調達購買アウトソーシング バナー

投稿日:2026年1月22日

非常用通信の回線冗長化がコストで止まる場面

はじめに:非常用通信の重要性と工場現場のリアル

ものづくりの現場で働く方々にとって、安定した通信インフラは“空気”のような存在です。

日々の生産管理や品質管理はもちろん、緊急時の連絡系統としても通信ラインは絶対に止められません。

昨今のデジタル化やIoT推進の波を受け、工場の現場でもデータ通信を活用する動きが着実に進んでいます。

こうした中で、災害やトラブル時に備えて、非常用通信回線の冗長化(バックアップ化)について考える企業が増えています。

しかし、実際には“コスト”という鉄壁の壁が、その推進の前に立ちはだかっています。

本記事では、20年以上の工場勤務経験と管理職の現場目線で、非常用通信回線冗長化をめぐる課題、そしてアナログ文化が根付くものづくり現場ならではの背景と、解決への糸口を探っていきます。

非常用通信回線の冗長化とは何か

回線冗長化の基本

回線冗長化とは、通信の主系と副系、つまり“メイン”と“バックアップ”を準備し、どちらかが切れてもネットワークや通話が止まらない構成を指します。

代表的な例として以下のようなものがあります。

– インターネット回線を二重化(例:光回線+LTE)
– IP電話とアナログ電話の併用
– 衛星電話や無線設備の用意

特に工場や大規模製造現場では、災害やシステム障害発生時の被害を最小限にとどめ、迅速な状況把握や意思決定のために冗長化が重要視されています。

なぜ今、冗長化が求められるのか

製造業を巡る環境は大きく変化しています。

巨大地震や台風など自然災害が頻発し、工場には「事業継続計画(BCP)」が事実上必須条件となってきました。

加えて、部門や企業の垣根を越えたサプライチェーン連携や、IoTセンサー・生産設備のネットワーク統合が進むことで、「通信の途絶が工場全体の稼働停止に直結するリスク」がかつてなく高まっています。

通信回線の冗長化は、こうした新たなリスクに備える“命綱”なのです。

理屈では分かるが…現場で止められる「コスト」という壁

固定費・変動費の発想が根強い製造業現場

理想は分かっていても、現場ではしばしば「予算」でブレーキがかかります。

製造業の工場長や調達部門に長年携わっていると、どうしても“1円単位でのコスト削減”のクセが染みつきます。

特に生産現場や管理部門の出費は、「直接利益を生まない固定費」と見られがちで、毎年必ずリストラの候補リストに入ります。

たとえば以下のような場面が典型的です。

– メイン設備の通信費のみ予算化・バックアップ回線は「保留」
– 衛星電話等の月額が“高すぎる”として見送り
– LTEやキャリア別回線の二重化を進めたものの、コスト比較で安い方だけに統一

このように、どんなにリスク低減が「理屈」として分かっていても、現場の現実は“まずコストカットありき”です。

危機感はある、でも優先順位はやはりコスト

BCP委員会や安全衛生会議で冗長化の提案が議題に上がっても、最後は必ず「コスト」にぶつかります。

実際、現場の声を拾ってみても

「うちのエリアは災害発生リスクも小さいし、必要最小限の対策で様子見が無難なのでは?」

「滅多に使わないバックアップ回線に、数百万かける余裕はない」

「IT部門や経営層が推進するのは分かるが、現場のオペレーションにそこまで直結しない」

こうした冷静かつ、どこか危機感が薄い意見が多数派というのが実情です。

特に昭和世代のベテランや、まだまだアナログ文化が根強い地方工場では、「万が一」を「余計な心配」と捉えがちです。

バイヤー/サプライヤー視点で見る「非常用通信」の実態

バイヤー目線:コスト評価と導入決定プロセス

ものづくり企業のバイヤー(調達担当)は、「価格とリスク」のバランスを常に求められます。

通信インフラの二重化案件が持ち込まれると、まず検討するのは以下のような点です。

– 過去の災害や通信断の事例
– 注文金額・費用対効果(ROI)
– 対策未実施時の損失予想

とはいえ、売上や生産性にダイレクトな効果が示せる設備投資とは異なり、バックアップ回線への投資は「使わないまま終わることを前提」とした高額保険のようなものです。

そのため、経理・財務や経営層への説明ハードルは非常に高く、「万が一に備える投資」より「今のコストダウン」に傾きやすいのです。

サプライヤーが知るべき「バイヤーの葛藤」

しばしば通信事業者やSIer、機器サプライヤーは「セキュリティ」や「安全」を前面に打ち出し、バイヤーに積極的な提案を行います。

しかし、調達側の“本音”を知っておくことで、より実効性のある提案が可能になります。

– 現場を止めないためのバックアップは理屈で納得
– ただしコストインパクトが大きすぎると一発で却下
– 長期的な割賦や、使わなかった場合の減額モデルなど、コスト最適化策を重視
– “一度通信トラブルを実体験”しないと危機感が高まらず、後回しにされやすい

こうした実情を踏まえ、現場の“アナログな意思決定フロー”や“人間関係”も読みながら提案書を組み立てることが差別化のポイントとなります。

アナログ文化とデジタル改革の狭間

なぜ、日本の製造業は「変わらない」のか

ものづくりの現場を20年以上見てきて強く感じるのは、現場の「変化」への抵抗です。

これは技術そのものの話だけでなく、人間の思考・風土にも深く根付いています。

– 現場主任が“これまで事故なくやってきたから大丈夫”と自信満々で反対
– いまだに連絡手段は“内線PHS”が基本
– 災害訓練でも事前シナリオ通りの“ヤラセ”になりがち

口では「DXだ!IoTだ!」と叫んでいても、いざ現場目線では“形だけ”で終わってしまうのです。

その背景には、「リスクを想定しすぎること=ムダなコスト」という価値観や、「使わないものへの投資は後回し」という企業風土が強く影響しています。

新しい発想で突破する「ラテラルシンキング」の重要性

こうした“変わりにくい日本の製造業文化”こそ、ラテラルシンキング(水平思考)で突破口を探る余地があります。

例えば

– 通信回線単独の冗長化ではなく、防災訓練やBCP見直しとセットで投資効果を“見える化”する
– 月額コストが重くのしかかる場合、複数拠点で共同契約しボリュームディスカウントを狙う
– 使用実績に応じた変動課金モデルをサプライヤーに提案させる
– サプライチェーン全体で“通信寸断時の役割分担”を文書化し、取引先の理解・協力も取り付ける

このように、“通信の冗長化”を工場の枠に閉じ込めず、業界全体の安全意識や協働の仕組み作りに繋げることで、「ただの保険」以上の価値を生み出すことができます。

まとめ:現場視点で考える通信回線冗長化の未来

非常用通信回線の冗長化は、決して“お金に余裕がある会社だけの贅沢”ではありません。

製造業においては、「止めない」ことが最大の利益防衛策であり、そのための投資は“将来コスト削減”という視点でも大きな意味を持ちます。

ただし、現場のアナログ文化やコスト意識は根強く、バイヤー・サプライヤー双方のアプローチにも工夫が求められます。

ベテラン世代・若手、バイヤー・サプライヤーの垣根を越え、「非常用通信回線=コスト」ではなく「事業継続の本質」として考える文化を根付かせることが、製造業全体の底力を高める第一歩になるはずです。

現場から新たな時代の“非常識”を常識に変える——そんなラテラルな発想で、非常用通信の課題解決に取り組んでいきましょう。

ノウハウ集ダウンロード

製造業の課題解決に役立つ、充実した資料集を今すぐダウンロード!
実用的なガイドや、製造業に特化した最新のノウハウを豊富にご用意しています。
あなたのビジネスを次のステージへ引き上げるための情報がここにあります。

NEWJI DX

製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。

製造業ニュース解説

製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。

お問い合わせ

コストダウンが重要だと分かっていても、 「何から手を付けるべきか分からない」「現場で止まってしまう」 そんな声を多く伺います。
貴社の調達・受発注・原価構造を整理し、 どこに改善余地があるのか、どこから着手すべきかを 一緒に整理するご相談を承っています。 まずは現状のお悩みをお聞かせください。

You cannot copy content of this page