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投稿日:2026年10月2日

MIL 規格品を国内で調達するとき——QPL 掲載品・同等品・適合証明書の見分け方

この記事のポイント(結論先出し)

「MIL 規格品」という言葉は、少なくとも三つの別のものを指す。米国防総省の認定品目表(QPL)・認定製造者表(QML)に載った認定品、MIL 規格の要求に合うと仕入先が称する品、そして MIL 規格の試験方法や処理方法を指定しただけの品である。認定品は、製品と製造者が規格の要求に対して試験され、その結果が一覧に載ったもので[1]、現在の掲載状況は国防兵站局(DLA)の認定品データベース(QPD)で確かめる[2]。適合証明書(CoC)は契約の要求に適合しているという宣言で、受入検査を省く根拠にはならない[3]。米国の防衛向けに納める品では特殊金属の条項が[4]、日本の防衛向けでは防衛省仕様書が[7]、それぞれ要求の出発点になる。

「MIL 規格品」と言われたら、まず三つに分ける

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顧客の仕様書に「MIL 規格品を使用のこと」とある。国内の商社に問い合わせると「MIL 相当品ならあります」と返ってくる。この二つが同じものかどうかは、言葉だけでは分からない。MIL 規格(米国の軍用規格・仕様書)が調達の場面で指しているものは、少なくとも次の三つに分かれる。

区分 中身 確かめる方法 発注書に書くこと
認定品(QPL・QML 掲載品) 認定を求める仕様書について、製品や製造者が試験され、一覧に載ったもの DLA の QPD で、仕様書・品番・製造者の掲載を確かめる 仕様書番号と版、品番、製造者、QPL 掲載品であること
規格に適合すると称する品 認定を求めない規格の品、または認定を受けていない同等品 試験成績書と適合証明書の中身を読む 規格番号と版、どの要求項目を満たすか、提出させる試験データ
試験方法・処理方法の指定 環境試験や表面処理の方法を MIL 規格で指定したもの 試験報告書の方法・手順・条件 試験方法の番号、手順、条件(ここを書かないと「準拠」の中身が決まらない)

顧客がどの区分を求めているかを最初に確かめる。顧客の仕様書が QPL 掲載品を求めているのに、国内で手に入りやすい同等品を手配すれば、品質に問題がなくても契約違反になる。逆に、試験方法として MIL 規格を引いているだけなのに認定品を探し回ると、時間と費用を無駄にする。

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QPL・QML 掲載品を買うとき

米国の連邦調達規則(FAR)9.203 は、QPL・QML・QBL への認定と掲載を、製造者や販売者から製品を取り寄せて仕様書の要求への適合を試験し、合格した製品・製造者・入札者の名前を一覧に載せる手続きとして説明し、認定は一般に個々の調達とは独立に、前もって行われる、としている[1]。同じ規則の 9.201 は、QML を、製品が試験され、その製品に適用される全ての認定要求を満たした製造者の一覧と定義している[1]。

紙の QPL は、データベースに移っている

DLA の認定品データベース(QPD)のよくある質問は、以前は QPL・QML が紙の文書として作られ、仕様書・規格の閲覧システム(ASSIST)から PDF で取得できたが、掲載の追加から公表までに時間差があったため、データベースで管理して公表と同時に利用できるようにした、と説明している[2]。QPL・QML が QPD に移るにつれて、旧来の文書は ASSIST から外されて保管に回り、最終的には全ての QPL・QML を QPD のデータに置き換えることを目標にしている[2]。

つまり、手元にある古い QPL の PDF や、商社のカタログに書かれた「QPL 品」の表示は、現時点の掲載を保証しない。同じよくある質問は、QPD の掲載が更新される場面として、製造者が設計・材料・製造工程の変更を報告したとき、製品を作る工場の所在地が変わったとき、認定の期限が切れたとき、製品が適合していないと分かったとき、製造者が生産をやめたとき、などを挙げている[2]。また、認定後も定期的な再認定や再試験が求められることがあり、製造者の担当者が、再認定が必要になるような設計・製造の変更がないことを定期的に証明しなければならないとし、多くの製品ではその証明が 24 か月ごとに求められる(期間は認定を担当する機関が決める)と書いている[2]。

発注するときと受け入れるときの 2 回、QPD で、仕様書番号・品番・製造者が掲載されていることを確かめ、確かめた日付と画面の写しを記録に残すとよい。

QPD に載っていないものもある

同じよくある質問は、QPD は政府と取引する全ての仕様書・品番・製造者を収めているわけではなく、認定を要求している仕様書に限られると明記している[2]。また、仕様書が廃止されたり、改正で認定の要求が外されたりした場合、その仕様書の認定データは保管に回り、利用できなくなる、としている[2]。

顧客の仕様書が古い版の MIL 規格を指定していて、QPD で見つからない場合は、その規格がまだ認定を求めているかどうかを、仕様書そのもので確かめる必要がある。見つからないことを理由に「認定品でなくてよい」と自分で判断せず、顧客に確認する。

「MIL 相当品」を使ってよいかは、顧客が決める

QPL に載っているのは、特定の製造者の特定の品番である(工場の所在地の変更でも掲載が更新される)[2]。国内の別の製造者が同じ仕様書の試験に合格するだけの性能を持っていても、認定を受けて掲載されていなければ、QPL 掲載品ではない。顧客の要求が QPL 掲載品であるなら、同等品への置き換えは顧客の書面の承認を得てから行う。これは規格の要求ではなく、契約上の線引きとしての実務の提案である。

国内で QPL 掲載品を手配すると、正規の流通経路から外れた品をつかまされる危険も増える。流通経路の証明と受入での確かめ方は、電子部品の模倣品を避ける調達で扱った。

試験方法・処理方法として MIL 規格を指定されたとき

電子機器の仕様書に「MIL-STD-810 に準拠した環境試験を行うこと」とだけ書かれていることがある。MIL-STD-810 は環境試験の規格で、1983 年の D 版について解説した日本信頼性技術協会誌の記事は、この規格が本文と試験項目別の 20 種類の試験方法からなり、低圧・高温・低温・太陽放射・降雨・湿度・かび・塩霧・砂塵・振動・衝撃などの試験方法を含む、と紹介している[6]。そして、この規格の骨子は、機器がライフサイクルの中でさらされる環境に合わせて試験条件を選ぶ「テイラリング」にある、と説明している[6]。

この説明から分かるのは、「MIL-STD-810 準拠」とだけ書いても、どの試験方法を、どの手順で、どの条件で行うかは決まらない、ということである。依頼書には、試験方法の番号・手順・条件(温度・時間・振動の条件など)と規格の版を書く。現在の版の中身は ASSIST で規格そのものを確かめる。振動・衝撃や塩水噴霧の試験を仕様に入れるときの書き方は、同じシリーズの振動・衝撃試験を仕様に入れるときと塩水噴霧試験を受入・仕様に入れるときで扱う。

表面処理の MIL 規格(アルマイトの MIL-A-8625 など)も同じで、規格番号だけでは処理の種類が決まらない。区分(Type・Class)まで書く必要がある点は、MIL-A-8625 アルマイト処理の要求事項の記事にまとめられている。

適合証明書(CoC)に何を書かせるか

MIL 規格品の取引では、出荷のたびに適合証明書(Certificate of Conformance、CoC)を添えることが多い。米国の政府調達で使われる FAR 52.246-15 の条項は、証明書の文面として、契約番号、出荷日、輸送手段と船積書類を特定したうえで、その供給品が仕様・図面・保存処理・包装・表示・品番を含む全ての契約要求に適合し、記載の数量であることを証明する、という形を定めている[3]。同じ条項は、証明書による出荷であっても政府の検査の権利は損なわれず、政府は引渡し後の合理的な期間内に書面で不良品を拒否でき、その場合は契約者の費用で交換・修正・修理する、としている[3]。

民間の取引でこの条項がそのまま適用されるわけではないが、CoC に何を書かせるかの雛形として参考になる。発注側として CoC に求めるとよい項目を挙げる。

  1. 発注番号、品番、適用する規格・仕様書の番号と版
  2. 製造者名(販売者と製造者が違う場合は両方)、ロット番号・製造日付の表示
  3. 出荷数量と出荷日
  4. どの要求に適合していると証明するのか(仕様、図面、包装、表示など)
  5. 署名者の氏名と役職、署名日

CoC は「適合している」という宣言であって、試験の結果そのものではない。機械的性質や成分などの数値が必要なら、試験成績書を別に求める。材料の証明書の種類(誰が、どのロットを試験したか)による違いは、ミルシート Type 3.1 を出せない仕入先を発注前に見抜くで扱っている。

米国の防衛向けに納める品では、特殊金属の条項がかかる

米国の防衛調達に組み込まれる部品の場合、上流から「特殊金属」の条項が流れてくることがある。米国防総省の調達規則補足(DFARS)252.225-7009 は、契約で納入される品に組み込まれた特殊金属は、米国、その海外領土、または「適格国」で溶解・生産されたものでなければならない、と定めている[4]。ここでいう特殊金属には、マンガン 1.65%、けい素 0.60%、銅 0.60%のいずれかを超える鋼、アルミニウム・クロム・コバルト・モリブデン・ニッケル・ニオブ・チタン・タングステン・バナジウムのいずれかを 0.25%を超えて含む鋼、一定のニッケル合金・コバルト合金、チタンとチタン合金、ジルコニウムとジルコニウム合金が含まれる[4]。

適格国は DFARS 225.003 に列挙されており、日本はその一つである[5]。そして同じ条項の例外には「適格国で製造された品」が挙がっている[4]。日本の工場で加工・組立した部品は、材料がどこで溶解されたかを問わず、この制限の対象から外れる。溶解国が問題になるのは、棒・板・線などの材料を加工せずそのまま納める場合と、米国・適格国以外(中国など)の工場で作らせた部品を納める場合である。材料のまま納めるなら日本の商社から買った材料でも、溶解が米国・適格国以外なら条件を満たさない。海外の工場で作らせた部品は、まずその製造国が適格国かを確かめ、適格国でなければ材料の溶解国まで確かめる。ほかに電子部品、一定の条件を満たす市販品(COTS)の例外と、最終製品に含まれる特殊金属の総重量のうち条件を満たさない分が 2%以下なら対象外とする例外がある。ただし 2%の例外は最終製品の単位で元請が見積もって管理するもので、高性能磁石には使えない。条項は下請契約にも組み込むよう求めている[4]。この条項が発注元から示されたら、納める品が「日本など適格国で製造した品」「適格国以外で製造した品」「材料そのもの」のどれに当たるかをまず発注元とすり合わせ、適格国で製造した品でなければ、証明書で溶解した製鋼所と国を確かめて記録に残す。例外の当てはめは条文が細かいので、自分で判断せず発注元と確認する。

日本の防衛向けでは、防衛省仕様書が出発点になる

日本の防衛省が装備・使用する物品を調達するときの仕様は、防衛省仕様書(DSP)で定められている。防衛装備庁は、防衛省仕様書を、「装備品等の標準化に関する訓令」(昭和 43 年防衛庁訓令第 33 号)に基づき、調達物品の形状・構造・品質その他の特性、試験方法、検査方法、防せい方法、包装方法、表示方法などを定めたもの、と説明し、ホームページで公開して無料でダウンロードできるとしている[7]。仕様書の目録には、令和 8 年 3 月 17 日現在で合計 156 件が部門別に掲載されている[8]。

防衛省仕様書は、MIL 規格と無関係ではない。たとえば VOR 航法装置の防衛省仕様書(DSP C 5909D)の改正票(令和 5 年 8 月 30 日改正)は、適用する規格・仕様書として JIS とともに MIL-STD-704A や MIL-E-5400T を挙げ、品質管理は防衛省仕様書 DSP Z 9008(品質管理等共通仕様書)によるとし、電磁干渉の性能と試験方法は NDS C 0011 によるとしている[9]。同じ改正票では、塗料の規定が「JIS K 5651 によるもの」から「JIS K 5651 又は同等品によるもの」に改められている[9]。どの項目で同等品が認められ、どの項目で認められないかは、仕様書と改正票を読んで初めて分かる。

防衛分野の取引に入るときに求められる情報保全やサイバーの基準は、防衛装備品の取引に中小製造業が入るときで扱っている。航空宇宙の分野で求められる購買の要求は、同じシリーズの航空宇宙部品の調達で求められることで扱う。

受入で確かめること

MIL 規格品を受け入れるときに確かめる項目を、区分ごとにまとめる。

  1. 品番の表示と、発注書の仕様書番号・版・品番が一致しているか
  2. 認定品なら、QPD に現在も掲載されているか(製造者と品番)
  3. 製造者とロット番号・製造日付の表示があり、CoC の記載と一致しているか
  4. 求めた試験成績書があり、試験方法・手順・条件が発注どおりか
  5. 特殊金属の条項がかかる品なら、製造国の記録があるか。製造国が米国・適格国以外の部品と、材料をそのまま納める品なら、溶解国の記録もあるか
  6. 包装と表示が仕様書の要求どおりか

CoC が付いていることは、これらの確認を省く理由にはならない。前出の FAR の条項も、証明書による出荷が検査の権利を損なわないと明記している[3]。

よくある質問

顧客の仕様書が指定する MIL 規格が、すでに廃止されている

MIL 規格は改正・廃止が多い。廃止された規格を指定されたら、後継の規格があるか、顧客が旧版のままの要求を続けるのかを、顧客に書面で確認する。QPD で見つからないのは、廃止や認定要求の削除で認定データが保管に回ったためであることもある[2]。

民生品の図面に MIL 規格の番号が書いてある

民生品の図面でも、表面処理や試験方法の指定として MIL 規格が使われることは多い。この場合は多くが表の 3 番目(試験方法・処理方法の指定)で、認定品である必要はないことがほとんどである。ただし、図面の注記が認定品を求めていないかは、注記の文言で確かめる。

国内の商社から買えば、正規品と考えてよいか

商社が製造者の正規の販売店かどうかで変わる。製造者から商社までの流通経路の証明を求め、受入では品番・ロット・製造者の表示を確かめる。

まとめ

「MIL 規格品」は、QPL・QML 掲載の認定品、規格に適合すると称する品、試験方法・処理方法の指定、の三つに分けて考える。認定品は QPD で現在の掲載を確かめ、同等品への置き換えは顧客の承認を得る。試験方法として MIL 規格を指定するなら、方法・手順・条件・版まで書く。CoC は宣言であって検査の代わりにはならない。米国の防衛向けでは特殊金属の条項(日本など適格国で製造した品は例外。適格国以外で製造した部品と、材料のまま納める品は溶解国まで確かめる)、日本の防衛向けでは防衛省仕様書と改正票が、要求の出発点になる。

出典・参考資料

  1. FAR Subpart 9.2 Qualifications Requirements(9.201 Definitions、9.203 QPL’s, QML’s, and QBL’s)(米国連邦規則集(eCFR) Title 48/2026 年 10 月 2 日閲覧)
  2. QPD FAQs(米国国防兵站局(DLA) Qualified Products Database/2026 年 10 月 2 日閲覧)
  3. FAR 52.246-15 Certificate of Conformance(APR 1984)(米国連邦規則集(eCFR) Title 48/2026 年 10 月 2 日閲覧)
  4. DFARS 252.225-7009 Restriction on Acquisition of Certain Articles Containing Specialty Metals(JAN 2023)(米国連邦規則集(eCFR) Title 48/2026 年 10 月 2 日閲覧)
  5. DFARS 225.003 Definitions(Qualifying country)(米国連邦規則集(eCFR) Title 48/2026 年 10 月 2 日閲覧)
  6. 飯田正雄「米軍規格 MIL-STD-810D(1983, 7, 19 公布)『環境試験方法と工学的指針』の概要」日本信頼性技術協会誌 Vol.6, No.2(日本信頼性技術協会/1984 年)
  7. 防衛省仕様書(防衛装備庁/2026 年 10 月 2 日閲覧)
  8. 防衛省仕様書及びその目録(令和 8 年 3 月 17 日現在)(防衛装備庁)
  9. 防衛省仕様書改正票 DSP C 5909D(4) VOR 航法装置(防衛装備庁/令和 5 年 8 月 30 日改正)

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