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製造設備のボイラーで使う膨張継手部材の成形加工と破断問題

目次
はじめに:製造現場で切実な「膨張継手部材」破断問題
製造業の現場では、設備の信頼性が生産性・安全性に直結しています。
とりわけ湿熱が発生するボイラーや配管周りは、常に過酷な条件下で運転されているため、膨張継手部材の存在が欠かせません。
この膨張継手(エキスパンションジョイント)部材は、配管や設備の熱伸縮・振動・圧力変動を吸収し、設備損傷や漏洩、騒音を抑える重要な役割を果たしています。
しかし、その選定ミスや成形加工・取付精度の不足、不適切な管理による「破断」は、古くから解決しきれないボトルネックであり続けています。
この記事では、「なぜ膨張継手部材が破断してしまうのか?」という現場のリアルな課題について、ボイラーの運転管理・メンテナンス経験から得た知見をもとに、部材成形加工・設計面、現場での取付・監督、アナログな現場文化の弊害まで踏み込み、徹底解説します。
膨張継手部材の基礎知識
膨張継手部材とは何か
膨張継手部材とは、管路や機器の間に設け、主に以下の目的で取り付ける部品です。
– 配管の熱膨張や収縮を吸収
– 機械的振動や騒音の伝播を遮断
– 設備の設置誤差や地盤沈下への追従
– 配管の歪み・応力集中の緩和
ボイラー設備の場合、蒸気配管や給水管の熱膨張・縮小量は大きく、継手がなければ配管自体が変形・亀裂・漏洩を起こします。
したがって、適切な膨張継手部材が不可欠となります。
部材の種類と構造
膨張継手には大きく分けて以下の種類があります。
1. ベローズ型(蛇腹状の金属やゴム製品が中心)
2. スリーブ型(配管を筒状スリーブでスライド吸収)
3. ボールジョイント型(球面受け構造による角度変動追従)
特に工場のボイラー設備では、ベローズタイプが主流です。
素材には
– ステンレス(SUS304、SUS316系など)
– 炭素鋼
– ニッケル合金
– ネオプレンゴムやテフロン
など、耐食性・耐圧性・耐熱性・コストを考慮して選ばれます。
膨張継手部材の成形加工プロセス
ベローズ成形とその要点
ベローズ型膨張継手は、多層の金属板やゴム板を蛇腹状に成形し、柔軟性と密閉性を両立しています。
主な成形方法には
– 機械圧延成形
– 水圧成形(ハイドロフォーミング)
– スタンピング成形
– 溶接ベローズ成形
などがあります。
金属ベローズの場合、母材の金属が持つ延性・靭性・溶接性が鍵となり、成形過程での結晶組織変化や残留応力のコントロールが非常に重要です。
ゴム系やフッ素樹脂系の場合も、加硫条件や充填材の分布むら・厚み偏差が脆さを生み、後工程での耐圧性・耐久性に直結します。
加工工程での代表的な注意点
1. 材料品質(ミルシート確認、表面欠陥・内層割れの有無)
2. 成形後の熱処理(応力除去焼鈍など)
3. ベローズ形状の均一性(ピッチ、山高さ、溝深さ)
4. 溶接や接着部の欠陥(割れ、融け込み不良、スパッタ残り)
5. 寸法・密封性検査
6. リークテスト(気密試験、水圧試験)
現場目線で言うと、「仕様図通りでできているはずが、寸法や曲げ方向が珍妙」「検査でない部分にクラックが出て後から破断」「材料ロット不良のわりこみ」といった実例は、未だに多くの現場で発生しています。
これは、工程途中の省略や「慣習的な手抜き」も往々にして絡んでいるため、いくらデータや図面を整備しても現場の“実戦管理”が物を言う分野です。
膨張継手部材の破断が発生するメカニズム
主な破断原因
膨張継手部材が壊れる主な理由は、複合的で「設計・部材・加工・運用」が絡み合っています。
– 熱疲労(繰返し加熱冷却サイクルによる金属疲労クラック)
– 振動疲労(ポンプ脈動・設備起動停止による動的応力集中)
– 局所腐食・減肉(内部流体・外部雰囲気とも)
– 材料選択ミス(高温・高圧用途に耐えられない素材の誤採用)
– 成形時の応力集中・肉厚不均一(初期欠陥が成長する場合)
– 設置時の配管応力/曲げ/オフセットの過剰負荷
– 保守不備、外力(足場材の落下や人為的踏みつけなど)
なかでも、昭和型アナログ現場では、「図面と実物は違うからオフセットで組んじゃう」「たわみ方向ぐらい現場で微調整できる」と現場独特の“職人判断”が落とし穴となり、設計仕様を超える応力集中が密かに生じます。
実際に何が起こるか? 現場の典型トラブル事例
1. ベローズ山部にピンホール→蒸気や給水が噴出、巻き添え損傷
2. 脱落や曲げ変形→配管自体の支持脱落・ずれ、漏洩、隣接機器への衝撃
3. 小さな亀裂からの水垢堆積で肉厚減少→突如一気に破断
4. サポート金具との干渉・挟み込み→設計上想定外の部位での金属疲労
5. 破断による高温流体の噴出→火傷や機材焼損事故、人的被害
なぜトラブルが減らないのか? 昭和的現場文化の影響
今でも製造業、とりわけボイラーや配管系のメンテ現場は「職人の経験と勘」が支配していることが多いです。
設計者の意図が「現場流アレンジ」で軽視されたり、「前から同じものを使ってるからこれでいい」「調達部門が安い部材を推した」といった非技術的な理由が破断事故の温床になりやすいです。
また、部材メーカー・ベンダーとの間に「調達購買VSサプライヤー」の溝があるパターンも多く、現場に根ざした知見や取付ノウハウがメーカーに十分伝わっていません。
こうした
– コミュニケーションギャップ
– 慣習重視(“型式発注”の横行)
– 品質マニュアルや標準化の形骸化
などが、極めてアナログな設備保全体質を助長し、依然として「同じ事故の再発」に繋がっています。
破断リスク低減のために実践したい改善策
設計・調達段階の見直し
1. 膨張継手部材メーカー選定時に「現場見学・実機点検」「過去の破断事例」のフィードバックを必須化
2. 役割(熱・圧・振動)を明確化し、無駄な多機能型の採用を避ける
3. 素材ロット・成形ロットのトレーサビリティ記録徹底
4. 購買スペックシートに「取付姿勢、曲げ方向、外力考慮」を必ず記載
現場での取り付け・管理の実践ポイント
– 配管ストレス解消(無理な引っ張り・曲げなく配置)
– たわみ方向とエルボ位置、膨張計算値の再確認
– 取付後の「仮運転」で漏れ・変形チェック必須
– 外観点検記録を残す(端面や取付金具まで撮影)
定期保全と現場力向上
– 圧力・温度履歴を定期記録し、部材の「使用限界」を超える前に予防交換
– 定期的な「外部点検+ベンダー招致の現物研修」
– 若手・中堅へ「なぜ膨張継手が必要か?」「なぜここにストレスが掛かるのか?」という“現場仮説”を解説・共有
– 破断や不具合の起点部位ごとの傾向“見える化”とマニュアル反映
調達購買とサプライヤーのための情報共有のあり方
< h3 > 調達バイヤーとしての視点
– 「価格」「納期」だけでなく「現場使用実績」「トラブルフィードバック循環」の可視化を重視
– カタログスペックだけに頼らず、現場担当者の“生の声”をサプライヤーに伝える
– メーカーからの改良提案や警告を促す調達体制
< h3 > サプライヤーから見た現場との信頼醸成
– 単なる受注対応だけでなく、現場での仮設設置や現物診断サービスを提案
– 複数工場の事例を横串でフィードバックし、類似トラブルの未然防止
– 加工工程や材料調達の現場改善にも現場側の参加を促す
まとめ:膨張継手部材の未来とキーパーソンへの期待
ボイラー設備の膨張継手部材は、小さなパーツでも工場全体の“安全・安定運転”を左右するキーパーツです。
これからの製造業においては、アナログ現場の経験を大切にしつつも、「設計・材料・加工・調達・取付・保守」の分断を超え、関係者全員でトラブルの本質を掘り下げ、データと“現場感覚”を両立させていく姿勢が不可欠です。
現場で、調達現場で、そしてサプライヤーの工場で、それぞれが「膨張継手って、どう使われて、どんな風に壊れるのか?」と一歩踏み込む――。
その積み重ねが、“破断知らず”のより強い現場を生み、ひいては日本製造業の底力となるはずです。
製造業の関係者の皆様、私たち自身が新たな現場文化のパイオニアとなりましょう。