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腐食しやすいコーターマシンで使う金属部材の材料選定課題

目次
はじめに:腐食しやすいコーターマシンの金属部材選定が急務な理由
コーターマシンは様々な素材の表面に微細な膜やコーティングを施す機械として、多くの製造業の現場で使用されています。
しかしながら、その厳しい使用条件や湿度・薬品の暴露環境などの影響で、金属部材が腐食しやすいという問題がしばしば現場から指摘されます。
腐食は機械性能の低下、品質不良、予期せぬダウンタイムを引きおこし、生産コスト全体に大きな影響を与えます。
こうした背景から、コーターマシン用金属部材の材料選定は、製造現場における重要な課題となっています。
本記事では、昭和時代から続くアナログ的な材料選びを脱却し、現場のリアルな事例や新たな視点を踏まえた実践的な「材料選定課題」と、その解決策を解説していきます。
コーターマシンの腐食環境を正しく理解する
従来の現場認識:とりあえずステンレス?という常識
多くの現場管理者は、「コーターマシンは腐食しやすいから、とりあえずSUS(ステンレス鋼)を使っておけば間違いない」と考えることが多いです。
確かにステンレス鋼は防錆性や耐食性が高い金属ですが、ステンレスと一口に言っても種類は多く、腐食耐性も環境次第で大きく異なります。
全てに万能というわけではなく、塩素系薬品や高温環境下では、かえって腐食が進行する場合もあるのです。
腐食の要因分析:なぜコーターマシンで腐食が進むのか
コーターマシンで金属部材が腐食しやすい主な要因は、以下の4点です。
1. 水分と酸素の存在
コーティング液や洗浄工程で水を多用し、空気中の酸素と反応して腐食が進みやすい。
2. 各種薬品(有機溶剤・酸・塩基)の影響
独特な薬品配合や高機能化にともない、金属表面の耐性を超える腐食要因が発生する。
3. 機械的摩耗と物理的損傷
ロールやガイド、細かな摺動部品は摩耗・損傷により防食皮膜が失われやすくなる。
4. 温度変化と環境サイクル
加熱・冷却を繰り返すことで局所的な結露や応力腐食割れが生じやすい。
これら4つの要因が複合的に重なり合うことで、表面だけでなく内部からの腐食進行や、局所腐食が現場で多発します。
現場で直面する材料選定のジレンマ
コストと納期のはざまで妥協が生まれやすい
現場バイヤー・設計担当者は、できるだけ腐食しにくく、なおかつコストも抑えた材料を選びたいと願っています。
しかし、腐食耐性に優れた特殊合金や新素材は高価で、納期も通常より長くなりやすいです。
一方で、安価な材料だと防食性能が物足りない事例が相次いで発生し、現場は「トラブルを未然に防ぎたいがコストも気になる」というジレンマに悩まされています。
サプライヤーと設計・調達のミスマッチ
サプライヤー側は、「この用途ならSUS304またはSUS316が一般的です」といった標準的な提案にとどまる傾向があります。
一方、バイヤーや工場管理部門は、装置導入後の現場トラブル(例えばクラックや局所腐食の発生)の発生原因を深く分析しきれていないまま材料選定してしまう場合も多いのです。
こうした「相手が何を重視しているか」の理解不足が積み重なり、“なぜこんなに腐食が早いんだ…”と不満がくすぶる原因となっています。
材料選定のための新しいアプローチ
1. 実験データと現場試験の重視
現場ごとに腐食環境は微妙に異なります。
公表されている素材のスペック値だけでなく、実際のコーターマシンで「現場液に浸してみた」「実働条件で試験片を付けて確認した」など、現場試行を重ねることが、失敗しない材料選定の基本です。
試験データをサプライヤーと共有し、“なぜ腐食したのか・どうすれば良いか”を一緒に検証していく関係性が求められます。
2. コストとライフサイクルを総合的に評価
材料費単体の高低だけでなく、交換頻度やメンテナンス工数・ライン停止による損失までを含めた「トータルコスト」で最適解を探すことが重要です。
例えば、やや高価でもロングライフな合金を使うことで面倒な交換作業や不具合発生を減らせるなら、結果的にコストメリットとなります。
3. 副素材・コーティングの活用
金属部材そのものを耐食合金にするだけではなく、PFAコーティング、セラミック皮膜、硬質クロムメッキなど、表面処理でカバーするテクニックも有効です。
また、“部品単位で切り替えられる部分はコーティング部品、タフな部分はフル合金採用”など、場所ごと・使用条件ごとのカスタム材料選択も現場最適化のポイントとなります。
最新の業界動向と材料選定の実践例
特殊合金・ハイブリッド材料の台頭
最近、環境規制や高機能化に対応するため、従来のSUSだけでなく以下のような材料採用が増えています。
– 二相ステンレス(SUS329J4Lなど):強度と耐食性の両立
– ニッケル基合金(インコネル、ハステロイ):耐酸・耐塩素が要求される箇所に選定
– チタン系・ジルコニウム系材料:極限環境に対応
こうしたハイエンド素材は高価ですが、“点で使う”ことでコストを抑えつつ腐食リスクの根本解決につながる場合が増えています。
プロセス変更によるコーティング液改良・腐食要因削減
金属材料だけでなく、「そもそもコーティング液の組成や補助液を変えて腐食要因を減らす」といったアプローチも行われています。
また、洗浄工程の見直し(低pH→中性化、強力な脱脂剤の縮減)も腐食抑制の一助となっています。
デジタル管理の導入と予防保全
昭和的な「経験と勘」だけでなく、IoT・AI技術を取り入れ、腐食センサーによる予兆検知や、定量的な部品寿命管理で突発トラブルを未然に防げる体制も業界大手を中心に広がりつつあります。
これにより、腐食→漏れ→ライン停止という最悪の流れを事前に食い止め、材料選定のPDCAサイクルを加速させられます。
バイヤー目線・サプライヤー目線で押さえておくべきポイント
バイヤーが重視するポイント
– ライフサイクルコスト(部品調達コスト+メンテナンス+ダウンタイム)
– 交換工数、現場作業性(現場で素早く交換できるか)
– サプライヤーからの技術情報・腐食実績データ
– トレーサビリティと安定供給の担保
サプライヤーが押さえるべきポイント
– 標準品を提案するだけでなく、現場環境をヒアリングする姿勢
– スモールロットのテストサンプル提供や、データベースの蓄積
– 現場トラブル時にも迅速に対応できる体制と技術支援
– 他社と違う独自のコーティング技術や新素材の訴求
双方が「相手の立場」を理解したコミュニケーションと、課題解決へのデータや知見の共有が、より良い材料選定には欠かせません。
まとめ:腐食対策は現場と技術の“新しい地平線”へ
コーターマシンで使う金属部材の材料選定は、単なる部品選び以上に、生産性や品質、コストを大きく左右する重要なテーマです。
従来の昭和的な“とりあえずSUS”や、“単なるコスト比較”というアナログ的な発想から一歩進み、
– 現場での腐食メカニズムの分析
– 将来を見据えたトータルコスト評価
– 実践的なテストとフィードバック
– サプライヤーとの連携強化や情報共有
– デジタル技術による予測管理の導入
こうした新たな地平線を切り拓くことが、コーターマシンの安定稼働と企業競争力の強化につながります。
材料選定の現場は、バイヤー・サプライヤー・エンジニアの知恵と現場経験が融合する最前線です。
腐食という地味ながら根深い課題に、現場目線と未来志向、そしてラテラルシンキングで向き合い続けましょう。
これが、私たち製造業に関わる全てのプロフェッショナルの責任であり、次世代へのバトンなのです。