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ODMで製品の世界観を正確に伝える“デザインブリーフ”

目次
ODMにおける“デザインブリーフ”の重要性とは
ODM(Original Design Manufacturing)は、現代の製造業において大きな潮流となっています。
特に、グローバル市場で戦う日本のメーカーやブランドにとって、コスト競争力だけではなく、独自性を持った製品づくりが不可欠です。
そんな中で「製品の世界観」をODM先=サプライヤーに正確に伝達することが、競争優位となる製品設計の根幹を成しています。
この橋渡しとなるのが“デザインブリーフ”です。
デザインブリーフは、単なる設計指示書や仕様書ではありません。
ブランドが持つ「世界観」や「価値観」、最終的なユーザー体験までをも織り込んだ、プロジェクト全体の“設計図”です。
本記事では、製造現場に20年以上身を置いてきた筆者が、独自の視点から「良いデザインブリーフ」とは何か、そしてその作成・運用がなぜ昭和的なアナログ業界でも今なお重要なのかについて掘り下げます。
ODM調達・購買担当者、そしてサプライヤー側の方々にも役立つ実践知をお届けします。
ODMにおけるカギは「世界観の伝達力」
マニュアル化できない“世界観”の壁
多くのODM案件では、設計仕様書や部品リストなどのドキュメントは比較的うまく伝えられています。
しかし本当に差別化が生まれる部分、すなわち「ブランドイメージ」「ターゲットが受け取る印象」「使う楽しさ」などの定性的な要素は、言語化・明文化することが非常に困難です。
例えば、
– 同じ“赤色”でもトーンや意味合いがブランドごとに違う
– ハンドリング感や重量バランスへの期待値が微妙に異なる
– ロゴ露出のさせ方ひとつで高級感もポップさも大きく変わる
こうした“曖昧に見える感性の差”が、最終製品の完成度を大きく分けます。
昭和時代からの「阿吽の呼吸」「職人的な勘」に頼っていては、複雑化・グローバル化する製造スキームでは通用しません。
文化も言語も異なるODM先に、「想い」と「理由」まで含めて正確に伝える力が、これからの時代は問われます。
なぜデザインブリーフが必要か
では、なぜデザインブリーフが極めて重要なのでしょうか。
理由は3つあります。
1. サプライヤーの自主的な提案力を引き出せる
– 「こう作ればいい」とだけ指示するのではなく、製品の役割や想定ユーザー、ブランドの大義名分まで正確に伝えれば、ODMパートナー側から思わぬクリエイティブなアイデアが湧き出ます。
2. 修正工数や手戻りを最小化できる
– 世界観をあやふやに伝えていると、サンプルができるたびに「なんか違う」と修正のサイクルが増え、コストや納期が悪化します。
3. “昭和型口伝”から脱却し、誰でも引き継げる知識に残せる
– 属人的な伝達手法では、担当者交替時や海外移管時にナレッジロスが発生します。デザインブリーフは誰でもアクセスできる情報資産となります。
実践的デザインブリーフ作成ポイント
1. 背景と狙いを明記する
単なるスペック一覧や仕様要件を書くだけでは、製品の意図は伝わりません。
必ず「この製品で解決したい課題」「ブランドがこの製品に込める役割」「想定ターゲット」といった“why”の部分を冒頭で説明しましょう。
これがないと、最終形の完成度やコミュニケーション効率が極端に落ちます。
2. 具体的なユーザー像とその利用シーン
カスタマージャーニーやペルソナまで精緻に描く必要はありませんが、ユーザー層の年齢・性別・ライフスタイルや、商品が使われるシーンを箇条書きでも付記すると、「なぜこの質感や色が求められるのか」という納得感につながります。
3. 世界観やトーン&マナーの表現手法
バイヤー側が頭の中にある「この世界観」を、いかに相手に伝えるか。
ここが難関ですが、写真や既存製品の例、逆に「これはNG」という事例もセットで提示すると、ODM先も迷いません。
例えばプロダクトのムードボードを作る、あるいは「未来志向・シンプル・余白を重視」など美意識を単語レベルで伝えておくのも有効です。
4. 柔軟に受ける部分・決してぶらさない部分を分ける
すべてガチガチに指定すると、ODM先の創造性を損ね、画一的なアウトプットしか得られません。
一方でロゴの扱い方や形状制約など、絶対にぶれさせたくない部分はクリアに線を引き、どこまでODM先に裁量を与えるかを明確にします。
5. 「なぜこのデザインがいいのか」の理由を伝える
ただ「このデザインが欲しい」ではなく、なぜこれがブランドや顧客体験にとって不可欠なのか、オーナーシップをもって説明しましょう。
相手の納得感が高まることで、一体感のあるものづくりにつながります。
昭和型“属人調達”からの脱却と、現代的バイヤー像
アナログ業界にこそ残るブルーオーシャン
調達・購買といえば、かつては現場で「長年の勘」と「顔の利く人脈」がものを言う世界でした。
必要な部材も「あの人に頼めばなんとかしてくれる」という調子です。
ところが時代が進み、グローバル調達や多品種少量生産が常態化するなか、いつまでも昭和的な伝達スキルに頼ることは、むしろ事業リスクの温床になっています。
そこで、属人性を排した「世界観の設計・伝達力」をもつ現代調達担当が、まさに飛躍のチャンスを掴めます。
これは高度プロフェッショナルのみに開かれたブルーオーシャンと言えるでしょう。
バイヤーに求められる新しい資質
今後のバイヤー、особенно ODM調達担当に求められるのは以下3つの力です。
1. “プロジェクトマネージャー”として全体設計ができる
– 現場交渉だけでなく、価値創出の起点に立ち、ステークホルダー全体を動かせる力が不可欠になります。
2. クリエイティビティへの敬意とコミュニケーション力
– 相手サプライヤーの目線も理解し、明確なコンセプトを共有しつつ相手がアイデアを出せる余白も与えましょう。
3. 情報をナレッジ化して組織に還元
– 属人技術や経験則を組織知へと置き換える能力は、社内外での評価を大きく引き上げます。
サプライヤー側から見たバイヤーの“デザインブリーフ”
良いバイヤーの“共犯者感”は圧倒的
これまで数多くのODM開発立ち上げに参加した私の経験から言えば、サプライヤー側は「良いデザインブリーフ」を渡されるだけで、そのプロジェクトへの熱意や一体感が文字通り飛躍的に高まります。
– 懸念点や仮説を持って協議に臨める
– 本質を説明されることで、コストや納期に合理的な提案ができる
– 単なる下請けでなく、パートナーとしての誇りが生まれる
つまり「発注者」「受注者」ではなく、共犯者のようなプロジェクト体験が叶うのです。
逆に“悪いデザインブリーフ”の悲劇
一方で、「仕様書的に穴埋めしただけ」「思想や情熱が何も伝わってこない」案件では、現場は“作業者”としか見なされず、暖簾に腕押しのような低いモチベーションに終始します。
これでは、企業間の信頼構築もなければ、長期的な協働環境も生まれません。
業界変化は今、まさに加速している
昭和から平成、令和へと時代が移り、ものづくりを取り巻く環境は劇的に変化しています。
中でも「情報伝達力」「共感力」「プロジェクト全体設計力」こそが、ブランド競争の新しい武器です。
ODMで製品づくりを任せる現場において、デザインブリーフはその先駆けです。
まとめ:バイヤーもサプライヤーも“世界観共有”で進化せよ
業界構造がどう変わっても、製品は人と人との共同作業で生まれるものです。
仕様伝達だけで終わらせず、ブランドの世界観や想いを“デザインブリーフ”という器で共有できれば、代替不能なものづくりが実現します。
バイヤーは単なる発注担当に留まらず、共感・設計・引き出す力で新時代を牽引する存在に。
そしてサプライヤーも、良き“共犯者”として新たな価値創造の現場を切り拓くべきです。
本記事が、あなたの現場での役割や「伝える力」を再考し、より豊かなものづくりを目指すヒントになれば幸いです。
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