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採用したIT人材と現場担当の言語が合わない問題

採用したIT人材と現場担当の言語が合わない問題
製造業における「言語の壁」とは何か
現在、多くの製造業の現場で「IT人材と現場担当者とのコミュニケーションギャップ」が深刻な問題となっています。
経済産業省の調査でも、現場のデジタル化推進において「IT人材と現場の意思疎通がうまくいかない」という声が多数報告されています。
私は20年以上、現場の最前線と管理職を経験してきましたが、現場担当者とITエンジニアとの間には大きな「言語の壁」が存在することを強く実感しています。
この言語の壁とは、単に専門用語が違うというだけではありません。
捉え方や価値観、業務へのアプローチの方法論それぞれが食い違っているため、誤解や摩擦を生み、本来の目的である生産効率の向上やDX推進がなかなか実現しません。
なぜ「言語の壁」が生まれるのか
この課題を体系的に捉えるために、現場とITの双方の特徴を対比してみます。
現場担当者は、長年にわたり熟練の経験や勘を重視して生産ラインを回してきました。
また、昭和時代から続くアナログ文化が依然として色濃く残っており、新しいIT用語やソフトウェアの理念になじみにくい側面があります。
一方で、近年採用されるIT人材の多くは、システム開発やデータサイエンスに明るく、課題を「抽象化」して分析・解決することに長けています。
しかし、実働現場の「泥臭さ」や機械ごとのクセ、「現場感」といった属人的なノウハウまでは把握していません。
結果として、IT人材は「ここを自動化しましょう」「BIツールで見える化しましょう」と提案しがちですが、現場担当からすると「それは現実的じゃない」「重要なのは現場感だ」と反発されてしまうのです。
具体的に起こるコミュニケーションのすれ違い
この言語ギャップは日常的な会話の端々に現れます。
例えば「歩留まり改善をAIで」とIT人材が提案したものの、現場担当からは「そもそもラインを止める余裕がない」「AIが間違えたときにラインを復旧させるのは誰がやるんだ」と懐疑的な反応が返ってきます。
IT人材はプロダクトアウト的発想に寄りやすく、最新技術を使いたいという意識が強いです。
それに対し、現場担当者はカスタマーイン、つまり「現状維持」「稼働率の維持」を優先する傾向があり、変化そのものに強い抵抗感を持つことも珍しくありません。
こうした意識や前提条件の違いが、技術導入の遅れや、プロジェクトの頓挫を引き起こしているのです。
現場・サプライヤー・バイヤーそれぞれの視点で見る「言語の壁」
現場担当者の立場で言語ギャップを考えると、自分たちのノウハウを一方的に「非効率」「古い」と断じられることで、承認欲求が傷つけられる場合があります。
「なぜIT部門は自分たち現場の苦労を理解してくれないのか」と感じることも少なくありません。
サプライヤーの立場から見ると、バイヤーが「DX化」や「サプライチェーンの見える化」といった抽象的指示だけを強く押し出してきて、その本質的なニーズや現場課題までは伝わってこない――と困惑しているケースが多々あります。
一方、バイヤーや調達購買担当者は、社内外の諸事情を踏まえつつコスト低減や安定調達を実現するプレッシャーに常にさらされ、IT活用に舵を切らざるを得ない状況に置かれています。
こうした複層的な立場の違いが「どこの部門が何を“言いたい”のか」分かりづらくする大きな要因の一つとなっています。
昭和から続くアナログ文化の影響
日本の製造業が昭和時代から築き上げてきた現場主義的な文化は、今も根深く残っています。
例えば「紙の帳票管理」や「電話・FAXでの発注」などが未だに現場で強く支持されているのは、アナログな業務フローが多様な現場イレギュラーに柔軟に対応できる“職人技”だからです。
このアナログ文化が、IT人材の「システム化すればうまくいく」という考えとぶつかり、現場から猛烈な反発や不信感を買う結果となるのです。
DX推進や工場の自動化に対しても「現場の声と合致しない机上の空論」と見なされやすい土壌が日本の製造現場には色濃くあります。
「言語の壁」を打破するための具体的なアプローチ
この問題に挑むには、ラテラルシンキングの発想が必要です。
従来通り知識や用語の“翻訳”にとどまらず、以下のような実践策が効果的です。
- 「現場流DXワークショップ」の開催
双方の担当者が現場の課題を体験しながら対話するワークショップ形式の議論を行います。
IT人材は現場ラインへの「現場実習参加」を義務化し、実際に作業着で現場に立つ経験を通じて相互理解を促します。 - 「翻訳者」役の配置
現場もITも理解できる「橋渡し人材」をプロジェクトチームに加えます。
この人材が意図や用語の違いをその場で逐一調整することで、摩擦を予防します。
現場出身でITリテラシーを持つ「現場×IT人材」の育成も重要です。 - 「サクセスストーリーの小さな成功」の共有
大きな全体改革を目指す前に、棚卸や日報自動化など即効性と成果が見えやすい領域から部分導入し、その成功体験を現場に広めることで空気を変えます。 - 「現場側からの要求仕様の可視化」
IT導入プロジェクトの企画段階で現場の「暗黙知」を言語化・可視化し、ドキュメント化します。
これによりITチームも課題が把握しやすくなり、設計思想に現場目線を盛り込めます。
ラテラルシンキングで開く新しい地平
本質的解決には「現場とIT部門の融合人材」を積極的に育て、両者の間を行き来できるキャリアパスを整備することが不可欠です。
さらに、「現場側がIT導入のリーダーシップを取る」のも一手です。
現場を起点としたデジタルプロジェクトの発議・推進が「現場のためのDX」立ち上げになり、部門横断型チームの創設やフラットな意思疎通の習慣化を促進します。
昭和型の縦割り文化に新しい“風”を起こすには、小規模からでも現場が主導権を持つことが有効です。
また、IT人材も「技術」のみならず、「現場」の“流儀”や“言葉”を自ら学び、エンジニアの現場参画を自己成長の機会として捉えるべきです。
これによって、真の意味での「協創(共創)」文化が長期的に醸成されていくでしょう。
まとめ:バイヤー・サプライヤー・現場すべての発展のために
製造業のバイヤーや調達担当、現場担当、サプライヤーの役割は、従来の「縦割り」から「水平連携」へと移行しつつあります。
IT人材と現場担当者の言語ギャップを乗り越えることは、製造業全体の底上げや業界の競争力向上、ひいては日本のものづくり文化の持続発展にも大きく寄与します。
この記事を読んだ皆さんが、それぞれの持ち場で「もう一歩踏み込んだ対話」「新たな発想による協働」を実践し、現場を起点とした真の“業務革新”に挑戦していただければ、その先にはきっと新たな可能性が拓けると信じています。
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