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繊維は本来、熱伝導率が低いポリマーを主成分としているため、放熱用途にも断熱用途にも限界がありました。
近年はナノサイズの高熱伝導フィラーや低熱伝導フィラーを繊維内部に均一分散させることで、熱伝導特性を自由に設計する技術が注目されています。
とくに炭素ナノチューブ(CNT)やグラフェン、六方晶窒化ホウ素(h-BN)などのナノフィラーは、ポリマー単独では到達しえない高い熱伝導率を付与できます。
一方で、空孔を形成するシリカエアロゲルや中空ナノ粒子を分散させると、繊維の熱拡散が抑制され、優れた断熱性を得られます。
本記事では、ナノフィラー分散技術の基礎から応用までを体系的に解説し、繊維の熱伝導制御に関する最新知見をまとめます。
炭素ナノチューブは軸方向で2000 W/mKを超える熱伝導率を示し、グラフェンは面内方向で5000 W/mK以上と報告されています。
これらをポリマー繊維に導入すると、わずか数wt%でも熱伝導率が数十倍に向上するケースがあります。
一方で凝集しやすく、繊維内でネットワークを形成しなければ期待通りの性能が得られません。
六方晶窒化ホウ素は電気絶縁性と高熱伝導性(600 W/mK)が両立し、電子機器周辺の放熱繊維に適しています。
酸化アルミナや酸化亜鉛ナノロッドも高熱伝導フィラーとして研究が進んでいます。
一方、シリカエアロゲルナノ粒子や中空ガラスビーズは多孔質構造により熱伝導率を0.02 W/mK付近まで低下させることが可能です。
ナノフィラーの表面に官能基を導入して親ポリマー性を高める手法が不可欠です。
CNTの場合は酸化処理で−COOH基を導入し、ポリイミドやポリエステル鎖と水素結合を形成させます。
h-BNではシランカップリング剤を用いてシラノール基を付与し、ナイロンマトリクスとの界面密着を向上させる例が一般的です。
界面熱抵抗(Kapitza抵抗)の低減が、ナノフィラーの本来の熱伝導性を活かすカギとなります。
溶液紡糸ではナノフィラーをあらかじめ溶媒に超音波分散し、ポリマー溶液と混合してから凝固浴で繊維化します。
凝固速度を制御するとフィラーが繊維軸方向に配向し、熱伝導経路が形成されます。
溶融紡糸ではツインスクリュー押出機による高せん断混練で凝集体を解砕し、射出ノズルでさらに配向を付与します。
混練温度を過度に上げるとフィラーが劣化するため、樹脂の溶融粘度とバランスを取りながら工程設計する必要があります。
高速引き取りによる延伸は、CNTやグラフェンを繊維軸方向に配向させる最もシンプルな方法です。
延伸倍率が高いほど配向度が上がり、10倍延伸で熱伝導率が約3倍向上した報告もあります。
複数孔ノズルを用いる島-海構造紡糸では、海成分を除去した後に島成分である高熱伝導繊維のみを残し、配向度をさらに高めることができます。
熱延伸やロールカレンダー処理で二次的に配向を付与すると、繊維強度と熱伝導率を同時に向上できます。
また、静電場や磁場を付与してフィラーをその場配向させる研究も進んでおり、h-BNを磁場中で配向させたところ、放熱性が30%改善した例があります。
高熱伝導繊維の評価には、試料裏面に達する温度上昇を解析するレーザーフラッシュ法が有効です。
薄膜状に成形したシートで測定し、比熱と密度を掛け合わせることで熱伝導率を算出します。
繊維軸方向と横方向で大きく差が出るため、方向別に測定することが重要です。
低熱伝導繊維の断熱性能は熱流計法で評価し、熱抵抗値を取得します。
最近はIRサーモグラフィによる非接触評価も普及し、実使用環境に近い条件で温度勾配を可視化できます。
ナノフィラー添加による輻射率変化を補正することで、測定誤差を抑えられます。
ウェアラブル機器やリチウムイオン電池パックでは、熱だまりを防ぐ高機能放熱繊維が求められます。
CNTを3 wt%含むポリエステル長繊維をニット化し、スマートシャツの脇下に配置したところ、肌面温度を2 ℃低減できた事例があります。
さらにh-BNとCNTのハイブリッドにすると、電気絶縁性を保ちつつ熱拡散を30%向上できるため、安全性と性能の両立が可能です。
登山用アウターや宇宙船内装材では、小径中空ガラスビーズを5 wt%分散したポリアミド繊維が採用されています。
繊維内部の空孔率が上がり、熱移動は対流・伝導ともに抑制されます。
同時に遠赤外線吸収顔料を加えることで輻射熱を取り込み、総合的な保温性を高めた商品も市場投入されています。
ナノフィラー分散技術により、繊維の熱マネジメント性能は飛躍的に向上しました。
しかしスケールアップ時のフィラーコストや安全性、リサイクル性といった課題が残ります。
バイオベースポリマーとサステナブルフィラーを組み合わせたエコ設計、AIを活用した配向シミュレーションによる最適化も期待されています。
また、熱伝導だけでなく電磁波シールドやセンサー機能を同時に付与する多機能化が進むことで、アパレルから航空宇宙まで応用範囲はさらに拡大するでしょう。
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