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投稿日:2025年12月30日

サニタリー配管部材の溶接焼けが衛生性を損なう理由

はじめに:サニタリー配管部材の重要性と課題

サニタリー配管部材は食品、医薬品、化粧品、飲料など、高度な衛生管理が求められる製造業において不可欠な存在です。
原材料の搬送から製品の移送まで、各工程で衛生面の担保が生産品質や最終製品の安全性に直結します。
その一方、自動化やデジタル化の進展が目覚ましい昨今でも、配管の施工や維持管理には依然として「習慣」や「伝統」に頼る場面があり、昭和的なアナログ作業が根強く残っている実態があります。

その課題の一つが、サニタリー配管部材の「溶接焼け」です。
この記事では、なぜ溶接焼けが衛生性を損なうのか、現場の知見や専門的視点を交えながら深く掘り下げていきます。

サニタリー配管に求められる衛生性とは

清浄度の確保が必須条件

サニタリー配管が使用される現場では、配管内部の清浄度が非常に厳しく要求されます。
食品工場では異物混入や微生物汚染が即リコールやクレームにつながり、医療や製薬の分野では人体への影響が危惧されるため、衛生管理が命とも言えます。

そのため、配管内部は「洗浄しやすい」「菌が繁殖しにくい」「物理的・化学的変質が起こりにくい」ことが大前提となっています。
こうした要求を満たすため、材質は SUS304 や SUS316L などの高耐食性ステンレスが選ばれ、表面仕上げもミラーポリッシュや電解研磨など、高度な処理が行われています。

溶接部が最もリスクの高いポイント

いくら母材の表面仕上げを高品質に保っても、実は一番のリスクポイントは配管の継手や溶接部です。
新設やメンテナンス時に行う溶接工程では、部材同士の接合部が現場作業となり、その加工品質が現場ごと・作業者ごとに大きくブレやすいのです。

溶接焼けとは何か

ステンレス鋼の酸化被膜の変化

サニタリー配管の溶接において「溶接焼け」は非常に目立ちますが、その正体は何でしょうか。
それは、アーク溶接やTIG溶接などで高温となった溶接部分のステンレス表面が空気中の酸素と結びつき、”酸化被膜”が厚くなる・変質することで発生する変色(青・黒・茶色などの帯状変色)です。

ステンレスの表面には、通常、耐食性に優れた極薄のクロム酸化膜が自然に形成されています。
しかし溶接時には温度上昇によりこの被膜が破壊・再構成され、厚く不均一な酸化被膜となります。
これこそが「溶接焼け」です。

現場で見逃されがちな溶接焼けの実態

昭和から続く製造現場では、「溶接部は部材の一部だから仕方ない」「見た目が悪いだけ」といった感覚で、溶接焼け除去への意識が薄い現場も未だに存在します。
特に量産現場や突貫工事では、ポリシングや酸洗いを省略するケースが見受けられます。

ですが、この「アナログ的な根拠のない楽観」は現代の衛生要求、国際規格、そして顧客要求から見て大きなリスクなのです。

溶接焼けが衛生性を損なう理由

耐食性の低下

最大の問題は、溶接焼け部位における耐食性の著しい低下です。
ステンレスの耐食性能は非常に高いのですが、それは均一で緻密なクロム酸化膜があるからこそです。
溶接焼け部では、この被膜が厚く脆弱になっており、実際にはピンホール・孔食・すきま腐食が発生しやすくなっています。

腐食が始まると、徐々に金属イオンなどの微量金属成分が配管内部に浸出。
これが製品や工程液の味・色・品質に影響したり、工場コンタミのトラブルへと発展します。

菌や異物の付着・滞留リスク

サニタリー配管において最大の悪夢は、「隠れた汚染源(デッドスペース)」の発生です。
溶接焼け部は肉眼でツルツルに見えても、ミクロン単位では凹凸が生まれやすく、菌や有機物が吸着しやすくなります。

また、適切に除去されていない酸化被膜は、SIP(蒸気殺菌)やCIP(定置洗浄)でも除去しきれないことがあります。
このため、日常の衛生管理では検出できないレベルで菌や異物が滞留し、時間の経過とともにバイオフィルムや腐敗の温床となるリスクが生じます。

国際規格や顧客監査とのギャップ

グローバルサプライチェーンが加速するいま、GMP(医薬品適正製造規範)やHACCP(衛生管理手法)、さらには顧客監査がますます厳しくなっています。
溶接焼けがあるだけで「未適合」「未承認」となるケースも多く、特に欧米系企業や一流顧客に対しては致命的な信用失墜につながります。

現場では「うちでは問題が出たことがない」とタカを括りがちですが、その感覚は大きなリスクの温床です。

溶接焼け対策と最新動向

伝統的手法:酸洗いと研磨

最もオーソドックスかつ現場で浸透しているのが、溶接焼け部の「酸洗い(ピックリング)」と研磨です。
専用の酸洗剤を使い、還元作用によって酸化皮膜を除去。
その後、ペーパーやバフで再研磨し、表面粗さRa0.4µm以下という厳しい基準を守ります。

近年は化学薬品の取り扱いや廃液処理の観点から、より環境負荷の少ない方法への転換が待たれています。

最新技術:電解洗浄

近年、溶接焼け除去の分野で注目されているのが「電解洗浄(エレクトロポリッシュ)」です。
電解液の中で電流を流すことで、金属表面だけを選択的に溶解し、滑らかで耐食性の高い表面を再生します。
安全かつ短時間で衛生性の高い溶接部が実現できるため、大手工場では徐々に主流となりつつあります。

溶接自体の高度化

溶接焼けの発生自体を最小限に抑えるため、パージ(不活性ガス保護)技術やレーザー溶接技術の導入も進んでいます。
不活性ガスによる内部パージは内部酸化の”完全ゼロ”を目指せるため、バイヤーや現場管理者はぜひ予算化を進めたいポイントです。

溶接焼けの管理が「バイヤー目線」でも重要な理由

購買部門やバイヤーにとって、サニタリー配管の溶接焼けを問題として捉え続けることには大きな意義があります。

まず、「安さ優先」のコストカット志向が現場を追い詰めると、溶接焼け除去の手間が省かれるリスクが高まります。
直接的な目先のコストダウンより、将来的なリコール・クレーム・顧客監査落ちという”重大なコスト”を未然に防ぐ投資と捉えるべきです。

また、「溶接焼けを許さない」というスタンスを明確に発注仕様書に盛り込むことで、サプライヤーの品質意識を高め、現場作業者にも正しい衛生文化を根付かせることができます。

サプライヤーが自身のバリューを最大化するポイント

サプライヤーとして「バイヤー目線」を理解し、差別化を図るには、単なる製品納入だけでなく、
溶接焼け除去プロセスの品質保証、現場作業員への教育・監査体制、
最新の電解洗浄技術の導入提案など、ソリューション型のアプローチが不可欠です。

また、「溶接焼け対策事例」や「衛生規格適合事例リスト」を提示して、技術的優位性と安心感を数値・実績で示すことが、選ばれるための強い武器となります。

まとめ:アナログ業界から新しい地平へ

サニタリー配管部材の溶接焼けが衛生性を損なう理由は、決して”見た目”だけの問題ではありません。
耐食性の低下や菌の滞留、規格違反リスクなど、多層的に重大なリスクを孕んでいます。

デジタル時代に突入しても、特に日本の製造現場では「昔ながらの慣習」「コスト重視・納期優先」思考が根強く、溶接焼け問題は昭和的な文化の壁として存在し続けています。

これからの時代を生き抜くためには、
バイヤーもサプライヤーも、「衛生性=企業価値」という新たな視点を持ち、
徹底的な現場改善と技術革新で、明日を切り拓いていく必要があります。
衛生配管の真価は製品そのもの以上に、その”管理の考え方と実践力”にある――
ぜひ、現場の力を信じて、昭和から令和の新たな現場文化を構築していきましょう。

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