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投稿日:2025年12月11日

工程異常が“再現性なし”で終わる不気味さ

はじめに:なぜ“再現性なし”の工程異常は現場を震撼させるのか

製造業の現場で、時折「再現性なし」という言葉が飛び交う工程異常があります。

つまり、同じ条件を何度再現しようとしても二度と発生しない、原因が見えない異常現象です。

突発的に現れ、本質が掴めないこれらの異常は、不気味さとともに現場に大きなプレッシャーを与えます。

何十年と現場で働く私も、原因不明のまま異常が解消された時ほど「本当に大丈夫だろうか」と疑心暗鬼になった経験が幾度となくあります。

この記事では、再現性がない工程異常の特徴や、アナログからデジタルへの過渡期ならではの“落とし穴”、現場で実際に起きた事例とともに、その対策や本質的な改善アプローチについて考察します。

「なぜあの異常がまた発生しないのか」「グレーゾーンをどう扱うべきか」働く現場のプロとして、実感を持って伝えたい内容です。

これからバイヤーや現場リーダーを目指す方、サプライヤーとして品質向上を志す方にも、ぜひ参考にしてください。

工程異常の“再現性なし”とは何か

1. 再現性なし——現場が直面する最大の違和感

例えば、設備が突然停止してしまったが、その後の再起動では二度と同じ現象が現れない。

不良品が1つだけ発生したが、その後の生産で同様の不良が出ない。

こうした「原因がわからないまま消えていく」現象こそ、製造現場が最も警戒する“再現性なし”の工程異常です。

この問題の厄介さは、原因追及ができないこと、十分な対策を講じにくいこと、現場が心理的に“腫れ物”扱いをしてしまうことです。

少量多品種化で生産ラインが複雑化し、熟練工だけに依存できない昨今、この「誰のせいでもない」「なぜ起きたか分からない」異常こそ、品質・安定生産上のブラックボックスになりがちです。

2. 昭和の現場から続く“現場勘”と限界

かつて昭和時代は、名人芸や現場勘のベテランがこうした異常の“臭い”を嗅ぎ分けて対処してきました。

「音がいつもと違う」「この色味は怪しい」など、経験知の塊が製造現場を守ってきたことも事実です。

しかし、世代交代や人手不足、グローバル調達の拡大とともに「人の感覚や勘」に依存するやり方には限界が訪れています。

曖昧なままの“再現性なし”が将来的に重大な事故・クレームへ繋がるリスクも年々増しています。

工程異常“再現性なし”の実例と教訓

1. 電子部品メーカーでのケース:一台だけの不良

私の経験では、某電子部品の自動組立ラインで「朝一番の一台だけ、本来起こりえない組み立て不良」が発生しました。

再度同じ材料ロットや部品でトライしても、不良は再現しません。

設備保全チーム、設計者、材料メーカーを巻き込んで原因追及したものの、最終的には「再現性なし」で片付けられました。

数カ月が経ち、本質的な改善はできず、何となくモヤモヤ感を残して業務は続けられました。

後に全体監査で「異常の見える化不足」が指摘され、IoTによる常時データ取得・AI解析の導入によって初めて異常の兆候が捉えられるようになりました。

この経験から学んだのは「“再現性なし”で済ませず、データで異常を記録し続けること」「設備の小さな変化を逃さず捉えること」の重要性でした。

2. 自動車部品サプライヤーでのケース:検査工程の落とし穴

別の例では、検査工程で微細なクラックがごく稀にだけ見つかる現象がありました。

熟練検査員でも見逃しやすく、しかもクラックの出現パターンが不定期かつ予測不能という“再現性なし”のパターンです。

原因は、数万回に一度だけ発生する設備微振動と、材料ロットの極端なばらつきが重なった時という、極めて確率の低い現象でした。

この時も、現場の「大丈夫だろう」とする空気が蔓延しがちで、危うく大口顧客からのリコールに発展するところでした。

大事なのは、グレーな異常を記録し、必ずトレースし続ける組織風土を作ることです。

再現性なしの異常がもたらすリスク――“現場の不気味さ”の正体

1. 品質事故の“地雷”になるリスク

一番のリスクは、稀少な異常が、ある日突然塊となって現れることです。

“いつか起こる”と現場が知りながら対策を怠る事で、致命的なクレームや回収事故に繋がる危険性があります。

“再現性なし”とはすなわち「見えないリスクの蓄積」です。

品質管理部門やバイヤーから見れば厳しく管理が求められる要素ですし、現場主導の「あやふやな処理」は次世代の品質基盤を揺るがす元凶です。

2. デジタル時代と“情報の見逃し”

IoTやAI時代の到来で、従来見逃してきた微細な異常や異変がデータとして見える化できるようになりつつあります。

逆に言えば「データで拾えなかった異常=対策のしようがない脅威」とも言えます。

現場の“勘”と最新のセンシング、データサイエンスを融合させ“あやしい”現象を決して見逃さない意識が求められています。

バイヤー・調達担当としての視点:認知しておくべきリスク

調達バイヤーとしては、“再現性なし”の異常が持つ意味を正しく理解しておく必要があります。

なぜなら、サプライヤーが「原因不明」として処理したグレーゾーンが、サプライチェーン全体のリスクに直結するためです。

新規サプライヤー選定や定期監査の際には、

・直近の工程異常発生件数
・原因不明と分類された事象の管理体制
・“再現性なし”事象の社内報告ルール
などをしっかり確認することが肝要です。

また、サプライヤーとのコミュニケーションでは「うやむやにしがちな工程異常」を可視化・共有し、真の品質パートナーシップを築くことが重要です。

サプライヤーは“バイヤーの考えていること”を知ろう

バイヤーは、単なる購買先ではなく、サプライチェーン全体のリスクマネジメントを担っています。

サプライヤー側は「なんとなく現象が消えた=解決」と短絡的に考えるのではなく、

・なにが起きたのか
・どこまで原因を深掘りしたか
・今後の再発予防策はあるか

を言語化し、バイヤーと情報を双方向でやりとりできることが大切です。

現場の異常現象を蓄積し、工程設計や材料選定の段階からバイヤーと議論に乗せる。

これが真のリスク分散型モノづくりを可能にします。

“再現性なし”を乗り越えるための現場発ラテラルシンキング

昭和から続く現場勘と、最先端のデジタル技術——この二つを掛け合わせ次の一手を考えてみましょう。

1. “異常のストック化”で見えないパターンを可視化する

どんなに小さな違和感でも「記録し続ける」ことが重要です。

現場日誌も、設備ログも、検査員の日々のメモも、デジタルで集約し検索できるように設計します。

一見バラバラの現象でも、時系列や材料ロット、作業者ごとに俯瞰すれば「隠れたパターン」が見えることがあります。

この地道な記録・見える化が“再現性なし”に挑む一歩です。

2. ヒヤリ・ハットや“違和感カルチャー”の醸成

「あの時何か変だった」「何となく気持ち悪い」が言える職場づくりも極めて重要です。

スタッフ全員で日々のヒヤリ・ハットを集め、小さな異常を議論する文化が、思わぬ品質事故の芽を摘みます。

自主保全や改善提案件数のKPI化も、こうした自主的リスクマネジメントの一環となります。

3. AIのラテラル解析を活用する

データが集まったら、それをAIに蓄積させ異常検知やパターン解析に活かします。

再現性のない現象も、AIは“確率的に不可解な動き”として浮かび上がらせることができます。

設備の稼働データ、検査成績、生産条件——組み合わせで異常シナリオを描き出す発想こそ、現代のラテラルシンキングです。

まとめ:昭和と令和の“知”を組み合わせ、“再現性なし”に一矢報いる

工程異常の“再現性なし”は、見えないリスクが潜む厄介な領域です。

しかし、昭和的な現場勘や経験知に頼るだけでも、デジタルでデータを集めるだけでも、解消はできません。

必要なのは、両者をつなげる「現場主体のラテラルな視座」と「記録・振り返り・可視化」に取り組む組織風土です。

“再現性なし”を「ただのイレギュラー」で済ませず、未来の重大事故・クレームの芽として真摯に向き合う。

この意識が、製造業の品質カルチャーを新たな地平に押し上げると確信しています。

現場のプロも、次世代のバイヤーも、サプライヤーも、自分ごととして“再現性なし”の異常現象に挑んでもらいたい。

積み重ねた“現場の知”を、製造業の未来に活かしましょう。

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