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投稿日:2025年12月12日

現場の温湿度が品質に影響するのに軽視される背景

はじめに ~現場の「当たり前」が見過ごしているリスク~

製造業において品質は最大のテーマであり、あらゆる企業が「安定した品質」を目指して日々現場改善に取り組んでいます。
その中で、現場の温度・湿度といった環境要因が製品品質に大きな影響を与えることは、多くの方が一度は耳にしたことがあると思います。
しかしながら、実際の現場や購買取引の中で温湿度管理が軽視されがちで、不具合や歩留まり低下、クレームの遠因となってしまう事例も少なくありません。
この記事では、なぜ温湿度が品質に大きな影響を与えるのか。
そして「なぜこれほど大事なのに現場で軽視されるのか」という背景を、現場目線で深堀りします。

温湿度と品質―なぜ密接に関係するのか

温湿度が影響するモノづくりプロセスの数々

部品・原材料の受入、工程内保管、加工・組立、検査、出荷―ほぼすべての工程で温湿度は何らかの影響を与えます。
例えば電子部品は静電気や吸湿による劣化が懸念され、樹脂成形では湿度変動で材料内水分量が変わって寸法や外観不良が発生することもあります。
食品や医薬品では衛生的・微生物管理の面だけでなく、錠剤の割れやパッケージ収縮などにも直結します。
機械加工現場では加工液や工具の状態に影響が及び、紙・布・フィルム系…と対象はきりがありません。

規格化・見える化が難しい温湿度管理

こうした影響の多さ故に、多くの品質システムや取引契約には「温湿度環境の適正管理」が明記されています。
一方で、規格は一律ではありません。温湿度の最適域は製品や材料、工程条件によってまったく異なります。
さらに、現場は常に変化しています。
外気・季節要因、機器の発熱や人員増減、設備レイアウト変更など、複合要因が重なりリアルタイムの制御や見える化が難しいのが実情です。

なぜ温湿度管理は軽視されがちなのか?

軽視の根底にある「昭和型現場感覚」

なぜ現場においてこれほどまで温湿度が蔑ろにされがちなのか、その一因は日本の製造現場独特の文化にあります。
戦後から高度成長期、現場は「人の感覚」や「職人の勘」「経験値」に大きく頼ってきました。
「冬寒いと失敗しやすいけど、まあ年明ければなんとかなる」
「湿度が高いとベタつくけど、扇風機回せば大丈夫」
こんな会話が今もなお一部で生き続けています。

数値管理・ロジック管理の浸透不足

もちろん、大手メーカーや最新工場などでは温湿度管理システムの導入が進んでいます。
しかし、特に中小メーカーや下請企業、さらには「この分野だけは俺に任せろ」という現場のベテラン層ほど、アナログな現場感覚に頼りがちです。
これに関連して、日本の製造業界ではデジタルツールよりカイゼン活動と属人技術が重視されてきた歴史があります。
こうした背景が、温湿度も「なんとなく大丈夫」のまま据え置かれる根拠となっています。

「コスト意識」と「後回し」のジレンマ

温湿度管理は、目に見える出費(専用センサー設置・空調の増設・点検監視システム等)が必要です。
一方、効果はうまく管理できている限り「不具合ゼロ=成果が見えにくい」という特徴があります。
品質異常などが起きてから、その原因が温湿度起因であることが特定されにくく、根本対策の優先度が下がるというジレンマも生じます。
結果的に「次の設備投資」「ひとまず現状維持で…」となりがちなのです。

サプライヤー・バイヤーの立場から見る課題

バイヤーにとっての温湿度管理リスク

大手メーカーのバイヤー職を目指したい方、またはサプライヤーとして付き合う立場の方は「温湿度管理」は見過ごせないチェックポイントとなります。
調達先を選定する上で「温湿度管理のしくみは?」「異常監視・記録・是正措置は?」と踏み込んで確認することで、安定供給や品質トラブルのリスクを低減可能です。
繰り返しですが、温湿度は目に見えにくく形になりません。
定期監査でも「現場の湿度計の値が妥当か」「計測点が死角になっていないか」「記録が捏造・未記載になっていないか」など、細かい注意が必要です。

サプライヤー側から見た「管理要求」の難しさ

サプライヤーの立場では「多品種小ロットや季節変動」「全工程での管理責任」「投資コストへの圧力」など、温湿度対策はただでさえ負担になりがちです。
ときに大手顧客から過度・画一的な温湿度指定(例:全年通して25℃±2℃・湿度40~60%)を要求され、現場が悲鳴を上げていることもあります。
また、日常業務では温湿度以外の品質指標(寸法検査、外観検査、不良率など)に追われがちで、優先順位が下がる傾向が見受けられます。

現場目線の実践的アプローチ―思考とカイゼンのラテラルシンキング

「温湿度」を全工程の共通言語とする

属人化した温湿度感覚や「現場リーダー任せ」を脱却し、現場~管理層~バイヤーまで「温湿度」が日常会話になる仕組みを作ることが肝要です。
具体例を挙げます。
現場日報に「今日の温度」「加工前後湿度」欄を追加し、異常があればすぐ口頭報告。
「暑い・寒い」だけでなく「本日のエアコン稼働率」「窓開けタイミング」を定量的に記録する。
こうした微細な運用で、温湿度問題を“意識の外”から“皆で考える課題”へ引き上げることができます。

クラウド×センサーで小さく始める現場改善

最近では、低価格のIoT温湿度センサーとスマートフォンやタブレットのクラウド連携サービスが普及し、数十万円以下で簡易的な見える化が可能になっています。
高額な統合管理システムまで導入しなくても、一部工程・一部製品ラインから少しずつ「温湿度の記録~変動要因の見える化」が“属人技術から標準作業”に移行できる時代です。
例えば「夏場にこの工程だけ歩留まりが悪化しやすい」といった暗黙知が、数値データから因果関係として“証拠づけ”されていけば、現場と事務方で共通の土俵で議論できるようになります。

「異常の連鎖」を見抜く視点が重要

温湿度による品質劣化は、単独で現れることは稀です。
例えば湿度異常→材料吸湿→ちょっとした加工手順ミス→最終的に謎の不良品発生、といった連鎖が起きやすいのが特徴です。
現場では「突発の不良がなぜ起きたのか」だけでなく、「直前1週間に温湿度の急変がなかったか」「手順変更・保管状態の僅かな違いがなかったか」など、ラテラルシンキング的に複数要因を横断して原因を探る思考が重要です。

まとめ―これからの製造現場に求められる温湿度意識

温湿度と品質の関係性は誰しも知っている「常識」でありながら、現場での優先順位は「日々の生産管理」「大きな不良削減」の影に隠れがちです。
しかも「なんとなくベテランの勘で回っている」「高額投資ができない」「優先度が低い」といった理由で対策や管理が遅れる現象が“業界の習慣”として根付いているのも確かです。
しかし、グローバル化の波、ESG経営、IoT活用、脱属人化…といった今後の製造業の方向性を考えた時、温湿度管理の“意識の革新”は業界全体の競争力強化につながります。

バイヤー志望の方は「調達先・現場が温湿度にどこまで本気で取り組んでいるか」をしっかり見抜く目を養ってください。
サプライヤー側の方には、小さな取り組みから現場全体で温湿度変動という“なかなか現れない敵”を日常管理に落とし込む工夫をおすすめします。

現場の1℃、1%RHが、品質と信頼の礎になる。
この意識の転換こそ、旧態依然とした製造業を一歩進める突破口ではないでしょうか。

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