投稿日:2025年11月25日

OEMアウターの撥水加工・防風性能を高める技術的アプローチ

OEMアウターの撥水加工と防風性能向上の重要性

OEMアウター、すなわち他社ブランドへの供給を目的としたアパレル製品の開発において、撥水加工と防風性能の向上は欠かせないテーマです。

アウトドア市場からカジュアルファッションまで、消費者がアウターに求める機能の最重要ポイントは「快適性」と「耐久性」であり、その根底にあるのが水濡れや風から身を守る性能だからです。

近年、異常気象やライフスタイルの多様化が進む中、OEMアウターにも高度な機能性が求められる傾向が加速しています。

ここからは、20年以上の製造業の現場経験を踏まえつつ、アウター製造の調達・生産・品質管理の視点から、撥水・防風の最新技術や現場の課題、将来的なアプローチなどを現実的に掘り下げます。

サプライヤーの立場でも、バイヤーが何を重視するのか理解できる内容とします。

アウター用素材の選定と調達現場の実態

素材選定におけるバイヤーの判断基準

OEMアウターにおいて撥水性や防風性を担保するには素材選びが最も重要です。

ポリエステル・ナイロン・ウール混紡・高機能合成繊維など様々な選択肢がありますが、バイヤーは次の3点を必ず重視しています。

1. 基本性能:撥水性(耐水圧・耐水度)と防風性(通気性とのバランス)
2. 加工適性:後工程での撥水加工・ラミネートなどへの適応性
3. コストと調達リードタイム:マーケットニーズに合わせた供給柔軟性

このバランスを取ることが、サプライヤー・メーカー双方の腕の見せどころです。

実際の調達現場で起きている課題

多品種・小ロット化が進み、調達購買部門はコストダウンとスピードUpの狭間で悩みます。

例えば、
「試作品で撥水性が基準を超えていたのに量産時に性能が落ちた」
「原料高騰、円安で希望素材から妥協した」
など実際の現場ではジレンマが多発しています。

このような現場では、従来の“昭和的”勘と経験だけでなく、数値根拠を基にした判断(ラボ試験・分析データ活用)が不可欠になっています。

撥水加工の技術トレンドと現場での取組み

最新の撥水加工技術

アウター用生地への撥水加工は年々進化しています。

主なアプローチは以下の3つです。

1. フッ素系樹脂による撥水加工
従来型の「テフロン加工」など、長期耐久性に優れますが環境規制が強化されているため、最近はPFASフリー(ノンフッ素)への置き換えも増加傾向にあります。

2. シリコーン系樹脂
環境負荷が少なく、皮膜形成力の強い特徴を持ちます。洗濯耐久性や柔軟性も評価され、主流技術となりつつあります。

3. ナノテクノロジー応用
生地表面の微細加工技術(溶液塗工・プラズマ処理など)により、分子レベルでの高撥水を実現しています。

これらの技術を組み合わせ「耐水性」「耐久性」「肌触り」「色や風合いの保持」など多面的な課題へアプローチしています。

現場レベルでの工夫

昭和時代から続く工場には「撥水剤のピックアップ具合」「乾燥温度と時間」など熟練者のノウハウが蓄積されています。

一方、海外協力工場を含めグローバルに展開する大手メーカーは、品質のバラツキが課題です。

そのため現場では「加工条件の見える化」「QC工程表の標準化」「現物サンプルによるヨコ展開」など、デジタルとアナログの強みを融合した改善活動が推進されています。

防風性能の高め方と新しい素材開発

多層構造・ラミネート加工が主流

防風性を高めるには、生地構造自体を工夫する必要があります。

代表的なのが「3層ラミネート」のような多層構造です。

– 表地:耐久性やデザイン性を担保
– 中間膜:防風層(PU、PTFE、TPUなどのフィルム)
– 裏地:快適性・吸湿性を確保

この多層化によって雨・風・湿気のコントロールが可能となります。

また、シームテープ加工で縫い目からの風や水の侵入もカバーし、“トータル防風”を実現しています。

昭和のアウターと現代アウターの違い

昭和のアウターは素材重視で、ウールやコットンの厚み・織り密度で防風性や重厚感を出していました。

しかし現代は、薄く軽量な生地でも十分な性能を発揮できるラミネート技術・表面加工が普及しています。

– 軽さと快適さ
– スポーツ用途にも使えるストレッチ性
– 環境配慮型素材との両立

こうした進化で、アウターの使い心地・機能性は飛躍的に向上しました。

製造現場・生産管理側から見た問題・改善事例

撥水・防風の品質検査のポイント

工場の現場では、生産管理と品質管理が密接に絡みあいます。

撥水試験は「スプレーテスト」「耐水度試験」、防風性は「通気度試験」などJIS規格や独自基準による全数検査が一般的です。

しかし、量産工程では「日送りごとの設備設定ズレ」「バッチ間の液温変動」などによって性能バラツキが発生することがあります。

こうした問題解決には、
– 生産実績と検査データの一元化(品質管理システムの導入)
– 不良発生時のトレース(ロット番号・工程ログの管理)
など、現場のアナログ能力にデジタル管理を組み合わせた運用が求められます。

改善事例(現場からの声)

1. 撥水剤の投入順序や撹拌方法を見直し、ムラを減少させた事例
2. 防風フィルムのラミネート温度を最適化し、剥離トラブルをゼロにしたケース
3. 最新自動化機器の導入で「標準化→省人化→品質安定」とつなげたプロジェクト

昭和的な“カン”とデジタルの融合が、現場改善に最も効果的だと実感しています。

OEMアウター開発でバイヤーが求める視点・今後の潮流

「差別化」できる技術は何か?

市場は常に「売れるための武器」をOEM供給側へ求めています。

最近だと、
– 高耐久撥水加工(洗濯耐久10回以上OK)
– 環境認証(ブルーサイン・リサイクル素材・PFASフリー)
– ソフトな風合い&高機能(着やすさ両立)
– 小ロット・短納期対応
など、「+α」の武器で差別化してほしいという声が多くなっています。

バイヤーも消費者からの声、法規制、取引先からのプレッシャーに対応する必要があり、サプライヤーも“丸投げ受注”はもはや難しいのが現状です。

これからのOEMアウター製造現場に必要な力

1. 技術力(新素材・新加工への柔軟対応力)
2. 情報力(トレンド把握とグローバル調達のアンテナ力)
3. 問題解決力(現場から品質を作り込む力)
さらに、持続的な改善を続ける組織文化こそが“選ばれるサプライヤー”の条件です。

まとめ ~進化するOEMアウターの競争力~

OEMアウターの撥水・防風性能は、素材、加工、品質管理、そして“現場知”の総合力によって決定します。

– 「いつものやり方」に固執せず、新しい技術や考え方を積極的に取り入れる姿勢
– サプライヤーとバイヤーが共に現場で価値を作り上げる協働関係
– デジタルとアナログの強みを活かし“昭和から令和へ”進化し続ける現場力

これらを重ねることで、競争が激化するグローバル市場でもOEMアウターは差別化できます。

現場のプロフェッショナルとして、日々変化をチャンスと捉え、未来へとつながる製品とものづくり現場を共に創っていきましょう。

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