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支払通知書とは——請求書なしで支払を確定させる仕組み

この記事のポイント(結論先出し)
支払通知書は、買う側が「今月はこの内容でこの額を支払う」と作って相手に渡す書類である。消費税法は、買う側が作る仕入明細書等について課税仕入れの相手方の確認を受けたものに限り、仕入税額控除のための請求書等に含めている。つまり相手からの請求書が届かなくても、支払通知書 1 枚で控除の要件を満たせる。ただし記載事項に相手方の登録番号が要ること、確認の取り方を決めておくこと、そして控除欄で振込手数料を差し引くと取適法の減額に当たりうることの 3 点は外せない。
目次
支払通知書とは何か
支払通知書は、買う側が作って売る側に渡す書類である。締め日までに受け入れた分を集計し、支払う金額と支払日を伝える。呼び方は会社によって支払明細書、買掛金明細、仕入計算書などさまざまだが、役割は同じである。
請求書と比べると、書類の向きが逆になる。
| 項目 | 請求書 | 支払通知書 |
|---|---|---|
| 作る人 | 売る側 | 買う側 |
| 数量・単価の出どころ | 売る側の出荷記録 | 買う側の受入記録 |
| 登録番号を書く相手 | 作った本人のもの | 課税仕入れの相手方のもの[1] |
| 控除の要件になる条件 | 交付を受けて保存すること | 相手方の確認を受けること[3] |
| 金額が食い違ったとき | 受け取ってから照合する | 渡す前に自社で気づける |
いちばん下の行が、この仕組みを使う動機である。請求書を待つ形だと、届いてから受入記録と突き合わせ、違えば差し替えを依頼することになる。買う側が作って出せば、その往復が減る。
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支払通知書が「請求書等」になる根拠
買う側が作った書類で仕入税額控除ができるのは、感覚の話ではなく条文に書いてある。
消費税法第 30 条第 7 項は、帳簿および請求書等を保存しない場合には仕入税額控除を適用しないと定めている[3]。その「請求書等」の中身を列挙した同条第 9 項第 3 号に、次のものが挙げられている[3]。
事業者がその行つた課税仕入れにつき作成する仕入明細書、仕入計算書その他これらに類する書類で課税仕入れの相手方の氏名又は名称その他の政令で定める事項が記載されているもの(当該書類に記載されている事項につき、当該課税仕入れの相手方の確認を受けたものに限る。)
読み取るべき点は 2 つある。1 つ目は「その他これらに類する書類」。表題が「支払通知書」でも、中身が仕入明細書であればここに入る。2 つ目は括弧の中の「相手方の確認を受けたものに限る」。これが唯一にして最大の条件である。
国税庁も、仕入税額控除の適用を受けるための請求書等に該当する仕入明細書等は、相手方の確認を受けたものに限られるとしている[1]。
書くべき 6 項目
適格請求書等保存方式のもとで、仕入側が作成した書類で相手方の確認を受けたものが請求書等に該当するには、次の事項が記載されている必要がある[2]。
| 記載事項 | 実務での注意 |
|---|---|
| ① 書類の作成者の氏名または名称[2] | 買う側の自社名 |
| ② 課税仕入れの相手方の氏名または名称および登録番号[2] | 自社の番号ではなく仕入先の番号。ここを取り違える事故が多い |
| ③ 課税仕入れを行った年月日[2] | 受入日。締め期間の記載と併記する形が多い |
| ④ 課税仕入れに係る資産または役務の内容[2] | 軽減対象のものは、その旨も書く |
| ⑤ 税率ごとに合計した課税仕入れに係る支払対価の額および適用税率[2] | 税率ごとの小計欄が要る |
| ⑥ 税率ごとに区分した消費税額等[2] | 端数処理の方法を決めておく |
② が実務でいちばん間違えやすい。自社の登録番号を印字したひな形をそのまま使い回すと、要件を満たさない。仕入先マスタに登録番号を持ち、そこから差し込む形にしておく。番号の確かめ方はインボイス登録番号を一括で確認する方法で扱っている。
相手方の確認をどう取るか
ここが運用設計の中心になる。国税庁は、相手方の確認を受ける方法として次の 3 つを例示している[1]。
方法 1:端末に出力して確認の通信を受ける
仕入明細書等の記載内容を、通信回線等を通じて相手方の端末機に出力し、確認の通信を受けたうえで、自己の端末機から出力したものである[1]。取引先ポータルを持っている会社の形がこれに当たる。
方法 2:データを提供して確認の通知を受ける
記載すべき事項に係る電磁的記録について、インターネットや電子メールなどを通じて課税仕入れの相手方へ提供し、相手方から確認の通知等を受けたものである[1]。仕組みを作らずに始めるならこれが早い。
方法 3:一定期間内に連絡がなければ確認があったものとする
写しを相手方に交付し、または記載内容に係る電磁的記録を相手方に提供した後、一定期間内に誤りのある旨の連絡がない場合には記載内容のとおり確認があったものとする基本契約等を締結した場合における、その一定期間を経たものである[1]。
基本契約を結んでいない場合でも、次のようにすれば確認を受けたものとなるとされている[1]。
ひとつ目は、「送付後一定期間内に誤りのある旨の連絡がない場合には記載内容のとおり確認があったものとする」旨の通知文書等を添付して相手方に送付または提供し、了承を得る方法である。
ふたつ目は、支払通知書そのものに同じ趣旨の文言を記載または記録し、相手方の了承を得る方法である。国税庁の記載例でも、支払通知書の宛名の下に「送付後一定期間内に連絡がない場合、確認があったものといたします。」という一文が入っている[2]。
国税庁は、記載事項が相手方に示され、その内容が確認されている実態にあることが明らかであれば、相手方の確認を受けたものとなるとしている[1]。
「一定期間」を何日にするか
国税庁は、具体的な日数等を表示することまで求めるものではないとしたうえで、業務の内容や取引先との関係を踏まえて、認識を合わせておくことが求められるとしている[1]。
実務では、締めから支払日までの日数が上限になる。支払日を過ぎてから誤りの連絡が来ても、支払をやり直すことになるからである。締め後 5 営業日、支払日の 10 日前まで、といった形で、社内の支払処理が動き出す前に置く。そして相手にその日数を伝える。伝えていない期間は「認識を合わせた」とは言いにくい。
返品があるときは適格返還請求書を兼ねられる
製造業では、不適合品の返品や値引きが月中に発生する。売る側には、課税事業者に返品や値引き等の売上げに係る対価の返還等を行う場合、適格返還請求書の交付義務がある[2]。
ところが支払通知書には、たいてい返品分がマイナスで入っている。国税庁は、相手方が仕入税額控除のために作成・保存している支払通知書に、返品に関する適格返還請求書として必要な事項が記載されていれば、その内容について確認されているので、改めて適格返還請求書を交付しなくても差し支えないとしている[2]。
さらに、事業者ごとに継続して、課税仕入れに係る支払対価の額から売上げに係る対価の返還等の金額を控除した金額と、その金額に基づき計算した消費税額等を税率ごとに支払通知書に記載することで、仕入明細書に記載すべき事項と適格返還請求書に記載すべき事項の両方を満たすこともできるとされている[2]。
ただし、継続して同じ書き方をすることが条件になっている点は押さえておく。月によって「返品を別行で出す」「差し引いた金額だけ書く」を切り替えるのは避ける。
なお、売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が 1 万円未満である場合には、適格返還請求書の交付義務が免除される[2]。少額の値引きまで様式を作り込む必要はない。
控除欄が取適法の論点になる
支払通知書には「控除」の欄がある。ここで何を引くかが、税務とは別の問題になる。
2026 年 1 月 1 日に施行された取適法は、あらかじめ定めた代金を減額することを禁止行為として挙げている[5]。そして違反行為事例として、振込手数料を負担させることによる減額が明示されている。代金の額から中小受託事業者の銀行口座に振り込む際の手数料を差し引くことにより代金の額を減じた、という形である[5]。
もう一つ、1 円以上の切捨てによる減額も事例に挙がっている。支払時に 100 円未満の端数を切り捨てることにより代金の額を減じた、というものである[5]。
どちらも、支払通知書の様式に固定欄として組み込まれていることがある。「昔からこの欄がある」という理由で残っている控除は、一度洗い出す価値がある。
支払期日そのものにも定めがある。取適法第 3 条は、委託事業者が中小受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、給付を受領した日から起算して 60 日の期間内において、かつできる限り短い期間内において支払期日を定めなければならないとしている[5]。
さらに第 6 条は、支払期日までに支払わなかったときは、受領した日から起算して 60 日を経過した日から支払をする日までの期間について、日数に応じ未払金額に年率 14.6% を乗じた額を遅延利息として支払う義務があるとしている[5]。減額したときにも同様の遅延利息の義務がある[5]。支払サイトと受領日の関係は納品書・受領書・検収書の違い、起算日と遅延利息の数え方は支払期日 60 日と遅延利息で扱っている。
保存と電子化
支払通知書を仕入明細書として使う場合、それは保存すべき請求書等になる[4]。年数は 7 年である。ただし数え始めるのは受け取った日ではなく、受領した日が属する課税期間の末日の翌日から 2 か月を経過した日になる。そして後半の 2 年ぶん、すなわち 6 年目と 7 年目については、帳簿か請求書等のいずれか一方を残せばよいとされている[4]。
買う側は自社が作った控えを、売る側は受け取ったものを保存する。電子メールや Web で受け渡ししたなら、そのデータは電子取引データとして保存の対象になる[6]。受け取った場合だけでなく、送った場合も保存が必要である[6]。買う側が送信元になるので、この点は見落としやすい。
何年残すかは、この 7 年だけを見て決められない。法人税法上の年数と起算日は別に定まっており、欠損金が生じた事業年度は 10 年になる。根拠ごとの違いは注文書・見積書は何年保存するか|法人税法・会社法・電帳法の違いで整理した。紙で受け取った支払通知書を読み取ってデータで残したい場合は、紙の注文書をスキャンして捨てられるか|スキャナ保存の要件の要件を満たす必要がある。
導入するとき決めること
どの取引先に出すか
全社一律にする必要はない。品目が定型で、受入記録が正確に取れている取引先から始める。単価が都度変わる取引は、請求書を受け取る形のほうが照合が確実なことがある。
相手の同意をどう取るか
方法 3 を使うなら、基本契約に条項を入れるか、通知文書を添えるか、書面に文言を入れるかを決める[1]。相手が免税事業者から課税事業者に変わるなど、状況が変わる可能性も見込んでおく。
登録番号をどこで持つか
仕入先マスタに持ち、支払通知書へ差し込む。手入力で毎月転記する運用にすると、必ずどこかで間違える[2]。
控除欄を洗い出す
振込手数料、端数切捨て、協力金の類。取適法の対象取引で引いているものがないかを確認する[5]。
誤りの連絡を誰が受けるか
相手から「金額が違う」と言われたときの受け口を決めておく。担当者の個人メールだけだと、期限内に連絡があったのに気づかない、という形になりうる。
よくある質問
相手が免税事業者でも支払通知書を使えますか
仕入明細書等として控除の要件を満たすには、相手方の登録番号の記載が必要である[2]。登録がない相手には番号がない。書類自体を出すことは妨げられないが、控除の扱いは経過措置の話になる。インボイス経過措置|2026 年 10 月から 70% にで整理している。
請求書も届いてしまいます
両方あっても差し支えはないが、どちらを保存の正本にするかを決めておく。金額が食い違ったまま両方が残ると、あとから見て判断できない。支払通知書を使うと決めた取引先には、請求書の送付を止めてもらうところまで合意する。
確認の返事が返ってこない取引先があります
方法 3 を採っているなら、一定期間を経たものが確認を受けたものになる[1]。ただし、その方法を採ることについて相手の了承を得ていることが前提である[1]。了承を取らないまま「返事がないから確認済み」とするのは、実態が伴わない。
締め日をまたぐ納入分はどう扱いますか
受入日で判断する。締め日の翌日に受け入れたものは翌月分になる。ただし支払期日は給付を受領した日から起算するので[5]、締めのタイミングによっては 60 日に近づく。月初に受け入れた分が翌月末払いになる設計は、期間の余裕が小さい。
紙で郵送してもよいですか
差し支えない。方法 3 は写しを相手方に交付する形も含んでいる[1]。ただし郵送だと、誤りの連絡までの期間に配送日数が食い込む。一定期間を決めるときに、その日数を見込む。
支払通知書に印紙は要りますか
支払通知書そのものは、支払う内容を通知する書類である。課税文書に当たるかどうかは、その文書に何が書かれているかで判断される。相手の押印欄を設けるなど、契約の成立を証する体裁にすると判断が変わりうるので、様式を作るときに確認しておきたい。判断の分かれ目は注文書に収入印紙は必要か|課税文書になる場合とならない場合で整理している。
まとめ
支払通知書は、単なる連絡票ではない。記載事項をそろえ、相手方の確認を受ければ、仕入税額控除のための請求書等になる[3]。請求書が届くのを待つ運用から、受入記録を正として支払を確定させる運用に変えられる。
成立させる条件は 3 つに集約される。相手方の登録番号を含む 6 項目を書くこと[2]、確認の取り方を相手と合意しておくこと[1]、そして控除欄で相手に負担を寄せないこと[5]である。
3 つ目は税務の話ではないが、実害はここがいちばん大きい。振込手数料の控除も端数の切捨ても、取適法の違反行為事例に具体名で挙がっている[5]。様式に固定欄として残っていないかを、導入の前に確かめておきたい。
出典・参考資料
- 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関する Q&A 問 86(仕入明細書の相手方への確認)(国税庁)
- 同 Q&A 問 90(仕入明細書において対価の返還等について記載した場合)(国税庁)
- 消費税法 第 30 条(仕入れに係る消費税額の控除)(e-Gov 法令検索)
- No.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存(国税庁)
- 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
- 電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください【令和 6 年 1 月以降用】(国税庁/令和 5 年 7 月)
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