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パーカーOEMで起きやすいサイズズレ問題とグレーディングの考え方

目次
パーカーOEMで起きやすいサイズズレ問題とグレーディングの考え方
パーカーOEMの現場で頻発する「サイズズレ」の実態
パーカーのOEM(他社ブランド製品の受託製造)は、アパレル業界において今日も活発に行われています。
しかし、パーカーOEMには特有の課題が存在し、その最たるものが「サイズズレ問題」です。
現場で働いていると、仕様通りのパーカーを仕上げたはずが、納品後にバイヤーやエンドユーザーから
「サイズ感が思っていたものと違う」
「Mサイズしか着ない社員のはずが、Lサイズしかフィットしない」
といった声がしばしば聞かれます。
この原因は単なる「個体差」や「工程管理のミス」だけではありません。
古くからのアナログ工程やコミュニケーションロス、
そしてグレーディング(サイズ展開の設計)の考え方や運用が、根本に関わっています。
サイズズレが発生する5つの主な要因
サイズズレ原因は複雑ですが、現場で頻出する主要な5つの要因をご紹介します。
1. パターンメイキングの共有不足
サプライヤーとOEM元ブランド間でパターン(型紙)の仕様が正確に共有されていない。
A3やExcel紙図面でやりとりされてきた昭和からの伝統的な手法が今も一部で残り、曖昧な指示が「現場解釈」で再現されてしまう。
2. グレーディング手法の違い
1サイズごとの増減値がR社、T社で微妙に異なる。サンプルと量産のグレーディングルールの不一致が、ズレを生みやすい。
3. 素材の伸縮特性の見落とし
パーカー素材は裏毛、フリース、混紡生地など多岐に渡り、同じパターンでも縫製や洗濯工程での「収縮率」が異なります。
物性管理が甘い場合、MサイズのつもりがLサイズ並みに膨らんでしまうことがあります。
4. 生産拠点による基準のずれ
海外工場、特に新規サプライヤーでは、身体サイズの基準が違う場合が多いです。
「日本のMサイズ」と「中国基準のMサイズ」は、実はかなりギャップがあり、ローカル基準で運用されてしまうことも珍しくありません。
5. 現場オペレーションのアナログ性
生地の裁断や縫製工程が手作業主体のまま残っている場合、エラーが入りやすい。
曲尺や手書き指示での補正など、効率化・DX(デジタル化)とほど遠い現場実態があります。
実践的なグレーディング設計とは?OEM現場での課題整理
グレーディング(grading)とは、基準サイズ(通常はMサイズ)から、S・Lなど上下のサイズに向けて各部位をどのように拡大縮小して設計するかのルールです。
パーカーの場合、袖丈、身幅、着丈、肩幅、フードの大きさ、裾リブの寸法など、複雑に関連します。
現場でグレーディング設計を高精度に行うには次の点がポイントです。
– OEM元の設計思想(タイト/ルーズ系、ターゲット顧客層)を明確にする
– 型紙データを「アナログ紙」ではなく「CADデータ」でやり取りする
– 各増減寸は10mmか、それとも8mmか、単純スケールだけでなく“箇所ごとの最適値”を定めておく
– サイズガイドチャートをサプライヤー側で自作させず、OEM元がforkバージョン管理する
加えて、「着心地」に深く影響する箇所(例:身幅や袖幅)は、単なる算術的拡大だけではなく
「人間工学的」な視点で見直すことが重要です。
特に近年、ユニセックス化やオーバーサイズトレンドにより、「Lだが実質XXL相当」といったケースも増えています。
ルールを一元化しないまま製造委託が拡大すると、ブランド基準がどんどんぶれていきます。
昭和的アナログ管理VS現代的デジタルトランスフォーメーション(DX)
冒頭で触れたように、製造現場にはいまだに
「手書きパターン」「アナログ品番管理」「FAX指示」
が根付いています。
昭和から続く職人主導のオペレーションでは、細やかな技の伝承が活きる反面、
再現性・標準化という点で限界がきています。
一方、CADデータによるパターン共有や、PLM(Product Lifecycle Management)システムによる一元管理、
縫製ロボット・自動裁断機によるデジタル化が進む現場では、
品質のバラつきや「思ったより小さい」「同じLなのに商品によって全然違う」といった悩みを大幅に減少させています。
古い体質の企業でも今、少しずつ「デジタルへのシフト」に舵を切っていますが、
現場の抵抗やコスト意識などから完全移行には至っていないのが実情です。
バイヤー・サプライヤー視点の「製品リスク管理」とコミュニケーション術
バイヤー(調達担当者)にとって最大のリスクは
「売り場でユーザーが手に取った時の違和感」
「返品/クレーム増加によるコスト増」
です。
実は、サプライヤーの多くが「NG品のリメイク」や「在庫処理」を水面下で抱えています。
バイヤー・サプライヤー双方が価値ある関係性を築くには、
– リアルなサイズテストサンプルのやりとり
– 製造現場責任者(現場長)との早期コミュニケーション
– 複数拠点生産時の「試作トランスファーテスト」(A拠点とB拠点で同条件再現)
– 洗濯テスト・実使用シミュレーションの事前共有
など、「前広・多重チェック」でリスクを減らす体制作りが不可欠です。
現場を見る目を持つバイヤーであるほど、「現物主義」「現場主義」に徹し、
自らサプライヤーの現場視察や、QC(品質管理)部門とのレビューを行っています。
昭和的な「お任せ式」調達から、デジタルデータ×現場実地の「ハイブリッド型」調達へと進化することで、
OEMビジネスにおけるサイズズレ問題を根本から減少できます。
サイズズレは「現場の知恵」と「システム力」の掛け算で解消へ
単純に「仕様を厳守しろ」「チェック体制を強化しろ」では
現場の負担増や混乱につながるだけです。
ベテランパタンナーの暗黙知(クセや継承技術)と、
最新のDXツール、データ管理を組み合わせる……。
そうした「ラテラルシンキング(水平思考)」でこそ、
本質的な解決が見えてきます。
たとえば、現場での小さな改善策の積み上げ(サンプル段階で“実着テスト”を徹底するなど)と共に、
数値データの蓄積やAIによるフィット感予測を導入すれば、
もっとスマートな製造と調達の仕組みが作れます。
そして何より、「サプライヤー≒外部委託」ではなく
「共存パートナー」として一体開発型のコミュニケーションをとること。
これがパーカーOEMの成功における最大のカギです。
まとめ:パーカーOEM時代に求められる「現場目線のデジタル転換力」
パーカーのサイズズレ問題は、単なる現場ミスでも
単なる指示書の不備でもありません。
激変するアパレル市場において、
生き残るためには
「現場目線を疎かにせず、同時にデジタル化を推進し、両者の強みを掛け合わせていく」
ことが必須です。
長年の現場経験から言えることは、
本当の品質は「人とシステムの協働」からしか生まれない、ということです。
バイヤー、サプライヤー、すべての製造業関係者の皆様が、
自社の価値を損なうことなく
次世代のOEMビジネスを切り拓けるよう、
今こそ伝統と革新を融合させた現場改革に取り組みましょう。
製品の本質は「着た人の満足」。
サイズズレ問題の克服こそが
ブランドの信頼、ユーザーの笑顔へとつながっていくのです。