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原料調成トラブルの多くが部材理解不足から始まる理由

目次
はじめに
原料調成は製造業の心臓部ともいえるプロセスです。
部材ごとに配合や混合比率、保存や取り扱い条件が異なり、一つのミスが大きなトラブルにつながります。
しかし、現場で起こる多くの原料調成トラブルは、実は「部材への理解不足」に起因しています。
本記事では、なぜ部材理解がそこまで重要なのか、その背景や実際の事例、そして昭和時代から現代にかけて引きずられているアナログ業界ならではの課題も交え、現場目線から深掘りしていきます。
原料調成とは何か?
製造業における原料調成の位置づけ
原料調成は、製品を生み出すための最初のプロセスです。
合成樹脂ならば複数のモノマーや添加剤の配合、金属加工なら合金元素や前処理液の調合など、多様な領域で「正しい原料を、正しい分量、正しい方法で揃える」工程が必要とされます。
この初動を誤ると、後工程でいくら頑張ってもリカバリは困難です。
調成トラブルの具体例
・配合比率の調整ミスによる製品不良
・混合順序の誤りから物性不安定化
・異物混入による全数廃棄
・保存温度管理ミスによる反応不良
これらのトラブルの“根本原因”として浮かび上がるのが、「部材」そのものの理解不足といえます。
部材理解の重要性とは
部材=“モノ”だけではない
現場では「部材」というと単に“モノ”=物質や部品、と捉えがちです。
しかし、調達購買や生産管理、製造現場に携わった経験で多くの人が直面するのは、部材には「性質」「経歴」「相性」など、いわば“人格”のような個性があるという現実です。
温度変化による性質変化、保存環境による品質劣化、他部材との相互作用など、表面には見えにくい複雑な特性が隠れています。
なぜ部材理解が浅くなるのか
部材理解の浅さは、部署間の壁や古い慣習も一因です。
日本の多くの製造業は、昭和時代からの「分業主義」が根強く、調達部門と製造現場が乖離していることが少なくありません。
納入仕様書や図面だけを追い、その実物・現物に触れる機会がほとんどなく、現物に対する理解が深まらないまま工程に進んでしまう例が現場で多く見られます。
“なぜ起きるのか”ラテラルに考える
見落とされる知識のバトンリレー
古くから続く会社ほどマニュアルや手順書が形骸化し、人から人へ現場のノウハウが「口伝」だけで伝承されています。
不思議な“現場の勘”が絶対視され、それが却って部材の本質理解を妨げます。
情報通信が進化したはずの令和の現場でも、知識伝承の非効率さは意外なほど顕在です。
サプライヤーとバイヤーの意識ギャップ
サプライヤーは自社で最適化された状態で部材を出荷しますが、バイヤー(受け入れ側)の工程条件や加工プロセスが異なれば、全く異なる性質を現す場合があります。
例えば同じ樹脂でも、湿度条件や投入タイミングで反応が変わります。
バイヤー側は「スペック通りだろう」と思い込みがちですが、そのスペックがどんな条件下で発揮されたかをきちんと理解していないことが、調成トラブルにつながるのです。
アナログからの脱却、DX化の壁
デジタル化が進まない理由
現場では今なおアナログ管理が根強く、生産指示や原料・部材管理も帳票や紙ベース、手書き記録で回している例が多々あります。
デジタルツール導入の際も、部材の属性や履歴を「どれだけ正確に、現場目線でデータ化できるか」が大きな課題です。
表面的なシステム化だけでは、“なぜその工程にそうしているのか”(=部材特性に基づく根拠)が消えてしまい、トラブル再発の温床になります。
属人化のリスクと情報活用
“あの人しか知らない”、“ベテランしか分からない調整”という局面が、工場にはいまだに多く残っています。
これは部材理解が個人の経験値に依存している証拠であり、情報の組織的な蓄積や活用が不十分とも言えます。
属人化を解消し、ヒューマンエラーによる調成トラブルを減らすためにも、部材の知識やトラブル事例を「可視化」していく取り組みが不可欠です。
製造業現場でどう活かすか
部材図鑑・データベースの構築
まず実践したいのは、現場独自の「部材図鑑」や「トラブルデータベース」作りです。
メーカーのカタログ情報だけでなく、“現場でこう扱わなければ不良になる”“この温度帯だと粘性が急変する”など、実際の経験知を蓄積します。
これはベンダーやサプライヤーと議論する際の大きな武器となります。
検証・追試の重要性
調達購買・生産管理部門が部材を選定した際も、現場テストや小ロット試作を繰り返し「本当に自社の環境でスペックを満たせるか」を必ず確認しましょう。
既製品のデータや試験成績書はあくまでも参考値。
現場ならではの環境(湿度、温度、混合順序など)でどうなるか、徹底検証が求められます。
サプライヤーとの対話の質向上
安定調達を実現するためには「部材の製造プロセス」「ロットごとの管理情報」について、サプライヤーと深く対話を行うべきです。
単なる価格交渉ではなく、トレーサビリティや品質変動のリスクについても定期的に情報交換することで、想定外のトラブルも未然に防げます。
バイヤーの視点、サプライヤーに伝えたいこと
バイヤーが部材に求めているもの
バイヤーにとって、部材は単なる物品ではなく、自社の“品質”そのものを左右する重大な要素です。
求めるのは単なる「スペック充足」ではありません。
アフターサポート体制、不具合発生時のフォロー、納期やコストだけでなく、技術的助言や改善提案も重視されます。
サプライヤーは「現場のリアル」を知ろう
サプライヤーとしてバイヤー視点を理解するには、納入後の現場でどう扱われ、どんな苦労やトラブルが生じているか想像することが大切です。
「納品して終わり」ではなく、できれば現場見学を申し出る、トラブル発生時のフィードバックを積極的に受け入れるなど、一歩踏み込んだ関係づくりが、互いの信頼や長期的なビジネス継続につながります。
まとめ
原料調成トラブルの多くは、単なる作業ミスではなく「部材理解不足」から生まれます。
変化の多いものづくり現場で安定品質を追及するために、部材の個性や特性を徹底的に掘り下げ、知識を見える化・共有化することが重要です。
アナログな分業主義や属人化を乗り越え、サプライヤーとバイヤー双方が“現場目線”で部材を理解し合う。
これを地道に積み重ねることで、製造業のさらなる発展に貢献できると確信しています。
今こそ、部材への目線を一段深く据え直し、新たなものづくりの地平を共に切り拓いていきましょう。