしたが、関東の大手電子機器メーカー向けに、既存工法で不可だった「極薄」での高精度プレス加工を自社開発。
自社でサンプル部品を持ち込み、「不良対策の現場ノウハウ」とセットで営業提案。
受け入れ試験もリモートで進め、初回受注後は数十倍の発注へスケールしました。
事例2:九州の部品工場、コロナ禍でも逆転受注
取引のなかった首都圏医療機器メーカーに対し、「供給不安」「キャパ不足」といった業界課題を営業情報から収集。
メールには自社の即納体制やBCP対応(災害時シフト知らせ等)、試作・量産双方での柔軟体制を記載。
複数回のオンラインデモ、現地工場のライブ中継を組み合わせて商談化に成功しました。
まとめ:地方の現場力を“松明”として発信しよう
首都圏バイヤーの競争原理は年々激化していますが、本質的には「現場で困らない」「トラブル時に頼れるパートナー」を本気で探しています。
昭和の頃と異なり、情報の非対称性(地方は情報が届きにくい、不利)が低減した今だからこそ、“現場で培った解決力”や“エピソードに裏付けられた信用”、そして「この会社に任せてみたい」と思わせる“人間味ある営業”を武器にしましょう。
自社の強みとバイヤー目線、両方から考え抜いたメール・提案営業こそ、これからの製造業の新しい道を切り拓く第一歩です。
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