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投稿日:2026年10月2日

振動・衝撃試験を仕様に入れるとき——JIS が仕様側に委ねる必須項目

この記事のポイント(結論先出し)

仕様書に「JIS C 60068-2-6 に準拠した振動試験に合格すること」と書いても、条件はほとんど決まっていない。正弦波振動試験の JIS は、製品規格(=発注側の仕様)で規定する事項を 27 項目挙げ、うち 13 項目を必須としている。振動数範囲・振幅・耐久試験時間・試験軸・合否判定基準は、どれも規格ではなく仕様で決める[1]。衝撃試験の JIS も 15 項目のうちパルス波形・厳しさ・方向と回数・取付方法・合否判定基準など 6 項目を必須にしている[2]。発注側は、実際に部品が受ける振動・衝撃から条件を決め、取付け方、試験中に動作させるか、試験前後の共振の比較、合否の判定まで書く。包装した状態の輸送試験は、製品単体の試験とは別の規格で決める[7]。

規格は「試験のやり方」を決め、条件は仕様に委ねている

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電気・電子製品の振動と衝撃の試験は、JIS C 60068 の規格群に定められている。正弦波振動は JIS C 60068-2-6(試験記号 Fc)、衝撃は JIS C 60068-2-27(試験記号 Ea)、広帯域ランダム振動は JIS C 60068-2-64(試験記号 Fh)である[1][2][3]。これらは試験の手順を定める規格で、どの強さで何時間振るかは、試験を使う側が決める作りになっている。

正弦波振動試験の JIS は、最後に「製品規格に規定する事項」の一覧を置き、監視点の選び方から合否判定基準まで 27 項目を挙げ、そのうちアスタリスクの付いた 13 項目を必須としている[1]。必須の項目は、制御点の選び方、1 点制御か多点制御か、振動数範囲、振動振幅、耐久試験時間、初期測定、試験軸、実施する試験段階と順序、供試品の動作と機能検査、振動応答検査の後にとる処置、応答振動数の変化を見つけたときの処置、最終測定、合否判定基準である[1]。

衝撃試験の JIS も同じ形で、製品規格に規定する 15 項目のうち、パルス波形、衝撃印加軸(試験姿勢と試験軸)、取付方法、厳しさ、衝撃方向と回数、合否判定基準の 6 項目を必須としている[2]。「規格に準拠」とだけ書いた仕様書は、この必須項目が空欄のまま、ということになる。この記事は、試験の種類の概要(JIS C 60068 の環境試験の記事で扱っている)ではなく、買う部品の仕様に何を書くかに絞る。

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何で「厳しさ」が決まるか

三つの試験は、厳しさを決める項目が違う。仕様書には、それぞれの項目に数字を入れる必要がある。

試験 厳しさを決める項目 規格が示す選択肢の例
正弦波振動(JIS C 60068-2-6) 振動数範囲、振動振幅、耐久試験時間 下限 0.1・1・5・10・55・100 Hz、上限 10〜5,000 Hz の 12 段階。掃引の耐久は各軸 1・2・5・10・20・50・100 掃引サイクル。臨界振動数での耐久は 10 分・30 分・90 分・10 時間[1]
広帯域ランダム振動(JIS C 60068-2-64) 試験振動数範囲、加速度 rms 値、加速度スペクトル密度の曲線の形、試験時間 試験時間は 1・2・5・10・20・30・45・60 分、2・5・8・12・24 時間から選んでもよい[3]
衝撃(JIS C 60068-2-27) パルス波形、ピーク加速度、作用時間、方向ごとの回数 例:正弦半波で 150 m/s²・11 ms、500 m/s²・11 ms、1,000 m/s²・6 ms など。回数は各方向 3・100・500・1,000・5,000 回から[2]

正弦波振動の振幅は、折れ点振動数より低い側では変位を一定に、高い側では速度または加速度を一定にする[1]。仕様書に「加速度 10 m/s²」とだけ書くと、低い振動数で振動台が動かせない変位を要求することになるので、変位と加速度の両方と折れ点を書く。耐久試験時間が 1 軸当たり 10 時間以上になる場合は、供試品に加わる応力が減らない限り、時間を分割してよいとされている[1]。

衝撃は、直交する 3 軸のそれぞれ正と負の方向に加えるのが基本である[2]。取付けや輸送時の姿勢が分かっている場合は、重要な方向とその姿勢だけに加える回数を製品規格で決めることができ、姿勢が分からない場合は 3 軸の両方向に加える[2]。どちらにするかは仕様書で決めることになる。

条件は、部品が実際に受ける振動・衝撃から決める

試験の数値を、ほかの製品の仕様書から写してくる例は多い。しかし、取り付ける場所が違えば受ける振動は違う。JIS C 60068-1 は、試験対象の供試品が実際のフィールドで遭遇する環境条件に基づいて、試験手順と試験仕様を作る手法を「環境試験のテーラリング」と定義している[4]。そのフィールドの条件は、測定結果、文献、その他の情報に基づいて要約し変換したものだとし、実際には信頼できるデータが得られない場合もあり、その場合は数値シミュレーションで環境条件と製品の応答を決めることもできるとしている[4]。

同じ通則は、現実の環境条件と試験条件との関係を確立できることは多いが、すべての供試品に例外なく有効なルールを示すことはできないとし、供試品に対して実施する試験の順序は重要だとも書いている[4]。発注側の実務としては、次の順で決めるとよい(当方の提案)。

  1. 部品が受ける振動・衝撃の場面を挙げる(稼働中、輸送中、取付け作業中など)
  2. 場面ごとに、測ったデータ、顧客の要求、業界の規格のどれを根拠にするかを決める
  3. 正弦波かランダムか、衝撃の波形と強さを選ぶ
  4. 温度など他の試験と組み合わせるか、順序をどうするかを決める

自動車の電装品では、取付け場所ごとに推奨する試験と要求を示す規格がある。ISO 16750-3:2023 は、車両の電気・電子のシステムと部品が受ける機械的な負荷を記述し、車両の取付け場所に応じて推奨する試験と要求を規定している[6]。顧客がこの規格を引いているなら、どの取付け場所の区分を適用するかまで確かめて仕入先に伝える。全体像はISO 16750 自動車部品環境試験の全体像の記事で扱っている。

正弦波か、ランダムか

二つの試験は目的が違う。正弦波振動試験は、振動数を掃引しながら共振の起きる振動数(臨界振動数)を探し、そこでの耐久性を確かめる使い方ができる。規格は、振動応答検査で臨界振動数を調べ、その振動数、加えた振幅、供試品の挙動を報告書に記録し、結果に対する処置を製品規格で決めるとしている[1]。ランダム振動試験は、広い振動数の範囲に同時に振動を加えるもので、厳しさは振動数範囲・加速度 rms 値・加速度スペクトル密度の曲線の形・試験時間の組合せで決まる[3]。

実際に部品が受ける振動が、車両や搬送のように広い振動数に分布しているならランダム振動、回転機のように特定の振動数が支配的なら正弦波、という分け方が基本になる。どちらにするかは、上で決めた「実際の環境」から選ぶ。顧客の仕様が一方を指定しているなら、それに合わせる。

取付け方と、試験中の動作を決める

取付け方

振動・衝撃の試験結果は、供試品を振動台にどう取り付けたかで大きく変わる。衝撃試験の JIS は、供試品を JIS C 60068-2-47 に従って取り付けるとしている[2]。JIS C 60068-2-47 は、衝撃・振動・定加速度の試験での機器や製品の取付方法を、包装された製品と包装されていない製品の両方について規定している[5]。

仕様書には、実際の取付けと同じ取付具(ブラケット、ねじの本数と締付けトルク)を使うのか、試験所の汎用の取付具でよいのかを書く。正弦波振動の JIS は、防振装置を付けて使う供試品を防振装置なしで試験する場合や、包装して輸送する供試品を包装なしで試験する場合には特別な処置が必要だとし、防振装置付きの供試品の共振振動数で耐久試験をするかどうかを製品規格で規定することが望ましいとしている[1]。

試験中に動作させるか

部品が振動中に誤動作しないこと(接点のチャタリングや信号の途切れ)を確かめたいなら、試験中に動作させて監視することを仕様書に書く。正弦波振動の JIS は、製品規格に規定がある場合は試験中の供試品を動作させて性能を確かめるとし[1]、衝撃試験の JIS は、機能の監視が要求される場合は試験中に機能させることを製品規格で規定するとしている[2]。書かなければ、試験後に外観と機能を確かめるだけになる。

試験前後の共振の比較

振動を加えた後に内部のねじが緩んだり、はんだにひびが入ったりすると、共振の振動数が変わることがある。正弦波振動の JIS は、製品規格で耐久試験前後の臨界振動数を比べるために耐久試験後の振動応答検査を追加することがあり、臨界振動数に変化があった場合の処置を製品規格で規定するとしている。前後の検査は同じ方法・同じ振幅で行う[1]。外観と機能に異常がなくても、共振の振動数が大きく動いていれば何かが変わっている。何 % 動いたら不合格とするか、あるいは調査するかを決めておく(当方の提案)。

包装した状態の試験は、別に決める

部品の振動試験と、出荷時の包装の試験は別物である。JIS Z 0232:2020(包装貨物-振動試験方法)は、包装貨物が輸送の過程で受ける垂直の振動に対する、内容品や包装の耐振性を評価する試験方法を定めている[7]。製品単体を JIS C 60068-2-6 や 2-64 で試験して合格していても、輸送中に箱の中で部品同士がこすれたり、端子が曲がったりする問題は、包装の試験で見ないと分からない。

仕入先から直接自社の工場に届く部品なら、包装の試験を求めるかどうかは、輸送の距離と手段、過去の輸送中の不具合で判断する。リチウム電池を含む部品のように、輸送のための試験が別の規則で決まっているものもある。その扱いはリチウム電池を含む部品の調達と輸送の記事で扱う。

報告書と、条件を変えるとき

正弦波振動の JIS は、試験報告書に少なくとも記載する事項として、試験の目的、試験規格と発行年(版)、供試品の取付け(取付具の識別、図面、写真)、測定系とセンサの位置、測定系の不確かさ(校正データと前回・次回の校正日)、制御方法、要求した厳しさと実施した厳しさ、試験中の観察事項と行った処置などを挙げている[1]。発注側は、「要求した厳しさ」と「実施した厳しさ」が両方書かれているかを必ず見る。試験装置の能力が足りず、要求した条件まで振れていない、ということが報告書から分かる。

振動の強さや試験時間は、見積の前提になる。試験機の占有時間が変わり、合格できる設計かどうかも変わるからである。量産に入ってから条件を引き上げて、以前の条件で通っていたロットを不合格扱いにすれば、受領の拒否ややり直しの要求として問題になりうる。引き上げが必要なら、適用を始める発注を決めるか、追加の費用と日程を先に取り決める。この線引きは受領拒否・返品・やり直しの記事にまとめた。防水が要る部品では、振動の後に防水性を確かめる順序にするかどうかも決める。保護等級の指定はIP 等級を買う部品に指定するときの記事、腐食試験との組合せは塩水噴霧試験を仕様に入れるときの記事で扱う。

よくある質問

Q. 仕入先から「JIS C 60068-2-6 合格」の成績書が出てきました。何を確かめればよいですか。
振動数範囲、振幅(変位と加速度)、掃引サイクル数または試験時間、試験軸、取付け方、試験中に動作させたか、合否判定基準の 7 つを確かめる。規格はこれらの多くを製品規格で決める必須の項目にしているので[1]、成績書に書かれていなければ、何に合格したのかが分からない。

Q. 衝撃試験は何回加えればよいですか。
規格は、方向ごとの回数を 3・100・500・1,000・5,000 回から選んでもよいとし、選び方は製品規格に委ねている[2]。輸送や落下のような一時的な衝撃か、運転中に繰り返し受ける衝撃かで決める。

Q. 自社に振動試験機がありません。仕入先の試験結果をどう信用すればよいですか。
報告書の測定系の校正データと不確かさ、取付具の写真、要求した厳しさと実施した厳しさの両方を出してもらう[1]。承認時だけでも第三者の試験所で同じ条件の試験を行い、仕入先の結果と比べておくと、量産での定期試験を仕入先に任せやすくなる。

Q. ハーネスや基板のような部品にも振動試験は要りますか。
取り付ける場所で振動を受けるなら要る。ハーネスは固定の間隔やクランプの位置で共振が変わるので、実際の固定方法で試験するかを決める。ハーネスの発注で決めることはワイヤーハーネスの発注で指定することの記事で扱う。

まとめ

振動・衝撃の JIS は試験の手順を決め、条件の多くを製品規格(発注側の仕様)に委ねている。正弦波振動は 27 項目中 13 項目、衝撃は 15 項目中 6 項目が、仕様で決めるべき必須の項目である[1][2]。条件は、部品が実際に受ける振動・衝撃から決め[4]、取付け方、試験中の動作、試験前後の共振の比較、合否判定、報告書の中身まで書く。包装した状態の輸送試験は別の規格で決める[7]。

出典・参考資料

  1. JIS C 60068-2-6:2010 環境試験方法-電気・電子-第 2-6 部:正弦波振動試験方法(試験記号:Fc)(JIS 検索)(日本産業標準調査会/2010 年 2 月改正)
  2. JIS C 60068-2-27:2011 環境試験方法-電気・電子-第 2-27 部:衝撃試験方法(試験記号:Ea)(JIS 検索)(日本産業標準調査会/2011 年 2 月改正)
  3. JIS C 60068-2-64:2023 環境試験方法-電気・電子-第 2-64 部:広帯域ランダム振動試験方法及び指針(試験記号:Fh)(JIS 検索)(日本産業標準調査会/2023 年 8 月改正)
  4. JIS C 60068-1:2013 環境試験方法-電気・電子-第 1 部:通則及び指針(JIS 検索)(日本産業標準調査会)
  5. JIS C 60068-2-47:2008 環境試験方法-電気・電子-第 2-47 部:動的試験での供試品の取付方法(JIS 検索)(日本産業標準調査会)
  6. ISO 16750-3:2023 Road vehicles — Environmental conditions and testing for electrical and electronic equipment — Part 3: Mechanical loads(国際標準化機構(ISO)/2023 年 7 月発行)
  7. JIS Z 0232:2020 包装貨物-振動試験方法(JIS 検索)(日本産業標準調査会/2020 年 2 月改正)

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