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ワンマン体制で人材育成が進まず若手が辞める現場の実情

目次
はじめに:製造業現場の抱える人材問題
製造業の現場では、少子高齢化や熟練工の引退に伴う「人手不足」が深刻な課題となっています。
とくに中小の工場や伝統的な製造現場では、ワンマン体制が色濃く残っており、人材育成の遅れが現場全体のパフォーマンス低下や若手社員の離職を招いています。
今回は、20年以上現場と管理、そして調達購買にも携わった筆者が、ワンマン体制の弊害とその根底にある昭和的な企業文化、さらに現場目線での抜本的な打開策まで掘り下げて解説します。
バイヤー志望の方や、サプライヤー側でバイヤーの思考を理解したい方にも、現場のリアルな肌感覚を共有します。
ワンマン体制とは何か?昭和型企業の残像
ワンマン体制の正体とその特徴
ワンマン体制とは、ひとりまたはごく少数のトップが現場指揮や意思決定を独占しがちな状態を指します。
現場の作業指示、トラブル時の対応、評価の決定までが「工場長」「部長」「現場監督」などの特定人物に一任され、組織として動くのではなく、人に依存した運営となっているのが特徴です。
昭和から続く日本型ヒエラルキー
高度経済成長期から続く製造現場では、「背中を見て盗め」という暗黙知や、絶対的なリーダーのカリスマ性を重視する文化が根強く残っています。
この昭和型の組織では、従業員の意見や提案が通りにくく、現場の年長者(往々にしてその一人がワンマン)から承認を得なければ何も進まないのが日常茶飯事です。
なぜ今、それが問題になるのか?
時代は大きく変わりましたが、多くの中小工場や地方の現場では「変化」よりも「現状維持」が組織文化として根付いています。
IT化や自動化が叫ばれる中で、手法やルールが属人化され、若手や外部人材が入っても長く活躍できない、もしくはすぐに離れてしまう、その大きな原因になっています。
ワンマン体制がもたらす人材育成の停滞と若手流出
属人化の落とし穴―「伝承されない技術」
ワンマン体制では、作業ノウハウがリーダー個人や、その周辺の古株だけに集約されます。
業務プロセスやマニュアルが整備されず、「その人しかできない仕事」が多数存在。
そのため新卒や転職者が入っても業務習得に膨大な時間がかかり、「何を、どう学べばいいのか分からない」という壁に直面します。
若手社員が感じる疎外感・閉塞感
既存のやり方を批判されたり、新手のアイディアを否定される経験が続くと、若手社員は「意見が通らない」「自分は認められていない」と感じ、モチベーションを失ってしまいます。
また、一人のリーダーに意見や判断が依存する風土では、失敗を恐れて自発的なチャレンジ心が育ちません。
このことが若手の早期退職や人材流出の主要因となっています。
管理職や現場リーダーの孤立も深刻
ワンマン体制の“当事者”である現場リーダーも、目まぐるしい業務に追われ自分しか対応できない領域が増えることで、結局「教える余裕がない」「後継者が育たない」というジレンマへ。
人材の継承力を失った組織は、時間とともに競争力の低下へ直結します。
バイヤー視点:なぜワンマン体制の工場は警戒されるのか?
継続的な品質・納期のリスク
大手メーカーやグローバル調達のバイヤーは、サプライヤーが「標準化」や「組織的運営」を実現しているかを必ずチェックします。
属人化や「この人じゃないと話が進まない」状態は、特定の人物の退職や病欠で取引リスクが一気に高まると評価され、長期的な付き合いを敬遠されがちです。
進まないDXと“脱アナログ”の波
IT活用や資料の電子化、データによる生産実績の見える化が業界全体で進むなか、ワンマン体制下の工場はこれらが停滞し「取引先として将来性がない」と判断されることもあります。
バイヤーは「災害時や大量発注時にも安定して供給できるか」「不具合発生時、現場が迅速な自己解決力を持つか」までもサプライヤー選定基準にしています。
サプライヤー視点:バイヤーとの信頼を得るコツ
現場の属人化から脱却する決意表明
中小・地方工場でも、「現場の標準化」「人材の多能工化」「ノウハウのマニュアル整備」など、組織的な改善を進めていることをバイヤーに積極的に伝えましょう。
たとえば、若手主導の改善活動(QCサークル活動)、全社的な5S導入、OJT計画書の見せ方などが、信頼度アップにつながります。
複数担当者制と現場見学の開放
バイヤーには「どの担当者も同じクオリティで情報提供・業務対応ができる」体制をアピールします。
見学・監査時にはベテランだけでなく、若手・中堅社員も案内できるよう育成を進める。同時に、工程ごとの責任者リストを事前に提示することで一気に透明性が高まります。
現場が変革するためのステップ
1. トップの決意と“自分ごと化”
組織風土は一朝一夕には変わりません。
まずはトップや現場リーダー自身が「このままでは誰も育たない」「事業継続できない」と危機感を共通認識にする必要があります。
自分が中心の運営から、「現場みんなでつくる」運営への意識改革が第一歩です。
2. ナレッジの見える化・標準化
目に見える作業手順書やマニュアルの作成、動画記録などを用いて、誰でも仕事を学ぶことができる環境整備が重要です。
また、これまで暗黙知だった「コツ」や「トラブル対応事例」を組織内でオープン化しましょう。
3. 若手・中堅の抜擢とローテーション
現場を支えるのは、次世代を担う若手・中堅社員です。
彼らに工程リーダーや改善活動のリーダー経験を与え、「失敗してもフォロー体制がある」安心感を作ることで主体性や定着率が飛躍的に向上します。
4. 外部との接点と多様性の導入
異業種交流や現場見学会への参加、外部講師の招へいなど、多様な視点を組織に取り込むことで、昭和的な固定観念を打破しやすくなります。
同時に、評価制度や承認の仕組みも「あの人だけ」を避け、組織単位へ拡張していくことが大切です。
まとめ:現場から未来へ、真の人材育成カルチャーの確立を
昭和型のワンマン体制は、一時代を築いた強いリーダーシップが遺産として残った側面と、現在の人材育成や品質経営の課題の根源とが表裏一体となっています。
現場からの脱却は、すぐにはできません。
しかし、「属人化から組織運営へ」「守りから攻めの育成へ」――この2点の共通意識と、具体的なロードマップを地道にまわすことが、今後日本の製造業、サプライヤー現場の未来を切り開きます。
バイヤーも、サプライヤーも、一人ひとりが「誰もが活躍し会社を支える現場」を目指し、今こそ変革の一歩を踏み出しましょう。
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