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品質保証部門の慢性的な工数不足が抱えるリスク

目次
はじめに:品質保証部門の工数不足はなぜ深刻なのか
製造業の現場では、品質保証部門の慢性的な工数不足が恒常化しています。
特に、成熟産業である日本の多くの工場では、昭和時代からの慣習や手作業が未だに根強く残っており、効率化や自動化が十分に進んでいません。
こういった背景の中で、品質保証部門にかかる負担は増す一方です。
働き方改革の気運が高まる一方で、現場の人手不足や高齢化も深刻化しています。
品質保証部門の慢性的な工数不足は、企業競争力の低下や将来的なリスクの温床となり得る課題です。
この記事では、実際の現場目線から、品質保証部門が抱える工数不足のリスク、その要因、そして具体的な解決策について掘り下げて解説します。
品質保証部門の現状と典型的な仕事内容
品質保証部門とは何をしているのか
品質保証部門(QA部門)は、製品が規格や顧客要求を満たしているかどうかを検証し、社外に不良品を出さない最後の砦です。
具体的には、受け入れ検査・出荷検査・トレーサビリティ管理・工程監査・顧客対応・クレーム対応・是正措置の起案、教育や社内監査、文書作成や維持管理など多岐にわたります。
この部門が機能しない、もしくは機能が低下すると企業ブランドを著しく傷つける重大なリスクが内在しています。
アナログ文化が残る現場
多くの工場では、検査記録やチェックリストも未だ紙が主流です。
帳票の記入や押印、帳票の数値入力など、手作業が多くを占めているため、作業効率が悪いケースが目立ちます。
このようなアナログな作業文化が、慢性的な工数不足へと繋がっているのです。
慢性的な工数不足が生まれる主な要因
人手不足と多能工化の遅れ
現場の多くでは、ベテラン従業員の定年退職が進んでおり、若手人材の確保が困難です。
また、部門間の壁が高く、多能工化(他部門の仕事にも対応できる人材の育成)が思うように進みません。
その結果、一人あたりの負担が増大し、残業や休日出勤が常態化しています。
検査工程の複雑化と顧客要求の多様化
顧客の品質要求は年々厳しくなっています。
個別の顧客や市場ごとの細かな要求に対応するため、検査項目や評価内容が増加し、標準化できない業務が増える一方です。
これに加えて、IATF16949やISO9001などの国際規格への対応、監査対応など、管理項目も年々増加し、現場担当者の負担は雪だるま式に膨れ上がっています。
デジタル化・自動化の遅れ
前述したとおり、多くの日本企業ではデジタル化が進みません。
「過去の成功体験」が変革を妨げる壁となり、IT投資や自動化に消極的な体質に繋がっています。
このため、本来は単純作業で機械化できる部分もマンパワーに頼ってしまい、リソースが逼迫する原因となっています。
品質保証部門の工数不足が生み出す5つの大きなリスク
1. 不良品の流出
もっとも直接的なリスクは不良品の流出です。
工程検査や出荷前検査が省略・簡略化され、チェック漏れが発生しやすくなります。
万が一、顧客先での不具合発生となれば、交換・再生産・現場対応など更なる工数が発生し、信頼の失墜や損害賠償請求に発展する事例も少なくありません。
2. 誤記録・改ざんリスク
検査記録や報告書の作成が追いつかず、多忙な環境下では「とりあえず埋める」といった不正記録や改ざんリスクも高まります。
これは企業の信用を根底から揺るがす重大な問題です。
3. ノウハウの属人化・引き継ぎ不全
人手不足の環境下では、個人のスキルや経験に頼りがちです。
ベテラン社員の退職や異動により、ノウハウが引き継がれず失われ、品質事故のリスクが高まります。
4. クレーム対応の質・スピード低下
クレーム対応に追われ、他の業務が滞る。
人手が足りなければ調査や是正も後回しにされ、顧客の不満や信頼低下につながります。
5. 改善活動の停滞
慢性的な工数不足により、目の前の業務で精一杯の状態に陥ります。
これでは本来進めるべき品質改善(カイゼン)活動や工程改善、DX化推進が全く進まず、時代の流れに取り残されてしまいます。
バイヤーやサプライヤーの立場で知っておくべきこと
バイヤーが品質保証部門に求めるもの
購買担当(バイヤー)は、サプライヤーに対し「出荷品は常に規格通り」を何より強く求めます。
品質保証部門の安定的な力がなければ、これを担保することはできません。
慢性的な工数不足があれば、「検査への目が行き届かず、不良が混じるかもしれない」と疑念を持たれ、取引そのものが見直されるケースも発生します。
サプライヤーの現場でできること
現場が忙しいことは、バイヤーも理解しています。
しかし、可視化・データ蓄積・IT活用などの前向きな姿勢を見せている企業は、次の取引でも優先されやすいです。
今できる手作業の効率化、小さな自動化から始めることが、取引先の信頼構築につながります。
本質的な解決策とアプローチ
工程の徹底的な見える化
「何に」「どれだけ」「どのくらい」工数がかかっているのかを、工程ごとに数値化・可視化することが急務です。
工数分析ツールやタイムアンドモーションスタディ、現場ヒアリングを活用して「無駄な帳票」「過剰検査」「2重チェック」などを洗い出します。
現場の意識変革を促すためにも、経営層を巻き込んだPDCAサイクルを回すことが重要です。
自動化・デジタル化への第一歩
全てを一度に更新するのは難しいですが、まずは「判定自動化」や「バーコード入力」など、簡易な仕組みからトライしてみることです。
ExcelマクロやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)など、安価で導入できるツールも増えています。
紙の帳票は極力減らし、電子化にするだけでも記録・保管・検索時間の削減に繋がります。
多能工育成と属人化の防止
品質保証部門での多能工育成は、慢性的な人材不足には欠かせません。
新人教育を充実させ、マニュアル整備・OJT(On-the-Job Training)を徹底しましょう。
ノウハウを形式知化し、組織としての対応力を高めることが肝要です。
外部リソース・サポートの活用
社内リソースがどうしても足りない場合、アウトソーシングや外部コンサルタントの力を一時的に頼るのも選択肢です。
現場への負担を減らし、本来やるべき業務へ集中できる環境作りを意識しましょう。
昭和のアナログから脱却し、持続可能な品質保証体制へ
慢性的な品質保証部門の工数不足は、企業全体の競争力・将来性に直結しています。
時代遅れのままでは、グローバル競争から脱落しかねません。
現場の生の声に耳を傾け、デジタル化・工程見直し・人材育成を地道に進める。
小さな改善の積み重ねが、やがて組織全体の活力へと繋がります。
バイヤー・サプライヤー・現場担当の立場にかかわらず、「品質保証部門の工数不足」がいかに広範なリスクを孕んでいるかを認識し、今こそ具体的な一歩を踏み出しましょう。