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投稿日:2025年12月12日

国際物流の遅延で納期が読めず価格競争力が落ちる現実

はじめに:国際物流遅延による納期と価格競争力への影響

近年、グローバルサプライチェーンの複雑化と新型コロナウイルスや地政学リスクによる国際物流の混乱が、製造業の現場を直撃しています。
とりわけ、国際物流の遅延によって「納期が読めない」「価格競争力が保てない」といった声が、調達・生産管理・バイヤーの現場から多く聞かれます。

現場で起きている変化を正確に把握し、限られたリソースで最善を尽くすことが、激しい競争を勝ち抜くための前提条件となっています。
本記事では、製造業現場で実際に体験してきた知見や事例をもとに、国際物流遅延が及ぼす実務へのインパクト、対応策、そしてアナログ業界ならではの考え方も交えてお伝えします。

国際物流遅延がもたらす現場への現実的な影響

調達購買現場の苦悩:見積もり精度の低下と取引先コントロールの難しさ

国際物流の遅延は、単純に材料や部品が遅れて届くという問題以上に、調達購買および現場担当者の業務を複雑化させています。
特に納期遵守が重視される日本の製造業において、現場のバイヤーは「発注タイミング」「サプライヤーとの連携」「調達品の優先順位付け」といった意思決定を、いっそう不安定な情報下で行わなければなりません。

例えば、従来は「海外発注品は●日後に入荷」という見通しが立っていたものが、「入荷が2週間以上遅れる」「港でのコンテナ取出しに予測不可能な遅延が生じる」といった不確定要素が加わります。
バイヤーや工場の生産管理担当者は「一か八かで前倒し発注する」「念のため国内在庫も確保」「最悪の場合、顧客への納期変更」といった“守り”の調整に追われ、余計なコストや作業量を強いられがちです。

サプライヤー側も「船積み予約が取れない」「コンテナ不足で運賃高騰」「港湾ストで納期予定が立たない」といった外部要因への対応に限界があり、双方で“コントロール不能感”が強まっています。

生産現場の混乱:段取り変更・生産変動・工程計画崩壊

国際物流の遅延は、生産現場の工程計画やライン段取りにも直結します。
製造現場では「部材が入らず計画通りの生産が困難になる」「緊急手配や段取り替えで予定外コストが発生」「一部ロットのみ先行生産し、工程管理が複雑化」といった事態が頻発します。

現場では、物流遅延の情報がリアルタイムで把握できない場合、無駄な段取り替えや人員配置のムダを生みやすくなります。
さらに、工場の従来のオペレーション習慣(昭和的な現場力や根性論)では対応しきれない領域が拡大しているのが、ここ数年の特徴です。

価格競争力の低下:見えないコストが積み上がる仕組み

調達コスト増の現実:物流費・在庫費用・スポット調達費用の高騰

物流遅延が慢性化することで、調達コストは見えない形で膨らみます。
代表的なのは、「本来は不要な空輸手配によるコスト」「港湾での保管延長による費用」「製品をストックせざるを得ない在庫増加コスト」などです。

また、急ぎの生産や納期対応のために国内在庫品・スポット市場から高値で調達するケースも日常化しています。
これらのコストは価格に転嫁できないケースが多く、価格競争力を確実に損なっています。

見積もりの“確からしさ”低下とバイヤーの心理的負担

調達バイヤーは取引先への見積もり依頼・回答時に「過去の物流コスト」をベースに計算することが多く、船賃や保険料が都度大幅に変動する状況では、その精度は大きく下がります。
逆に安全見て多めに“見積りバッファ”を取れば、価格競争で不利になります。
これはサプライヤーにとっても同じで、バイヤーの目線を知るうえでも重要なポイントです。

この「納期も価格も読めない」状況は、現場のバイヤーにとって大きな心理的負担であり、交渉力の低下・無用なトラブル(契約違反・信用不安)につながるリスクがあります。

昭和的アナログ業界の慣習と現代課題のギャップ

電話・FAX文化と“勘”でやりくりする限界

アナログ色が強い日本の製造業では、発注・在庫管理・納期調整にいまだに電話やFAXが多用され、「ベテランによる勘と経験」で細かい調整を行う慣習が根強く残っています。
このやり方は、かつては現場力・人のつながりが競争優位になっていた時代には効果的でした。

しかし、グローバル調達の不確実性と“秒単位”で変動する物流の世界では、「感覚のズレ」「連絡伝達の遅延」「証跡の曖昧さ」など、アナログ慣習の限界点が見えはじめています。

“現場同士の気合い関係”は調整弁にはなるが…

もちろん、昭和的な現場調整力や人間関係による“根回し”は、現場レベルではいまだ有効な側面もあります。
例えば、「物流が遅れても現場同士で助け合い」「サプライヤーが多少の無理を聞いてくれる」といったケースは、現場の安心材料でもあります。

ただし、こうしたやり方は業界外・新規サプライヤーやグローバルPSI(生産・販売・在庫)連携には通用しません。
データで裏付けされた透明性やリアルタイム性が不可欠な時代に、昭和的な“気合い”だけでは業界全体の競争力強化には限界があります。

現場が今できる“攻め”と“守り”の実践ポイント

情報共有と可視化の徹底

まず重要なのは、「物流のどの部分で・どんな遅延やリスクが発生しているかを、できるだけ正確に可視化する」ことです。
発注から入荷、在庫引き当て、生産ライン投入までを見える化し、どこでボトルネックが発生しているのかデータで捉える必要があります。

例えば、海外サプライヤーやフォワーダーと連携し、物流の進捗をオンラインで定時報告してもらい、納期遅延が予兆段階で把握できる仕組みを作ることが効果的です。
現場サイドも、「遅延の情報をリアルタイム共有する文化」を徹底することが、ムダな対応やコスト増を減らす鍵となります。

複数ルート・スポット調達の仕組みづくり

物流リスクの分散も不可欠です。
一つの海上ルートや特定サプライヤーだけに依存せず、「複数拠点から分散輸送」「国内・海外のスポット調達先の確保」を仕組み化する必要があります。

また、バイヤーとしては“リスクプレミアム”を取れる契約や、納期遅延に柔軟に対応できる価格体系(可変見積)を、サプライヤー間で比較検討することも有効です。
見積もり時には「ロジ費用の一定幅での変動」も明記し、社内承認も柔軟にしましょう。

社内の“なぜ”を見直し、ルールを再設計する

アナログ慣習に頼るだけでなく、現場で蓄積された“無駄な作業”や“根回し過剰”な文化にメスを入れることも重要です。
例えば、「なぜFAXでしか受け付けないのか」「発注の社内承認に時間がかかりすぎではないか」「サプライヤーへの連絡が毎回非効率になっていないか」など、日々の業務フローをゼロベースで見直してみると、多くの改善余地が見えてきます。

現場起点で“業務改革”を小さく始め、「困っている現場の声」を経営層やIT部門と連携し、つねにアップデートする文化をつくる事が、真の競争力強化につながります。

今、バイヤー・サプライヤー双方に求められる意識と行動

「部分最適」から「全体最適」へ意識転換を図る

国際物流遅延時代においては、個々のバイヤーやサプライヤーだけでなく、サプライチェーン全体を俯瞰した“つながり”や“全体最適”が求められます。
サプライヤーも「バイヤーからなぜ納期短縮依頼が来るのか」「物流がどこで詰まっているのか」という現場事情を知り、納得感あるコミュニケーションを図ることが重要です。
一方、バイヤーも「価格だけでなく、安定供給・柔軟対応力」を“取引条件”の中核に据えるマインドセットが必須です。

次世代のバイヤー・現場人材に不可欠なのは“システム思考”

本質的な差別化が難しくなった日本の製造業において、これからのバイヤーおよびサプライヤーに求められるのは、“どのように現場(仕入・生産・物流)をつなぎ、全体最適なアウトプットを出せるか”というシステム思考です。

昭和的な“現場根性”や属人的調整能力も必要ですが、「データで裏付ける」「多様なリスクを仕組みで管理する」「サプライヤーと本音で協力」を実現できる人材が強く求められています。

まとめ:現場目線を“進化”させることが競争力のカギ

国際物流の遅延によって、納期が安定せず、結果として調達コストが膨らみ、日本の製造業全体の価格競争力が確実に低下しています。
昭和的な現場力やアナログ慣習も部分的には有効ですが、「全体最適化」「デジタル・リアルの融合」「実務に根ざした情報共有・協働」がいまこそ必要です。

バイヤーを目指す方は単に“安さ”や“値切り”だけを見ず、現場やサプライチェーン全体を俯瞰し価値最大化を。
また、サプライヤーポジションの現場担当者は、バイヤーの現実的困難や全体の流れを理解し「提案型」へと動きを変えましょう。

現場目線の小さな気づきや改善こそが、国際物流遅延に打ち克ち、新たな地平を切り拓くカギになるはずです。

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