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現場が知っている“動かすための裏設定”が表に出ない理由

目次
はじめに 〜現場には“表に出ない設定”がある〜
ものづくりの現場では、日々設備を動かすための無数の調整や工夫が行われています。
これらの中には、マニュアルや手順書に記載されない“裏設定”と呼ばれるものが多く存在します。
なぜ、こうした現場に根付く知恵や設定が表に出ることなく、秘密のまま保持されているのでしょうか。
本記事では、20年以上の現場経験を持つ筆者が、実体験と業界動向を交えて「現場が持つ裏設定の実態」と「なぜそれが外に出しづらいのか」を深堀りします。
調達・購買、生産管理、品質管理、工場自動化といった分野から、現場ごとに事例を挙げて解説していきます。
バイヤーやサプライヤー、そして製造業に携わるすべての方に、「ものづくり現場の奥深さ」と「現場課題の本質的な解決策」について、ラテラルシンキングで新たな視点を共有します。
現場の“裏設定”とは何か?
なぜ現場はマニュアル化されない暗黙知を持つのか
多くの製造現場では、設備メーカーがマニュアルや操作手順書を用意しています。
しかし、実際に生産ラインを動かしてみると「この通りにやってもうまくいかない」「ちょっとしたコツが必要」という場面が日常茶飯事です。
それは、加工材料のわずかな個体差や、設備自体の個体差、環境(温湿度や埃など)、作業者のクセなど、無数の変数があるためです。
例えば、溶接機械では「推奨設定」に従っても「表面焼け」が出ることがあり、現場作業者が独自に0.5秒タイミングをずらして対応していることがあります。
この「現場で都度調整される設定」こそが“裏設定”です。
典型的な“裏設定”のケーススタディ
– 生産設備の起動時、メーカー推奨とは異なる順番でスタートさせている
– 品質チェックで、簡易的な“現場治具”を自作し、不良判定の勘所を視覚的に見ている
– 取引先への納期交渉時、公式書面には載せない「納入調整の裏ルート」がある
– 標準在庫日数の“公式ルール”とは別に、「属人的に把握しているリードタイム調整」が存在している
このような裏設定が、なぜ公式な情報として広く伝わっていかないのか、次の章で詳しく考察します。
なぜ“裏設定”が公にならないのか?〜現場のリアルな事情〜
1.ノウハウ継承コストと、昭和の職人気質文化
日本の製造業は「属人的な技術伝承」を重視する文化が根強く残っています。
たとえば“段取り替えのコツ”や“歩留まり安定の秘訣”といった内容は、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)によるマンツーマン指導がいまだに主流です。
そのため、現場担当者は「自分の経験で得たノウハウはなかなか文書化しないし、できない」という現実があります。
これは裏設定が“神秘化”しやすい温床となっています。
2.責任回避やリスク回避の心理
“裏設定”を公式にすると、トラブルが起きた際の責任所在が不明確になることを恐れる傾向もあります。
「誰がその設定でOKを出したのか」が明確でないと、現場リーダーも上層部も曖昧な立場になります。
とりわけ大手企業や下請け構造の中では、この“責任の所在”がリスク要因と見なされ、表に出すことを慎重に避ける風土が蔓延しています。
3.変化に弱いアナログ現場の体質
製造現場は「大きく変えると危険」という心理が強く働きます。
設備の設定や手順書を書き換えるのは、想像以上に心理的ハードルが高いのです。
特に進化のスピードが遅い「昭和型」現場では、「新しいやり方を広めるよりも、今までのやり方を微修正し続ける」ことが安全策とみなされます。
裏設定をオープンにしたくても、その“現場コンセンサス”を得るコストが高く、結果として「担当者頼み・現場のみの共有」に留まりがちです。
現場の“裏設定”によるメリット・デメリット
メリット:柔軟性・即応性の高さ
裏設定によって、現場はマニュアルでは拾いきれない小さな問題を即座に解決し、生産や品質への影響を最小限に抑えられます。
「このラインは朝イチだけ温度を1℃高めにする」「雨天時は搬入口の稼働手順を追加する」といった現場独自の知恵が、工場全体のトラブル撲滅に貢献しています。
デメリット:属人化によるブラックボックス化
半面、この裏設定が属人化しすぎると「誰が、どこで、何をやっていたのか分からない」というリスクが高まります。
担当者の異動や退職時に、急に現場が機能しなくなることも。
また、納期・品質の安定性やトレーサビリティが損なわれ、サプライヤーやバイヤーとしては大きな不信感にもつながりかねません。
現場目線での“裏設定”管理の課題と展望
暗黙知と形式知の“共存”が必要
裏設定や現場ノウハウは、確かに即応性と柔軟性を与えてくれます。
しかし、このままでは組織の競争力を保てません。
重要なのは「暗黙知を形式知へ、わかりやすい知識へ変換するプロセス」を回し続けることです。
例えば、現場オペレーターが日々の調整内容を簡易入力できる「ノウハウ共有ツール」や「現場日報」の活用が効果的です。
バーコードで設備異常履歴を集計し、設備ごとの微調整ノウハウを棚卸しする取り組みも実際に成果を上げています。
バイヤーやサプライヤーに求められる視点
バイヤーやサプライヤー(サプライチェーンの外部関係者)も、これまで以上に「現場の裏設定の存在」を意識することが重要です。
「なぜこの納期や品質条件が現場で守られているのか?」
「標準値と都度、異なる対応が発生するのか?」
その本質を知ることが、より筋の良い協力関係構築や問題解決につながります。
また、現場にただ「標準化しろ」と迫るのではなく、「どんな調整や苦労が見えないところで行われているのか」をヒアリングし、互いの歩み寄りを促すことが対等なビジネス関係への第一歩です。
“裏”も尊びつつ、“見える化”が新たなビジネス地平線をひらく
裏設定が生まれるのは、ものづくり現場が多様かつ複雑で、予測困難な課題に、知恵と経験で切り抜けてきた証でもあります。
一方、サプライチェーン全体の効率化や、品質保証のためには「裏を見える化し、全体最適を図る」ことが次世代の製造業には不可欠です。
そのためには、属人化を“神秘のまま”にせず、現場と管理層、内外(バイヤー・サプライヤー)が協力して「知識を開きあう文化変革」が求められます。
私はこれからも、「ものづくりのリアリティ」と「未来につながる現場課題解決」両方の視点から現場を見つめ、最新のトレンドと古き良き経験の共存をお伝えしていきます。
さいごに 〜“表に出ない理由”を問い直す視点を持とう〜
製造業に携わる皆さん、特にバイヤーやサプライヤー、そして現場リーダーの方々にお伝えしたいのは、「現場の裏設定」そのものを非合理だと決めつけるのではなく、なぜそうせざるを得ないのか、その背景やメリット・デメリットを多角的に理解してほしい、ということです。
多様化し不確実性が高まる今だからこそ、現場目線に立ち、ラテラルシンキングで従来のやり方を少し横から覗いてみる。
きっと、目の前の“表には出てこない設定”が、組織や自分の成長、新たな事業チャンス発見のヒントになるはずです。
これからのものづくりは、裏を尊び、裏を見える化し、そしてやがて「全員参加型の知恵」として社会に還元されていくべきだと、私は心から願っています。
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