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現地規格適合を確認せずに輸出するリスクと防止策

目次
はじめに
製造業で国際展開を目指す企業にとって、現地規格への適合は避けて通れない重要な課題です。
私がこれまでに20年以上、調達購買、生産管理、品質管理、工場自動化といった多様な現場に関わってきた中で、しばしば痛感したのは「規格適合を軽視した結果、取り返しのつかない損失や信頼低下を招くリスクが現実に存在する」ことです。
令和の今も、昭和から続く“行け行けドンドン”体質の会社現場では、「モノが売れるからとりあえず海外にも…」「規格?多分大丈夫でしょ」といった気軽なノリで見切り発車の輸出が散見されます。
しかし、グローバル化が進み、法的規制が年々厳格化する中で、“現地規格無視”は重大なビジネスロスに直結します。
本記事では、現地規格適合を確認せずに輸出した場合に生じうるリスクと、現場から実践できる防止策を、業界の最新動向や現場目線を交えて詳しく解説します。
バイヤー志望者はもちろん、サプライヤーとして顧客であるバイヤーの立場を深く理解したい方にも、新たな気づきが得られる内容です。
規格適合確認を怠った輸出がもたらす5つの主なリスク
1. 法的制裁と行政指導—最悪の場合は輸出停止や回収命令も
各国には電気・電子製品、安全機械、化学物質等に関する厳格な法規制があります。
例えば、EUのCEマーキング、中国のCCC認証、アメリカのFCC、UL規格などが代表例です。
これらを無視した輸出品は、税関での差し止め、現地市場での販売禁止、最悪の場合リコール(回収)命令や罰金等の厳しい処分を受ける可能性があります。
一夜にして多額の損失や信頼の失墜につながりかねません。
2. 顧客クレームと商談破談—現場を疲弊させる“炎上対応”
現地で規格不適合が発覚した場合、仕向地の顧客から厳しいクレームが寄せられることは避けられません。
納期遅延、商品の返品・交換対応、信用の低下、損害賠償請求など、営業・品質保証・生産現場が総出でトラブル対応に追われます。
私が過去に目の当たりにした例では、規格認証プロセスを軽視したため、海外の大手得意先企業との長期契約が一方的に破談となり、地域拠点の事業縮小・撤退に発展した現場もありました。
3. 現地代理店・パートナーとの信頼関係崩壊
現地パートナー企業や代理店は、サプライヤーである日本企業の代理として現地当局や顧客からの矢面に立たされます。
規格不適合によるトラブルは、最悪の場合、代理店契約の解除や補償請求に発展することも。
一度失われた現地ネットワークの再構築は想像以上に困難です。
4. 追加コストの発生—規格取得遅延による機会損失も
規格取得遅れによる再認証試験、製品仕様の追加変更、物流のやり直し、現地倉庫での長期保管など、直接的・間接的な追加コストが発生します。
また、市場投入時期の遅れによる販売機会の損失も見過ごせません。
5. ブランド毀損と将来の市場展開への深刻なダメージ
「日本メーカー=高品質・高信頼」というブランドイメージを、自ら台無しにすることになりかねません。
一度ついた負のイメージは長年にわたり尾を引き、市場再参入の際も厳しい目が向けられます。
なぜ“昭和的感覚”が今も残るのか?業界の実態
日本のものづくり現場には「現地でも絶対にうちの品質なら受け入れられる」という、いわば“自前志向”文化が根強く残っています。
とくにベテラン現場層や経営層には、「現地規格は一応形だけ。中身が大事だ」と軽視する声を今でもよく耳にします。
さらに、購買・営業・設計・品質保証部門間のコミュニケーション不足や、「規格情報が複雑すぎてよくわからない」「コストと工数がかかるので後回しにしたい」といったボトルネックが、現場レベルでも根深く存在します。
昭和の成長神話が“抜けきっていない”アナログ志向も、見直しを迫られる時代です。
現場で実践できる“規格不適合”防止策5選
では、どのようにして現地規格確認漏れによるリスクを予防し、スマートに“負の連鎖”を断ち切るべきでしょうか。
製造業の現場目線・管理職経験から提案したい5つの実用的アクションを紹介します。
1. 事前確認のチェックリスト化と部門横断の連携強化
海外案件スタート時には、「現地規格・法規制確認用チェックリスト」の作成を徹底しましょう。
このリストは、営業・購買・設計・生産・品質保証と多部門で共有します。
“何を、いつ、誰が、どう確認するか”を可視化することで、うっかりミス防止と情報の属人化を防げます。
2. 現地規格・認証取得―専門スタッフや外部コンサルの積極活用
複雑な現地規格や認証取得業務は、可能な限り専任担当や外部パートナーの力を借りましょう。
最新の規格動向や取得に必要な書類・試験などをプロに任せることで、コア業務へリソースを回せます。
また、現地コンサルタントや代理店と密に連携し、不明点は必ず現地当局へのヒアリングを。
3. サプライヤー管理・教育の徹底
輸出製品の一部を外部サプライヤーから調達している場合、仕入先にも現地規格の重要性を教育し、認証取得の有無を定期的にレビューしましょう。
現地調達先とも信頼を築いておくことで、突発的なトラブル発生時も柔軟な対応ができます。
4. 社内の情報共有—データベース・ナレッジの蓄積
過去の取引データや得られた教訓、規格取得に必要なノウハウをデータベース等で管理しましょう。
各部門で得られた情報を経年で蓄積し、多拠点・多部門間で共有する文化づくりが不可欠です。
5. “まずは現地目線で考える”意識の醸成
バイヤーや現地パートナーが何を重視し、どこにリスクや要求があるのかを現場スタッフ全員で考えるカルチャーを根付かせましょう。
“自分たちの常識”を離れて、現地ユーザーや規格当局の立場でプロダクトを見直す姿勢が重要です。
サプライヤーの立場からも、「なぜバイヤーが規格適合にこだわるのか?」を丁寧に理解し、現地要件に合わせた提案・調整を意識してください。
まとめ—“規格適合”はグローバル競争力の源泉
製造業のグローバル展開は、“地元の常識”を押し付けるだけではもはや通用しません。
規格適合を徹底しない輸出は、多くのリスク――法的ペナルティ、顧客信頼喪失、コストの再発生、ブランド損失――を引き寄せます。
逆に言えば、「現地規格という土俵で、他社を凌駕するほどの適合性・信頼感を供給できるか」が、日本メーカーの今後の明暗を分ける分岐点です。
昭和から続く“何とかなる”文化を乗り越え、現地志向・顧客志向を業務プロセスの初期段階から組み込むことが現代のものづくり現場の最低条件です。
規格の壁をチャンスに変えれば、今後の海外展開で得られる果実はさらに大きなものとなるはずです。
みなさんの職場でも今日から、「現地規格適合を確認せずに輸出するリスク」を改めて見直し、ラテラルシンキングで新しい現場力へ進化させましょう。
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