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フライングカット導入で起こりがちなトラブル

目次
はじめに:フライングカットとは何か
製造業の現場では、自動化・省人化のニーズが年々高まっています。
そんな中で「フライングカット」という技術は、多くの工場で導入されるようになりました。
フライングカットとは、例えば材料が連続して搬送されているライン上で、作業を停止させることなく高速で材料をカットする技術です。
特に加工速度・生産性向上に効果的なため、鉄鋼やアルミ、プラスチック、紙加工など幅広い業種で採用されています。
しかし、便利なはずのフライングカットですが、現場導入時には予想外のトラブルも多発しています。
ここでは、実際に私が長年現場に身を置いてきた経験から、フライングカット導入時によく起こるトラブルとその現実的な対策について詳しく解説します。
現場で頻発するフライングカットのトラブルとは
寸法不良の発生
フライングカットで最も多いトラブルが「カット寸法の不良」です。
ラインが稼働しながら材料をカットする場合、搬送速度やカッターの動き、センサー検知タイミングが絶妙に連携しなければなりません。
しかし、ちょっとしたライン速度の変動や、センサーの感度のズレ、PLC(プログラマブルロジックコントローラー)のプログラム設定ミスなどが、即刻カット精度の不良につながります。
例を挙げると、材料が1本20mm長くカットされてしまい、次工程でNGになる、ということが起こりがちです。
昭和から続くアナログ業界では、現場の職人技に頼りきった調整でなんとか対応してきた歴史があり、その名残でシステム的な見直しやデジタル制御の最適化が後回しになるケースも珍しくありません。
材料詰まりと巻き込み事故
高速で動作するフライングカットでは、材料の搬送とカッターの動きが“追い付かない”ケースが多発します。
特に柔らかい材質や薄い材料では、搬送方法やテンションコントロールが不十分だと、材料自体が蛇行したり、巻き込まれたりする事故が起きやすいです。
これは搬送コンベヤやローラー、ガイド金具の調整不足、テンションローラーの摩耗やエア圧不足など、多くの“見落としやすいアナログ要素”が絡んでいます。
刃物・カッターの早期摩耗
スピードと精度を両立するため、刃物やカッターの負荷は想像以上に高まります。
連続稼働で摩耗が進行しやすく、気が付けば端面がバリだらけ、切断面品質が急落する…というのも現場でよく聞く声です。
一方で、交換頻度やメンテナンス方法、スペア部品の準備などがしっかりできていない工場も多くあります。
静電気・カス・異物付着問題
特にフィルム加工や樹脂、薄板材などの業界で深刻なのがカスや静電気の問題です。
切断作業中に微細なカスが発生し、そのまま次工程や製品に混入してクレームになることもあります。
除電機器やエアブローの導入遅れ、日常点検の不徹底などが背景にあります。
なぜフライングカットでトラブルが起きやすいのか
アナログ現場の“なし崩し的な”導入
多くの工場では、現場オペレーターの経験値や、勘に頼る部分が依然として残っています。
「いままで何となく動かしてきた」「先輩がこのやり方だったから」という暗黙知に頼って設備導入と調整を行ってしまいがちです。
このような状況でフライングカットのような精密かつ高速な自動制御工程を追加すると、現場の“勘”と自動制御のミスマッチが生じやすいのです。
ベンダー側とのコミュニケーション不足
ラインメーカーや装置ベンダーと工場現場が密にコミュニケーションできていないケースもトラブルの大きな原因です。
「仕様打合せのときは分かったつもりだったが、実際に材料を流してみたら全くうまくいかない」「設備屋の担当者が現場の実情まで理解していなかった」。
こうした声は、まさに“バイヤーとサプライヤー間の認識ギャップ”から発生します。
人材不足・教育不足の現実
製造業の多くは、若手人材の不足やノウハウ蓄積の課題を抱えています。
フライングカットの保守や調整は、機械、電気、制御、材料工学など複数の知識が求められます。
しかし現場では、そういったスキルの継承や新規教育にリソースを割けず、「誰が何をするのか不明確」「いつまで経っても設備が安定しない」という泥沼にはまることも少なくありません。
実践的なトラブル対策と、その考え方
設備・工程設計段階から現場主導で関与する
現場の知見を最大限に活かすためには、装置選定やプロセス設計段階から“現場のキーマン”が積極的に意見を出すべきです。
納入前テストや、実材料を使ったバーチャルシミュレーションなどを行い、本番の製造条件に近い状況で細部まで詰めましょう。
ベンダー側も“図面通り=合格”ではなく、現場担当者と直接打合せを繰り返すことで、トラブルの芽を事前に摘むようにしていくことが重要です。
自動化とアナログ現場の“橋渡し役”を育てる
保全・工程担当者の中から“自動化の橋渡し役”となる人材をつくることもポイントです。
自動制御や加工理論に詳しい人材と、現場の感覚や材料挙動を熟知した人材が情報共有する座組を意図的につくりましょう。
形式的な教育ではなく、現場や実設備を使った勉強会やトラブル履歴のリスト化など、地に足のついた教育システムが不可欠です。
装置メンテナンスのデジタル化・ルーチン化
設備の定期点検や消耗部品(刃物・センサー)の交換時期、切断面の画像管理などをデジタル化し、日常業務に組み込んでいきます。
例えば、点検結果や不良データをクラウド管理し、過去履歴から“刃物寿命予測”や“異常傾向の早期発見”を自動でアラートできるように仕組みを作れば、トラブルを未然に防げます。
材料スペックや周辺条件もトータルで管理する
材料のロット管理や、搬送時の張力・湿度・温度管理も含めてトータルで監視することが肝心です。
とくに材料メーカーと協力し、供給スペック範囲内でフライングカット性能が安定するかどうか、試作・確認を繰り返しておきましょう。
こうした調達購買と現場管理の連携が、最終的に製品品質と歩留まり率向上につながります。
バイヤー/サプライヤーが知っておくべき“現場目線”
バイヤーやサプライヤーの方々がフライングカット導入のトラブルを回避するために意識しておきたいポイントがあります。
机上の仕様書だけで現場を動かせると思うな
バイヤーは、装置仕様書やメーカー提案だけで安心するのではなく、「実際に材料を流してみたときの現場温度」を必ず確認すべきです。
仕様書にない“現場のクセ”や“材料ごとの揺らぎ”、アナログ管理の盲点を見逃さないことが大切です。
サプライヤー側も、自社設備が現場でどのように使われ、どんな課題に直面するのか。
現場伴走型のフォロー体制を用意しておくことで、想定外のクレームや仕様変更にも柔軟に応じられるようになります。
予期せぬ導入コスト・拡張コストに注意
フライングカットは一度導入して終わりではありません。
生産品種の変動、新規材料の追加、ライン仕様の変更などがあるたびに改造やアップグレードコストが必要になるケースも多いのです。
イニシャルコストだけでなく、運用後の費用や追加要件まで見込んで全体設計を行うのがプロフェッショナルの視点です。
まとめ:フライングカット導入の成功のカギは「現場主義」にあり
フライングカットは、省人化・高効率化時代の必須技術となりつつあります。
しかし設備任せにするだけでは、意外な落とし穴や思わぬコスト増、品質クレームの嵐に振り回されかねません。
昭和時代から培った“現場の叡智”と、現代の自動化・デジタル技術をしっかり橋渡しすること。
これが、今後ますます求められる“現場感覚に根差したものづくり力”です。
バイヤー・サプライヤー問わず「現場で本当に困っている課題は何か」「どうすれば既存のやり方をアップデートできるか」。
この現場主義・ラテラルシンキングの視点を持ち続けることが、未来の工場競争力を根底から底上げしてくれるはずです。
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