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英語より現場力が重視される製造業の会社に就職する学生たちに事前に知っておいてほしい業界の本音

目次
はじめに:製造業に就職を目指す学生へ送るリアルなメッセージ
日本の製造業は、世界に冠たる高品質と現場力によって発展してきました。
近年、グローバル化の中で英語力やデジタルスキルが話題になるものの、現場では「現場でしか学べない力」や「アナログ的な人間関係」を重視する空気が根強く残っています。
この記事では、大手製造業で20年以上の現場経験を持つ筆者が、学生時代に知っておいてほしかった業界の「リアルな本音」と、「現場力が重視される背景」、そして今後製造業に求められる人材像について解説します。
現場で働く方や、バイヤーを志す方、サプライヤーでバイヤーの考えを知りたい方にも役立つ内容を盛り込みます。
現場力とは何か:英語やITが先行する今、なぜ現場力が重要視されるのか?
現場力の正体:暗黙知と経験の積み重ね
製造現場で言われる「現場力」とは、単なる体力や器用さだけではありません。
それは、長年の経験からくる「勘」とも言える暗黙知、つまり言葉やマニュアルには表現しきれないノウハウの集合体です。
たとえば、ラインの音や匂い、機械の微振動、小さな変化などを五感で察知し、「何かおかしい」と感じて即座に動ける力。
これは教科書で学ぶことはできず、先輩や仲間と一緒に働く日々の中で少しずつ獲得していきます。
なぜ現場力が今も重視されているのか?
今やグローバル化が進み、現場でも英語やITの活用が増えてきましたが、日本の製造業では現場力が長らく評価されています。
その理由は、日本人の気質と製造現場の特性に根差しています。
まず、日本のサプライチェーンは非常に細かく、部品1つの品質や納期遅延が全体に重大な影響を及ぼします。
その中で、お客様の要望の「なぜ?」に応え、段取りやトラブル対応が素早くできる人が不可欠です。
また、昭和時代の高度経済成長期に培われた考え方や、”現場の声を重視”する文化が今も色濃く残り、「言われたことだけやればいい」「ルール通りやればいい」という姿勢では通用しません。
アナログな現場の裏側と、それでも変化しつつある業界事情
紙文化やハンコ至上主義…昭和の伝統はまだ根強い
他産業に比べてDX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れが指摘される製造現場ですが、今なおFAXや手書き指示、紙ベースの記録、ハンコ文化が残っています。
たとえば、生産日報や設備点検は手書きが基本。
品質異常の報告もExcelやメールではなく、直接現場リーダーに口頭や紙で伝えることが多いです。
こうしたアナログな仕組みを「非効率」「ブラック」と感じる学生・若手社員も少なくありません。
しかし、”人を通じてしか動かない”現場もしばしば存在し、人間関係の機微や、機械には再現できない現場対応力が大切にされています。
それでも進む自動化・デジタル化の波
一方で、人手不足の深刻化やサプライチェーンのグローバル化を背景に、工場の自動化(FA化)やIoT・AIの導入は着実に進行しています。
生産管理や品質管理のデータは、よりリアルタイム化。
ペーパーレス化も現実味を増しています。
現場にはまだギャップが残るものの、新しい技術を使いこなす若手の比重はこれから確実に高まるでしょう。
この「アナログとデジタルのはざま」を理解できる人材が、今後ますます重宝されていきます。
製造現場で求められる人物像:英語力よりも大事なこと
コミュニケーション力の本質は“言葉の通じ合い”ではない
グローバル化の流れで、求人票には「英語力必須」「TOEIC〇〇点以上」といった要件が並んでいます。
しかし、現場で最も必要とされるのは「現場の人と意思疎通できるか」というコミュニケーション力です。
たとえば、現場作業員や協力会社のスタッフは、英語より方言や独特の業界用語が通じることが多いです。
難しい英単語やビジネスマナー以前に、「現場の空気を読む」「気遣いを伝える」「相手の強み弱みを理解する」ような力が不可欠になります。
自分から積極的に挨拶し、困っている人に声をかけ、不具合や改善点を黙っていない姿勢が評価されます。
「体で覚える力」「やってみる勇気」が伸びるポイント
マニュアルや教科書を読んで理解することも大切ですが、製造現場では実際に自分の手と体を動かし、失敗と成功を繰り返しながらノウハウや感覚を染み込ませる経験の質が問われます。
例えば新しいラインや設備の立ち上げでは、想定外のトラブルが必ず発生します。
そのとき、役割や立場にかかわらず「何ができるか」を考えてどんどん動く人が、現場で信頼されていきます。
また、「わからないことは恥ずかしがらず何でも聞く」「わからないことをそのままにしない」素直さを持つ若手が生き残ります。
調達・購買/バイヤーとして知っておきたい現場基準・業界常識
交渉力と信頼関係のバランスがカギ
サプライヤーや外部パートナーと価格や納期・品質について折衝するバイヤー。
ここでも「現場を知っている」ことが武器になります。
コスト削減のために安易に価格交渉だけを押し付けると、現場の実情を理解していないとみなされ、長い目で見て信頼を失うこともあります。
逆に、「工程負荷」「現場の作業負担」「部材の取り合い」などの事情をくみ取ったうえで提案や調整ができると、サプライヤーからも頼られる存在になれます。
「表面だけの理屈」ではなく、現場で目に見える現象や人間関係を正しく読み取る力が、バイヤーにも求められているのです。
業界慣習や年功序列、暗黙知が色濃く残る
購買・調達の現場には、業界ごとの独特な「慣習」や人間関係マナーがあります。
たとえば、
・年配の担当者ほど決定権を持ち、若手は一度決まったことを大きく動かせない
・飲み会や休日のゴルフを通じた“つながり”がものを言う
・手土産や顔合わせの段取りなど、形式も大事にされる
こうした昭和的な文化は、今も多くの現場で生き残っています。
一方で、最近は世代交代や世の中の変化にあわせて、オープンでフラットな関係を重視する企業も増えてきました。
染まりすぎす、客観的に「なぜそうなっているのか?」を分析する視点を持つことが、成功のカギになります。
学生や若い世代に伝えたい「現場に根付く価値観」と成長のヒント
「不合理」に感じることが、実は現場を守ってきた知恵
紙文化、ハンコ、年功序列…。
外から見ると非効率で古く感じられる習慣も、長い間現場を守ってきた知恵の蓄積です。
たとえば、紙の日報は「あとで誰かが復元できる」「筆跡で書いた人の性格や異常値への意識が伝わる」など、単なる記録以上の意味があります。
ハンコや顔合わせは、「誰が見ても合意した事実を残す」「あいまいな伝達を排除」してきました。
こうした背景を知ることで、変えるべきところと残すべきところの見極めができるようになります。
昭和から令和へ。新しい現場リーダーは「両利きの人材」
これからの現場では、「現場力」と「デジタルスキル」両方を身につけた“両利きの人材”がリーダーとなっていきます。
・現場の人と直接話せる空気感
・“見える化”“効率化”のためにDXを推進する視点
・多文化、多世代、多拠点と協働する柔軟性
この3つが備わることで、新しいアイデアや改革も受け入れられやすくなり、自分の成長にも大きく寄与します。
「現場から学び、現場を変革する」。
こうした人材がますます輝く時代になっていきます。
まとめ:今、製造業で働きたいあなたへ
製造業は一見、古びたアナログ文化と職人気質が色濃く、今どきの若い世代には「面倒そう」「変化が遅い」と映るかもしれません。
しかし、その裏には、ものづくり現場が本気で「人」を大切にし、「現場」でしか育てられない力を重視してきた歴史があります。
英語やデジタル技術が注目される中でも、現場力やコミュニケーション力、アナログに通じる地に足の着いた対応力を磨くことで、自分の価値を最大限に発揮できます。
そして、これからの時代は「現場」と「DX」両方を担える人材こそが、既存の壁を壊し、製造業を次の時代へ進化させていきます。
ぜひ、この記事をきっかけに、日本のものづくりの奥深さや現場のリアルな空気感を知っていただき、自信を持って業界へ一歩を踏み出してみてください。
現場で鍛えた力は、必ずあなた自身と、製造業の未来を支える大きな武器になるはずです。