投稿日:2025年12月29日

ショットブラスト装置で使う搬入出扉部材の加工と段差問題

ショットブラスト装置の搬入出扉部材とは何か

ショットブラスト装置は、金属製品の表面処理やサビ落とし、塗装前処理など幅広い工程で使用される重要な装置です。

その中で、搬入出扉部材はワーク(処理対象となる部材や製品)の装置への出し入れに使われる、いわば“玄関”のような役割を担います。

扉部材の状態や設計次第で、作業効率・安全性・品質に大きく影響することから、現場では特に気を配る必要があるパートです。

近年では自動化や生産ラインの省人化が推進されていますが、昭和の時代から受け継がれたアナログな構造や設計思想が今なお幅広く生き残っており、時代の要請と現場事情の狭間でさまざまな工夫と課題解決が求められています。

扉部材の加工における基本的な流れ

搬入出扉部材の加工は、一般的には以下のような工程で進められます。

1. 図面設計および材料選定

まず最初に扉部材の役割を考慮し、どの程度の耐摩耗性・耐衝撃性が求められるか、寸法や安全規格も念頭に図面設計が行われます。

多くの場合、強度のある鋼板やアルミ合金などが材料として採用されます。

また、ショットブラスト装置の性質上、搬入出部は激しい磨耗や金属粉・投射材が侵入しやすい箇所ですので、特に補強やシール構造、ゴムパッキンなどの工夫が設計段階から盛り込まれます。

2. 板金・溶接等の加工工程

切断機やプレス機を使った板金加工で、設計図面通りの素材を作り出します。

形状によっては曲げ加工、穴あけ、タップ切り、さらに複雑な部分は溶接による組み立ても必要です。

溶接箇所は、後々の強度維持やブラスト材飛散対策として、溶接ビード処理やグラインダーでの仕上げ作業も並行して行われます。

3. 仕上げと表面処理

ショットブラストの飛散防止という観点から、表面はおおむね滑らかにし、また腐食対策として防錆塗装やメッキ処理が施されることも多いです。

近年は繁雑な手作業を減らし、省力化のためにCNC加工機やロボット溶接の導入も進んでいますが、中小のサプライヤーなどでは未だに熟練作業者の“技”が強く求められる工程でもあります。

段差問題が現場で頻発する理由

扉部材の組み立てや設置において、現場で特によく起きるのが「段差問題」です。

これは主に、扉を閉めた際にワーク搬入路や装置本体との間に僅かな“段付き”が発生し、製品が通りづらい、チャタリングが起こる、隙間からブラスト材が漏れる、といったトラブルにつながります。

この段差問題がなぜ発生するのか、その要因を詳しく解説します。

1. 加工精度と現場フィッティングのギャップ

設計上はピタリと合うはずの部品も、実際に加工・組立を行うとどうしてもミクロン単位から数ミリ程度のズレが生じます。

また、装置本体自体が長期間の稼働によって多少の変形や損耗を起こしている場合、扉部材の“理想の寸法”通りには収まらなくなります。

ここで、現場作業者は「現物合わせ」で仕上げ調整せざるをえません。

しかし十分な調整時間が取れなかったり、加工後の部品取り回しに無理があった場合、「とりあえず付けばよい」といった妥協の取り付けが行われてしまい、結果的に段差が残ります。

2. サプライヤー側の品質バラつき

特に外注加工が絡む場合、図面通りの精度で供給されてくるとは限りません。

また、昭和型の生産手法が根強く残る工場では、「ヤスリでなめらかにする」「経験値で微調整する」など、人の勘や技に頼る要素が大きく、個体差による品質バラつきが生じやすいです。

これが搬入出扉部材の段差問題を慢性的に発生させる温床になります。

3. 設計思想と現場ニーズの乖離

設計段階ではどうしても「理想形」が優先されがちです。

しかし、実際の現場作業では様々な制約条件(設置スペースの狭さ、既設装置の干渉、工具や人的リソースの制限など)が存在し、設計通りにピッタリ収まらないケースが多くなります。

意外に多いのが、「設計担当が現場を理解しておらず、現物のズレを見越した設計配慮が為されていない」というパターンです。

この“机上の空論”と現場のリアルの乖離が、段差問題の本質的な発生原因となります。

段差問題を最小限に抑えるための現場対策

段差問題を完全に無くすことは現実的には難しいですが、さまざまな工夫と現場起点の改善によって最小化することは可能です。

ここからは管理職(バイヤーや調達担当者)そして実際に部品を加工するサプライヤーそれぞれの目線で、段差問題克服ノウハウを紹介します。

1. 明確な精度・許容差の設定と共有

図面に書かれる寸法公差や仕上げ指示が曖昧だと、「これぐらいで良いだろう」という個人解釈で仕事が進み、品質バラつき・段差発生につながります。

そこで、バイヤーや発注側は
– ここだけは絶対守ってほしい「重要寸法」
– 加工後に現場合わせが必須となる「調整エリア」
– 機能に影響ない範囲で許容する「ゾーン」

など、具体的な基準を設計段階からサプライヤーと納得いくまで共有し、図面や仕様書にも明記しておくことが重要です。

2. 現場フィッティング工程の組み込み

最終的な“付き合わせ”を現場で柔軟にできるよう、以下の工夫が有効です。

– 調整用シムプレートを事前に用意しておく
– ボルト穴を長穴にする設計変更を施す
– アジャスター機構やガイドローラーで、「ズレ」を簡単に修正可能にする

これらの工夫を設置マニュアルや作業手順書にも明文化し、誰が引き継いでも同じ品質で組み上げられるよう体制を整えておくことが求められます。

3. 教育・訓練による技能底上げ

熟練作業者の技術に依存する時代は終わりつつありますが、完全自動化が難しい工程では、やはり現場作業者の「見る目」「手の感覚」が不可欠です。

定期的な組付け訓練、良品・不良品事例の共有会など、現場力アップへの継続投資は、間接的に段差リスクの低減にも繋がります。

今後の業界動向と課題の克服法

ショットブラスト装置だけでなく、あらゆる生産設備の「扉関連部品」は、自動化・高度化が進む一方で、現場のアナログ的な工夫と技能が正面衝突を続けている代表的な“過渡期パーツ”といえます。

今後求められるのは、「現場の知恵」と「設計者の理想」の融合。

デジタル(3DスキャニングやCAD連携による寸法最適化)とアナログ(現物合わせ、作業員の経験値)を組み合わせることで、より高い品質と作業性を獲得することが急務です。

また、バイヤーやサプライヤー双方には
– 実際に現場を訪れて現物を見る
– 問題発生履歴をデータベース化・可視化し再発防止に役立てる
– 新しい素材や表面処理技術の積極的導入

といった“歩み寄り”や“継続的改善”の姿勢が不可欠です。

まとめ:段差問題から学ぶ現場力と未来志向

ショットブラスト装置の搬入出扉部材──一見地味なパーツですが、加工精度と現場フィッティング、設計思想と実作業のギャップが、今も多くの現場で課題となっています。

段差問題の克服は、製造業全体がアナログとデジタルの融合へと進む“縮図”でもあります。

バイヤー、サプライヤー、加工現場それぞれが「自分ごと」として課題に取り組み、現場の叡智とイノベーションを両立させる──その積み重ねが、結果として業界全体の競争力強化につながるのです。

ベテラン世代の現場知見と、新しい技術の融合が、これからの製造業現場を大きく進化させるはずです。

今後も現場目線で、具体的な実践知を発信してまいります。

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