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思っているほどデジタルではない製造業の会社に就職する学生たちに事前に知っておいてほしい業界の本音

目次
はじめに:ものづくりの現場は“想像以上にアナログ”
最近、デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が製造業界でも盛んに使われています。
AI、IoT、スマートファクトリー、自動化——。
学生の皆さんが工場見学や企業説明会で耳にするキーワードは、どれも最先端のイメージであふれています。
しかし、実際に現場で働くとなると、思っている以上にアナログな業務や“昭和的”なやり方、紙とペンにまみれた日々が広がっています。
これは日本の大手・中堅メーカーの現場のリアルです。
製造業へ就職を考える方、バイヤー志望の方、サプライヤーの立場でバイヤーの実情を知りたい方には、ぜひ知っておいてほしい業界の「本音」をお伝えします。
学生が持つ“製造業のデジタル化”イメージと現実のギャップ
最先端の工場=現場のすべてが自動化?
日本を代表するものづくり企業と聞くと、世界に誇れる高度な生産ライン、ロボットが黙々と働くスマートファクトリーを連想しがちです。
一部の新設工場や実証実験ラインは確かにその姿です。
しかし、2024年現在、多くの製造現場では“デジタル”とはほど遠い光景が広がっています。
現場では、手書きの日報、紙の図面、FAXでのやり取り、エクセルの手打ち集計…。
20年以上の現場経験を持つ私ですら、入社後10年以上は「いつ自動化が進むのか」という焦りと葛藤がありました。
「継ぎ足し」「アナログ」こそが現場の強みだった歴史
なぜこれほどまでにアナログが根強く残っているのでしょうか。
主な理由は二つあります。
一つは、日本独特の継ぎ足し・改善文化、「カイゼン」の伝統です。
現場は一気に丸ごと刷新されることがほとんどありません。
既存の生産設備やマニュアルを活かし「少しずつ」「現状維持」を繰り返しながら、微調整や手作業が積み重ねられていきます。
もう一つは、人に依存した“匠の技”の継承です。
これは特定の人しかできない(日報の独特な書き方や、わずかな音や匂いの異変で不良を察知するような)アナログ能力が生産現場を支えてきた背景でもあります。
なぜDX化は難しいのか?製造業が抱える根本的な課題
1. 複雑なレガシー設備との共存
工場の生産ラインは一度導入した装置を10年、20年と使い続けるのが常識です。
そもそもIT化を前提として作られていない“古参”機械たちが今も主力です。
IoTセンサーを取り付けたり、自動データ取得ソフトをつなごうとしても、現場で動く機械のコントローラーは通信したがらない頑固者ばかり。
システム間の連携やデータ取り出しに多大な労力とコストがかかります。
2. 業務プロセスの“属人化”
一人のベテランが暗黙知を抱え込んで離しません。
「この部品の管理はAさん」「この仕入先との折衝はBさん」といった 属人化 が進み、“データ”として残せないノウハウの山が築かれています。
システム導入・統合のたびに「現場に合わない」「前例がない」といった強烈な反発が起きるのも日常です。
特に調達購買や品質保証の現場では、サプライヤーとの細かな付き合いや微妙な調整力が“人の勘”に大きく依存しています。
3. 取引先との紙・FAX文化の鎖
バイヤーもサプライヤーも、多くは「発注書はFAX」が標準。
見積依頼、納期調整、納品書…。
「電子化しましょう」と掛け声をかけても、川上・川下どちらかがアナログだとどうにもなりません。
紙での記録・伝票処理が残り続けるため、全体のデータ連携や一元化が難しくなっています。
現場で“本当に求められる人材”は誰か?
「デジタル人材」より「アナログからの脱却推進人材」
企業は「DX人材募集」「データサイエンティスト募集」と積極的な採用活動を叫びます。
ですが、実は今、多くのものづくり現場が求めているのは「アナログな壁を理解し、“現場の声”を踏まえて地道に変革をリードできる人」です。
誰もが理想像として掲げる「スマート工場」も、それを推進・定着させるのは結局“現場目線”の人。
デジタルをきちんと現場で使える形に落とし込み、「古いやり方」を否定せず、段階的に導入できるバランス感覚が問われます。
新たな仕組みや道具を「どう使うか」を職人さんやオペレーター、事務スタッフに説明し、伴走していくコミュニケーション能力。
この実践力が“いま一番足りていない”のです。
「現場とシステム」の板挟みを楽しめる人へ
例えば生産管理。
システム上は「在庫ゼロ」でも、現場の棚には部品が残っていることがよくあります。
発注システムの入力忘れ、手作業での部品移動……。
現場を知る人材は「システムが絶対ではないこと」「現場の実態を反映する微調整」の必要性を肌で感じています。
また調達バイヤーも同じです。
新しい購買管理システムの導入には、調達購買担当者もサプライヤーも現場・現実を見据えて、段階的な移行計画や細かな調整が求められます。
この泥臭い“板挟み”をしなやかに乗りこなせる人が、アナログな製造業界では重宝されます。
サプライヤー・バイヤーが本当に知っておきたい現場の思考回路
バイヤーは「理詰め」より「現場の声・肌感覚」を大切にする
バイヤー(調達購買担当者)の仕事とは、単なる価格交渉やコストダウンにとどまりません。
発注先の工場に何度も足を運び、設備の状況、スタッフの様子、雰囲気や空気感、現場の“ちょっとした違和感”まで感じ取ることが重要です。
「価格はこれ以上下げられません」——この言葉の裏には、ラインキャパや在庫負担、リードタイム、人手不足など、現場のあらゆる事情が込められています。
数字より、この“現場目線”の情報を大切に信頼関係を築くこと。
これが長期的なパートナーシップに繋がります。
サプライヤーも「現場のカイゼン力」をアピールすべき
サプライヤー側は、価格や納期だけでなく、自社の“アナログな現場力”を積極的にアピールするべきです。
例えば「突発トラブル時も柔軟な工程対応ができる」「現場担当者が直接納入チェック」「自社の品質フロー改善」など、現場に根ざした提案や工夫はバイヤーの信頼につながります。
「デジタル化が進まない」ことを嘆くより、現状を把握し、アナログゆえにできる細やかな対応や“人”ならではの対応力を再評価すれば、新たな商機も生まれてきます。
これから製造業で働く学生や若手へのメッセージ:現状を知ってこそ新しい価値が生まれる
学生の皆さんが製造業で働く際、最初に驚くのは「現場ってこんなにアナログなんだ!」というギャップです。
でも、それこそがこの業界の“伸びしろ”であり、自分らしいキャリアを築く最高の舞台といえます。
・非効率な現場にイライラする気持ち
・世代間ギャップや時間のかかる意思決定への戸惑い
・紙・FAX文化の根強さへの疑問
この“気づき”こそが、次世代のものづくりを進化させる起点になります。
現場を理解し、アナログな部分を一つひとつデジタルへ橋渡しする。
その泥臭さの中に“未来”が隠れています。
まとめ:古さを知るからこそ、未来は切り拓ける
日本の製造現場は、デジタルの波に一気に乗り切れていません。
けれど、アナログの技術や文化を理解し、地に足のついた“現場力”を持つ人こそが、いずれ本当のイノベーションの担い手となります。
「思っているほどデジタルじゃない」現実はがっかりするものではありません。
むしろ「課題だらけ=チャンスだらけ」です。
ラテラルシンキングを生かし、自分だけの視点で“昭和”の殻を一つずつ打ち破ってください。
それが製造業の次の100年を切り開く、あなたの最初の一歩となります。