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投稿日:2025年12月7日

海外調達比率の増加でコミュニケーションコストが跳ね上がる悩み

はじめに:海外調達比率の増加という現実

日本の製造業がグローバル展開を進める中で、海外調達比率の増加はもはや避けられないトレンドとなっています。

かつては「日本品質」にこだわった内製志向が根強くありましたが、コスト競争・人手不足・原材料価格の高騰・サプライチェーンリスクの分散といった背景から、中国・東南アジア・欧州・米州など海外サプライヤー活用への舵取りが加速しています。

一方で、多くのバイヤー・生産管理担当者が頭を悩ませているのが「コミュニケーションコスト」の跳ね上がりです。

カタログスペックや価格比較だけなら国内と大差はありませんが「要求事項・ニュアンスの伝達」「意思疎通の摩擦」「納期やトラブル発生時の判断・行動」の場面になると、どうしても言語・文化・商習慣の壁が浮き彫りになります。

この記事では、こうした現場で生じているリアルなコミュニケーション課題を、多角的・実践的な視点から掘り下げていきます。

なぜ、いま海外調達比率が増えているのか?

グローバル競争時代の必然

製造業のサプライチェーンはこの十数年で大きく様変わりしました。

国産原材料や国内生産へのこだわりはコストアップ要因となり、グローバルでのコスト最適化・調達購買の柔軟化・為替対応力などが競争力の鍵となっています。

経営層から中期経営計画で「海外調達比率の目標数値化」が明文化され、現場には“安く、早く、安定的に”部材・製品を調達する責任が重くのしかかっています。

仕入先選定においても「海外」「現地調達」「新興国市場強化」といったキーワードが優先される時代です。

品質水準の均質化とアジア勢の台頭

過去には“海外=品質トラブル・納期遅延”という先入観もありましたが、近年は多くのアジア新興国メーカーがISO/TS16949やIATF16949、IEC、UL、RoHSなど国際認証を取得し、品質水準も飛躍的に向上しています。

中国・タイ・ベトナム・インドなど現地企業や欧米外資サプライヤーの台頭も著しく、調達選択肢が広がっているのが実情です。

価格競争力はもちろん、エンジニアリング対応や柔軟なロジスティクス面で強みを持つサプライヤーも増えてきました。

海外調達で増大する“見えないコスト”―コミュニケーションの壁―

言語の壁だけではない「伝わらなさ」の本質

日本の調達現場でよく語られるのが「英語が話せれば大丈夫」という素朴な誤解です。

確かに共通言語としての英語力は必須ですが、本質的には「業界独自の用語・要求品質・工程プロセス・安全規格」などの深い理解を前提としたコミュニケーション力が求められます。

たとえば「寸法公差の解釈」「部分的な仕様変更時の現場感覚」「トラブル発生時の一次報告のニュアンス」など、微妙な“温度差”が海外調達では頻繁に生じます。

現地担当者はYesと回答しても、“どの程度まで理解してYesなのか?”は常にブラックボックスです。

国内サプライヤーなら“阿吽の呼吸”や“慣習・和的配慮”で通じたことが、海外では書面・チャート・サンプル・写真・プロセスフローなど“客観的エビデンス”による細やかな意思疎通が不可欠となります。

リモート化・デジタル化社会と逆行する“現場感覚”の重要性

新型コロナウイルス後のニューノーマル時代にはリモート会議・チャット・オンライン承認フローの活用が常態化しました。

一見するとDX化による効率化が進んでいるように見えますが、複雑で多品種・多工程を扱う製造業の現場では「紙の図面」「現物見本」「現場立ち合い」などアナログなコミュニケーションの重要性が依然として色濃く残っています。

特に新規品や客先支給品の場合、「現場を直接見て確認する」「実際に手で触れて感じる」ことが品質・納期問題の未然防止に直結します。

海外サプライヤーとなると、この物理的な距離と情報ギャップが大きなコミュニケーションコストとして現れます。

具体的にどんな場面で“コスト”が上がるのか?

1. 仕様伝達の手間とロス

図面送付や仕様書の翻訳、ローカルスタッフへの説明など、海外調達では仕様伝達プロセスが格段に複雑化します。

誤訳や解釈違いによるサンプルNG、追加照会ややり直しが発生すれば、大きな工数・日数ロスにつながります。

また、追加指示・クレーム対応もタイムラグが発生し、収束までに想定以上のリソースがとられます。

2. 納期や物流の不確実性

国による商習慣の違いや現地の祝日、輸送トラブル、サプライチェーン混乱など、日本国内なら考えにくい不確実性が物流面に潜んでいます。

特にコロナ禍以降、国際物流の混乱・港湾の停滞・コンテナ不足といった不可抗力のリスクも常に意識が必要です。

こうした「連絡・調整」「イレギュラー対応」の手間もバイヤーのコミュニケーションコストを押し上げます。

3. 品質トラブル発生時の対応力

品質問題が発覚した場合、根本原因を追究し、恒久処置案を日英・複数言語でやり取りし、現地製造プロセスをフィードバックする――この一連のプロセスには、国内相手と比べ圧倒的な手間と時間がかかります。

– QA監査や工程立ち合いが十分できない
– 根本原因報告書の納期が遅れる
– 原因箇所の写真やサンプルがこちらの期待するクオリティで出てこない

こういった“一段階余計なやり取り”が積み重なり、担当者のストレス・工数増加につながります。

4. 担当者の能力依存リスク

現地スタッフや海外駐在員の「語学力」「交渉力」「ものづくり知識」に大きく成果が依存しがちです。

また、属人的になりやすく、担当者異動や退職で急に引き継ぎ困難が顕在化するケースが多々あります。

マニュアル化・ナレッジ共有が不十分だと、常に属人的対応が常態化し、組織としての弱さが目立つようになってしまいます。

コミュニケーションコスト削減の現実解は何か

1. 標準化&マニュアル化で属人化を抑える

案件ごと・国ごとに仕様や運用ルールがぶれないよう、調達プロセスや情報伝達ツールの標準化を徹底することが不可欠です。

「はじめての海外取引先でも迷わず回せる手順書」「最低限必要な業界用語集」「典型的なトラブル事例集とQ&A」など現場目線の“使えるナレッジ”を社内で作りこみ共有することが、ロスの削減につながります。

2. 多国籍メンバーやローカルスタッフとの二人三脚体制

日本側担当、現地側担当の両輪でコミュニケーションをサポートする体制が重要です。

現地語(中国語・タイ語・ベトナム語・スペイン語など)のバイリンガルスタッフを活用し、日常的な意思疎通を密にすることで「通訳のズレ」を少なくできます。

また、ZOOMやTeamsの録画・自動翻訳機能などITツールも積極活用し、両者の“認識のすり合わせ”を可視化する努力も有効です。

3. 立ち合い・監査・現地教育の定期的実施

現地製造拠点への定期的な往訪や、工程監査、品質教育の出張指導は“昭和的なアナログ手法”のようでいて、依然として有効性が高い手段です。

文化や価値観の違いを“肌で感じ合う”ことで、相手のクセ・強み・弱みを補完的に把握できます。

人間関係の構築が、実はコミュニケーションコストの削減に直結する場面も多く、現場の“顔が見える関係”は今後も重要です。

昭和から抜け出せない体質がもたらす課題と、変わるべきポイント

「阿吽の呼吸」や「現場任せ」からの脱却

日本の製造現場では、「長年の付き合い」「顔を見れば分かる」「一度言えば後は任せっぱなし」といった昭和的な空気が根強く残っています。

しかし、グローバル調達時代にはこの“肌感覚”が逆に障害となり、海外サプライヤーとのアンマッチを増大させます。

「確認・証拠・数値で詰める」「記録を残す」「誰が見ても同じ判断ができる」こうした“脱日本流”のマインドセットが求められます。

意思決定プロセスの透明化・スピードアップ

海外取引では「上長承認」「稟議」「再確認」など日本独特の合議制・属人主義がタイムロスの温床になりかねません。

Low context文化(直球のコミュニケーション)にシフトし、意思決定を迅速に、プロセスを可視化することで余計なやり取り・二度手間を極小化できます。

まとめ:コミュニケーション力が海外調達を成功へ導く

海外調達比率の増加は、単なるコスト削減戦略ではなく、製造業のグローバル競争を生き抜く必須条件です。

しかし、一方でコミュニケーションコストの増大という深刻な「見えないコスト」を抱えています。

– 言語・文化・価値観の壁
– 仕様伝達の煩雑化
– トラブル対応の工数アップ
– 担当者能力への依存リスク

これらに対する打ち手も、単なる「英語力」や「デジタル化」だけでは不充分です。

むしろ標準化・マニュアル化を徹底し、現地との信頼関係をベースにした“現場感覚と合理主義のバランス”を追求すること、そして“阿吽の呼吸から脱却した客観的・透明な業務プロセスづくり”こそ、今後の製造業バイヤー・サプライヤー双方に不可欠な力となるでしょう。

製造業で働くすべての皆さんの参考になれば幸いです。

今後も現場目線の実践的な知見を発信していきます。

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