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投稿日:2026年8月28日 | 更新日:2026年8月31日

下請代金の支払期日は受領日から 60 日——起算日と遅延利息の実務

この記事のポイント(結論先出し)

支払期日は、検査をするかどうかを問わず、品物を受け取った日を 1 日目として 60 日以内かつできる限り短い期間で定めなければならない。検収に何日かかろうと、請求書がいつ届こうと、この期間は延びない。期日までに払わなければ、年率 14.6 パーセントの遅延利息が発生する。さらに 2026 年 1 月 1 日施行の取適法では手形払そのものが禁止され、電子記録債権やファクタリングも、期日までに満額の現金と引き換えられないものは使えなくなった。振込手数料を代金から差し引くことは、合意の有無を問わず減額として違反になる。

60 日は「検査が終わってから」ではない

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取適法(中小受託取引適正化法)第 3 条は、支払期日を定める義務を発注側に課している。起算点は受領日、つまり品物や情報成果物を受け取った日で、その日を算入して 60 日以内に、かつできる限り短い期間内で定めなければならない[1]。条文には「検査をするかどうかを問わず」という一句が明記されており、社内の検収完了日を起点にする発想はここで否定されている[1]

受領日という言葉は、製造委託や修理委託では「検査の有無にかかわらず目的物を受け取り、自己の占有下に置くこと」を指す。発注側の検査員が取引先の工場へ出張して検査を行う場合は、検査員が出張して検査を開始した時点で受領となる[1]。情報成果物作成委託では、記録媒体を受け取ること、媒体がなければ電子メールで受信して自社のハードディスクに記録されることなどが受領に当たる[1]

納品書や受領書といった帳票をどう回すかは、この起算日を証明できるかどうかに直結する。帳票の役割分担は納品書・受領書・検収書の違いで整理しているが、支払期日の設計という観点では、検収書の日付ではなく受領した日を押さえられているかが要になる。

期日を定めなかったとき、60 日を超えて定めたとき

第 3 条第 2 項は、期日の定め方が不適切だった場合に、法律の側から期日をみなす仕組みを置いている[1]

期日の定め方 取適法上の支払期日 支払遅延になる時点
受領日から 60 日以内に定めた 定めた支払期日 その期日までに全額を払わないとき
受領日から 60 日を超えて定めた 受領日から 60 日を経過した日の前日 受領日から 60 日目までに払わないとき
期日を定めなかった 受領日 受領したその日に払わないとき

3 行目は、実務では想像しにくいかもしれないが、実際に起きる。取適法テキストは、納入時点では受領とせず一般消費者へ販売した時点を受領日とみなす「消化仕入」の取扱いを取り上げ、この場合は特定されない日を基準にしているため支払期日を定めたことにならず、受領日が支払期日とみなされる、つまり納入されたその日のうちに払う必要があると説明している[1]

期日は「具体的な日が特定できる」書き方で

支払期日は具体的な日が特定できるよう定める必要がある。取適法テキストの整理では、「○月○日まで」や「納品後○日以内」は支払の期限を示すだけで具体的な日が特定できないため認められない。一方、「○月○日」や「毎月末日納品締切、翌月○日支払」は特定可能であり認められる[1]。定めた期日より前に払うことは差し支えない[1]

発注書の記載事項としてどこまで書くかは発注書の 4 条明示 12 項目にまとめている。支払期日は明示すべき事項のひとつであり、書き方が曖昧なだけで義務違反になり得る。

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月末締め翌月末払いは「2 か月」で運用される

継続的な取引では月単位の締切制度が一般的だが、大の月をまたぐと 61 日目や 62 日目の支払になることがある。この点について取適法テキストは、「受領後 60 日以内」の規定を「受領後 2 か月以内」として運用しており、31 日の月も 30 日の月も同じく 1 か月として扱うため、支払遅延として問題としないと明記している[1]

具体例として、6 月 1 日に受領した物品の代金を「毎月末日納品締切、翌月末日支払」の制度のもとで 7 月 31 日、すなわち 61 日目に支払った場合が挙げられ、これは期日が 60 日を超えて定められたとはしない、とされている[1]

ただしこれは締切制度そのものの話であって、検収締切制度を採る場合には別の注意が要る。検査に相当日数を要することがあっても、検査の有無を問わず受領日から 60 日以内かつできる限り短い期間で定めた期日に払う必要があるため、検査に要する期間を見込んだ支払制度にしておく必要がある[1]。月末検収締切・翌々月 25 日支払といった制度は、この点で受領から 60 日を超えてしまう。

支払日が金融機関の休業日に当たるとき

支払日が土曜日や日曜日に当たるなど、順延する期間が 2 日以内である場合であって、翌営業日に順延することについてあらかじめ書面等で合意しているときは、結果として受領日から 2 か月を超えて支払われても問題としないとされている[1]。合意がなければ順延そのものが支払遅延になる。実際、書面等の合意がないまま翌営業日に払っていて一部の代金の支払が遅延していた事例が挙げられている[1]

2026 年 1 月からの大きな変更——手形払の禁止

取適法では、代金の支払について「手形を交付すること」自体が、期日までに支払わないことに該当する行為として整理された[1]。金銭および手形以外の支払手段についても、支払期日までに代金相当額の金銭と引き換えることが困難なものは使えない[2]

改正の背景として公正取引委員会が示した図解では、受領日 4 月 1 日、支払日 5 月 1 日、手形サイト 60 日で満期日 6 月 30 日という取引を例に、支払日までの 60 日に手形サイト 60 日が加わって現金を受け取るまで 120 日かかっていた状態が、改正後は 60 日に短縮されると説明されている[3]

電子記録債権と一括決済方式の扱い

一括決済方式や電子記録債権は、使えなくなったわけではない。判断の分かれ目は満期日や決済日が支払期日より前か後かにある[1][3]

支払手段 取適法での扱い
手形の交付 支払わないことに該当し、認められない
満期日・決済日が支払期日より後の電子記録債権・一括決済方式 期日に現金を得るため取引先が割引等を要するものは認められない。割引料を発注側が負担しても通常は違反となる
満期日・決済日が支払期日以前の電子記録債権・一括決済方式 使用は認められる。ただし満期日までに支払不能等が生じたら、期日までに別途代金を払う必要がある
決済に伴う受取手数料を取引先が負担するもの 合意の有無にかかわらず支払遅延となる
銀行振込の手数料を代金から差し引く 合意の有無にかかわらず、代金の減額として違反となる

最後の行は運用の変更点である。従来は書面での合意があれば実費の範囲で差し引くことが認められていたが、振込手数料は発注側が負担することが合理的な商慣習であるという整理に立って、合意があっても違反とするよう見直された[3]。取適法テキストの想定問答でも、取引先の了解を得たうえで振込手数料を差し引くことについて、合意の有無にかかわらず問題となると答えている[1]

遅延利息は年率 14.6 パーセント

支払期日までに払わなかったときは、取引先に対し、受領日から起算して 60 日を経過した日から実際に支払をする日までの期間について、日数に応じて未払金額に年率 14.6 パーセントを乗じた額を遅延利息として支払う義務がある[1]。率は公正取引委員会規則で定められている[1]。リーフレットでも、義務項目の 4 つ目として遅延利息の支払義務と年率 14.6 パーセントが明記されている[2]

注意すべきは起算点である。定めた支払期日ではなく、受領日から 60 日を経過した日から数える。たとえば受領日から 30 日目を支払期日と定めていて、実際の支払が 90 日目になった場合、遅延利息の対象になるのは 61 日目から 90 日目までの期間である。

減額を行った場合にも遅延利息が発生する。取引先の責めに帰すべき理由がないのに代金の額を減じたときは、減じた日と、受領日から起算して 60 日を経過した日のいずれか遅い日から、減じた額を払う日までの期間について、同じ率で計算した遅延利息を支払う義務がある[1]。なお、いったん決めた額を後から減らす減額と、発注の時点で著しく低い額を定める行為は別の禁止行為として整理されている。後者の判断の物差しは買いたたきの判断基準にまとめた。

遅延利息を払えば支払を遅らせてよい、という趣旨ではない点も明記されている。支払遅延も減額も違反行為であり、利息の支払はその埋め合わせにならない[1]

支払遅延の理由にならない事情

取適法テキストの想定問答と違反行為事例には、実務で持ち出されがちな事情が並ぶ。いずれも理由にならないとされている[1]

請求書の提出が遅れた。請求書の提出の有無にかかわらず、受領後 60 日以内に定めた期日までに払う必要がある。社内手続上請求書が必要なら、取引先が請求額を集計し通知するための十分な期間を確保し、遅れる場合は速やかに提出するよう督促することが求められる[1]。改正ポイント説明会の資料でも、請求書の提出が遅かったからというのは支払遅延を正当化する理由にならないと明示されている[3]。請求を待たずに発注側から支払額を通知する運用に切り替える場合、書式の考え方は支払通知書の記事で整理している。

伝票処理や事務処理が遅れた。締切日間近に納品されたものの処理が締切後になり、翌月の締切対象に回されて支払が翌々月になった事例が違反として挙げられている[1]

検査に時間がかかった。納入されたプログラムの検査に 3 か月を要して受領後 60 日を超えた事例が違反とされている[1]

取引先から頼まれた。当月納入分を翌月納入分として扱ってほしいと依頼され、合意があったとしても、受領日から 60 日以内に定めた期日までに払わなければならない[1]

商社を経由している。商社が製品仕様や取引先の選定、代金の額の決定に全く関与せず事務手続の代行だけを行っている場合、その商社は委託事業者にも中小受託事業者にもならない。期日までに実際の取引先へ代金が届いていなければ、発注者の支払遅延になる[1]

納入されたが自社では使っていない。常に一定量を納入させて倉庫に保管し、使用した分だけを支払対象とする使用高払方式で、納入済み分の一部に支払遅延が生じていた事例がある[1]

納期前納品とやり直しがあったときの起算日

起算日が動く場合もある。取引先の要請に応じて納期より前に納品を受けた物品を仮受領として受け取った場合は、その時点ではなく納期を受領日としてよい。納期より前に検査を実施した場合は、検査を終了した時点を受領日としてもよいが、検査中に納期が到来したときは納期が受領日になる[1]

支払期日が来る前に委託内容と異なることが見つかって返品する場合は、当初の受領日から 60 日以内に払う必要はなく、再納品されたときの受領日が起算日になる[1]。取引先の責めに帰すべき理由があり、支払前にやり直しをさせる場合も、やり直し後の物品を受領した日が起算日となる[1]。ただし、返品ややり直しが認められる場面はもともと狭い。起算日を動かす前に、その返品ややり直しがそもそも認められる範囲に入っているかを確かめておきたい。

令和 7 年度の運用状況

公正取引委員会が令和 8 年 6 月 10 日に公表した運用状況によると、令和 7 年度の勧告は 39 件、指導は 8,261 件だった。原状回復として、177 名の委託事業者が 5,165 名の中小受託事業者に対し、総額 25 億 5,698 万円相当を返還している[4]。自発的な申出に基づく原状回復も 49 件処理され、1,234 名に対して総額 12 億 1,019 万円相当が返還された[4]

指導が勧告の 200 倍以上あるという構成は、支払サイトの設計のように制度として一律に発生する不備が拾われていることを示している。個別の悪意ではなく、締切と支払日の組み合わせが 60 日を超えているだけ、という形で該当してしまう。

支払サイトの点検手順

受領日を記録できているか。納品書の控えでも受入検査記録でもよいが、品物を受け取った日そのものが品目単位で引ける状態にあるかを確認する。

締切と支払日の組み合わせを日数に直す。締切の初日に受領したものが何日目に支払われるかを計算する。月末締め翌月末払いなら 2 か月以内の運用に収まるが、翌々月払いは収まらない。

検収基準になっていないか。支払対象を検収完了で判定している運用は、検査が長引いた分だけ支払が後ろへ動く。受領基準に切り替えるか、検査期間を見込んだ制度にする。

支払手段を洗い出す。手形が残っていないか、電子記録債権の満期日が支払期日より後になっていないか、決済手数料を取引先が負担していないかを確認する。

振込手数料の控除をやめる。差し引きの設定がマスタに残っていると、合意書があっても違反になる。

よくある質問

取引先と合意すれば 90 日払いにできますか

できない。60 日を超えて定めた場合は、受領日から 60 日を経過した日の前日が支払期日とみなされ、それ自体が支払期日を定める義務の違反になる[1]

受発注システムを入れれば管理できますか

システムは受領日と支払期日を紐づけて記録するのに役立つが、支払サイトの設計そのものは制度側の判断である。要件の整理は受発注システムの選び方にまとめている。

自社は資本金が小さいので対象外ですか

2026 年 1 月から資本金基準に加えて従業員基準が追加された。製造委託等では 300 人、それ以外の情報成果物作成委託等では 100 人の区分が新設されており、資本金だけで判断すると対象を取りこぼす[2][5]

まとめ

支払期日をめぐる規制は、金額ではなく日数と手段の話である。受領日を 1 日目として 60 日以内、検査の有無は関係なく、期日を過ぎれば年率 14.6 パーセントの遅延利息が付く。2026 年 1 月からは手形が使えなくなり、電子記録債権も満期日の位置で可否が分かれ、振込手数料の控除は合意があっても違反になる。

点検の起点は、受領日が記録として引けるかどうかにある。ここが押さえられていれば、締切と支払日の組み合わせが法定の期間に収まっているかは計算するだけで確かめられる。

出典・参考資料

  1. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  2. 2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!(取適法リーフレット)(公正取引委員会)
  3. 2026年1月施行! 下請法は取適法へ 改正ポイント説明会 公正取引委員会説明資料(公正取引委員会・令和 7 年 8 月 21 日 東京開催)
  4. 令和 7 年度における取適法の運用状況及び中小事業者等の取引適正化に向けた取組(公正取引委員会/令和 8 年 6 月 10 日)
  5. 取適法・振興法(公正取引委員会)

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