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受領拒否・返品・やり直しはどこまで許されるか

この記事のポイント(結論先出し)
納期に受け取らない、受け取った後で引き取らせる、受け取った後にやり直させる。この 3 つは取適法でそれぞれ別の禁止行為として整理されており、認められる場合が極めて狭く限定されている。鍵になるのは「中小受託事業者の責めに帰すべき理由」があるかどうかで、これは発注時に委託内容と検査基準を明示していたかで決まる。明示していなければ、不良でも納期遅れでも、受領を拒むことも返品することもできない。合意があっても違反になる点も、社内で共有しておきたい。
目次
3 つの行為は時点で分かれている
取適法(中小受託取引適正化法)は、委託事業者の禁止事項を 11 項目定めている[1]。そのうち納品前後のトラブルに関わるのが、受領拒否、返品、不当な給付内容の変更および不当なやり直しの 3 つである。同じ「引き取ってもらう」という結果に見えても、いつの時点の行為かで適用条文が変わる。
| 行為 | 条文 | 時点 | 認められる主な場合 |
|---|---|---|---|
| 受領拒否 | 第 5 条第 1 項第 1 号 | 納期に受け取らない | 委託内容と異なる/納期遅れで不要になった |
| 返品 | 第 5 条第 1 項第 4 号 | 受領後に引き取らせる | 委託内容と異なり、かつ期間内 |
| 給付内容の変更 | 第 5 条第 2 項第 3 号 | 受領前に内容を変えさせる | 相手方の要請/確認で相違が判明 |
| やり直し | 第 5 条第 2 項第 3 号 | 受領後に追加作業をさせる | 委託内容と異なり、原則として受領後 1 年以内 |
| 役務提供委託の打切り | 第 5 条第 2 項第 3 号 | 契約期間中の中止 | 受領拒否は適用されないが、費用を負担しない打切りは不当な変更 |
役務提供委託と特定運送委託には受領拒否と返品の規定が適用されない。ただし、要した費用を負担せずに契約を打ち切ることは不当な給付内容の変更に該当する、と整理されている[1]。「受領拒否がないから途中で止めてよい」とはならない。
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受領拒否——拒めるのは 2 つの場合だけ
受領を拒むとは、給付の全部または一部を納期に受け取らないことを指す。発注を取り消して納期に受け取らないこと、納期を延期して納期に受け取らないことも、原則として含まれる[1]。社内では「キャンセル」「納期リスケ」と呼ばれている操作が、そのまま受領拒否として扱われる。
拒めるのは、相手方の責めに帰すべき理由がある次の 2 つの場合に限られる[1]。
ひとつは、給付の内容が 4 条明示された委託内容と異なること等がある場合。ただし、次のいずれかに当たるときは、委託内容と異なることを理由に拒むことは認められない。委託内容が 4 条明示されていなかったり検査基準が明確でなかったりしたために相違が明らかでない場合、発注後に検査基準を恣意的に厳しくして従来の基準で合格とされたものを不合格にする場合、取引の過程で相手方が提案し確認を求めたところ発注側が了承したのに、その内容で作ったものを委託内容と異なるとする場合である[1]。
もうひとつは、4 条明示された納期までに給付が行われず、そのものが不要になった場合。こちらにも例外があり、納期が 4 条明示されていない等のため納期遅れであることが明らかでない場合、発注側が原材料等を支給する取引で支給が取り決めた引渡日より遅れた場合、納期が相手方の事情を考慮せず一方的に決定されたものである場合は、納期遅れを理由に拒むことができない[1]。2 つ目は支給材が絡む取引で起きやすい。支給そのものの決済や保管をめぐる規制は有償支給材と金型代で扱っている。
3 つ目は実務でよく問題になる。取適法テキストには、発注日の 1 週間後を納期としていたのに急に 2 日後の納入を申し入れ、相手方が従業員の都合を理由に断ったにもかかわらず一方的に納期を指示し、間に合わなかったことを理由に受領を拒否した事例が違反として挙げられている[1]。短納期を押し込んだ側は、その納期を根拠にできない。納期をどう決め、遅れが出たときにどう処理するかは納期遅延の管理で別に整理している。
違反とされた受領拒否の理由
取適法テキストが挙げる違反行為事例を並べると、拒否の理由がすべて発注側の事情であることがわかる[1]。生産計画の変更、設計変更、売行き不振、他社から先に納品されたため不要になった、繁忙期で受領態勢が整わない、取引先から納品延期を求められた、販売先が倒産した、といったものである。いずれも品物そのものには何の問題もない。
これらは 4 条明示との関係でも意味を持つ。何を、いつまでに、いくらで受け取ると書いて渡した以上、その約束を発注側の都合で反故にできない、というのが規定の骨格である。明示すべき項目は発注書の 4 条明示 12 項目で整理している。
納入指示カードを使う生産方式での注意
いわゆる必要な時に必要な量だけ納入させる生産方式について、取適法テキストは遵守すべき事項を挙げている[1]。継続的な量産品で生産工程が平準化されているものについて合意のうえ導入すること、4 条明示に当たっては十分なリードタイムを確保して一定期間内の具体的な納入日と納入日ごとの数量を明示すること、納入指示カードはその微調整のために交付するものとして運用すること、納入回数と 1 回当たりの数量を適正にして無理な納入日の指示を行わないこと、この方式の採用で輸送費等のコスト増が生じる場合は代金について事前によく協議して合意のうえ実施すること、の 5 点である。
納入指示カードによる変更で納入日が遅れたり数量が少なくなったりして、相手方に保管費用や運送費用の増加分が発生したときは、それを全額負担しなければ受領拒否または不当な給付内容の変更として問題になる[1]。
生産打切りのとき
製品仕様の変更等、発注側の一方的な都合による発注内容の変更や発注の取消し、生産の打切り等の場合には、相手方が既に完成させている製品を全て受領しなければ受領拒否となり、仕掛品の作成費用や部品代を含めて発生した費用を全額負担しなければ不当な給付内容の変更となる[1]。完成品だけ引き取って仕掛品を放置する処理は、片方だけ守っても違反になる。
返品——検査の方法で期間が変わる
返品は、受領した後に相手方へその物を引き取らせる行為である。取引先からのキャンセルや商品の入替え等の名目や数量の多寡を問わず、また返品することについて合意があったとしても、相手方の責めに帰すべき理由なく返品すれば違反になる[1]。
認められるのは、給付の内容が 4 条明示された委託内容と異なる等の場合であって、受領後速やかに引き取らせるとき、または、ロット単位の抜取検査を行っている継続的な取引で、受領後その代金の最初の支払時までに引き取らせるときに限られる。後者は、あらかじめ引取りの条件について合意がされ、その内容が明示され、かつその明示と発注時の 4 条明示との関連付けがされていることが前提になる[1]。
検査方法と返品できる期間
| 受入検査の方法 | 不適合の見つかり方 | 返品できる範囲 |
|---|---|---|
| 自社で全数検査 | 検査で不合格 | 速やかに返品(不良品のみ) |
| 自社で全数検査 | 直ちに発見できない不適合 | 受領後 6 か月以内(一般消費者向け保証がある場合は最長 1 年) |
| 自社で全数検査 | 直ちに発見できる不適合を見逃した | 返品不可 |
| 自社でロット単位の抜取検査 | ロット不合格 | 速やかに返品(不合格ロットのみ) |
| 取引先へ文書で検査を委任 | 検査に明らかなミス | 受領後 6 か月以内(不良品のみ) |
| 検査を省略/口頭で委任 | 問わない | 返品不可(一定の条件を満たす場合のみ不良品を返品可) |
この表からわかるのは、受入検査をしていない会社ほど返品できないという構造である。検査を省略した場合、あるいは自社で検査せず取引先への委任も文書で行っていない場合、受領後に不良品であることを理由に引き取らせれば違反になる[1]。検査を省いて工数を減らした分だけ、品質リスクを自社で抱える形になる。
期間の上限も明確である。直ちに発見することができない不適合であっても、受領後 6 か月、自社製品について一般消費者に 6 か月を超える保証期間を定めている場合はそれに応じて最長 1 年を経過すれば返品できない[1]。機械部品を受領して 10 か月後に不適合を理由に引き取らせた事例は、違反として挙げられている[1]。
合格ロットの中の不良品
抜取検査でロット合格としたものについて、後から使用上の重大な不適合が見つかった場合、その不適合が直ちに発見できないものであれば 6 か月以内(最長 1 年以内)の返品が認められる。直ちに発見できる不適合であれば返品は認められないが、ロット単位の抜取検査を行う継続的な取引で、発注前に直ちに発見できる不良品の返品を認めることが書面等で合意されており、その書面等と 4 条明示との関連付けがされている場合には、受領後、最初の代金の支払時までの返品が認められる[1]。
ただしこの取扱いには条件が付く。合格ロット内の不良品を返品することを前提に、代金の額について十分な協議が行われる必要があり、これに反して一方的に従来と同様の単価を設定すると買いたたきに該当するおそれがある[1]。返品の運用と単価の設定は切り離せない。
再び受け取る約束をした返品
いったん返品して後日また受け取る、という運用も認められない。将来再び受け取ることを約束して返品したとしても違反になる[1]。在庫調整のために月末だけ引き取ってもらう慣行があれば、その時点で該当する。
やり直し——費用を負担すれば問題にならない
受領後に給付をやり直させることは、給付内容の変更と同じ条文で禁じられている。ただし条文の作りが受領拒否や返品とは異なり、「中小受託事業者の利益を不当に害してはならない」という形になっている[1]。
これは、変更ややり直しのために必要な費用を発注側が負担するなどして利益を不当に害しないと認められる場合には、問題にならないという意味である[1]。逆に言えば、費用を負担しないやり直しが違反になる。それまでの作業が無駄になった、あるいは当初委託された内容にはない追加作業が必要になったのに、その費用を負担しないことが「利益を不当に害する」と整理されている[1]。
費用を負担せずにやり直させられる場合
発注側が費用を全く負担せずに変更ややり直しをさせることが認められるのは限られた場合である。受領前に相手方の要請により内容を変更する場合、受領前に内容を確認したところ 4 条明示された委託内容と異なること等があると合理的に判断され内容を変更させる場合、そして受領後に給付の内容が委託内容と異なること等があるためやり直しをさせる場合である[1]。
最後の場合にも歯止めがある。受領前に相手方から委託内容を明確にするよう求めがあったのに正当な理由なく仕様を明確にせず作業を続けさせ、その後で内容が違うとする場合、取引の過程で相手方が提案し確認を求めて発注側が了承したのに違うとする場合、検査基準を恣意的に厳しくして違うとする場合、そして直ちに発見できない不適合について受領後 1 年を超えた場合は、費用を負担しないやり直しは認められない[1]。
保証期間との関係も整理されている。顧客に対する保証期間が 1 年を超えない場合、費用を負担せずにやり直しを求められるのは受領後 1 年までである。取引先との契約で 3 年の保証期間を定めること自体は直ちに問題にならないが、契約の定めにかかわらず 1 年を超えて費用を全額負担することなくやり直しをさせれば違反になる[1]。最終顧客への保証期間が 5 年で、取引先との間でも事前に受領から 5 年の保証期間を定めているのであれば、その期間内に直ちに発見できない不適合が判明した場合のやり直しは不当なやり直しに該当しない[1]。
数量を増やすのは変更ではない
発注後に当初の発注数量を増加させることは、給付内容の変更ではなく増量分についての新たな発注と認められる。したがって改めて 4 条明示が必要になる[1]。追加分を電話や口頭で流している運用は、明示義務違反になる。見積依頼と発注の書式を揃えておくと、追加分だけ手順が抜ける事故を防ぎやすい。
減額との関係
相手方に責任があるとして代金を減額できる場合も、公正取引委員会が整理している。受領拒否の局面では、責めに帰すべき理由があるとして受領を拒んだ場合のほか、その理由がある旨をあらかじめ伝えたうえで受領し、委託内容に合致させるために自ら手直しをしたときの手直し費用など客観的に相当と認められる額、あるいは瑕疵の存在や納期遅れによる商品価値の低下が明らかな場合の相当額を減ずるときである[3]。返品の局面でも同様の整理が置かれている[3]。
ここでも「あらかじめ伝えたうえで受領した」という手順が要件になっている。黙って受け取り、後から差し引く処理は認められない。そして、責めに帰すべき理由がないのに代金を減じた場合は、減じた額そのものが遅延利息の対象になる。起算日の考え方は支払期日と遅延利息で扱っている。
令和 7 年度の運用状況から読めること
令和 8 年 6 月 10 日に公表された運用状況では、令和 7 年度の勧告が 39 件、指導が 8,261 件と報告されている。違反類型のうち返品は 6 件で、これは代金の減額と同数であり、不当な給付内容の変更等の 1 件を上回っている[4]。原状回復も行われており、177 名の委託事業者が 5,165 名の中小受託事業者に総額 25 億 5,698 万円相当を返還した[4]。
返品が減額と並ぶ件数で勧告に至っている点は、注意して読むべきである。返品は、社内では品質管理の一環として処理されるため、法令の問題として認識されにくい。検査で落ちたから返す、という判断が現場で完結してしまい、期間や検査方法の条件が確認されないまま運用が定着する。
発注側が整えるべきこと
検査基準を発注時点で明示する。受領拒否も返品も、認められる条件の入口が「4 条明示された委託内容と異なること」である。基準が書かれていなければ、違いを主張できない。
検査の方法を決めて記録する。全数検査か抜取検査か、自社で行うか文書で委任するか。この選択が返品できる期間を決める。
抜取検査の取引は、返品条件を書面にして発注書と紐づける。合意の存在だけでなく、4 条明示との関連付けが要件になっている。
納期変更とキャンセルの承認経路を分ける。営業や生産管理の判断で納期が動く運用だと、受領拒否に当たる操作が記録されないまま流れる。
やり直しを指示したら費用の扱いを同時に決める。指示だけ先に出て費用の話が後回しになると、その時点で不当なやり直しの構図になる。
よくある質問
取引先の同意があれば返品してよいですか
認められない。合意があっても、相手方の責めに帰すべき理由なく返品すれば違反になる[1]。
正式な発注をしていないものを作られた場合は
発注していないものについて受領を拒むことは問題ない。ただし正式な発注であるにもかかわらず委託内容を 4 条明示せず、口頭発注で一定数量を作らせて受領を拒むことは、明示義務違反にとどまらず受領拒否に該当する[1]。
受入検査でいったん合格にしたものは、いつまで返品できますか
直ちに発見できる不適合であれば返品できない。直ちに発見できない不適合であれば、受領後 6 か月以内、一般消費者に 6 か月を超える保証期間を定めている場合はその期間に合わせて最長 1 年以内であれば返品できる[1]。
この規制は自社に適用されますか
2026 年 1 月から、適用の判定に使う基準が 2 本立てになった。従来の資本金による区分に、製造委託等は従業員 300 人、情報成果物作成委託等は従業員 100 人という区分が加わり、規制および保護の対象が広がっている[2][5]。あわせて、発荷主が運送事業者に物品の運送を委託する取引が特定運送委託として対象に加わった[2]。
まとめ
受領拒否も返品もやり直しも、認められる入口は同じところにある。発注時に委託内容と検査基準を明示し、その明示と実際の検査を紐づけていたかどうかである。明示がなければ、品物に問題があっても拒めず、返せず、費用を負担せずにやり直させることもできない。
逆に言えば、発注書と検査基準を整えることは、品質トラブルが起きたときに自社が取り得る選択肢を確保する作業でもある。合意で回避できる規制ではない以上、書面の側を先に整えておくほうが早い。
出典・参考資料
- 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
- 2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!(取適法リーフレット)(公正取引委員会)
- 2026年1月施行! 下請法は取適法へ 改正ポイント説明会 公正取引委員会説明資料(公正取引委員会・令和 7 年 8 月 21 日 東京開催)
- 令和 7 年度における取適法の運用状況及び中小事業者等の取引適正化に向けた取組(公正取引委員会/令和 8 年 6 月 10 日)
- 取適法・振興法(公正取引委員会)
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