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曲げ加工機で使う防振部材の効果を実感できない現場の声

目次
はじめに — 製造現場でよくある防振部材の悩み
今日、多くの製造業の現場で防振部材の重要性は語り尽くされていますが、本音で「効果を実感できていない」と感じている担当者が少なからず存在します。
特に曲げ加工機を導入している工場では、防振部材の費用対効果や選定基準、安全性との兼ね合いなど、複雑な要件が絡み合い、現場サイドでの実感値と、上層部の評価や投資判断とのギャップが浮き彫りになっています。
この記事では、20年以上現場運営と調達を経験した視点から、実践的な観点と根深い業界背景を織り交ぜて、曲げ加工機で用いられる防振部材のリアルな課題と、ラテラルシンキングでの打開策を提案します。
防振部材とは — その目的と選定基準
防振部材の基本的な役割
防振部材は、文字通り”振動”を防ぐために用いられる材料や構造体です。
機械が発生させる振動は、作業環境の悪化や製品精度の低下、生産設備自体の故障リスクを高める要因になります。
曲げ加工機では、プレス動作や油圧シリンダーの動きによって生じる「微細振動」から「突発的な大きな衝撃」まで幅広い振動が発生します。
それに対し、
・振動源の根本的な低減
・振動エネルギーの吸収(ダンピング)
・周辺設備・床面への振動伝播・共振の抑制
これらが防振部材に求められる主要な役割です。
よく使われる防振部材の種類
曲げ加工機で主に利用される防振部材は以下の通りです。
・ゴム系パッド
・スプリング式防振架台
・粘弾性・樹脂シート
・サンドイッチ構造の複合材
・防振ゴム脚
いずれも一長一短がありますが、多くの工場では価格や導入のしやすさから「防振ゴムパッド」を選択するケースが多いです。
なぜ「効果を実感できない」のか? — 現場のリアルな声と原因分析
現場が抱える代表的な不満点
工場の現場でよく聞かれる「効果が実感できない」という声には、主に次のようなものがあります。
・定期点検時に見た目や手触りで劣化が分かりにくい
・設備の稼働音や床振動が”ゼロ”にはならない
・品質データ(寸法精度・仕上げ面)への明確な好転効果が見えづらい
・1年程度で耐久劣化し、交換コストばかり嵩む印象
・そもそも適切な選定基準が社内に存在しない
・防振効果を数値化して説明できない
例えば、長年働くベテラン作業員や工場長から「正直、防振部材つけてもビビり音は消えない」といった嘆き節を聞くことは稀なことではありません。
また、昭和から続く工場現場では「昔からこうしてる」「前任者が使ってたから」と前例踏襲による防振対策も多く、最先端素材・新方式の導入は進みません。
原因1:構造的な「見えない振動」への無理解
曲げ加工機から発生する振動は、人間の感覚で「伝わった/伝わらない」と判断できるものだけではありません。
特に高周波域の微振動や、設備フレーム内部で増幅された振動は、本人には分かりづらいもの。
また、振動が床下・隣接ライン・壁面を伝って二次発生する場合は「防振材の効果が薄い」と誤解されがちです。
原因2:防振対策そのものの設計が属人的
日本の多くの製造業現場では、設備設計や現地工事の過程で「お決まりのパッドを敷く」といった儀式的対策になりがちです。
防振材の厚み・設置位置・荷重バランス等を全体最適で再設計せず、「去年と同じやり方だからOK」となるため、効果が出ないまま投資額ばかり増えることになります。
現場個々の設備老朽化、設置環境の劣化(床や基礎コンクリのヘタリ等)に目を向けず、防振材単体の性能だけに過度な期待を寄せてしまいがちです。
原因3:導入効果の定量的な測定をしていない
設備改善や設備更新の際に防振材の有無・種類によるビフォーアフターを、加速度センサーやFFTアナライザなどで測った経験がない、という工場も未だに多く存在します。
「なんとなく現場がうるさい気がする」
「去年の方が良かった気がする」
このような主観だけに頼れば、本来見逃してはいけない設備リスクや作業環境要因を見過ごしかねません。
業界動向—アナログ現場が抱える古い体質と変化の兆し
前例踏襲主義とコスト優先
昭和〜平成初期にかけて量産化が急速に進んだ多くの製造現場では、初期投資やランニングコストの圧縮こそ至上命題でした。
そのため、「安価なゴム板を敷くだけ」「ホームセンター品で代用」という対応策が未だに根付いています。
一方、最新式の防振架台やIoT対応の振動監視センサーの導入には「投資対効果の説得が難しい」「元が取れるか見えない」という経営判断も根強いです。
働き方改革と生産現場の高齢化
近年、労働災害と疲労軽減、機械トラブル未然防止の観点から、防振対策の見直しが進み始めています。
また、ベテランオペレーターの退職や技能伝承問題も、標準化・見える化された防振部材選定・管理の流れを後押ししています。
グローバルサプライチェーンとの接続
海外サプライヤーからの調達が増える中で、防振部材の性能規格や品質要求について「ISO準拠」や「欧米基準」に合わせた再評価が求められるようになりました。
このため、単に「昔からのやり方」に固執せず、サプライヤー・バイヤー双方でエビデンスを持って評価・採用する工程が増えつつあります。
現場で効果を実感するために必要なアプローチ
1.振動問題の構造的・全体的な把握
まずは「どの設備の、どの振動に困っているのか」を棚卸しましょう。
現場ヒアリング、シンプルな測定器(スマートフォンでも可)による振動傾向の”見える化”が第一歩です。
・機械本体から発生する振動(初動)
・床面、基礎への伝播
・製品や寸法公差への影響
・作業員の体感、労働安全性への影響
これらを全体像として把握しない限り、防振材の「本来あるべき姿」は描けません。
2.防振部材選定の最適化・標準化
・とりあえずゴムパッドを敷く
・見本帳の一番売れ筋を頼む
このような思考停止ではなく、各防振材の「耐荷重」「耐久年数」「周波数特性」「耐熱性」「導入後メンテナンス頻度」などを明文化。
さらに、サプライヤーとも連携し、
・自社現場に合わせたカスタマイズ(厚み、硬度、配置パターン)
・試験導入によるフィードバックループ
・調達・在庫設計の見直し
これらを進めることで、無駄なコストや交換回数の削減、品質・安全性向上につながります。
3.投資対効果を数値で評価・説明する文化作り
防振対策を実施したら、必ず「前後」をデータで比較しましょう。
設備の稼働騒音、振動値、加工製品の寸法安定性、メンテナンストラブル減少など、多角的な指標で見える化することが肝要です。
バイヤー視点でも、こうした定量データを根拠に防振部材の必要性・バリエーションを評価・交渉できるようになることが、調達力・提案力の向上につながります。
ラテラルシンキングから生まれる新たな打開策
1.設備全体の再設計で「振動の原因そのもの」を減らす
防振部材=「何かを吸収するもの」と短絡的に考えずに、
・曲げ加工機自体のフレーム補強
・レイアウト、設置ベースの水平出しと剛性アップ
・溶接や固定方法の見直し
こうした“発生原因の根絶”に寄り添うことも、真の防振効果を生みます。
2.最新センシング技術で継続モニタリング
IoTセンサーやクラウド型モニタリングシステムを導入すれば、設置後の防振効果をリアルタイムで監視・記録可能です。
「目に見えない振動」が見える化されることで、現場担当者の納得感や、経営層への説明責任も果たせます。
3.サプライヤーとのコラボで“現場起点”のモノづくり
従来のように「市販品カタログから選ぶ」のではなく、
・現場課題をサプライヤーと共有
・現場ベンチマーク試験を実施
・既存防振材のカスタマイズ開発
こうした二人三脚のアプローチが、持続的かつ最適な防振効果を生み出します。
実際、現場主導のプロジェクトでオーダーメイド防振部材を開発し、品質・納期・コストの三方良しを実現した事例も増えてきました。
まとめ — 防振効果を「実感」できる現場へのステップ
曲げ加工機の防振部材において、「効果を実感できない」という現場の声には根深い理由があります。
その要因は、属人的な選定、定量データ不在、業界の慣習主義など、多岐にわたります。
しかし、現場起点で全体像を捉えなおし、効果測定・業界標準の見直し・サプライヤーとの連携強化などの施策を地道に積み上げれば、「なんとなく効いている」「どうせ一時的なもの」という曖昧さから脱却できます。
防振部材ひとつで、品質・安全・コストを同時にアップデートできる時代です。
発想を柔軟に、日々の現場観察と科学的アプローチを繰り返すことで、あなたの工場にも「確かに効果が出ている」という実感が生まれるはずです。
バイヤー・現場・サプライヤーが一体となった新しいモノづくりが、次世代の製造業を下支えしていくことでしょう。