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現場改善が一時的で終わる企業の根本的な欠陥

目次
はじめに:現場改善の「一時的効果」に悩む製造業
日本の製造業は、長きにわたり「カイゼン活動」を通して生産性向上やコスト削減を追求してきました。
しかし、「現場改善が一時的な効果で終わってしまう」「せっかくの取り組みが継続しない」といった現場からの悩みの声は、2024年現在でも後を絶ちません。
昭和の時代から続く価値観やアナログなやり方が根強く残る一方、デジタル化・自動化の波も押し寄せ、企業はいま転換点に立たされています。
なぜ多くの現場改善は成果が長続きしないのか。
そこには、表面的な問題解決を積み重ねるだけでは覆せない、企業体質そのものの「根本的な欠陥」が潜んでいます。
この記事では、自分自身が20年以上製造現場を歩んできた経験を踏まえ、現場目線でこの根本的な欠陥を解き明かします。
また、現場・購買部門・サプライヤーと立場が異なる人にも有益な気付きとなるよう、業界のしがらみや背景にも深く切り込んでいきます。
現場改善が一時的に終わる「根本的な欠陥」とは何か?
「対症療法」に終始し、本質を見失う現場
現場改善(カイゼン)はイニシアチブを取る管理者やリーダーが現状問題を可視化し、原因を分析し、改善策を講じることで成り立っています。
しかし、多くの日本企業では「異常発生→応急対策→元に戻る→また異常発生」という堂々巡りに陥り、本来着手すべき根幹から目を背けています。
その一因は、忙殺される日常の中で「後回しにしてはいけない地道な改革」を後回しにしがちになる現場の姿勢にあります。
また、形ばかりの報告書作成や「やった感」の共有が横行し、現場内における定着・仕組み化・標準化といった本質的な行動変革に結び付かなくなっています。
「やらされ改善」では継続しない理由
改善活動の多くは「現場で困っている問題」からスタートするものの、実態は「上位者から与えられた課題の処理」に貶められることも珍しくありません。
これにより、「自分ごと」としての当事者意識が持てず、問題が表面化した瞬間は改善されても、時間が経過すれば元通り…といった一過性の熱量に終わります。
管理職・リーダーの多くが、「本質思考力」を育てる職務経験を積めていない、もしくは与えられたKPI達成が目的化しているケースも、こうした「やらされ改善」を生み出す温床になっています。
「横串が通らない」サイロ化組織の問題
昭和の時代に形作られたものづくり現場は、部門ごとに役割分担が明確である半面、自部署の最適化に終始しがちです。
生産管理は生産効率や納期厳守を、品質管理は不良率の低減を、購買部門はコスト削減を、個々に最優先します。
本来は組織全体最適の視点が必要ですが、現場改善が”縦割り”で展開されるため、各部門間の壁が厚く、本質的な全体改革には踏み込めません。
サプライチェーンの川下・川上(バイヤーとサプライヤー)の連携も、対立・駆け引き関係が根強く、長期視点での協働が機能しにくい構造的問題も、改善活動の継続性を妨げています。
失敗事例から学ぶ「根本的な欠陥」の現場具体例
事例1:ムリ・ムラ・ムダの排除が「帳尻合わせ」へ
ある自動車部品メーカーの現場で、カイゼン活動として「動線短縮による工数削減」が実施されました。
しかし、改善後1ヶ月で現場の生産数・作業者の配置・残業時間は元通り。
原因を掘り下げてみると、「ムダ取り」だけを追求しすぎ、ベテラン作業員のノウハウや配慮、「現場の声」が反映されていませんでした。
さらに日々の生産が山谷なく平準化されていないため、「突発納期」や「設備の故障」に追われるたび、場当たり的な手戻りで元の非効率に逆戻りしていました。
事例2:購買部門のコストダウン要求と品質トラブル
昭和から変わらぬ調達購買の「安さ重視」体質。
電子部品メーカーのケースでは、購買部門が海外サプライヤーからさらに安価な部品調達に成功しましたが、導入後に不良多発、最終的に全数再検査・再購入によるコストアップに。
この失敗の根底には、「一時的なコスト低減」ばかりを重視しサプライヤーとのコミュニケーションや現場からのリスク共有機会が疎かになっていた点が挙げられます。
バイヤー、サプライヤー双方に「長期的な共存共栄」という価値観が不足していた結果、一時的な数字だけ追い求めて本質を軽視した典型例です。
事例3:デジタル化・自動化の”空回り”
いまや製造業もDX(デジタルトランスフォーメーション)や自動化投資が無視できないトレンドです。
しかし、昭和アナログ体質が色濃く残る工場では、単なるツール・システムの導入に終始し、現場まで根付かず、現実の運用ではExcelや紙帳票に逆戻り…という現象も現在進行形で起きています。
これは、現場ニーズを現実的に吸い上げず、現場スキルや定着サイクルの視点を軽視した机上の空論プロジェクトが原因です。
根本的な変革への処方箋
1. 「現場の気付き」を最大化する仕組みづくり
現場の問題を改善する仕組みには、「小さな気付き」を拾い上げ、それをカイゼンとして共有・評価し、定着させる工夫が不可欠です。
例えば、現場からの改善提案を毎日1件は募る「現場カイゼン提案制度」、その推進と評価を現場管理職の人事評価と連携させる、それらを全体で表彰する仕組みなどです。
この過程で最も大切なのは、「失敗や課題も正直に開示し、価値として評価する」カルチャーを醸成することです。
2. 「縦割り・サイロ構造」を打破する横断連携
各部門ごとに小さな最適化が進むと、部門成果を超えた全体最適が犠牲になります。
これを解消するには、業務プロセスごとにクロスファンクショナルな連携会議を設け、「全社横断型のKPI」を設定・追跡することが有効です。
特に購買部門と生産・品質・設計・現場の連携が重要となり、サプライヤーを交えた定期的な連携会議も、一過性で終わらぬカイゼンには欠かせません。
3. 「現場当事者の成長」を仕掛けていく
現場改善を持続的なものへ変える最大のポイントは、「現場の人間自体が成長すること」です。
部分的な研修やOJTを超えて、現場リーダー・管理職自らが「なぜうまく行かないか、どうすれば継続できるのか」を考え抜き、それを部下や後進に伝承できる「仕事観」「問題解決力」が育まれる土壌を作る必要があります。
これには、一定期間ごとのローテーションや、現地現物主義をベースとした現場実習、外部研修参加、新規プロジェクトへの積極参加など、視野を広げる多様なキャリア施策が有効です。
まとめ:業界の慣習に埋没せず、新たな価値創造を
現場改善活動が一時的になってしまうのは、その「根本的な欠陥」が、構造や文化、そして人の意識に深く根付いているからです。
日本のものづくり産業が、昭和が生んだ素晴らしいノウハウと、令和ならではのデジタルやグローバル思考を融合し、サプライチェーン全体が「価値を共創する仲間」に変わること。
これは一朝一夕で実現するものではありませんが、現場・購買部門・サプライヤー三者が、「永続的なカイゼンとは何か?」を問い直すことから、新たな地平線が開かれると確信しています。
現場で日々格闘する皆さまが、目先の成果だけで満足せず、「きちんと定着し、現場が変わった」と胸を張れる真の現場改善を実現されることを、心から願っています。