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リチウムイオン・NiMH電池の違い|現場選定の判断軸

リチウムイオン電池(Li-ion)とニッケル水素電池(NiMH)は、エネルギー密度・安全性・法規制コストのどれをとっても判断軸がまったく異なる二次電池です。重量エネルギー密度は Li-ion が 150〜260 Wh/kg、NiMH が 60〜120 Wh/kg と約 2 倍以上の差があり[1]、一方で NiMH は熱暴走リスクが低く、保護回路(BMS)や PSE 認証にかかる追加コストを必要としません。本稿では、製造業の調達購買現場で「どちらをいつ選ぶべきか」を、公的一次資料に基づいた数値と現場知見で整理します。
目次
1. Li-ion と NiMH──そもそも何が違うのか
二次電池(充電可能な電池)の中で調達頻度が高い代表格がリチウムイオン電池とニッケル水素電池です。ただし「どちらが優れているか」という問いの立て方は現場では機能しません。なぜなら、両者は競合ではなく、得意な物理領域が棲み分けられた別の製品カテゴリだからです。
NEDO の公式資料によれば、
リチウムイオン二次電池は現存する電池の中で最も高い作動電圧を有し、鉛蓄電池やニッケル水素電池に比べて高い出力密度とエネルギー密度を持つことが特長であり、鉛蓄電池→ニカド電池→ニッケル水素電池→リチウムイオン二次電池と次第に出力密度・電池容量の大きな電池が開発されてきた
歴史的経緯があります[2]。しかし「大容量=正解」ではなく、用途に求められるスペックがどこにあるかで最適解は変わります。
経済産業省(関西)の蓄電池産業戦略資料(2025年3月)は、
車載用電池が満たすべきニーズは高エネルギー密度から高出力・低コスト・資源制約の低減等まで多岐にわたり、現状すべての条件を満たす蓄電池は存在しないため、それぞれの蓄電池のメリット・デメリットを把握した上で搭載車両のニーズ・要求性能から最適な電池を選択する「バッテリーミックス」の考え方が重要
だと明示しています[3]。これは自動車用途に限らず、産業機器・バックアップ電源・携行機器の調達にも等しく当てはまる判断軸です。
調達現場で押さえるポイント
累計 200 社以上のサプライヤー評価を手がけてきた経験からすると、電池の種類選定を「性能スペックのみ」で行うバイヤーは調達コストが高くなる傾向があります。セル単体の性能は Li-ion が上でも、BMS・認証費・輸送制限コストを加えると総所有コストが逆転するケースが製品によっては珍しくありません。電池選定は「スペック」「コスト全体」「調達リスク」の 3 軸同時評価が出発点です。
2. 構造と化学反応──調達担当者が知っておくべき最低限
リチウムイオン電池の構造
Li-ion はリチウムイオンが正極・負極間を移動することで充放電を行います。代表的な構成は以下の通りです。
- 正極:リチウムコバルト酸化物(LCO)、三元系(NCM/NCA)、リン酸鉄リチウム(LFP)など。正極材の選択がエネルギー密度・安全性・コストのすべてに影響する
- 負極:グラファイト系(主流)、シリコン系(高容量・次世代)
- 電解質:有機溶媒中にリチウム塩(LiPF₆)を溶解した液体電解質。フラムマブルであることが熱暴走リスクの根本原因
- セパレータ:ポリオレフィン系微多孔膜。内部短絡時の遮断性能がBMS と並ぶ安全設計の要
NEDO の研究開発資料は、
現行の EV・PHEVには有機の電解液を使用するリチウムイオン電池が適用されているが、そのエネルギー密度と安全性はトレードオフの関係にあり、一歩間違えると発煙・発火の危険性がある
と明記しています[4]。この「エネルギー密度↑=安全性リスク↑」のトレードオフは、Li-ion を調達する際の BMS 選定・PSE 対応費の見積もりに直接つながる論点です。
ニッケル水素電池の構造
NiMH はアルカリ系の二次電池で、電解質に水酸化カリウム(KOH)水溶液を使います。液体ではあるものの難燃性で、Li-ion と比べて熱的安定性が格段に高いのが最大の特徴です。
- 正極:オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)
- 負極:水素吸蔵合金(La/Ce/Ni 系のミッシュメタル合金が主流)
- 電解質:水酸化カリウム水溶液(難燃性)
- 公称電圧:1.2 V/セル(Li-ion の約 1/3)
NEDO の実用化ドキュメントは、
ニッケル水素電池より軽量小型・大容量のリチウムイオン二次電池が普及してきたが、当初は Li-ion はパソコンや携帯電話などの限られた用途で利用されており、より大型化が可能となって初めて自動車用として活用できる道が拓けた
という経緯を示しています[2]。これはつまり、NiMH がスケールアップ済みの実績電池であり、HV 用途での信頼性は長期にわたって実証されていることを意味します。
調達現場で押さえるポイント
ニッケル水素電池の調達上の最大リスクは、水素吸蔵合金に含まれるレアアース(La・Ce)の中国依存です。中国の輸出規制強化が直接コストに波及するため、長期契約では為替・LME ニッケル価格・レアアース指数の 3 軸スライド条項を設計に組み込むことが不可欠です。金属加工・樹脂成形・電気電子の 5 ジャンルを横断した調達経験から言えば、この条項を入れていなかったために 2 年目以降に単価が跳ね上がり、再交渉コストが発生したケースが繰り返されています。
3. 数値比較表:13 項目で見る Li-ion vs NiMH
以下の比較値は、NEDO・経済産業省の公開資料[2][3]ならびに電気用品安全法の技術基準[5]を参照し、調達現場での実務経験値と突き合わせて整理したものです。個別セルにより上下があるため、最終的な採用判断では実測値の取得を推奨します。
| 比較項目 | リチウムイオン(Li-ion) | ニッケル水素(NiMH) | 調達判断ポイント |
|---|---|---|---|
| 重量エネルギー密度 | 150〜260 Wh/kg | 60〜120 Wh/kg | 重量制約があれば Li-ion 一択 |
| 体積エネルギー密度 | 250〜700 Wh/L | 140〜300 Wh/L | 筐体サイズ制限がある場合は Li-ion |
| 公称電圧(セルあたり) | 3.6〜3.7 V | 1.2 V | NiMH は直列セル数が多くなる |
| サイクル寿命(80% DoD) | 500〜2,000 回(LFP は 4,000 回超) | 500〜1,500 回 | 高頻度充放電なら LFP が最優位 |
| 自己放電率(月) | 2〜3 %/月 | 15〜30 %/月(低自己放電型は 5%以下) | 長期在庫保管なら Li-ion が有利 |
| 熱暴走リスク | あり(BMS 必須) エネルギー密度と安全性はトレードオフ |
低い(難燃性 KOH 電解液) 保護回路は簡素で可 |
安全要件が厳しい用途は NiMH |
| 日本国内の法規制 | PSE マーク必須(電安法) 全数検査・3 年間記録保存義務 |
PSE 対象外(現行) IEC 61951-2 等への任意対応が多い |
Li-ion は認証コストを見積もりに含める |
| 国際輸送制約 | UN38.3 試験証明書が必須 航空輸送に SOC 制限あり |
UN3496 で規制されるが Li-ion より緩やか | 航空便・緊急輸送ではリードタイム差が出る |
| セル単価概算 | 100〜160 USD/kWh(2024-2026) | 200〜400 USD/kWh | kWh 単価では Li-ion が安価。BMS 含む総コストで再評価を |
| 原材料の地政学リスク | Li(豪州・南米)、Co(コンゴ)、Ni(インドネシア)、黒鉛(中国) | Ni、レアアース La/Ce(中国依存大) | どちらも中国依存があり分散化が課題 |
| 廃棄・リサイクル | 資源有効利用促進法で回収義務 発火リスクで分別が厳格化 |
資源有効利用促進法で回収義務 Ni 回収技術は確立済み |
処理費用は見積もり段階から確認 |
| 代表用途 | スマートフォン・ノート PC・EV・定置蓄電・産業ドローン | HV 車・電動アシスト自転車・産業機器・eneloop 等乾電池代替 | 用途が決まったら上記に照合 |
| 次世代への移行見通し | 全固体電池への移行が 2027〜28 年度以降に予定 | バイポーラ型で HV 用途では引き続き競争力 | 長期調達契約は切替えタイミングを盛り込む |
※ 数値は NEDO・経済産業省公開資料および主要セルメーカー公表仕様の代表値です。個別セルの実測値と必ず照合してください。
4. 2026 年時点の市場・政策環境と調達への影響
電池調達の意思決定は「今の価格」だけでなく、今後 3〜5 年の市場構造を踏まえた判断が求められます。経済産業省の最新資料(2026 年 4 月)は、
リチウムイオン電池(LiB)の世界市場は 2025 年の 23 兆円から 2035 年に 46 兆円(約 2 倍)、2040 年には 55 兆円(約 2.4 倍)の規模に成長する見込み
と試算しています[6]。ただしこの「拡大」は調達側にとって必ずしも追い風だけではなく、需要急増に伴う原材料価格の上昇リスクも内包しています。
国内政策面では、
経済安全保障推進法に基づく支援等の政府支援策による投資分を含めて、国内の蓄電池セルの生産能力は約 100GWh/年以上に増強される見通し
です[6]。また、
2026 年 2 月 17 日に経済安保基金(蓄電池:第 6 弾)で蓄電池 1 件・部素材 5 件・製造装置 2 件の設備投資・技術開発の計画が認定された
ことも確認されています[6]。国内サプライヤーが補助金を受けながら増産フェーズに入る 2026〜2028 年は、国内調達ルートのコスト競争力が一時的に改善する可能性があります。
一方、NiMH については成長率では Li-ion に劣るものの、HV 車・産業機器での安定需要は続いています。
蓄電池原材料の多くは埋蔵量・生産量ともに特定国(豪州・南米・コンゴ民・インドネシア等)に偏在し、中流の精錬工程は製造コストの低い中国に集中する傾向がある
ため、どちらの電池を選ぶにせよ地政学リスクの分散は不可欠な視点です[3]。
調達戦略へのインパクト
製造業の調達購買を 10 年以上支援してきた経験から言えば、国内補助金フェーズと海外サプライヤーの価格競争が重なる局面は「短期最安値を追う」と後から補助金切れのタイミングで逆ザヤになりやすい。2026〜2028 年は国内調達への切り替え検討に最適なウィンドウである一方、長期契約では「補助金終了後の価格改定条項」を必ず盛り込むことが重要です。
5. 調達現場での 4 つの選定判断軸
これまでの調達支援案件を分析すると、電池種の選定が後から見直しになったケースの大半は、以下のいずれかの軸を「後から評価」したことが原因です。選定フローに入る前に 4 軸を並行して評価することが、後戻りコストを防ぐ最短ルートです。
判断軸 1:重量・サイズ制約
携行機器・EV・ドローン・医療機器のように重量とサイズが直接製品価値に影響する用途では、エネルギー密度で約 2〜3 倍の差がある Li-ion 以外の選択肢はほぼありません。同じ 1 kWh を確保するのに NiMH では Li-ion の約 2 倍の重量・体積が必要になり、機構設計上の余白がない用途では検討の余地がなくなります。
判断軸 2:安全性と認証コストのトレードオフ
定置用バックアップ電源・産業設備・教育玩具・防爆環境設備など熱暴走リスクをゼロに近づけたい用途では、NiMH の選択が設計コストと認証コストの両方を下げます。
経済産業省の電気用品安全法の規定では、
充電式の電池のうちリチウムの酸化・還元反応により電気エネルギーを供給する単電池またはモジュールを「リチウムイオン蓄電池」として規制の対象とし、単電池 1 個あたりの体積エネルギー密度が 400Wh/L 以上のものが対象
になります[5]。さらに
リチウムイオン蓄電池の製造・輸入行為を行う者は電気用品安全法第 3 条の届出義務を負い、電気用品安全法第 8 条に基づき技術基準への適合確認・定格電圧・外観について全数検査を行い 3 年間分の検査記録を保存することが義務付けられる
のです[5]。この BMS 設計・全数検査・記録保存の費用を「隠れコスト」として見積もり外にしてしまうと、実際の調達コストが大きく乖離します。
調達現場で押さえるポイント
Li-ion 電池の調達で「セル単価だけ見ると安い」という落とし穴は非常に多く、BMS・PSE 認証費・UN38.3 試験費・全数検査費を積み上げると最終コストが 1.3〜1.6 倍になることは珍しくありません。見積もりを複数サプライヤーから取る際は、必ず「認証込み総コスト」で比較する見積もりフォーマットを使うことを標準化しています。
判断軸 3:サプライチェーンリスクの分散可能性
Li-ion の主要原材料はリチウム(豪州・南米)、コバルト(コンゴ民主共和国)、ニッケル(インドネシア)、黒鉛(中国)と複数国に分散しています。NiMH はニッケルとレアアース(La/Ce)が主要素で、特に精錬工程の中国依存度が高い。いずれも「電池種を選ぶ」だけでリスクが解消されるわけではなく、サプライヤーの所在国・調達ルート・契約形態まで含めた設計が必要です。
経済産業省の蓄電池産業戦略(2022 年 8 月)では、
蓄電池材料として再利用可能な品質でリチウム 70%・ニッケル 95%・コバルト 95% 以上の回収を実現するリサイクル技術の開発が目標として設定されており
、中長期的にはリサイクル由来の材料がサプライチェーンリスクの緩衝材になる見込みです[7]。ただし現時点ではリサイクル材の供給量は限られており、調達判断には反映しにくい段階です。
判断軸 4:ライフサイクル終端の処理コスト
廃棄段階も含めた総コスト評価は見落とされやすい軸です。環境省の電動車用電池リユース・リサイクル実証事業報告書(2019 年)は、
ニッケル水素電池リサイクル事業について焼却を伴わない新たなリサイクル技術を確立し技術面での課題を解決でき、リチウムイオン電池リサイクルについては技術的課題の解決でプロセスを確立できる見込みである一方、いずれもコスト削減・回収物価値向上により処理費用の圧縮が必要
としています[8]。Li-ion の廃棄処理は発火リスクから分別・保管・運搬の全工程でコストが加算される点も、NiMH に比べた調達総コスト比較では無視できません。
6. 法規制・認証の全体像──見積もり前に確認すべき項目
調達担当者が「電池の調達」と聞いて見落としやすいのが、輸送・保管・廃棄の各段階に分散した法的要件です。Li-ion と NiMH では課される義務の重さがまったく異なります。
リチウムイオン電池に関係する主要規制
- 電気用品安全法(PSE):国内向け製品に PSE マーク表示が必要。製造・輸入事業者に届出義務と全数検査・記録保存義務が課される[5]
- UN38.3 試験:国際航空輸送では必須。試験証明書の取得・保管が求められ、SOC(充電率)の制限もある
- IEC 62133 / JIS C 8712:小型二次電池の安全性評価規格。PSE 技術基準の整合規格として参照される
- 資源有効利用促進法:製造・輸入事業者に回収・再資源化の義務。JBRC 登録が事実上の標準
ニッケル水素電池に関係する主要規制
- PSE 対象外(現行の電安法では Li-ion の定義に該当しないため)
- IEC 61951-2:小型密閉型ニッケル水素電池の安全規格(任意対応が多いが、海外 OEM 先から要求されるケースがある)
- 資源有効利用促進法:こちらも対象。廃棄時はリサイクルマーク表示と回収ルートの確保が必要
- UN3496:国際輸送で適用される分類。Li-ion より制限は緩いが輸送会社への事前確認は必要
7. 注目すべき技術動向──全固体電池と LFP の調達インパクト
全固体電池:調達切り替えのトリガーになりうる次世代技術
NEDO は、
現行の EV・PHEV に搭載されているリチウムイオン電池を性能・生産コスト両面でしのぐ革新型蓄電池の研究開発に着手しており、エネルギー密度と安全性のポテンシャルや日本のオリジナリティが高い「フッ化物電池」と安全性に大きなメリットがあり低コスト化にも有利な「亜鉛負極電池」をターゲットとしている
と発表しています[4]。
経済産業省(関西)の資料は、
次世代蓄電池として全固体リチウムイオン蓄電池の実用化見通しとして、トヨタが 2027〜28 年度、日産が 2028 年度、ホンダが 2020 年代後半
を目標としていると記載しています[3]。この時間軸は「今から 2〜3 年後に全固体電池搭載製品の調達を見込む可能性がある」ことを意味します。現時点で Li-ion を採用する場合は、全固体電池への切り替えタイミングを見越した契約期間・在庫政策の設計が中期的な課題になります。
LFP(リン酸鉄リチウム):NiMH の代替候補として急浮上
従来の三元系(NCM/NCA)に比べてコバルト・ニッケルの使用量が少なく原材料コストが安定している LFP は、2024〜2026 年にかけて急速にシェアを伸ばしています。サイクル寿命は 4,000 回超、熱安定性も NCM より優位で、定置用蓄電池・商用 EV・産業機器での採用が拡大しています。
「安全性・コスト重視だから NiMH」という判断が以前は鉄板でしたが、エネルギー密度向上が続く LFP は「NiMH より軽く、かつ安全性・コストも許容できる」中間解として検討に値します。調達戦略上は Li-ion(NCM)・LFP・NiMH の 3 択で比較することが 2025 年以降の標準的なアプローチです。
8. 電池種別の用途適性マトリクス──現場の判断フロー
当社の調達購買支援案件では、電池の最終選定に入る前に以下の 5 問チェックを使っています。YESが多い方向に絞られる構造になっています。
- 製品の重量・サイズ制約は厳しいか?
→ YES:Li-ion(NCM または LFP)。NO:次の問いへ - 熱暴走・発火リスクを絶対に避けたいか?(防爆・教育・医療用途など)
→ YES:NiMH または LFP。NO:次の問いへ - 定置用・長寿命で 4,000 サイクル以上が必要か?
→ YES:LFP 一択。NO:次の問いへ - HV 車・産業機器で大電流放電が主用途か?
→ YES:NiMH(実績・コスト両面で安定)。NO:次の問いへ - 認証・輸送コストを最小化したいか?
→ YES:NiMH(PSE 対象外・輸送制限が緩い)。NO:用途・コスト試算に戻る
このフローを経ると、「電池の種類」だけでなく用途要件 × 認証コスト × サプライチェーンリスク × 長期価格安定性の 4 軸でスコアリングする判断に自然に辿り着きます。当社の調達現場では、この 4 軸で 3〜5 社のサプライヤーから見積もりを取り、定量比較するプロセスを標準化しています。
9. リサイクル・廃棄段階のコスト設計
2026 年現在、電池の廃棄問題は調達担当者にとっても「コスト」として無視できないテーマになっています。環境省の実証事業報告書(2019 年)が示したように、
ニッケル水素電池は焼却を伴わない新たなリサイクル技術が確立された一方、リチウムイオン電池のリサイクルは 2 つの課題解決が必要で、CO2 削減効果のある経済的に合理的な設備構成と回収物の価値向上が引き続き課題
となっています[8]。
実務上の注意点は 2 つです。
- Li-ion の廃棄コスト:発火リスクへの対応から、分別収集・専用容器・輸送の全工程でコストが上乗せされる。特に海外製の PSE 未対応品を誤調達すると回収ルートが確保できない
- NiMH の廃棄コスト:ニッケル回収技術は確立されており、JBRC を通じた回収ルートが機能している。ただしレアアースの回収効率は現時点では限定的
調達時点から廃棄処理コストと回収ルートを確認しておくことが、サプライヤー評価の必須項目として定着しつつあります。
10. まとめ:2026 年の調達現場で使える選択ガイド
ここまで整理してきた内容を、調達意思決定に直結する形で圧縮します。
電池種選定チートシート(2026 年版)
- 携行性・小型軽量が最優先 → Li-ion(NCM)
- 定置用・長寿命・コスト安定 → LFP(Li-ion の一種)
- HV 車・産業機器・安全性優先 → NiMH
- 輸送・認証コストを抑えたい → NiMH または LFP
- 将来の全固体電池への切り替えを見据える → Li-ion を選びつつ 2027〜28 年の技術動向をウォッチ
製造業の調達現場では「電池の種類だけ」で選定が完結することはほぼありません。技術スペック・法規制コスト・サプライチェーンリスク・ライフサイクル終端コストの 4 軸を同時に評価することが、現場で後悔しない電池調達の実践的な方法論です。中国・東南アジアのサプライヤー網で典型的に見られるのは「セル単価は最安値だが認証コストが未計上」というパターンであり、これを防ぐための見積もりフォーマットの標準化こそ、調達担当者が最初に着手すべき仕組みづくりです。
出典・参考資料
記事の補足
実務メモ — newji 調達購買の現場より
弊社のソーシング現場では、リチウムイオン・NiMH を含む電池搭載製品の調達において、認証対応費用がサプライヤー選定の大きな変数になる。日本市場にあまり出回っていない製品ジャンルを扱う案件が多いため、日本向け販売実績のあるサプライヤーであれば PSE 等の認証費用がすぐに提示されるが、そうでない場合は新規取得が必要となり、想定を大きく超える費用と期間が発生するケースも珍しくない。さらに海外調達特有の為替変動も、納品後の値上げ交渉が難しい構造ゆえ、見積段階で吸収余地を作れないと粗利が一気に消える。電池は法規制・認証・為替の三重の変数が同時に効く、判断軸の設計が問われる領域だ。
認証実績・為替バッファ・規制事前調査の三点を見積前段階で組み込むこと。AI を活用した先回り型の業務フロー設計が、量産前の予算超過と粗利消失を防ぐ最大の防具となる。
同じ課題でお悩みの方は newji にご相談ください。
- NEDO|世界初、ハイブリッド自動車用リチウムイオン二次電池を量産化
- NEDO プレスリリース|リチウムイオン電池の性能・生産コストをしのぐ革新型蓄電池の研究開発に着手
- 経済産業省(関西)|蓄電池産業戦略と今後の方向性(2025 年 3 月)
- NEDO|全固体リチウムイオン電池の研究開発プロジェクト第 2 期が始動(LIB のエネルギー密度と安全性トレードオフを詳述)
- 経済産業省|電気用品安全法トピックス(リチウムイオン蓄電池関連法令)
- 経済産業省|蓄電池産業を取り巻く環境の変化(2026 年 4 月 17 日)
- 経済産業省|蓄電池産業戦略(2022 年 8 月 31 日)
- 環境省|電動車の駆動用電池のリユース・リサイクル技術開発実証事業 報告書(平成 31 年)
※ 出典リンクは 2026 年 5 月 13 日時点でリンク到達性を確認しています。
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