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ASTM D638で行うプラスチック引張試験の基礎

目次
はじめに:ASTM D638とは何か
プラスチックの特性を正確に評価するためには、信頼性の高い国際規格に準拠した試験が不可欠です。
その中で世界的に広く採用されているのがASTM D638です。
ASTM D638は、米国材料試験協会(ASTM International)が制定した「プラスチックの引張特性を測定するための標準試験方法」です。
本規格は熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を含む各種プラスチックに適用され、引張強さや弾性率、伸びといった機械的性質を明確な指標で示します。
日本でもJIS K 7161が存在しますが、グローバル化の進展に伴いバイヤー・サプライヤー間でASTMベースのコミュニケーションが活発化しています。
現場のグローバル対応力としてASTM D638の理解は、今や欠かせません。
なぜASTM D638が重要なのか:アナログ業界の壁を越えて
日本の製造業、とりわけ射出成形や押出成形など旧来型のプラスチック加工の現場では、昭和の時代から続く慣例や「ウチのやり方」を大切にする気風が根強いです。
しかし、欧米・中国・東南アジアを巻き込むサプライチェーンの再編や調達購買部門のグローバル化が進むに連れ、「ミリ単位の感覚」や「経験則」だけでは評価基準として弱点になりつつあります。
ASTM D638を使えば、海外バイヤーとの認識ずれや「どの条件で試験したのか不明」のようなトラブルを未然に防げます。
また、技術資料やRFI(情報提供依頼)、RFQ(見積依頼)の段階でASTM D638の試験データを添付することで、バイヤーはサプライヤーの信頼性を評価しやすくなります。
調達・品質保証の現場目線でも、ASTM D638を活用することで「選ばれるサプライヤー」としてビジネスチャンスを広げることが可能です。
ASTM D638試験の基本的な流れ
試験片(ダンベル型)の成形と寸法管理
ASTM D638では、「ダンベル型」と呼ばれる標準試験片を使用します。
試験片の寸法(長さ、厚み、幅)や公差は、規格によって厳密に定められています。
主なタイプはType I~Type Vまで分類されており、一般的にはType I(全長165mm、幅13mm、厚さ3.2mm)が多く使用されます。
寸法がずれると試験結果に大きく影響するため、加工現場やQC(品質管理)担当者はキャリパーやマイクロメーターによる高精度な測定・管理が求められます。
試験条件の設定と逐次管理
引張試験は、専用の万能試験機を使用します。
試験の速度(通常は5mm/min)、温度(一般的には23℃)や湿度(50%RH程度)が規格により指示されており、「現実に近い環境での物性値」を再現することがポイントです。
特に樹脂特有の吸湿や温度依存性を考慮し、条件の事前調整が現場のミス防止につながります。
実際の引張試験とデータ収集
試験片の両端をチャックで固定し、規定の速度で引っ張ります。
このとき負荷(引張力)と伸び(変形量)が自動的に記録され、以下の情報を数値として取得できます。
- 引張強さ(Tensile strength)
- 伸び(Elongation at break/at yield)
- ヤング率(Tensile modulus)
- 降伏点(Yield point)や破断点(Break point)
数値データは、社内外の技術資料や顧客提出用スペックシートに直接活用できます。
誤解されやすいポイントと試験の落とし穴
ASTM D638を現場で正しく運用するには、いくつか注意点があります。
試験片の方向性(流動方向と横方向)
樹脂の分子配列は成形条件(流動方向)によって物性値が大きく異なることがあります。
流動方向と垂直方向でデータの差異が大きい樹脂(特に繊維強化樹脂やフィラー入り)は、試験片の切り出し方に要注意です。
納入仕様書や図面で記載漏れがあれば、“バイヤーとサプライヤーの信頼関係”にヒビが入るリスクも考えられます。
前処理(コンディショニング)の重要性
プラスチックは吸湿性が高い材料も多いため、ASTM D638では前処理(コンディショニング)が義務付けられています。
熱をかけすぎて変質したり、湿度管理がルーズだったりすると、取得データに再現性がなくなり“机上の空論”に陥る危険があります。
社内ルールとのギャップ:昭和的な現場の壁
現場では「昔からこうやってる」「独自のサンプルで十分」という空気が根強いこともあります。
しかし、調達業務のグローバル化が進み、バイヤーが日系メーカーだけでなくグローバルサプライヤーを比較検討する今、ASTM D638データの“標準化”はサバイバルの切り札です。
現場のリーダーや工場長クラスが積極的にASTM導入の意義を現場へ伝え、地道な教育を続ける姿勢が求められます。
ASTM D638を活かしたバイヤー・サプライヤーの賢い関係構築
データに基づく“ロジカルな対話”の実践
ASTM D638データは、価格交渉・設計仕様・トラブルシューティングまで多様な場面で活用できます。
たとえば、バイヤーが「機械的強度が足りない」と感じた場合でも、ASTM D638によるエビデンスがあれば「どの応力領域に問題があるか」を定性的・定量的に明確化できます。
逆に、サプライヤー側も「自社材料の優位性」や「用途変更時のリスク」を丁寧に説明する際、国際規格=グローバルな物差しに従うことで、説明の説得力が格段にアップします。
“選ばれるサプライヤー”の条件:情報開示と安定供給
事前にASTM D638試験データを用意し、設計段階・購買段階で提出できる体制があれば、バイヤーは比較的安心して発注を進められます。
また、市場でよく使われる材料(ABS、PC、PBTなど)のデータベースを整備するとともに、「材料ロット別のデータ追跡管理」「トレーサビリティ確保」に努めれば、より信頼性の高いサプライヤーと評価されます。
まとめ:昭和的アナログからグローバル標準への飛躍
ASTM D638は単なる試験規格にとどまらず、日本の製造業がグローバル競争を勝ち抜くための“共通言語”とも言えます。
調達者は「どの基準のデータなのか」「どんな環境で測定したのか」に常に敏感であるべきです。
また、サプライヤーはそこに素早く応えられる“現場力”が求められる時代となりました。
従来の経験則を重視する現場文化に、ASTM D638というグローバルスタンダードを掛け合わせることで、バイヤー・サプライヤー双方の信頼性や競争力が大きく向上します。
ぜひ自社・自工程のプロフェッショナルとして、この試験法を使いこなし、“選ばれる製造業”、そして“次世代バイヤー”を共に目指して行きましょう。
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