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海外企業が理解していない日本式アフターサービスの期待値

目次
はじめに:なぜ日本式アフターサービスは独特なのか
日本の製造業に根付く「アフターサービス」は、単なるサービス提供ではなく、お客様との信頼関係そのものを指します。
この考え方は、世界のどの地域にも見られるものではなく、日本独自の文化的土壌から生まれたものです。
実際に現場で働いてきた私の経験から言えば、アフターサービスは取引先との長期的なパートナーシップの要(かなめ)です。
しかし、グローバル化が進む中で、海外企業が日本の顧客に同じ期待値でサービス提供を行い、時としてミスマッチが生じることが少なくありません。
この記事では、なぜ日本式アフターサービスが評価され、どこに注意点があるのか、現場視点で深掘りしていきます。
日本式アフターサービスの特徴
「お客様第一主義」の徹底
日本のモノづくりにおいては、「お客様は神様」という言葉が象徴するように、顧客の満足を最優先にします。
製品納入後の不具合や相談に対しても、すぐに担当者が駆けつけ、状況確認や迅速な原因究明、時にはその場で暫定対策を講じることが定番です。
単なるコールセンターでの対応ではなく、現場で汗をかく姿勢や、地道なアフターフォローこそが、顧客から高い信頼を得てきた背景にあります。
「現場主義」=リアルタイムな対応力
私の経験上、たとえば生産ラインでトラブルが起きた際、何より大切なのはスピードです。
多くの日本企業では、納入した装置や部品に万が一の不具合があれば、すぐに現場担当者が足を運び、状況説明・再発防止策まで寄り添います。
つまり、日本では「売って終わり」ではなく、「売ってからが本当の勝負」という意識が根底にあります。
品質保証と感情的コミュニケーション
数字や規格だけをクリアしていれば十分、という姿勢では日本市場で評価されません。
納品後も、定期的な品質確認や、潜在的な課題のヒアリングが重要視され、「お客様の不安」をゼロに近づける努力が欠かせません。
また、単なる事務的なやりとりでなく、時には現場ならではの世間話や気遣いが、信頼関係を厚くします。
“一歩先”の気配り(プラスα)
たとえば現場を見て気付いた改善点、部品の消耗状況の予実報告など、期待を“少しだけ上回るサービス”がスタンダードです。
このプラスアルファが「日本らしさ」であり、グローバル企業には真似しづらい特徴となっています。
なぜ海外企業は日本式アフターサービスにつまずくのか
コスト構造・人員配置のギャップ
諸外国、とくに欧米企業では「アフターサービスは付加価値」であり、明確に費用対効果を求める傾向があります。
サポート業務は外注やコールセンター化され、現場訪問は必要最低限に抑えられることが普通です。
そのため、日本のように「何度も現場に来てくれる」「担当者が徹底付き添い」という手厚さは、コスト的に正当化できないと考える企業が大半です。
コミュニケーションの深度と期待値の違い
日本人バイヤーや購買担当は、製品の「引き渡し」ではなく、その後のフォローが“契約の一部”という意識を根強く持っています。
現場での困りごとを、メーカー側が自社品の枠を超えてフォローしてくれるか。
言葉だけではなく、温度感や誠意をどこまで見せてくれるか。
こうした「情」による信頼構築は、マニュアル化しづらく、異文化では往々にして理解されにくいポイントです。
スピード感と「なあなあ文化」
日本では担当者が顧客窓口になり、フットワーク軽く社内関係者を巻き込みながら問題解決に当たります。
逆に海外企業では、「部署が違うから担当外です」や「正式依頼をメールでどうぞ」と、形式重視になる傾向が強いです。
この違いが「融通が利かない」「冷たい」と映り、信頼獲得が難しくなる原因になっています。
現場目線で見る:アフターサービスで本当に求められているもの
トラブルの早期沈静化
何より求められるのは、生産現場の稼働を止めず、顧客のロスを最小限にすることです。
過去の現場経験から言えば、トラブル時の第一報に対し、いかにスピーディーに「現状把握・原因調査・再発防止」の3点セットで動けるかが信頼獲得の分かれ道です。
技術的フォローと提案力
単なる部品手配や故障対応だけでなく、根本的な不具合要因の特定、現場改善につながる助言こそ期待されています。
日本式アフターサービスのプロは、「次の不具合を予見し、未然に防ぐ」ことも大きな役割です。
これによってバイヤーからの信頼感が加速度的に高まります。
長期的な信頼関係
購買担当者・バイヤーの多くは、単年度の取引成績ではなく、数年・数十年と続く「安心して任せられるパートナーシップ」を求めます。
納入品の今後の進化や更新、部品供給、世代交代時の対応まで見据えて対応する姿勢は、海外企業からすると大きなプレッシャーでもあります。
サプライヤー・バイヤー双方が知っておくべきポイント
サプライヤー側の工夫
海外サプライヤーが日本市場で成功するためには、単に工場出荷したら終わり、ではなく「ポスト・デリバリー(納入後)の顧客接点」を設計し直す必要があります。
具体的には、日本語対応のスタッフ配置、現場訪問可能な体制づくり、緊急対応マニュアルの整備などが不可欠です。
また、バイヤーの声に耳を傾け、FAXや電話が今も主力チャネルだったりする現実も無視できません。
DX・IT化が進んでいるように見えても、実際の現場はアナログ的なやりとりを併用しているからです。
バイヤー側の工夫
昨今、サプライヤー多様化やグローバル取引が当たり前となり、「昔ながらの日本式がすべて通用する」と考えるのは危険です。
新規サプライヤーや海外メーカーと取引を始める際は、自社が求めるアフターサービスの期待水準を明文化し、できるだけ契約書類やRFP(提案依頼書)に盛り込むべきです。
また、「言わなくても伝わる」「察して」といった曖昧な要求はグローバルには通じません。
現場で本当に困る状況とは何か、具体的なケースを事前に説明し、相互の理解を深める姿勢が重要です。
日本式アフターサービスがグローバル競争力を持つ理由
顧客ロイヤリティとブランド信頼
現場を知る者として感じるのは、案外、最初から「製品そのもの」が一番でなくてもよい、ということです。
不具合やトラブルが発生した際、どれだけ誠実かつ適切なアフターサービスで問題を解決したか、その行動の方が顧客の印象に残ります。
これが「困った時こそ頼れる=次も必ず指名される理由」になります。
DXと融合した新しいアフターサービス
ペーパーレス化やIoT・AIの進展により、遠隔サポートや24時間対応体制の構築も容易になりつつあります。
しかし、「人」を介したきめ細やかな対応とデジタル技術の組み合わせこそ、日本が世界で競争力を持続する最大要因です。
日本式アフターサービスの価値とその未来
少子高齢化や人手不足が進む中で、今後は従来型の「何でもかけつける」方式だけでなく、遠隔監視やオンラインサポートを積極活用する時代になります。
ですが、現場の心を動かすのは、やはり「最後は人」。
“テクノロジー+人の真心”を標準にした新たなアフターサービス像が、日本から世界へ発信されることに期待したいものです。
まとめ:日本式アフターサービスを正しく理解し、活用するために
海外企業が日本市場で成功するためには、単に品質や価格だけを追求するのではなく、日本式の「アフターサービス精神」そのものを理解し、現場の期待値や文化的背景への配慮を欠かせません。
サプライヤーとバイヤーの相互理解と不断のコミュニケーションこそ、これからのグローバル製造業が目指すべき新しい地平線なのです。
昭和から続く現場主義をベースに、デジタル時代の最適解を模索しながら、高いアフターサービス品質を支え続けることで、日本製造業の底力を広く発信していきましょう。
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