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配車担当の負担が異常に重い理由

目次
はじめに:配車担当者の苦悩とは
製造業、とくにものづくりに関わる現場において、調達・購買・生産管理・物流は、まさに企業の「血流」のような役割を果たしています。
その中でも配車担当者の仕事は、目立たずとも極めて重要です。
しかし、その役割の重さや負担の実態は、管理職や他部門からはなかなか見えづらいものです。
なぜ配車担当の負担だけが際立って重くなりがちなのでしょうか。
昭和から令和へと時代が進んでも、アナログな業界文化が色濃く残る背景と合わせて、その理由を実践者目線で徹底解説します。
また、これからバイヤーを目指す方や、サプライヤー側でバイヤーの視点を知りたい方にも有益な「現場のリアル」をお届けします。
アナログな物流現場―課される”見えざる重圧”
配車業務は一般的に「運送会社にトラックを手配すれば終わり」と思われがちですが、現場の実態はまったく異なります。
いまだにFAXや電話、エクセルに頼ったアナログオペレーションが主流の工場も少なくありません。
デジタルツールは部分導入されているものの、荷主やサプライヤー間での業務フロー全体を自動化できている工場は極めて稀です。
配車担当者は、運送会社の空き状況を逐一確認し、積載率を最大化しつつ、指定した納入時刻やコース制約、配送先の荷受け体制にまで気を配る必要があります。
この調整業務こそが、膨大なストレスの源泉となっています。
「段取り八分」でも収まらない現場のカオス
工場の隣人たちの思い付き変更
配車計画が終わった直後に、工場の生産現場や購買担当から「今日、急遽これも積んでほしい」「この納品優先で!」というリクエストが頻発します。
一見些細な聞こえるかもしれませんが、配車担当にとってはまさに計画の根本を揺るがす“リセットボタン”のようなものです。
特に多品種少量生産や短納期対応が求められる時代ほど、工場の見込み生産・在庫調整・急な顧客要望が絡み合い、配車担当者への負荷は指数関数的に増大します。
ドライバー・車両・荷台…すべてのリソースがギリギリ
慢性的なドライバー不足、車両確保の熾烈な競争、法規制の強化による稼働可能な時間帯の制限。
このようなリソース制約のなか、荷物特性や要冷蔵要温度帯ニーズ、乗務員の技能や経験など“思い通りにいかない”変数が数多く絡みます。
経験則と人脈によってなんとか調整できている現場も多いですが、「誰もができる仕事」ではなく、むしろ高度な“暗黙知”が問われます。
業界構造が生むサイロ化と情報断絶
分断されたサプライチェーンの現状
多くのサプライヤー、協力会社、さらには3PLや4PLなど中間業者が多層的に入り込む製造業の物流ネットワーク。
それぞれの組織が個別最適化を狙うため、全体最適の視点は希薄になりがちです。
配車担当は、各サプライヤーや物流子会社、関係部署との調整役を一手に担わされます。
さらに、「うちだけどうしても先に納品してほしい」「この商品だけ混載不可」など、顧客・サプライヤー間取決めや独自ルールが無数に存在しています。
これは急な輸送需要の変動や災害・事故時に、配車担当者の“調整ストレス”を何倍にも増幅させます。
見えない“情報の壁”
物流DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれていますが、実際には現場の情報連携はいまだFAXや電話頼りです。
リアルタイムの空車状況、在庫情報、納品スケジュールが即時に共有できず、“人力での取りまとめ・聞き合わせ”が常態化しています。
この情報断絶こそが配車担当の業務を過剰に複雑化させ、残業・休日出勤の原因にもなっています。
心理的負担―期待と責任の板挟み
調達購買部門、製造現場、営業やカスタマーサービスはもちろん、社外の運送会社やサプライヤーからも、しばしば「なんとかしてほしい」と期待されます。
一方で、トラブルが発生した時はあっという間に“責任の所在”を問われることもしばしばです。
実際、納入遅れや誤配、事故などがあれば、配車担当者が全責任を背負わされる場合も少なくありません。
また、日中は調整や緊急対応に追われ、業務報告や記録、翌日の段取り準備は夕方以降という人も多いです。
これは慢性的な心理的ストレスや疲弊を助長する一因です。
「変えにくい」アナログ習慣と変革の壁
製造業界の物流現場は“長年の習慣”に強く引きずられがちです。
例えば、長年付き合いのある運送会社の担当者や、手作業での帳票管理を続けている取引先。
現場に根付いた「顔と顔」の信頼関係や、「例年通り」「去年と同じ」といった思考が、DXや業務改善の導入を拒む大きな壁になっています。
また、“属人化”が進みやすい現場ほど、特定メンバーがノウハウを溜め込むことで、人的リスクが高まります。
いざ異動や退職となれば、現場の混乱は避けられません。
配車担当に求められるスキルと今後の展望
現場力×全体最適志向
優秀な配車担当者は情報把握力や交渉力はもちろん、「現場の実情」と「経営側の要求」を同時にバランスする判断眼を持っています。
すなわち、必要なのは“ラテラルシンキング(水平思考)”という視点です。
-突発要因への即応力
-作業現場のボトルネックの発見
-現実的なDX化の推進タイミング
-サプライヤーや関係部署の納得を得るコミュニケーション能力
現在、需要変動や災害リスク、地政学リスクなどより一層複雑化する供給網のなか「調整力」「全体俯瞰力」は不可欠なスキルとなっています。
配車担当の未来―流動化と自動化のはざまで
今後、AIやビッグデータによる自動配車システムが普及すれば、現場の属人性は徐々に緩和される可能性があります。
とはいえ、「システムにすべてを委ねる」には構造上まだまだ時間がかかるのも現実です。
その間、「人にしかできない判断」や「サプライヤー・輸送会社との信頼関係」は依然として価値を持ち続けます。
優れた配車担当者は、“最後の砦”として工場や現場を守り続ける存在であり、逆に業務全体を自働化・効率化へとリードできる重要なカタリストです。
まとめ:配車担当を過小評価してはいけない
配車担当者の業務負担は、極めて高く、なおかつ外部からは見えにくいものです。
多くの製造現場で“なんとか回っている”のは、彼(彼女)たちの暗黙知と高度な調整力、長年培ったアナログの人脈ネットワークがあります。
今後、製造業の発展やDX推進には、現場の心臓部とも言える配車担当者の地位向上と業務改善が必須です。
現場で奮闘する皆さん、現状を正しく把握したうえで、少しずつでも「やりがい」や「仕組み」の価値向上を一緒に目指していきましょう。
バイヤー職、サプライヤーとして相手側の仕事のリアルを知ること、そして製造業を支えるすべての人が“全体最適“という視点を持つことが、今後の成長のカギとなります。