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ショットブラスト装置で使うシール部材の材質選定と摩耗トラブル

目次
ショットブラスト装置におけるシール部材の重要性
ショットブラスト装置は、金属部品や鋳物の表面処理に不可欠な生産設備です。
その装置の稼働効率や品質安定性を維持する上で、シール部材の選定・管理は軽視できません。
多くの現場で、思わぬ摩耗トラブルや交換頻度の高さに直面し「なぜこんなにシールが劣化するのか?」と悩まれる方も多いのではないでしょうか。
装置のアライメントや材質の選び方次第で、生産ラインの人時コストも、最終製品の品質も大きく変わります。
昭和時代の設計思想に頼ったままの施設も多いため、今こそ現場目線で「なぜこの材質を選ぶのか」「交換周期をどう延ばすのか」を再考するタイミングです。
今回は、バイヤーの方やサプライヤーとして最適な提案をしたい方、そして製造業従事者すべてに向け、ショットブラスト装置で使うシール部材の材質選定と摩耗トラブル対策について、現場経験を交えて解説します。
ショットブラスト装置のシール部材とは何か
ショットブラスト装置は、金属球や砂などの投射材を高速でワークに噴射し、バリ取りや表面粗化、スケール除去を行います。
その際、装置内部では投射材が高速で移動し、装置内部の各部材に強い衝突・摩耗が発生します。
このとき、装置の各部で粉塵やショット材が漏れ出すことを防ぐ「シール部材」が必須になります。
シール部材は主に以下の役割を担います。
– 投射材および粉塵の飛散・漏れを防ぐ
– 装置内部の気密性を保つ
– 装置の可動部同士、あるいは非可動部との摩耗を抑える
シール部材の代表的な材質はゴム(NBR、EPDM、シリコンなど)、ウレタン、金属系、セラミック系がありますが、過酷な摩耗環境では選定を誤るとあっという間に劣化・破損が進みます。
適材適所の選択と、最新動向へのアップデートが生産ラインの安定に直結しています。
シール部材に求められる主な特性と課題
耐摩耗性
ショット材による激しい摩耗が繰り返されるため、シール部材には極めて高い耐摩耗性が求められます。
たとえば、ウレタン樹脂は耐摩耗性の指標となる耐摩耗試験でゴムや一般樹脂より優れた結果を示します。
しかし、使用温度や環境、投射材(スチールショット/グリットなど)の種類によって長寿命化の決め手は変わります。
耐熱性・耐薬品性
ショットブラスト工程では高温域まで装置表面が上昇し、可塑化やゴムの硬化現象が起きやすいため、シリコンゴムやフッ素樹脂系のような耐熱素材が必要な場面もあります。
また、投射材によっては防錆剤や洗浄液等のケミカル成分に曝露するため、耐薬品性も要検討です。
柔軟性・シール性能
硬い材料を選択すれば良いというものではありません。
可動部だと柔軟性の低い材質では機械の隙間をシールできず、漏れ・飛散が発生します。
現場では、「柔らかくても削れて短命」「硬くしたら割れた」などの声もよく聞かれます。
メンテナンス性・コスト面
設備保全担当者にとっては、交換作業がしやすい形状や価格帯も無視できません。
また、日本の多くの工場が「昭和の遺産」とも言える古い設備を長期的に使用し続けている状況があり、純正部品が高価・調達不可になっていることも頻繁にあります。
よくあるシール部材の摩耗トラブル例
1. 早期摩耗/短寿命化
– 使い始めて1週間~1ヶ月で裂けや大きな摩耗が生じる。
– ショット材粒径や速度のアップ、機械のラフな運転条件変更に材質がついてきていない事例。
2. シール破断・欠損
– 急な異物噛みこみ、メンテナンス時の組み付けミスで一部だけ極端に摩耗。
– 部分的な割れや破断による漏れ発生。
3. シール材の固着・膨潤
– 高温環境や薬品曝露でゴム系シールが硬化または膨張・変形。
– 密閉性や弾性を失い、漏れや異音発生。
材質選定のポイントと最新動向
ウレタン系樹脂
– 耐摩耗性に優れ、ショットブラスト装置でも主流。
– 柔軟性も担保でき、さまざまな形状加工が比較的容易。
– ただし、紫外線・水分・高温環境への長期曝露には注意が必要。
ゴム系(NBR、EPDM、シリコンゴム等)
– 価格が手ごろで、一般的な耐摩耗・耐薬品ラインなら汎用的。
– しかし激しいショット材の直撃部では寿命が短くなる。
– ベルトシールなど、曲げ・摺動をともなう用途では活躍。
金属・セラミック複合材
– 装置の要所(例:インペラハウジング内のシールプレート等)で使われる。
– 耐久性は高いが、コスト・重量・加工性の面で導入ハードルあり。
新素材(高機能樹脂や、二層複合材)
– 近年はウレタンの硬度を表層・裏層で変える二層構造シールや、PFA・PTFEなどフッ素樹脂系の高耐久素材も出てきました。
– これらは「柔らかさ」と「硬さ」のいいとこ取りができるため、コストと耐久性のバランスが良い事例も増えています。
現場目線で見る材質選定の注意点
顕在課題だけを追い求めない
「摩耗しやすい」から単純に硬い材料に変える、だけでなく「どうして今削れているのか」「どの部位が集中的にやられてるか」まで掘り下げること。
実際の現場では、ブラスト量の増大、装置経年劣化による軸ズレや偏当たり、清掃不良によるショット粒の詰まりなど、見えにくい要因が絡むことが往々にしてあります。
機械寸法のばらつきにも目配りする
「図面通りなら大丈夫」の落とし穴がこの世界には多く存在します。
装置の個体差や経年変化でシール部のガタツキ、段差、片減りが生じやすいのが現場仕様です。
新規材質や複合材採用時には、実際の現場採寸や数回の検証サイクルが不可欠です。
安易なコストダウン要求に飲み込まれない
工場長や購買担当目線で顧客から「もっと安いものはないか」と言われる場面は避けられません。
ただし、安さ優先で密度の低いゴムや既成外製品を流用すると、かえって生産ストップやクレーム対応など目に見えない「負のコスト」が増大します。
バイヤー・サプライヤーが知っておくべき裏事情
昭和世代の設備が多く残存する日本の工場では、「昔からこの材質を使っているから…」という神話が根強いです。
しかし、メーカー側は材料メーカー、加工業者、最終エンドユーザーがバラバラに意思決定しているケースも多く「本気で現場に合ったもの」を提案できていないことも現実です。
また、純正部品が海外製で調達困難になっていたり、メンテ品が設計変更されていることもあります。
そんな現状では、現場リーダーや購買担当、サプライヤーの担当者が「現場・用途・設備の癖」を理解し、単なるカタログスペックや値段だけでなく、使われ方まで踏み込んだ提案をすることが成功のカギになります。
シール部材の摩耗トラブル低減のための実践的アプローチ
– 摩耗トラブルデータを収集しやすい体制を構築する(交換履歴、使用環境の可視化など)
– 年次点検や生産負荷が高まるタイミングでは、現場作業者へのヒアリングを強化する
– 新素材や異材シールを少量導入→実際のスパンで先行テストする
– 交換作業時の「ついで清掃」「部品当たり面のバリ取り/軸直し」も徹底
昭和型アナログ現場でも可能なこととして、「不具合ごとの写真保存」「交換時のQR記録」「現場への交換廃材提示」など、後工程や事務コストを大幅に増やさずにデータを残せます。
一度アナログで記録を始めてみるだけでも、トラブルの早期発見・裏付けが容易になり、次世代バイヤーやサプライヤーにとって大きな武器となります。
まとめ:現場主導で材質選定を進めよう
ショットブラスト装置のシール部材は、たかが消耗品と侮られがちですが、その材質選定と摩耗対策には現場に合った深い知見とラテラルな発想が求められます。
過去の慣行やカタログスペックに頼るだけでなく、現場独自の癖や摩耗パターン、使い古された設備の個体差まで考慮し、「生産性と品質を両立させる摩耗対策」へアップデートすることが、日本の現場力を維持・発展させるカギだと言えます。
バイヤー、サプライヤー、そして現場担当、全員にとって最適な材質選定と摩耗トラブル対応ができるよう、今こそ「現場目線」「昭和脱却」の一歩を踏み出しましょう。